はじめに
HAZIME NI

ローマ字の かきかたを きちんと 理解 するには 言語の 表記法が どういう しくみに なって いるかを 勉強 しないと いけません。それで はじめに すこし 理屈っぽい はなしを して います。いますぐに ローマ字の かきかたを しりたい 人は この 章を とばして「音声の かきかた」から およみ ください。

正書法
Seisyohô

ある 言語の ただしい かきかたを「正書法」と いいます。たとえば,英語は 文の 先頭を 大文字に して 末尾に ピリオドを うちます。人称代名詞の I は つねに 大文字と いう ふうに,単語の つづりは 辞書に のって いる 形が ただしい ものと きまって います。このほかにも いろいろな きまりを しって いるでしょう。それらを まとめた ものが 英語の 正書法です。一般に,文字を もつ 言語には 正書法が あり,国の 公用語 などには きちんと した 正書法が あります。

ところが,日本語は この 正書法が おおづかみにしか さだめられて いません。たとえば,【タバコ】と いう ことばの つづりは「たばこ」「タバコ」「煙草」が つかわれて いて,どれが ただしいとも きまって いません。【アカルイ】の おくりがなは 公用文 などで なければ「明い」「明るい」「明かるい」の どれでも かまいません。【ウケツケ】「受け付け」「受付け」「受付」の ように ばらばらです。

きまりが ないと,かく ときに 自由で ある 反面,まよって しまう 不便が あります。よみ手に とっては いい ことが まったく ありません。たとえば,インターネットで 検索 する とき,かきかたが 統一 されて いない ために,おもいどおりに ヒット しない ことが よく あります。先進国と よばれる 国の 言語で,正書法が きちんと さだまって おらず,不合理な ままに なって いるのは 日本語だけです学校の「国語」でも,漢字の かき順,とめ・はね,手紙の 様式,原稿用紙の つかいかた などは おしえますが,もっとも たいせつな はずの 日本語の かきかたと いう ものを きちんと おしえて おらず,それらが 世の中に ゆきわたって いません。たとえば,擬態語は ひらがなで かき,擬音語は カタカナで かく きまりが あります。副詞・形式名詞・補助動詞 などは かな文字で かくのが ふつうです。しかし,このような かきわけを 意識的に やって いる 人は あまり いないでしょう。会話を ふくむ 文では とじる かぎかっこの 前に 句点(。)を かかないと いけませんが,ほとんどの 作家も 新聞も そんな かきかたは して いません。

これには ふたつの 理由が あります。ひとつは,日本語の 表記システムが あまりにも 複雑すぎて ルールづくりが むつかしい ことです。もう ひとつは,ルールと いう 枠を はめる ことに たいして 感情的に 反発 する 人が おおい ことです。

日本語の かきかたを 文字で 分類 すると「漢字仮名交じり文」「かな文字文」「ローマ字文」の 3種類 ありますが,どの かきかたにも きちんと した 正書法は ありません。この サイトで 解説 して いる ローマ字文の かきかたも 日本語の ルールと して 公式に さだめられた ものでは ありません。いって みれば,まにあわせの 正書法です。明治時代から ローマ字論者が ねりあげて きた かきかたに この サイト 独自の かんがえを くわえた 提案を しめして います。


具体的な 説明の 前に,この 章で ローマ字の 基本的な かんがえかたを 確認 して おきます。それから 章を あらためて,【ア】【キャ】などの「音声の かきかた」,その つぎに「山」「美しい」などの「単語の かきかた」,そして「桜が 咲いた。」などの「文章の かきかた」と いう 順番で 説明 します。

ローマ字の かんがえかた
Rômazi no kangaekata

ローマ字は 日本語の 表記法
Rômazi wa Nihongo no hyôkihô

ローマ字を ただしく 理解 して いる 人は あまり いません。ほとんどの 人は ローマ字を ただしく かけないだけで なく,そもそも ローマ字とは 何かを しりません。ローマ字を つぎの ような ものと おもって いる 人は おおいでしょう。

これらは すべて まちがいです。ローマ字は 日本語の 文章を かく ものです。つまり,ローマ字は 日本語の 表記法です。何百年も 前に はじめて ローマ字が つくられた ときから いまに いたるまで,ずっと そうです。

ABCは 世界に ひらかれた 文字ですから,ローマ字は 日本語の 国際的な 表記法でも あります。国際的な 場で 日本語を かく ときや 日本語を 世界に 発信 する とき,その 日本語は かならず ローマ字で かかれます。


いまの ところ,日本語の 文章を すべて ローマ字で かく ことは あまり おこなわれて いませんが,人名・地名・駅名と いった 名前の ほかにも ときどき ローマ字で かいて いる ものは たくさん あります。映画・音楽・書籍・論文の タイトル,飲食店の メニューメールアドレス・URLファイル名・フォルダ名と いった 語句や,チャット,外国人あての メール,町内会の おしらせ などの 文章も ローマ字で かく ことが あるでしょう。すべて ローマ字で かかれた 学術書や 小説も あります。卒業論文を ローマ字で かいた 人も います。

外国人も ローマ字表記を 必要と して います。日本に すんで いる 外国人には 日本語で 会話が できても 漢字仮名交じり文は よめない 人が 大勢 いて,そういう 人は これから どんどん ふえて いくと 予想 されます。そこで,日本語を 漢字かな表記と ローマ字表記の 2本だてに して いく「二表記社会」の 実現が のぞまれて います。動画の 字幕,カラオケの 歌詞を ローマ字で だして ほしいと いう 外国人が いる ことから わかる ように,日本語の 文章を 記述 できる ローマ字は 世界から もとめられて います。

したがって,ローマ字は 日本語の 文章を 記述 できる 日本語らしい つづりかたで,かつ 小学生でも つかいこなせる くらい かんたんで ないと いけません。公式の ルールで さだめられた ローマ字(訓令式)は そのように 設計 されて いて,それが 日本語の 基礎知識と して 小学校の「国語」で おしえられて います。

イソップ寓話
「イソップ寓話」

これは 16世紀の おわりごろに キリスト教の 宣教師が つくった ものです。日本語の 文章が ポルトガル式の ローマ字で かかれて います。

イヌが 肉を ふくんだ こと。ある イヌ ししむら(肉の かたまり)を ふくんで 川を わたるに,その 川の まん中で,ふくんだ ししむらの 影が 水の 底に うつったを みれば,おのれが ふくんだよりも,一倍 おおきなれば,影とは しらいで,ふくんだを すてて 水の 底へ 頭を いれて みれば,本体が ないによって,すなわち きえうせて どちをも とりはづいて 失墜を した。

実験遺伝学
池野成一郎「実験遺伝学」

すべて ローマ字で かかれた 学術書です。これを よみたくて 日本語を 勉強 した 外国の 学者が いたと いわれて います。ここは 三毛ネコの 遺伝に ついて かいて いる ところです。

鶴の恩返し
こにしまさみ「鶴の恩返し」

こどもむけの 本ですが,すべて ローマ字で かかれて います。

道
市川次郎「道」

プロボクサー 市川次郎が 発表 した 小説です。漢語の「えい」ê に するのは 一歩 すすんだ かきかたです。


ローマ字は 日本語の 文章を かく ものですが,もう すこし ふかく かんがえて みると,何を かいて いるのか わからなく なって しまうかも しれません。「東京」Toukyou とは かきませんから,ふりがなを ABCに おきかえて いるのでは ありません。「~です」「~ます」des, mas とは かきませんから,発音記号の ように 正確な 発音を かいて いる わけでも ありません。ローマ字は いったい 何を かいて いるのでしょうか。

ローマ字が かいて いるのは 日本語の 音声です。ただし,口から でる 物理的な 音声では ありません。頭の 中に ある 心理的な 音声です。ローマ字は 日本語で くらして いる 人が 頭の 中で おなじだと おもって いる 音声を おなじ つづりで かき,ちがうと おもって いる 音声を ちがう つづりで かく しくみです。つまり,日本語で くらして いる 人の 頭の 中に ある 音声,そう いう ふうに 発音 して いる つもりの 音声を かいて います。表音文字で かく 外国語の つづりかたも 基本的には これと おなじ しくみです。

ところが,この 事実は 一般に しられて おらず,上で しめした さまざまな かんちがいが ひろまって います。その 原因は たくさん あります。まちで みかける ローマ字が いいかげんに かかれて いる せいで ただしい ローマ字表記を 目に する 機会が ない こと,ローマ字入力の せいで ローマ字と ふりがなを むすびつけて かんがえる 人が ふえた こと,学校の 言語教育(「国語」「英語」)が おそまつな せいで 表音文字と 発音記号が 混同 されて いる こと,これらが わかりやすい ところです。しかし,根本的な 原因は ローマ字が 日本語の 表記法で ある 事実を 政府が 否定 して いる ことです。

よく ある おもいちがい」も およみ ください。

ローマ字は 音声を かく
Rômazi wa onsei o kaku


漢字・ふりがな・ローマ字

「飛行機」を ローマ字で hikouki と かいて しまう 人が います。これは ローマ字の かんがえかたが わかって いないから おこる まちがいです。ローマ字は ふりがなを ラテン文字(ABC)に 変換 した ものでは ありません。日本語の 音声を ラテン文字で かいた ものです。以下,必要に 応じて 文字を「 」で,音声を【 】で しめします。

ローマ字の 世界では,まず はじめに ことばの 音声が あって,その 音声を かきあらわす ために 文字が あると かんがえます。まず はじめに【ヒコーキ】と いう 音声が あって,それを 漢字で かけば「飛行機」に なり,ひらがなで かけば「ひこうき」に なり,ラテン文字で かけば hikôki に なると かんがえる わけです。


ローマ字を かく ときには,頭の 中で かんがえた ことばを そのまま ローマ字で かく ときと,漢字や かな文字で かかれて いる ことばを ローマ字で かきなおす ときの ふたつが ありますが,いずれも ことばの 音声を ラテン文字に 変換 します。

頭の 中で かんがえた「飛行機」を ローマ字で かく ときは,【ヒコーキ】と いう 音声を ローマ字の ルールで hikôki に 変換 します。

【ヒコーキ】hikôki

漢字で かかれた「飛行機」を ローマ字で かきなおす ときは,「飛行機」と いう 文字を いったん【ヒコーキ】と いう 音声に もどして,それを ローマ字の ルールで hikôki に 変換 します。

「飛行機」【ヒコーキ】hikôki

ひらがなで かかれた「ひこうき」を ローマ字で かきなおす ときは,「ひこうき」と いう 文字を いったん【ヒコーキ】と いう 音声に もどして,それを ローマ字の ルールで hikôki に 変換 します。

「ひこうき」【ヒコーキ】hikôki

これが ローマ字の かんがえかたです。ふりがなを 変換 しないで,かならず 音声を 変換 します。「おはよう」だったら,ふりがなの「おはよう」ohayou に 変換 するのは まちがいで,ただしくは 音声の【オハヨー】ohayô に 変換 します。「こんばんは」だったら,ふりがなの「こんばんは」konbanha に しないで,音声の【コンバンワ】konbanwa に します。

「おはよう」【オハヨー】ohayô
「こんばんは」【コンバンワ】konbanwa

表音主義
Hyôon syugi

昔の ふりがなは おなじ 音声を いろいろな つづりで かいて いました。たとえば,【ショー】と いう 音声を ことばの ちがいに よって「シヨウ」「シヤウ」「セウ」「セフ」と かきわけて いました。これでは おぼえるのも つかうのも むつかしく,とても 不便です。

そこで,こんな かきかたは やめて 音声の とおりに かこうと いう かんがえが 表音主義です。ローマ字は これを 採用 して います。たとえば,音声が【ショー】だったら syôで 統一 します歴史的仮名遣いは よむだけなら それほど むつかしくは ありませんが,かくのは たいへんでした。しかも 昔は むつかしい 漢字を つかって いたので,日本人の よみかき能力は たいへん ひくい ものでした。日本人は 昔から 識字率が たかかったと いいはる 人は おおいのですが,事実は まったく ちがいます。きちんと よみかきが できた 人は ごく 一部に すぎません。明治20年代に おこなわれた ある 調査に よると,自分の 名前と 住所(村の 名前)を ただしく かけない 人が 4割も いた ほどです。文字が よめるとか 名前が かけるとかの 単純な よみかき能力を「リテラシー」と いいますが,正常な 社会生活を いとなむ ために 必要な よみかき能力は「機能的リテラシー」と いって 区別 されて います。日本人の「機能的リテラシー」は 戦後に おこなわれた 調査でも じゅうぶんで なかった ことが わかって います。いまの 日本政府は 日本に 解決 する べき 識字の 問題が ある 事実を 公式に みとめて います。

シヨウリsyôri(勝利)
シヤウメンsyômen(正面)
セウネンsyônen(少年)
カンセフkansyô(干渉)

表語文字と 表音文字
Hyôgo mozi to hyôon mozi

ことばを 文字で かきあらわす やりかたには 表語文字を もちいる 方法と 表音文字を もちいる 方法が あります。漢字は 表語文字で かな文字と ラテン文字は 表音文字です。

表語文字を もちいると,ひとつの ことばが ひとつの 文字で かけます。これは たいへん わかりやすい かきかたに おもえますが,じっさいには 欠点が おおく,つかいにくい かきかたです。そのため,表語文字は だんだん すたれて いき,ほとんど なく なって しまいました。いまも いきのこって いる 表語文字は 漢字だけで,その 漢字を つかって かく 言語は 中国語と 日本語だけです。

表音文字を もちいると,ひとつの ことばを かくのに ひとつ 以上の 文字が 必要です。ことばの 音声を ばらばらに 分解 して,それぞれの 音声に 対応 した 文字列を ならべて かきます。なんだか ややこしい かきかたに おもえますが,じっさいには 利点が おおく,つかいやすい かきかたです。そのため,いまは ほとんどの 言語が この かきかたを して います。

世界の 中で みれば,表音文字を もちいる かきかたが ふつうです。文字は そのように 発展 して きました。昔は 漢字を つかって いた 韓国語と ベトナム語も いまは 表音文字を つかって います。日本語も 表音文字で かく ように すれば 便利に なりますから,日本語を かな文字や ラテン文字で かく かんがえが あります。これを かな文字論ローマ字論と いいます。

ラテン文字で ことばを かく」「ことばと 文字の 関係」も およみ ください。

心理的な 音声
Sinriteki na onsei

ローマ字を 外国人むけの 発音記号 みたいな ものと かんがえて いる 人は おおいのですが,それは よく ある おもいちがいです。ローマ字は ことばの 音声を かきますが,発音記号では ありません。発音記号が かく 音声は 口から でる 物理的な 音声ですが,ローマ字が かく 音声は 頭の 中に ある 心理的な 音声です。

文字の 役割は ことばを 記録 する ことです。表音文字を ならべて ことばを かく ときも,その ことばが わかる ように かけば それで 役目を はたせます。そのため,ことばの 区別に かかわらない 程度の 発音の ちがいは いちいち かきわけません。それどころか,ふだんは その ちがいを 意識 して いません。ことばの ちがいに かかわらないので,意識 する 必要が ないからです。

つまり,ローマ字は ことばの 音声を かきますが,物理的な 音声を 機械で 録音 する ように 正確に うつしとる ものでは ありません。言語学者が こまかく 分類 した 音声を かきあらわす ものでも ありません。声の 質や おおきさ,しゃべる はやさ などの 情報も ことばの 区別に かかわらないので かきません。もし ふたつの 音声が ちがう ことばに きこえたら,それらは ちがう つづりで かきます。反対に,もし ふたつの 音声が おなじ ことばに きこえたら,たとえ それらの 波形や 発音記号や 声の おおきさが ちがっても,それらは おなじ つづりで かきます。このように,頭の 中で おなじだと おもって いる 音声を おなじ つづりで かき,ちがうと おもって いる 音声を ちがう つづりで かく わけです。心理的な 音声を かくと いうのは こういう 意味です。

「足(シ)」「石(シ)」「牛(シ)」【ア】【イ】【ウ】を ちがう 文字で かくのは,これらの 音声が ちがう ことを 意識 して いるからです。言語学者の 分類に よれば「音程(オテイ)」「音符(オプ)」「音楽(オガク)」【ン】は すべて ちがいますが,これらを すべて おなじ 文字で かくのは,これらの 音声が ちがう ことを 意識 して いないからです。この 理屈は かな文字表記でも ローマ字表記(訓令式)でも おなじです。

音声を ABCに 変換 する ルール
Onsei o ABC ni henkan suru rûru

ローマ字が 発音記号で ない ことは 別の 意味からも いえます。発音記号の よみかた・かきかたは 世界共通ですが,表音文字の よみかた・かきかたに 世界共通の ルールは ありません。世界には ABCで かく 言語が たくさん ありますが,どんな 音声を どんな つづりで かくか,どんな つづりを どんな 音声で よむか,それは 言語に よって ちがいます。(おなじ 文字を ちがう 発音で よむ ことが あるのは 表音文字に かぎった はなしでは なく,日本と 中国の 漢字も 発音が ちがいます。)

たとえば,英語の ja【ジャ】ですが,ドイツ語の ja【ヤ】です。英語の cho【チョ】ですが,フランス語の cho【ショ】です。イタリア語の ca【カ】ですが,マジャル語(ハンガリー語)の ca【ツァ】です。それぞれの 言語の 性質に あわせた ルールに して あるからです。ローマ字も 日本語の 性質に あわせた ルールに して あります。その ルールを まとめた ものが「ローマ字表」です。

こういう わけですから,しらない 言語の つづりは よみかたが わかりません。たとえば,フランス語を しらない 人が フランス語の つづりを みても ただしい 発音では よめません。フランス映画の おしまいに うつしだされる FIN を みた こどもが【フィン】と いって しまうのは フランス語を しらないからです。これと おなじで,日本語を しらない 人が ローマ字を みても ただしい 発音では よめません。道路標識や 駅名標には ローマ字が かいて ありますが,外国人は それらを ただしい 発音で よめません。おおよその よみかたが わかるだけです。

ローマ字は ふりがなに 依存 しない
Rômazi wa hurigana ni izon sinai

ローマ字は ふりがなに 依存 しません。もちろん 漢字にも 依存 しません。したがって,ローマ字を よみかき するだけなら 漢字や かな文字の 知識は いりません。ローマ字の つづりは 基本的に 音声だけで きまり,日本語で 会話が できる 人なら 漢字と かな文字を まったく しらなくても ローマ字を つかえる ように なります。

これは ちいさい こどもでも ローマ字の よみかきが できる ことを 意味 します。「氷」の ふりがなが「こおり」「こうり」か わからなくても ローマ字なら まちがいなく かけるでしょう。ちいさい こどもむけの 絵本は かな文字だけで かいて ありますが,ローマ字表記に すれば もっと やさしく なります。ローマ字は,(1) 文字の 形が わかりやすく,(2) 文字の 数が すくなく,(3) かきかたが 規則的だからです。本当は 小学校で かな文字の 前に ローマ字を おしえた ほうが いい くらいです(1) ラテン文字は 文字の 形が 幾何学的で おぼえやすいのですが,ひらがなは 複雑な 曲線で できて いる ため かくのも よむのも むつかしい 欠点が あります。 (2) 訓令式で つかう 文字は 通常 19文字です。大文字と 小文字が あるので 2倍の 38文字と しても,小文字には 大文字と おなじ 形で おおきさが ちがうだけの 文字が 10個 ほど あり,おぼえるのは かんたんです。ひらがなと カタカナを あわせると 100文字 ちかくにも なり,これを おぼえるのは たいへんです。 (3) ローマ字は 音声と つづりの 対応が 規則的ですが,ふりがなは 変則的な つづりに なる ことばが たくさん あります。例:「私は」「は」「大きい」「おお」。 (4) さらに つけくわえると,ローマ字には こどもに 子音・母音(音素の 概念)を おしえやすい 利点が あります。音素の 概念は「英語」の 勉強で 必要に なるので,できるだけ はやい 段階で おしえて おかないと いけない 基礎知識です。こどもに はじめて 文字を おしえる 段階で 音素の 概念を あつかわない 国は 日本だけです。

外国人も そうです。外国人は ひらがなを おぼえるのに とても 苦労 しますが,ABCは 外国人が すでに しって いる 文字ですから,あたらしい 文字を おぼえなくて いい わけです。外国人が ローマ字の よみかきを おぼえるのは 日本人が ハングルの よみかきを おぼえるよりも かんたんです。日本に すんで いる 外国人の おおくは 日本語で かんたんな 会話が できます。したがって,ローマ字を つかえば そういう 人と メールや チャットが できます。しかも,ローマ字は 英語と ちがって 音声と つづりの 対応が 規則的ですから,日本語の 勉強を はじめた ばかりの 人でも すこし 練習 すれば それなりの 発音で よめる ように なります。

このように,ローマ字は よみかきが やさしく,おとなでも こどもでも 日本人でも 外国人でも すぐに おぼえて つかえます。たいへん 能率的で 民主的で 国際的な 表記システムで あると いえます。

ローマ字と ふりがな
Rômazi to hurigana

ローマ字と ふりがなの 関係
Rômazi to hurigana no kankei


ふりがな・ローマ字

ローマ字と ふりがなに 直接の つながりは ありません。日本語の 音声を ラテン文字(ABC)で かいた ものが ローマ字で,かな文字で かいた ものが ふりがなです。ローマ字と ふりがなは おたがいに 独立 した もので,一般に ローマ字の つづりと ふりがなの つづりは 対応 しません。

ふりがなローマ字
電気でんき denki,  te"nki
お茶おちゃ otya,  otiya
日記にっき nikki,  nituki
空想くうそう kûsô,  kuusou

ふりがなは 〇〇なのに ローマ字が ✕✕なのは なぜですかと 質問 する 人が いるのは ふりがなを ABCに 変換 した ものが ローマ字だと おもって いる 人が おおいからです。これは よく ある おもいちがいで,ローマ字入力が つかわれる ように なってから この かんちがいが ふえて います。ローマ字の つづりは 基本的に 音声で きまり,ふりがなでは きまりません。

ローマ字が 音声を かいて いる 事実は ローマ字の なりたちを かんがえると はっきり します。16世紀の 日本に やって きた 外国人は「奉公(ほうこう)」fôcô と かいて いました(昔の 発音は【フォーコー】だったので)。明治時代の 日本人は「川(かは)」「今日(けふ)」「声(こゑ)」kawa, kyô, koe と かいて いました。ローマ字は はじめから 音声を かいて いたのが よく わかるでしょう。

ふりがなは 音声を かいて いない?
Hurigana wa onsei o kaite inai?

ローマ字は ほぼ よんで いる とおりに かけて,かいて ある とおりに よめます。ところが,ふりがなは よんで いる とおりに かけなかったり,かいて ある とおりに よめなかったり します。ふりがなは 音声を その とおりに かかない ところが あり,音声と つづりの 対応が すこし ずれて いるからです。具体的には つぎの ところが ずれて います。

ふりがな音声ローマ字
こんばんはこんばんはコンバンワkonbanwa
お母さんおかあさんオカーサンokâsan
お姉さんおねえさんオネーサンonêsan
おおかみオーカミôkami
王様おうさまオーサマôsama
鼻血はなぢハナジhanazi
三日月みかづきミカズキmikazuki


「めだかの学校」 (「童謡(増訂版)」(野ばら社)より)

歌詞の「がっこう」「おゆうぎ」に 記号が つけて あり,「こう」「ゆう」【コー】【ユー】と よむ ように うながして います。長音が ふたつの 音符に またがって いると,よみまちがいが おこりやすいのかも しれません。現場の 苦労が しのばれます。歌詞を ローマ字で かけば こんな 気くばりは いりません。


このように,音声を ほぼ その とおりに かく ローマ字と そうで ない ふりがなを くらべると,ローマ字の ほうが はるかに やさしく,よみかきが かんたんですじっさいには,ローマ字を ただしく かける 人は ほとんど いません。これは 日本の 政治や 教育が 原因です。ローマ字は 日本語の 表記法ですが,いまの 日本政府は ローマ字を 日本語の 表記法と かんがえる ことを かたくなに こばんで います。そのため 学校でも ローマ字が きちんと おしえられて いません。くらしの 中でも ただしく かかれた ローマ字を 目に する ことは ほぼ ありません。おおくの 保護者も ローマ字を 英語教育の じゃまだと かんがえて おり,こどもに ローマ字を なるべく おしえない ように している 家庭まで あります。

ふりがなも 音声を かいて いた
Hurigana mo onsei o kaite ita

かな文字は 音声を かく ために 発明 された 文字なのに,音声と つづりの 対応が すこし ずれて います。これは 日本語の 発音が かわった こと などが 原因です。一部の ことばの 発音が かわったのに その ことばの つづりを じっさいの 発音に あわせて かえなかった せいで ずれが できたり した わけです。数百年と いう ながい 時間が たてば,音声と つづりの 対応は ずれて きます。これは 日本語に かぎらず 外国語でも 自然に おこる 現象です英語は この ずれが ひどい 言語と して しられて います。英単語の つづりが おぼえにくい 理由の ひとつが これです。そして,英語も はじめから ずれて いた わけでは ありません。ふるい 英語は see, moon を つづりの とおりに【セー】【モーン】と よんで いました。

明治時代から 正式の ルールに なった 歴史的仮名遣いは 平安時代の はじめごろの 発音に あわせた かきかたで,いまの 発音との ずれが はなはだしく,たいへん あつかいにくい ものでした。これを きちんと よみかき できたのは 教育に 時間と おかねを かけられる 一部の 人だけでした。これでは 民主的と いえません。そこで,戦争が おわった あと,この ルールが あらためられて 現代かなづかいが できました。これで ほとんどの ずれが なく なって よみかきが やさしく なり,日本の 教育水準は いちじるしく あがりました。ただし,あまりにも ずれが おおきかったのと 改革に 抵抗 する 人が おおかった ために,このときは ずれを なおしきれませんでした。それで,まだ いくつかの ずれが のこって います。

明治時代から ふりがなの かきかたを あらためようと した ことは 何度も あったのですが,反対 する 人が おおかったり して,できませんでした。戦後に ようやく それが できた わけですが,ふりがなの かきかたは まだ 近代化が おくれて いて,何百年も 前に つくられた ローマ字の かきかたにも おいついて いません。

ローマ字と ふりがなの 比較
Rômazi to hurigana no hikaku

はじめて よむ 人は ここを よみとばしても かまいません。

ローマ字と ふりがなは おたがいに 独立 した もので,これらの あいだに 直接の むすびつきは ありません。しかし,おなじ 音声を もとに して いるので,まったく 無関係と いう わけでも ありません。ローマ字の かきかたと ふりがなの かきかたには にて いる ところも あります。どれほど にて いて どれほど ちがって いるか,みっつの かなづかいで くらべて みます。

ローマ字は いまの 発音に あわせた かきかたで,表音かなづかいと ほぼ おなじです。具体例で しめした ものが 下の 表です。

歴史的仮名遣い現代仮名遣い表音かなづかいローマ字
は(助詞)wa
へ(助詞)e
を(助詞)o
かはかわかわkawa
にはにわにわniwa
こひこいこいkoi
まひまいまいmai
飼うかふかうかうkau
添うそふそうそうsou
うへうえうえue
まへまえまえmae
かほかおかおkao
しほしおしおsio
i
参るまゐるまいるまいるmairu
うゑうえうえue
こゑこえこえkoe
うをうおうおuo
をんなおんなおんなonna
こう(副詞)かうこうこー
近江あふみおうみおーみÔmi
日向ひうがひゅうがひゅーがHyûga
言ういふいうゆーiu *
~でしょう~でせう~でしょう~でしょー-desyô
今日けふきょうきょーkyô
おほやけおおやけおーやけôyake
こほりこおりこーりkôri
とほりとおりとーりtôri
ほほほおほー
あぢあじあじazi
ふぢふじふじhuzi
紅葉もみぢもみじもみじmomizi
みづみずみずmizu
かづらかずらかずらkazura
小豆あづきあずきあずきazuki
鼻血はなぢはなぢはなじhanazi **
近々ちかぢかちかぢかちかじかtikazika **
縮むちぢむちぢむちじむtizimu **
三日月みかづきみかづきみかずきmikazuki **
常々つねづねつねづねつねずねtunezune **
続くつづくつづくつずくtuzuku **
贔屓ひいきひいきひーきhîki ***
夫婦ふうふふうふふーふhûhu
英語えいごえいごえーごeigo *
お母さんおかあさんおかあさんおかーさんokâsan
お兄さんおにいさんおにいさんおにーさんonîsan ***
お姉さんおねえさんおねえさんおねーさんonêsan
お父さんおとうさんおとうさんおとーさんotôsan
上手じやうずじょうずじょーずzyôzu
蒸気じようきじょうきじょーきzyôki
饒舌ぜうぜつじょうぜつじょーぜつzyô­zetu
丈夫ぢやうぶじょうぶじょーぶzyôbu
一帖いちでふいちじょういちじょーitizyô
条約でうやくじょうやくじょーやくzyô­yaku

* ローマ字と 表音かなづかいが ずれて いる ところです。

** ローマ字の ルールが すこし まずい ところです「ぢ」「づ」の かきかたを 問題に して います。たとえば,「鼻血」「三日月」hanadi, mikaduki と かく ほうが 自然でしょう。「もっと 日本語らしい かきかた」も およみ ください。

*** îii と かく ことも あります。「îii と かく?」で 説明 して います。

ローマ字と ふりがなを 対応 させる
Rômazi to hurigana o taiô saseru

ローマ字も ふりがなも 日本語の 音声を 表音文字で かいた ものですが,一般に ローマ字の つづりと ふりがなの つづりは 対応 しません。そこで,ローマ字の つづりと ふりがなの つづりを 対応 させようと いう 意見が でて きます。これは 自然な かんがえです。

ところが,なぜか それらは ローマ字の かきかたを あらためて ふりがなの かきかたに あわせようと いう 意見 ばかりです。これは とんでもない まちがいです。ローマ字と ふりがなを 対応 させる ために あらためるのは ふりがなの かきかたです。ローマ字の かきかたと ふりがなの かきかたを くらべると,全体的に みれば ローマ字の かきかたの ほうが よく できて いるのですから,どちらか 一方を あらためると すれば,ふりがなの かきかたを あらためないと いけません。(ローマ字の かきかたにも あらためた ほうが いい ところが すこし ありますが,おおきく かえる 必要が あるのは ふりがなの かきかたです。)

そして,そのような ふりがなの かきかたは すでに あり,ときどき じっさいに つかわれて います。くわしくは「棒引き仮名遣い」を およみ ください。

ローマ字と ふりがなの 相互変換
Rômazi to hurigana no sôgo henkan

ローマ字と ふりがなは その かきかたを すこし あらためるだけで つづりが 対応 する ように なり,文字列の 機械的な おきかえだけで おたがいに 変換 できる ように なります。

まず,現代仮名遣いを 棒引き仮名遣いに あらためて 助詞の「は」「へ」「を」を 発音どおりに「わ」「え」「お」と かく ように します。それから,「もっと 日本語らしい かきかた」で 説明 して いる ように,ローマ字で 四つ仮名の かきかたを あらためます。

あらため案
ohayô「おはよ(おはよう)
konbanwa「こんばん(こんばんは)
hanadi「はなぢ」(鼻血)
mikaduki「みかづき」(三日月)

このように あらためた ローマ字と ふりがなは 日本と 日本語に よい 影響を あたえます。コンピューター システムが 合理化 されるので,あらゆる 産業の 生産性が あがります。ローマ字と ふりがなの よみかきが やさしく なるので,世の中の 民主化が すすみます。日本語が おぼえやすく つかいやすく なるので,日本語 そのものが 発展 します。

ローマ字と ローマ字入力
Rômazi to Rômazi-nyûryoku

ローマ字入力の しくみ
Rômazi-nyûryoku no sikumi

ローマ字入力は ローマ字を 日本語入力システムに 応用 した ものです。ただし,その 設計が まずく,ただしい ローマ字を 入力 して それを そのまま 漢字かな表記に 変換 する 自然な しくみでは ありません。独自仕様の ローマ字で ふりがなを 入力 して,その ふりがなを 漢字かな表記に 変換 すると いう まわりくどい しくみです。たとえば,ローマ字の hikôki を 入力 して「飛行機」に 変換 するのでは なく,hi, ko, u, ki「ひ」「こ」「う」「き」を 入力 して,それを「飛行機」に 変換 します。

ローマ字ローマ字入力
こんにちは 【コンニチワ】konnitiwa konnnitiha「こんにちは」
王様【オーサマ】ôsama ousama「おうさま」
オオカミ【オーカミ】ôkami ookami「おおかみ」
空気【クーキ】kûki kuuki「くうき」
ケーキ【ケーキ】kêki ke-ki「けーき」

こういう わけで,ローマ字の かきかたと ローマ字入力の キーの おしかたは にて いますが,おなじでは ありません。

「ワープロ式」
"Wâpurosiki"

ローマ字入力が つかわれる ように なってから,ローマ字と ローマ字入力を 混同 して まちがった ローマ字を かく 人が ふえました。この まちがいは ワープロが 普及 してから 爆発的に ふえたので「ワープロ式」と よばれて います。

okaasan(お母さん)
otousan(お父さん)
ohayou(おはよう)
konbanha(こんばんは)
ookii(大きい)
Yuduru結弦
onnna(女)
bo-ru(ボール)

小学校でも ローマ字と ローマ字入力を 同時に おしえる ように なり,これが かえって ローマ字の 理解を さまたげて います。

この 問題の 原因は ローマ字入力の 設計ミスを あらためなかった ことです。産業界・教育界の 責任は きわめて おもいと いわなければ なりません。


中国には ピンインと いう ローマ字が あり,ピンイン入力も あります。これは 日本の ローマ字入力と しくみが ちがい,ただしい ローマ字を 入力 して,それを そのまま 漢字表記に 変換 する 自然な 設計です。ピンインの かきかたと ピンイン入力の キーの おしかたは おなじで,日本の ような まちがいは おこりません。

NIHAO你好 〔ピンイン入力〕

ローマ字と ローマ字入力を 対応 させる
Rômazi to Rômazi-nyûryoku o taiô saseru

ローマ字(表記)と ローマ字入力の くいちがいは 「ワープロ式」を はびこらせ 小学生を なやませて います。そこで,ローマ字と ローマ字入力を きちんと 対応 させる べきだと いう かんがえが でて きます。これは 自然な かんがえです。

ところが,その ほとんどは ローマ字の かきかたを あらためて ローマ字入力に あわせようと いう 意見です。これは とんでもない まちがいです。ローマ字と ローマ字入力を 対応 させる ために やらなければ ならないのは,何十年も 前から くりかえし いわれて きた ように,ローマ字入力の 設計ミスを なおす ことです。

この サイトは その やりかたも 提案 して います。「ふたつの ローマ字を 統一 する」を およみ ください。

音声の かきかた
ONSEI NO KAKIKATA

直音
Tyokuon

直音は ふつうの 音です。直音は「ローマ字表」の とおりに かきます。

aiueo
kakikukeko
sasisuseso
tatituteto
naninuneno
hahihuheho
mamimumemo
yayuyo
rarirurero
wao
gagigugego
zazizuzezo
dazizudedo
babibubebo
papipupepo

【ヂ】【ヅ】【ヲ】に 気を つけて ください。

e(絵)
yama(山)
sakura(桜)
hanazi(鼻血)
mikazuki(三日月)

拗音
Yôon

拗音(ようおん)は【キャ】【キュ】【キョ】などの 音です。「ねじれる 音」とも いいます。拗音も「ローマ字表」の とおりに かきます。

キャキュキョ
kyakyukyo
シャシュショ
syasyusyo
チャチュチョ
tyatyutyo
ニャニュニョ
nyanyunyo
ヒャヒュヒョ
hyahyuhyo
ミャミュミョ
myamyumyo
リャリュリョ
ryaryuryo
ギャギュギョ
gyagyugyo
ジャジュジョ
zyazyuzyo
ヂャヂュヂョ
zyazyuzyo
ビャビュビョ
byabyubyo
ピャピュピョ
pyapyupyo

拗音は かな文字の 2字で 1音を あらわしますが,1字ごとで なく 1音ごとに くぎって かんがえます。「お茶」「お」「ち」「ゃ」と くぎって otiya に しないで,【オ】【チャ】と くぎって otya に します。

otya(お茶) kyaku(客)
syakai(社会) syuzyutu(手術)

【ヂャ】【ヂュ】【ヂョ】に 気を つけて ください。

warezyawan(割れ茶碗)
maruzyôtin(丸提灯)

外来語 などで よく つかわれる【シェ】【ティ】【ファ】などの 音は「ローマ字表」に かかれて いません。これらは 特殊音の ところで 説明 します。

撥音(ん)
Hatuon

撥音の かきかた
Hatuon no kakikata

撥音(はつおん)とは【ン】の 音です。「はねる 音」とも いいます。撥音は n と かきます。ローマ字入力に なれて いる 人は うっかり nn と かいて しまう ことが ありますから 気を つけて ください。

panda(パンダ)
kirin(キリン)
tenki(天気)
kanban(看板)

撥音の つぎに 母音 または ヤ行音が ある ときは n の うしろに きる印(')を かきます。これは「恋愛」「深夜」【レナイ】【シニャ】と よまれるのを ふせぐ ためです。

ren'ai(恋愛)
den'en(田園)
sin'ya(深夜)
hon'yaku(翻訳)


撥音の つぎに ナ行音が あると nn の 形が できます。これは 促音(っ)の かきかたと おなじですが,特別あつかいで 促音と みなしません。それを わかりやすく する ため,この サイトは n の うしろに きる印(')を かいても いい ことに します。「新年」【シッネン】と よまれるのを ふせぐ ためです。ただし,ふつうは そんな むりやりの よみかたを しないので,きる印(')は かかなくて かまいません。学校の テストでも きる印(')は かきません。

sinnen, sin'nen(新年)
onna, on'na(女)


「お料理の勉強」(昔の 教科書)

「そんな」「ぼんやり」の かきかたを よく みて ください。


kon'nichiwa

マライア キャリーが かいた「こんにちは」には きる印(')が はいって いました。


この サイトは【ヌァ】nwa と かく ことに して いるので,撥音の つぎに ワ行音が ある ときも n の うしろに きる印(')を かきます。「電話」【デヌァ】と よまれるのを ふせぐ ためです。ただし,ふつうは【ヌァ】を つかいませんから,きる印(')は かかなくて かまいません。学校の テストでも きる印(')は かきません。

denwa, den'wa(電話)
genwaku, gen'waku(幻惑)

ヘボン式の 撥音
Hebonsiki no hatuon

一般的な ヘボン式には b, m, p の 前に ある 撥音(ん)を m と かく きまりが あります。学校の「英語」で おしえる「英語式」パスポートの ローマ字駅名標の ローマ字は この きまりに したがって います。ただし,道路標識の ローマ字 などは 例外で,撥音を すべて n と かきます。(ヘボン式には きちんと した ルールが なく,こまかい 部分は 各分野が 勝手に ルールを きめて いるので,分野に よって かきかたが ちがいます。)

kamban(看板)
sampo(散歩)
Homma Shimpei本間新平
Shimbashi新橋

なぜ こんな きまりが あるのかと いうと,ヘボン式は 英語風の つづりかただからです。すこし くわしく いうと,【ン】と いう 発音の 認識には 日本語と 英語で ちがいが あり,ヘボン式は 英語の 認識に あわせて 設計 して あるからです。じつは,日本語の 撥音には いくつか 種類が あります。たとえば,「3台」「3枚」「3回」【ン】は すべて 発音が ちがい,発音記号で かけば ちがう 記号に なります。日本語では これらの ちがいに 意味が なく,日本語の はなし手は その ちがいを 意識 して いませんが,じっさいには ちがう 発音を して います。英語では これらの 一部で ちがいに 意味が あり,英語の はなし手は その ちがいを 意識 して つづりも かきわけて います。英語の pumpkin(カボチャ)を よく みると,p の 前に ある【ン】m に なって いるのが わかります。アメリカ人の ヘボンが ローマ字の かきかたに この m を とりいれたので,一般的な ヘボン式は こういう ルールに なって います。ヘボン式は 英語の はなし手が つかう ものですから,英語の 認識に あわせて ある わけですヘボン式は 英語の はなし手が 日本語の 発音を きいて 英語風の つづりで かきうつした ものです。日本人が 英語の 発音を きいて カタカナで かきうつした「ディス イズ ア ペン」式の カタカナ表記と おなじ ものです。したがって,発音記号の ように 正確な 発音を あらわす ものでは ありません。たとえば,日本語の【ハ】【ヒ】の 子音や「3台」と「3回」【ン】は 発音が ちがい,発音記号で かけば ちがう 記号に なりますが,ヘボン式は これらを かきわけません。


ただし,撥音を n, m で かきわける 表記法が すぐれて いると いう 意味では ないので,かんちがい しないで ください。日本語では【ン】の 発音の ちがいに 意味が ないので,それらを かきわける 必要が ありません。じっさい,ふりがなは これらを 区別 しないで すべて「ん」と かきますが,それで 不都合は ありません。撥音を n, m で かきわける 表記法は,英語の はなし手が みれば 自然ですが,日本語の はなし手が みれば 不自然で つかいにくい かきかたです。ローマ字は 日本語の 表記法で あって 発音記号では ないのですから,日本語の はなし手が 意識 して いない レベルの わずかな 発音の ちがいで つづりを かえては いけません。

日本語に とって n, m の かきわけは 必要が ないと いうより,むしろ 有害です。日本語を ヘボン式で かくと,ことばの つづりが 一定 しなかったり,ことばを ABC順に ならべる 順序が おかしく なったり するからです。たとえば,インターネットで「金」を 検索 しても「金メダル」が ヒット せず,「缶」を 検索 しても「缶ビール」が ヒット しないと いうのでは 不便でしょう。名簿で 野間さん野田さんより うしろに あるのに 本間さん本田さんより 前に あったら おかしいでしょう。百科事典で「ヒガンバナ」「彼岸」より 前に あったり,国語辞典で「疑問文」「疑問」より 前に あったり したら つかいにくいでしょう。これらは すべて n, m の かきわけから おこります。日本語を たいせつに する たちばから いえば,これは ヘボン式が もって いる 致命的な 欠点です。

kin(金)
kimmedaru(金メダル)
kan(缶)
kambīru(缶ビール)
Noda野田
Noma野間
Honda本田
Homma本間
higan(彼岸)
higambana(ヒガンバナ)
gimon(疑問)
gimombun(疑問文)

昔の 和英辞典は みだし語を ヘボン式で かいて いましたが,この 問題を さける ため,n, m の かきわけを しない ように 改造 した ヘボン式を つかって いました。


「新和英大辞典」(研究社)

ローマ字の かきかたを 説明 して いる 部分から 一部を ぬきだした ものです。撥音は すべて n に して います。


さらに,こまかい ことを いうと,b, m, p の 前の【ン】だから m に なると 単純に かんがえるのは あやまりです。英語で b, m, p の 前に ある【ン】は おおくの ばあい m と かかれますが,つねに そうとは かぎりません。唇を とじる【ン】m に なると いう 説明も よく みかけますが,かならず そうとも かぎりません。複合語の sunbeam, gunmetal, pinpoint の つづりを よく みて ください。接頭辞が つく 単語にも,input, unpack の ように,m に ならない ものが あります。地名にも,Canberra, Edinburgh, Istanbul などが ありますn【ン】が つぎの 音に 影響 されて m【ン】に かわるのは「同化」と よばれる 現象の 一種です。[nb][nm][np]は 発音 しにくいので,発音 しやすく する ため,自然に おこります。発音の 変化に あわせて つづりまで かわるか どうかは また 別の 条件で きまります。たとえば,import は つづりが かわって いますが,input は つづりが かわって いません。


tembin(和英語林集成)

「てんびん」tembin なのに「てんびん棒」tembimbō で,「てんびん」の つづりが ねじまげられて います「てんびん」tembin「棒」 なら,「てんびん棒」tembinbō と かく べきです。ところが,ヘボン式は そういう ルールに なって いません。「和英語林集成」は みだし語を ABC順に ならべて いますが,よく みると「てんびん棒」は ABC順に なって いません。これでは 辞書が つかいにくいでしょう。もし「てんびん」と いう ことばを しらない 外国人が tembimbō の 意味を しらべようと したら,tembimbō を みつけだせないかも しれません。はなしが 脱線 しますが,「てんびん」「天秤」と かいて いるのに「てんびん棒」「担棒」と かいて います。ヘボンが「和英語林集成」を つくった とき,日本人の 協力者が いました。昔の 日本人が 漢字を つかう ときの 感覚が あらわれて いる ようで,興味ぶかい ところです。

日本語を しらない 外国人は b, m, p の 前の 撥音を,複合語で あろうが なかろうが,みさかいなく m と かいて しまうかも しれません。けれども,それは やりすぎです。そんな かきかたを したら 日本語が ねじまげられて しまいます。この 欠点は ヘボン式が 日本語を かくのに 適さない 理由に なって います。「「あんパン」は ampanか?」でも この 問題を くわしく 説明 して います。


ヘボン式は 撥音の うしろに いれる くぎりの 記号を つなぎ(-)に するのが ふつうです。しかし,この 記号を きる印(')に する かきかたも あります。

ren-ai, ren'ai(恋愛)
jin-in, jin'in(人員)
hon-ya, hon'ya(本屋)
gen-yu, gen'yu(原油)

ほんらい つなぎ(-)は ふたつの ことばを つなぐ 記号です。発音を きる ときは きる印(')を つかう べきです。しかし,日ごろ よく 目に する 道路標識の ローマ字駅名標の ローマ字つなぎ(-)を つかって いるので,つなぎ(-)が 一般的に なって います。「和英語林集成」も つなぎ(-)を つかって いましたヘボンは 中国語を しって いたので,ひとつの 漢字は ひとつの ことばだと いう 感覚を もって いたかも しれません。くぎりの 記号は 漢字と 漢字の あいだに はいる ケースが おおいので,ふたつの ことばを つなぐ 記号が えらばれたとも かんがえられます。

学校の「国語」で どちらに して いるかは わかりません。テストの ときは 教科書や 教師の かきかたに あわせて ください。


「毎日の言葉」 (昔の 教科書)

ここでは「乱用」ran'yō と かいて います。


「わたくしの少年時代」 (昔の 教科書)

ここでは「本屋」「店員」hon'ya, ten'in と かいて います。

記号を つかわない かきかた
kigô o tukawanai kakikata

はじめて よむ 人は この 節を よみとばしても かまいません。

撥音(ん)の つぎに 母音や ヤ行音が ある ときは n の うしろに きる印(')または つなぎ(-)を いれなければ なりません。しかし,パスポート・クレジット カードの 名前の ように 記号が つかえない ものや ファイル名・フォルダ名の ように 記号を いれたく ない ものも あります。記号が あると キーボードで 入力 する ときの スピードが おちますし,テキスト エディターで 単語選択や 単語検索が しにくく なり,とても 不便です。そうかと いって 記号を 省略 すると,「銭」「善意」が おなじ つづりに なって しまい,日本語を ただしく 記述 できません。記号を つかう いまの かきかたには 弱点が あると いえます「何(なに)」【ナン】「物・者(もの)」【モン】と 発音 する ばあいが ある ことから わかる ように,撥音の 表記に n を もちいる 設計は 見当はずれでは ありません。撥音の n と ナ行音の n を うまく 区別 できる かきかたが もとめられて います。

ren'ai(恋愛) sin'ya(深夜)
zeni(銭) zen'i(善意)
kinyû(記入) kin'yû(金融)

特殊な ルールに しばられる ファイル名・フォルダ名 などは ともかく,パスポート・クレジット カードの 名前 などは 名前を ねじまげた つづりで かかせて いるのですから 問題です。本当は 記号や 特殊な 文字を つかえる ように する べきです。

しかし,いまは そう なって いないので,これに 手を うつ やりかたを かんがえます。現行の ローマ字と 矛盾 する ルールを つくると 世の中が 混乱 しますから,それは しないで,記号が つかえない ばあいに 対応 できる かきかたを つくって つけたします。すこし よみにくく なるのは しかたが ないでしょう。

すぐに おもいつく 方法が いくつか あります。


ひとつめの 方法は ñ です。新日本式ローマ字は これを 採用 して います。ñ は みた目が すっきり して いて よみやすい 利点が ある ものの,特殊な 文字を つかう やりかたでは はじめに あげた 問題を 解決 できません。(これを 通常の かきかたに するのは いいかも しれません。)

reñai(恋愛) siñya(深夜)〔あらため案1〕

ふたつめの 方法は nn です。ローマ字入力の ローマ字は これを 採用 して います。しかし,この やりかたには「禁煙」「近年」が おなじ つづりに なって しまう 欠点が あります。ローマ字入力の ローマ字は「近年」kinnnen に する ことで この 問題を きりぬけて いますが,それでは ローマ字の 大改造に なって しまいます。

rennai(恋愛) sinnya(深夜)〔あらため案2〕
kinnen(禁煙) kinnen(近年)〔あらため案2〕

みっつめの 方法は xn です。ローマ字入力の ローマ字で これを 採用 して いる ものが あります。しかし,この やりかたには「婚姻」x後置式「公認」が おなじ つづりに なって しまう 欠点が あります。特殊な 文字や 記号が つかえない ときに つかう x後置式と 一緒に つかえないのでは 実用性に かけます。

rexnai(恋愛) sixnya(深夜)〔あらため案3〕
koxnin(婚姻) zyuxni(順位)〔あらため案3〕
koxnin(公認) zyuxni(十二)〔x後置式

よっつめの 方法は nx です。記号(')を x で おきかえるだけと いう もっとも すなおな かんがえかたです。ほかの 方法の ような 欠点が ないので,この サイトは これを おすすめ します。ファイル名・フォルダ名メールアドレス・URLプログラムの 識別子 などで 記号を 省略 したく ない ときに つかうと いいでしょう。

renxai(恋愛) sinxya(深夜)〔あらため案4〕
kinxen(禁煙) kinnen(近年)〔あらため案4〕

促音(っ)
Sokuon

促音の かきかた
Sokuon no kakikata

促音(そくおん)とは【ッ】の 音です。「つまる 音」とも いいます。促音は つぎの 子音字を かさねて かきます。たとえば,つぎの 音が【キ】なら ki の 子音字 k を かき,つぎの 音が【サ】なら sa の 子音字 s を かきます。促音の つぎに 拗音が くる ときは kya, sya, tya などの 1文字めを かきます。たとえば,つぎの 音が【ショ】なら syo の 1文字めの s を かきます。

ふつう,ひとつの ことばの 中で 促音の つぎに ナ行音・撥音・母音が くる ことは ありませんから,このような ことばの かきかたは きまって いません。

一般的な 和語・漢語は 子音字を かさねる ところが kk, ss, tt, pp の いずれかの 形に なります。感動詞・外来語 などは hh, dd, gg などの 形に なる ことも あります。

zassi(雑誌)
kitte(切手)
happa(葉っぱ)
tokkyo(特許)
issyo(一緒)
mattya(抹茶)
ehhen(えっへん)
yahhô(ヤッホー)
beddo(ベッド)
baggu(バッグ)
rozzi(ロッジ)


「あっ」「ほっ」の ように,促音で おわる ことばには つぎの 音が ありません。この ばあいは しかたが ないので 促音を つまる印(')で あらわします。これは 訓令式でも ヘボン式でも おなじです。この サイトは つまる印(')の かわりに q を かいても いい ことに しますつまる印(')は きる印(')と おなじ 記号です。はたらきの ちがいで よびわけて います。「補助動詞」を かく とき などに つかう ぬけ字の印(')も おなじ 記号です。なお,促音は すべて つまる印(')で あらわせば いいと かんがえる 人が いるかも しれません。しかし,促音の 前に 撥音(ん)が あると それでは うまく いきません。例:zen'in(全員? ゼンッイン?)。ふりがなの 促音は「っ」で あらわします。その あとの 音声に かかわらず つねに おなじ 文字の「つ」を つかうので すこし おかしな かんじも しますが,独立 した 音声で ある 促音を 文字で あらわすのは 自然です。記号が つかえない 状況も ある ことを かんがえると,ローマ字の 促音も できるだけ 記号を つかわず 文字で あらわす ほうが いいでしょう。

a'(あっ)
ho' to suru(ほっとする)
kora'(こらっ)
uwa'(うわっ)
eq(えっ)
Kazi daq!(火事だっ!)

「はだかの大様」
「はだかの王様」(ローマ字文庫)

「捕鯨船の話」
「捕鯨船の話」(昔の 教科書)

「わたくしの三人の友達」
「わたくしの三人の友達」(昔の 教科書)


ふつう,mm, yy, ww の 形は できません。しかし,この サイトは「甘い」を むりやりの 発音で【アッマイ】と いいたい とき,その 発音を ammai と かく ことに します。

ammaiあっまい
huwwahuwaふっわふわ


nn の 形は 特別で,これは 促音では ありません。「女」onna と かけるのは このためです。しかし,この ルールには すこし 問題が あります。「イヌ」を むりやりの 発音で【イッヌ】と いいたい ときに その 発音を innu と かけません。そこで,この サイトは 促音の つぎに ナ行音・撥音・母音が ある とき,促音を q と かく ことを おすすめ します。こう すると,【イッヌ】だけで なく【ウッウ】【エッン】なども かける ように なります。

iqnuイッヌ
puqnyupunyuぷっにゅぷにゅ
uquウッウ
gaqôガッオー

ヘボン式の 促音
Hebonsiki no sokuon

ヘボン式は 子音字に f, j を つかいますから,促音(っ)を かく ときに ff, jj の 形が できる ことも あります。

促音の つぎに sh, ts が ある ときは,その 1文字めを かきます。促音の つぎに ch が ある ときは 特別で,c で なく t を かきます。

kitte(切手)
sutaffu(スタッフ)
bajji(バッジ)
zasshi(雑誌)
itchi(一致)
mittsu(三つ)

c で なく t に する 理由は,ヘボン式が 英語風の つづりかただからです。英単語の match, switch, stretch などを かんがえて みれば,英語風の つづりに する ため tch に して いる ことが わかるでしょう英語で なければ cch と いう つづりも ありますが,発音は ちがいます。たとえば イタリア語で,ザッケローニ監督は Zaccheroni,ピノッキオは Pinocchio です。


「コペル君の手紙」(昔の 教科書)

ここでは「実地」jitchi と かいて います。tch の 形に なる 例です。


ヘボン式【イッヌ】の 問題が【アッマイ】でも おこります。この サイトが すすめる 解決策は q です。

ammaiあんまい)〔ヘボン式
aqmaiあっまい)〔ヘボン式

「三角形」
"Sankakkei"

「楽器」の 発音は【ガクキ】で なく【ガッキ】です。それでは,「三角形」は どうでしょうか?【サンカクケイ】【サンカッケイ】か,まよって しまうかも しれませんが,それは かき手の 感覚で きめて かまいません国語辞典で「三角形」を しらべると「さんかく・けい」と かいて あるので,ただしくは【サンカクケイ】かと かんがえて しまいそうです。しかし,この 説明は 形態素(意味の 最小単位)を しめす もので,よみかたを しめして いるのでは ありません。

sankakukei, sankakkei(三角形)
ryokakuki, ryokakki(旅客機)
sentakuki, sentakki(洗濯機)
suizokukan, suizokkan(水族館)

長音(ー)
Tyôon

長音の かきかた
Tyôon no kakikata

長音(ちょうおん)は よみかたに【ー】が つく 音です。「のばす 音」「ひく 音」とも いいます。長音は のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせます。

okâsan(お母さん)
otôsan(お父さん)
onêsan(お姉さん)
onîsan(お兄さん)
Â, sore wa nê...
(ああ,それは ねえ……)
Ê, mâ sô desu.
(ええ,まあ そうです。)
 ieba kô iu.
(ああ 言えば こう 言う。)


「小僧の神様」(昔の 教科書)

「そう」「まあ」「小僧」「奇遇」「ご馳走」は 長音を ふくむ ことばです。

のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせると いう 説明が よく わからない 人は よみかたを かく 練習から はじめると いいでしょう。まず,「お母さん」「お父さん」【オカーサン】【オトーサン】と かいて みます。それから,【ー】の 前の 音の 母音字に 山形(^)を のせます。

お母さん
【オカーサン】
【カ】の 母音字 a に ^ を のせる
okâsan
お父さん
【オトーサン】
【ト】の 母音字 o に ^ を のせる
otôsan

ローマ字は 日本語の 音声を かく ものですから,ローマ字を かく ときは よみかたを おもいうかべる ように して ください。ふりがなを おもいうかべると,それに ひきずられて まちがいやすく なります。

お母さん
「おかあさん」
okaasan
お父さん
「おとうさん」
otousan

何が 長音か?
Nani ga tyôon ka?

「奇異」と 鍵の「キー」の 発音は【キイ】【キー】で あきらかに ちがいます。「石井」【シイ】「影絵」【ゲエ】も 長音では ありません。【イシ・イ】【カゲ・エ】と くぎって かんがえると よく わかります。

kii(奇異)
(キー)
Isii石井
kagee(影絵)

では,「さあ,行こう!」「さあ」「こう」は 長音でしょうか。「各(おのおの)」「とけい」【オノーノ】【トケー】に ちかい 発音を して いますが,これらは 長音でしょうか。「例」【レー】と よむ 人が「礼」【レイ】と いうかも しれません。発音には 個人差が あり,地域・年代・状況に よる ちがいも ありそうです。

これが 長音の ややこしい ところで,そもそも 何が 長音かが はっきり しません。しかし,ルールは きっちり きめなければ ルールに なりませんから,ローマ字の 世界で 長音と みなす ものが きめられて います。

カタカナ表記の オノマトペ
Katakana-hyôki no onomatope

漢字仮名交じり文では オノマトペの 擬音語・擬声語を カタカナ表記に します。このとき,長音は「ー」を つかって かくので,みた目で わかります。

(ピー) syû(シュー)
zâzâ(ザーザー) mômô(モーモー)

カタカナ表記の 外来語
Katakana-hyôki no gairaigo

漢字仮名交じり文では 外来語や 外国の 固有名詞を カタカナ表記に します。このとき,長音は「ー」を つかって かく ことが おおいので,ほぼ みた目で わかります。

kôhî(コーヒー) pûru(プール)
kânêsyon(カーネーション)

ひねった つづりの 外来語も あるので 気を つけて ください。おどりの「バレエ」や あそびの「ボウリング」などです。これらは【バレー】【ボーリング】と 発音 しますから,「レエ」「ボウ」の 部分は「ー」が なくても 長音です。

昔は「ー」を つかわないで 外来語を かく ことが ありました。いまなら「スター」「スキー」「スープ」「スケート」「ストーブ」と かく ところを 昔は「スタア」「スキイ」「スウプ」「スケエト」「ストオブ」と かいたり しました。いまでも 絵本で カタカナ表記の ことばに ひらがなの ふりがなを つける とき など,この かきかたを つかう ことが あります。これらも「ー」は ありませんが 長音です。

barê(バレエ) bôringu(ボウリング)
sutâ(スタア) syô(ショウ)

和語
Wago

和語で「ア段+あ」「イ段+い」「ウ段+う」「エ段+え」「オ段+お」「オ段+う」に なって いる ものは 長音です。たとえば,「お母さん」「かあ」「お父さん」「とう」が 長音です。

â(ああ) (さあ) okâsan(お母さん)
tîsai(小さい) nîzuma(新妻) onîsan(お兄さん)
ê(ええ) (へえ) onêsan(お姉さん)
kôri(氷) ôkami(オオカミ) tôi(遠い)
ikô(行こう)
ohayô(おはよう) otôsan(お父さん)


和語の 複合語で「ア段+あ」「イ段+い」「ウ段+う」「エ段+え」「オ段+お」「オ段+う」に なる ものに 気を つけて ください。これらは 長音では ありません。たとえば,「青鬼(あおおに)」「おお」は 長音では ありません。「あお・おに」と わけて かんがえると わかりやすいでしょう発音に かんしては,この ちがいを 気に しなくても かまいません。じっさい,「青鬼」【アオーニ】と 発音 しても つうじるでしょう。「各(おのおの)」【オノーノ】と いっても わかります。「黄色」【キーロ】でも 問題に なりませんし,【マツーラ】と よべば 松浦さんが ふりかえります。

karaage(唐揚げ)
sunaarasi(砂嵐)
yakiimo(焼きいも)
kiiro(黄色)
mizuumi(湖)
yasuuri(安売り)
tumeeri(詰め襟)
kagee(影絵)
aooni(青鬼)
kuroobi(黒帯)
kousi(子牛)
youti(夜討ち)

漢語の「ウ段+う」
Kango no "u-dan + u"

漢字の 音よみが「ウ段+う」に なる ものは 長音です。たとえば,「空気」「くう」「数字」「すう」が 長音です。

kûki(空気)
sûzi(数字)
hûrin(風鈴)
gyûnyû(牛乳)

漢語の「オ段+う」
Kango no "o-dan + u"

漢字の 音よみが「オ段+う」に なる ものは 長音です。たとえば,「工事」「こう」「農家」「のう」が 長音です【コウ】【ノウ】などが ただしい 発音で【コー】【ノー】などは だらしない 発音だと おもって いる 人が いますが,それは まちがいです。

kôzi(工事)
nôka(農家)
hôsô(放送)
syôbô(消防)

漢語の「エ段+い」
Kango no "e-dan + i"

漢字の 音よみが「エ段+い」に なる ものも 長音と かんがえて よさそうです。しかし,これは 長音と かんがえない ルールに なって います。たとえば,「映画」「えい」【エー】「経済」「けい」【ケー】に ちかい 発音を して いる はずですが,これらは ê, kê と かきません「えい」「けい」などの ただしい 発音が きまって いる わけでは ありませんが,共通語では ほぼ 完全に【エー】【ケー】です。アナウンサー なども そのように おしえられる そうです。(【エイ】【ケイ】と おしえて いると いう 情報も あります。)いずれに しても,どちらかが ただしいと いう 意味では ないので 気を つけて ください。【エイ】【ケイ】が ただしい 発音だと いう 意識を もって いる 人は いますが,【エー】【ケー】が だらしない 発音だと いうのは まちがいです。

eiga(映画)
keizai(経済)
reisei(冷静)
seimei(生命)


これは 和語・外来語の ばあいと かんがえかたが ちがいます。和語・外来語【エー】の 発音を して いたら 長音ですが,漢語は【エー】の 発音を して いても 長音では ありません。

(へえ) onêsan(お姉さん) 〔和語〕
gêmu(ゲーム) kêki(ケーキ) 〔外来語
eiga(映画) keiki(景気) 〔漢語〕

「映画」の 発音は【エイガ】でも【エーガ】でも それらの 中間でも かまいませんが,「映画」の ふりがなは「えいが」に きまって います。それと おなじで,「映画」の ローマ字は じっさいの 発音に かかわらず eiga に きまって います。


さらに ややこしいのですが,和語の 複合語で「エ段+い」に なる ものが あり,これは かならず【エイ】と 発音 します。したがって,ローマ字の ei には,和語の 複合語で かならず【エイ】と よむ ものと 漢語で【エイ】だったり【エー】だったり する ものが あります。

eiri(絵入り) keiro(毛色) teitai(手痛い) 〔和語〕
eiri(営利) keiro(経路) teitai(停滞) 〔漢語〕


漢語の「エ段+い」を 長音と かんがえない 理由は,本当の 発音は【エイ】だと いう 気もちです。じっさいは【エー】と 発音 して いる 人も 本当は【エイ】が ただしい 発音だと いう 意識を もって いる ことが あり,この 意識に もとづいた ルールに して あるからですもともとの 発音は【エイ】に ちかかったのですが,江戸時代に 発音が かわって【エー】に なりました。「となりの 家に かこいが できたってねえ。」「へえ。」と いう 小話が できた 時代には 「へえ」「塀(へい)」の 発音が おなじ【ヘー】だった わけです。しかし,手拍子に あわせて「映画」を ゆっくり 発音 して くださいと いわれたら,【エ,イ,ガ】と いう 人が おおいでしょう。現代仮名遣いでも「映画」の ふりがなは じっさいの 発音に かかわらず「えいが」と かく ことに なって います。また,【エイガ】と 発音 しても 意味が わかりますから,完全に【エー】で あるとも いえません。しかし,本当の 発音は【エイ】だと いう 意識は うすれつつ ある ようです。「携帯電話」「ケータイ」に なりました。「映画」「えいが」eiga と かく 現行の ルールは 現代人の 感覚に あわなく なって きたとも いえます。おまけの はなしですが,ときどき 外来語「メール」「ゲーム」「メイル」「ゲイム」と かいて あるのを みかけます。漢語の【エイ】【エー】に かわって きたのと 反対で,外来語【エー】【エイ】に なる 現象です。これは 英語を 崇拝 する 一部の 人が 意識的に やって いる ことだと おもわれますから,一般に ひろまって いくかは わかりません。

けれども,ふつう「絵入り」「営利」は ちがう 発音で よまれるのですから,これらを おなじ つづりの eiri と かく ルールは 不合理です。よむ ときも 不便です。そこで,「絵入り」e'iri と かく アイデアも ありますが,それでは かく ときに 不便でしょう。日本語を 合理的に 日本語らしく かく ローマ字の 目的から いっても,これは いまの ローマ字が もって いる 弱点で あると いえます。「もっと 日本語らしい かきかた」も およみ ください。

そのほかの 長音
Sono hoka no tyôon

長音は ほかにも あります。基本は 長音の 発音を して いたら 長音と かんがえて いいのですが,すこし 例外が あります。

まず,文法から 長音と かんがえない ものが あります。

これらは 長音と かんがえません。ウ音便は 長音と かんがえます。

kuu(食う) suu(吸う)
yuu(結う) kuruu(狂う)
kiite(聞いて) hiite(引いて) hibiite(響いて)
ii(いい) kawaii(かわいい) ôkii(大きい)
utukusii(美しい) kodomorasii(こどもらしい)
ohayô(おはよう) arigatô(ありがとう)

そして,語源から 長音と かんがえない ものが あります。たとえば,「用いる」の 語源は「持ち率(い)る」ですから「ちい」を 長音と かんがえません。「許婚」の 語源は「言い名付く」の 連用形ですから「いい」を 長音と かんがえません。「炎」の 語源は「火(ほ)の 穂(ほ)」ですから「のお」を 長音と かんがえません。

ただし,語源を どれだけ 重視 するかは かき手の 判断に よります。語源を 意識 しなく なって いる ことばは たくさん あります。語源を しらない ことばも おおいでしょう。名詞は じっさいの 発音を 重視 する ほうが いいと いう かんがえも あり,それに したがう ばあいは 長音に します。したがって,かき手に よって つづりが かわる ことも ありますが,それで かまいません。

motiiru(用いる)
iinazuke(許婚)
honoo, honô(炎)

まよいやすい ことばを 下に まとめて おきます。

â([副]ああ,[感]ああ) akanbê(あかんべえ)
bâsan(婆さん) ([副]どう)
ê([感]ええ) ([感]へえ)
hiideru, hîderu(秀でる)
hîki(贔屓)
hîragi(ヒイラギ)
honoo, honô(炎)
(頬,ホオ:朴,[感]ほう)
huruu(振るう,奮う,篩う)
ii([形]いい) î(飯)
îe(いいえ) ikidôru(憤る)
imôto(妹) kâsan(母さん)
kawaisô(かわいそう)
([副]こう)
kôgôsii(神々しい)
kômori(コウモリ)
kômuru(被る)
kônotori(コウノトリ)
kôri(氷,郡) kôrogi(コオロギ)
kôru(凍る) kôzi(麹)
kurôto(玄人) kuruu(狂う)
kuu(食う) ([感]まあ)
mîra(ミイラ) ([副]もう)
môderu(詣でる) môkeru(儲ける)
moyôsu(催す) mukô(向こう)
([終助]なあ,[感]なあ)
nêsan(姉さん)
nîsan(兄さん) nîzuma(新妻) nonbê(飲兵衛)
nuguu(拭う)
nuu(縫う) ohayô(おはよう) ô([感]おお)
ôgi(扇)
ôi(多い,覆い,[感]おーい) ôkami(オオカミ)
ôkii(大きい) ômu(オウム)
ômune(概) ôse(仰せ,逢瀬)
ôu(覆う) ôyake(公)
ôyoso(凡) otiiru(陥る) otôto(弟)
([感]さあ) sayônara(さようなら) (シイ:椎)
sîka(詩歌) siiru(強いる)
sîtageru(虐げる)
sîtake(シイタケ)
sirôto(素人) ([副]そう)
sô da([助動]そうだ)
sukuu(救う,掬う,巣食う)
sumô(相撲) suu(吸う) tamasî(魂)
tîsai(小さい)
todokôru(滞る) (十)
tôge(峠) tôi(遠い)
tôri(通り) tôru(通る)
tôsan(父さん)
ureeru(愁える,憂える)
urûdosi(閏年) yazirobê(やじろべえ)
yô da([助動]ようだ)
yosoou, yosôu(装う)
yuu(結う) zîsan(爺さん)

ヘボン式の 長音
Hebonsiki no tyôon

ヘボン式の 長音符号は マクロン(¯)に するのが 一般的です。ヘボン式の 変種で 長音符号を つける ものは 大抵 マクロン(¯)に して います。Wikipedia の 英語版で つかわれて いる ヘボン式も 長音符号は マクロン(¯)です。学校の「国語」で おしえる ヘボン式も 長音符号を マクロン(¯)に する ことが ある ようです。

しかし,「ローマ字のつづり方」を すなおに 解釈 すれば,長音符号を マクロン(¯)に するのは ルール違反です。


ヘボン式は 長音符号を かかないと おもって いる 人が いるかも しれません。しかし,それは まちがいです。ヘボン式は 長音符号を かきます。じつは,一般に ヘボン式と よばれて いる かきかたは もともとの ヘボン式から 記号を とりのぞいた ものです。「英語」の 教科書や パスポートで つかわれて いる かきかたが それです。英語教育に かかわる 業界や パスポートを あつかう 業界 などが その かきかたを いいかげんに ヘボン式と よんで いる せいで,世の中に かんちがいが ひろまって います。


もともとの ヘボン式

これは ヘボンが つくった「和英語林集成」と いう 辞典です。ここで つかわれた ローマ字が もともとの ヘボン式です。学校の「国語」では 訓令式と この ヘボン式を おしえます。(長音符号の 形は ちがうかも しれません。)

この サイトは 記号を はぶく ヘボン式を もともとの ヘボン式と 区別 して います。くわしくは「英語式」を およみ ください。

小文字の i に ^ を のせた 文字?
Komozi no i ni ^ o noseta mozi?


iî

長音は のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせる と 説明 しましたが,こまかい ことを いうと,小文字の i山形(^)を のせた 文字は ありません。小文字の i山形(^)を のせると i の 点が なく なります。手がきの ときも 点は かきません。ヘボン式マクロン(¯)を のせる ときも おなじです。


有島武郎「小さき者へ」(ローマ字短編小説集)

tîsaiî を よく みて ください。

じっさいには,点を つけて いる 本も あります。学校の テストでは 教科書や 教師の かきかたに あわせて ください。


「とりかえっこ」(ローマ字絵物語)

ここでは 小文字の i^ を のせて いますが,印刷に すこし 苦労 して いる ようです。

î を ii と かく?
î o ii to kaku?

iî は 形が にすぎて いて よみにくく,特殊な 文字が 機械に 入力 しにくい 問題も あるため,î を つかわないで かわりに ii と かく ことが よく あります機械式の タイプライターで i^ を おなじ 位置に 印字 して むりやり î を つくって いた 時代には,わずらわしい 操作が きらわれたでしょう。i^ の 相性が わるく,うまく かさならない ことも あります。î山形(^)を のせる ときは i の 点が きえるので,のばす 音は 母音字の 上に 山形(^)を のせると いう 説明どおりに ならず,こどもが 混乱 するかも しれません。これらの 理由から ii に する ことが おおく なったと かんがえられます。


「アルプスの山の娘」(昔の 教科書)

oziisan(おじいさん)siitu(シーツ)を よく みて ください。

onîsan, oniisan(お兄さん)
tîsai, tiisai(小さい)
bîru, biiru(ビール)
sukî, sukii(スキー)

「東京」の 発音は【トーキョー】だから ヘボン式Tōkyō「英語式」Tokyo です。それなら,「新潟」の 発音は【ニーガタ】だから ヘボン式Nīgata「英語式」Nigata かと いうと,ちがいます。「新潟」ヘボン式Niigata が おおく「英語式」は かならず Niigata です。


新潟の ローマ字


この かきかたに すると【イイ】【イー】の ちがいを 区別 できません。しかし,これらの 発音は よく にて いて,その ちがいで 区別 する ことばが すくないので,この かきかたでも 実用の レベルで 問題は おこりません。

kii(奇異) tiiku(知育)
(キー) tîku(チーク)

この サイトは,できるだけ 正確な 発音を しめせる かきかたを すすめる 意味から,各方式の かきかたを 説明 する ときは 基本的に î を つかい,「英語式」だけ ii に して います。けれども じっさいは,訓令式ヘボン式でも ii の ほうが ふつうです。学校の テストでは 教科書や 教師の かきかたに あわせて ください。

odîsan(お爺さん)〔日本式
ozîsan(お爺さん)〔訓令式
ojīsan(お爺さん)〔ヘボン式
ojiisan(お爺さん)〔「英語式」


îii に する かきかたには 表記の ゆれが おこる 問題が あります。正確な 発音を しめせない ことも ばあいに よっては 問題に なるでしょう。これは できれば 解消 したい 弱点です。

そこで,î の かわりに ï に する かきかたを 提案 します。î が きらわれる 一番の 理由は iî の 形が にすぎて いて よみにくい ことです。(機械に 入力 しにくい ことも 理由ですが,これは 機械の 欠陥で,テクノロジーで 解決 する べきです。)îï に すれば,形の ちがいが すこし はっきり して,よみやすく なるでしょう。

kii(奇異) tiiku(知育)
(キー) tïku(チーク)〔あらため案〕
ki(木) tiku(地区)

大文字なら 母音字を かさねて かく?
Ômozi nara boinzi o kasanete kaku?

「ローマ字のつづり方」は 長音の 母音字が 大文字なら 母音字を ならべても よいと して います(そえがきの 第4項)。

Ôsaka, Oosaka大阪
Ôita, Ooita大分
Ôatari da!  Ooatari da!
(大当たりだ!)


「電報」(昔の 教科書)

ここでは「17時」ZYUUSITIZI と かいて います。



「人魚姫」

Ôzisama, ÂOozisama, Aa と かいて あります。

この きまりが できた 理由は いくつか ある ようです。その ひとつは タイプライターを つかって いた ことです。タイプライターには 長音符号つき文字û,ô など)に 対応 する キーが ありませんから,ローマ字文を かく ときは 山形(^)と 母音字を あわせて 長音符号つき文字を つくって いました。たとえば,a^ を おなじ 位置に 印字 して â を つくって いた わけです。ところが,^ は 大文字(A, I, U, E, O)と うまく かさならないので,大文字の ときは この やりかたが つかえませんでした。いまは もう タイプライターを つかわないので,この 理由は なく なって いますローマ字用の タイプライターには 小文字の û, ô に 対応 する キーを もって いる 製品も ありました。日本語の 長音は ウ段と オ段が 圧倒的に おおいので,これで 操作性は かなり よく なった はずです。

この かきかたの デメリットは 無視 できません。【アー】【イー】【ウー】【エー】【オー】で はじまる ことばは,文頭に ある ときと 文中に ある ときで つづりが ちがう ことに なります。これでは 小学生が 混乱 します。検索 などの テキスト処理にも 都合が わるいでしょう。

Ookina ôkina sora no sita...
(大きな大きな空の下……)

この サイトは 長音の 母音字が 大文字でも 山形(^)を つけて います。

つねに 母音字を かさねて かく?
Tune ni boinzi o kasanete kaku?

長音は つねに 母音字を かさねて かくと いう わりきった かんがえも あります。かな文字表記は【オー】と いう 音声を「おう」「おお」「オー」と つねに 2文字で かいて います。これは 長音を 2拍に かぞえる 感覚に あって いて,自然で あるとも いえます。ローマ字表記も おなじ ように すれば いいだろうと いう わけです。


「ドイツ語の 演説」
(巨人のあしあと 田中館愛橘博士逸話集)

ここでは「東京」「大阪」Tookyoo, Oosaka と かいて います。

しかし,これには 欠点が ふたつ あります。まず,すべての 長音を 母音字の 連続に すると,つづりが ながく なって よみにくい ことです。もっとも,これは 感覚的な 問題ですから,なれて しまえば 解決です。

hyoosyoozyoo(表彰状)
syuutyuuryoku(集中力)

より 重要なのは 論理的な 問題です。この かきかたで おなじ 母音字が 3個 以上 つづくと,よみかたが わからなく なって しまいます。この 問題は きる印(')を つかわないと 解決 できません。

huuu【フーウ/フウー】
huu'u(風雨)
soooo【ソーオー/ソオーオ】
→ soo'oo(相応)
oootoko【オーオトコ/オオートコ】
→ oo'otoko(大男)

長音符号つき文字を つかわない かきかた
Tyôon-hugôtuki-mozi o tukawanai kakikata

長音符号つき文字は つかえない ときが あります。パスポート・クレジット カードの 名前を かく とき,パソコン などの 環境が 対応 して いない とき,プレゼントの「名入れ」で つかえる 文字に 制限が ある とき などです。そこで,長音符号つき文字を つかわないで 長音を かく まにあわせの やりかたが きめて あります。この やりかたは いくつか ありますが,もっとも つかいやすいのは 母音字を かさねて かく 方式です。

râmenraamen(ラーメン)
sutêkisuteeki(ステーキ)
TarôTaroo太郎
HûkaHuuka風花

この やりかたは 昔から ある ものですが,いまの ローマ字の ルールは これを みとめて いません。(母音字が 大文字の ばあいだけ みとめて いて,小文字の ばあいは みとめて いません。)つづりが ながく なり,正確な よみかたが わからない 欠点も あります。学校の テストでは つかえませんし,この かきかたを しらない 人も おおいでしょう。

けれども,この やりかたは よみまちがいが おこりにくい ように よく かんがえて つくって あり,実用の レベルでは 問題なく つかえます。長音符号つき文字が つかえない ときは これを つかって ください。Tarô(太郎)の 長音符号を はぶいて Taro に するのは もっとも まずい やりかたです。くわしくは「代用表記」を およみ ください。

hoosoo(放送)
kyooryuu(恐竜)
seetaa(セーター)
Toohoku東北
Kyuusyuu九州
Yooroppa(ヨーロッパ)


友人あての メールや チャット などは きっちり した 文面で なくても いいでしょう。そんな ときは 長音符号つき文字が つかえる 環境でも この かきかたに して かまいません。そう すれば タイピングが 楽に なります。オノマトペ などの 表現力が たかまる メリットも あります。

Zyaa, soo iu koto de yorosiku.
(じゃあ,そういう ことで よろしく。)
gyaaaaaaaaaa
(ギャーーーーーーーーーー)


母音の ながさ(ながい/みじかい)を 区別 する 言語は 日本語の ほかにも あり,ながい 母音を 母音字の 連続で あらわす かきかたも よく あります。

フィンランド語
tee(テー:お茶)
joo(ヨー:はい,ええ)
Alvar Aaltoアルヴァ アールト

オランダ語
raam (ラーム:窓)
muur(ムーア:壁)
Ton Koopmanトン コープマン

発音どおりに かかない カタカナ語
Hatuon-dôri ni kakanai katakanago

カタカナ語の 中には 発音の とおりに かかない ものが あります。このような ことばは 発音に あわせて かきます。

bôringu(ボウリング)
uebu(ウェブ)
baiorin(ヴァイオリン)
purintâ(プリンタ)

「ぢ」「づ」
,

「じ/ぢ」「ず/づ」の 音声は おなじ つづりで zi, zu と かきます。ローマ字は 日本語の 音声を ABCで かく ものですから,おなじ 音声は おなじ つづりで かきます。

これと おなじ 理屈で,「じゃ/ぢゃ」「じゅ/ぢゅ」「じょ/ぢょ」の 音声も おなじ つづりで zya, zyu, zyo と かきます。

hanazi(鼻血)
bakazikara(馬鹿力)
mikazuki(三日月)
kanzume(缶詰)
warezyawan(割れ茶碗)
maruzyôtin(丸提灯)

ふだん ローマ字入力を つかって いる 人は「ぢ」「づ」「ぢゃ」「ぢゅ」「ぢょ」の 音声を di, du, dya, dyu, dyo と かいて しまう ことが ありますから,気を つけて ください。


「ぢ」「づ」の 音声を di, du と かかないのは 外国人が【ディ】【ドゥ】(または【デュ】)と よんで しまうからだと いう 説明を みかけますが,そんな 理由では ありません。日本語を しらない 外国人が ローマ字を ただしい 発音で よめないのは あたりまえで,それを 気に する 必要も ありません。


訓令式は あたらしい ローマ字で,日本語を 日本語らしい つづりで かく 目的を もって います。この 点から いえば,「じ/ぢ」「ず/づ」「じゃ/ぢゃ」「じゅ/ぢゅ」「じょ/ぢょ」の 音声を つねに zi, zu, zya, zyu, zyo と かく ルールには すこし まずい ところが あります。これは 訓令式の 弱点です。くわしくは「もっと 日本語らしい かきかた」を およみ ください。

ヘボン式「じ/ぢ」「ず/づ」「じゃ/ぢゃ」「じゅ/ぢゅ」「じょ/ぢょ」の 音声を つねに ji, zu, ja, ju, jo と かきますが,これは このままで かまいません。ヘボン式は ふるい ローマ字で,日本語を 日本語らしく かく 目的を もって いないからです。日本語の 性質を かんがえず,物理的な 音声を 英語風の つづりで かいて いるだけです。

Mochizuki望月)〔ヘボン式
Sangenjaya三軒茶屋)〔ヘボン式

日本式「じ/ぢ」「ず/づ」「じゃ/ぢゃ」「じゅ/ぢゅ」「じょ/ぢょ」の 音声を 区別 して zi/di, zu/du, zya/dya, zyu/dyu, zyo/dyo と かきわけます。これらの 音声は 日本式が つくられた 明治時代には ほぼ おなじに なって いましたが,本当は ちがう はずだと いう 意識が のこって いて,日本式は その 意識に あわせて 設計 されたからです。

momidi(もみぢ)〔日本式
aduki(あづき)〔日本式

「くゎ」「ぐゎ」
くゎ, ぐゎ

昔の 日本語には【クヮ】【グヮ】と いう 発音が ありました。江戸時代から だんだん つかわれなく なって,いまの 共通語では【カ】【ガ】と おなじに なって います。明治時代は まだ【クヮ】【グヮ】の 発音を する 人が いた ようで,この 発音は いまも 一部の 地方に のこって います。

日本式【クヮ】【グヮ】kwa, gwa と かきますが,訓令式ヘボン式【クヮ】【グヮ】の かきかたを きめて いません。ただし,ヘボン式も 明治時代 くらいの ふるい 文章では kwa, gwa と かいて いました。


土岐哀果「NAKIWARAI」(1910)

土岐哀果(善麿)の 第一歌集です。短歌を ヘボン式ローマ字で かいて います。「哀果」の つづりは AIKWA です。

kwa, gwa は ふるい かなづかいの「くわ」「ぐわ」を あらわす ローマ字だと いわれる ことが あります。しかし,ローマ字は 音声を かく ものですから,これは ちょっと ちがいます。【クヮ】【グヮ】と いう 音声の かな文字表記が「くわ」「ぐわ」で,ローマ字表記が kwa, gwa です。

助詞の「は」「へ」「を」
Zyosi no , ,

助詞の「は」「へ」「を」wa, e, o と かきます。ローマ字は 音声を かく ものだからです。

「遠足に行くまで」
「遠足に行くまで」(昔の 教科書)


「お/を」の 発音は どちらも【オ】です。ときどき「を」の 発音は【ウォ】だと いう 意見を みかけますが,これは まちがいです。学校の「音楽」などで「を」【ウォ】と 発音 する よう 指導 する ことが ある そうですが,これは 意味の ない ことです。

もともと「お/を」は 発音が ちがって いて,奈良時代の 発音だと「お」【オ】「を」【ウォ】でした。かな文字が 成立 した 時代も これらが ちがう 発音 だったから ちがう かな文字で かいた わけです。しかし,平安時代の 末に「お」の 発音が かわって「お/を」の 発音は どちらも【ウォ】に なりました。さらに,江戸時代に 発音が かわって「お/を」の 発音は どちらも【オ】に なりました。ただし,ことばの つづりを じっさいの 発音に あわせて かえると いう ことを しなかったので,かく ときは「お/を」を 区別 した ままでした。そのため,明治時代に なっても「お/を」の 発音は ちがうと いう 意識が のこって いました。ふだんは「を」【オ】と 発音 する 人が かしこまった 場で【ウォ】と 発音 する ことも あった そうです。

「を」の 発音が【ウォ】だと おもって いる 人は おおく,学校で そう おしえられたと いいはる 人も います。じっさいに 一部の 教師が そう おしえて いた 事例も ある ようですが,それだけが 理由とは かんがえにくい ほど かんちがいが ひろまって います。【ウォ】の 発音は いまも 一部の 地方に のこって いますから,もしかしたら お国ことばの たいせつさを うったえる 教師の 説明が へたで,かんちがい したのかも しれません。わかい 世代では ローマ字入力の 影響で そう おもって いる 人が おおいと かんがえられます現代仮名遣いは 助詞の「を」だけ かきかたが ちがいます。これが「お/を」の 発音は ちがうと いう 第1の かんちがいを まねいて います。そこに,ローマ字入力の 影響で「を」の ローマ字表記は wo だと いう 第2の かんちがいが くわわり,さらに,ラテン文字(ABC)と 英語の 混同から wo の 発音は【ウォ】だと いう 第3の かんちがいが かさなって,「を」の 発音は【ウォ】だと いう おもいこみが できあがります。「を」の 発音を【ウォ】だと おもって いる 人も,テレビ などで アナウンサーの 発音を きいて いる はずなので,共通語の「を」の 発音が【オ】で ある 事実に 気づく チャンスは あります。しかし,おもいこみを 自力で 修正 するのは むつかしい もので,じっさいには なかなか 気づけません。わかい 世代に ひろがって いる【ウォ】の 発音が 現代仮名遣いに ひきずられた 結果で ある ことは 助詞の「を」だけ【ウォ】と 発音 する 事実から わかります。昔から ある【ウォ】の 発音が のこって いるので あれば,「男」「女」などの ことばでも【ウォ】と 発音 して いる はずです。


日本式は 助詞の「は」「へ」「を」wa, e, wo と かきます。日本式は 明治時代の 人の 意識に あわせて 設計 されて いるからです。ヘボン式wa, e, o ですが,ふるい 作品には「を」wo と かいて いる ものが あります。

「NAKIWARAI」
土岐哀果「NAKIWARAI」(1910)

ヘボン式「を」o と かきますが,この ローマ字短歌は wo と かいて います。

歴史的仮名遣いの「ゐ」「ゑ」「を」
Rekisiteki kanazukai no , ,

ふるい かなづかいで かかれて いる ものを ローマ字で かきなおす ばあい,「ゐ」「ゑ」「を」i, e, o と かきます。

ai(あゐ:藍)
koe(こゑ:声)
oke(をけ:桶)

上代特殊仮名遣い
Zyôdai tokusyu kanazukai

いまの 日本語の 母音は【ア】【イ】【ウ】【エ】【オ】の 5種類 ありますが,万葉集が つくられた 時代の ふるい 日本語には【イ】【エ】【オ】が 甲類と 乙類の 2種類ずつ あり,全部で 8種類の 母音が あったと する かんがえが あります。これらの 母音を ローマ字で かきわけたい ときは,乙類の【イ】【エ】【オ】を それぞれ ï, ë, ö で あらわします。

aki(秋;キ甲類) tukï(月;キ乙類)

記号の「ヶ」
Kigô no

「一ヶ月」などの「ヶ」「個」の 異体字「箇」から できた 記号です。カタカナの「ケ」を ちいさく した 文字では ありません。だから 対応 する ひらがなが ありません。

「ヶ」を ふくむ ことばは よむ とおりに かきます。

ikkagetu, 1-kagetu(一ヶ月)
Tigasaki茅ヶ崎

特殊音
Tokusyuon

外来語 などで つかわれる【シェ】【ティ】【ファ】などの 音を「特殊音」と よびます。特殊音は もともと 日本語に なかった 音声ですから,公式の ルールは これらの かきかたを きめて いません。これは ローマ字の 方式(訓令式ヘボン式日本式)に かかわらず おなじです。

特殊音を ローマ字表記に したい ときは 自由に かいて いい ルールに なって います。そのため,昔から いろいろな かきかたが おこなわれて いますが,おおよその かきかたは さだまって います。この サイトも 昔から おこなわれて いる かきかたを もとに して つくった「この サイトの かきかた」を 提案 して います。

「二人の学者」
「二人の学者」(昔の 教科書)

ここでは【ファ】hwa と かいて います。

「フランクリンと凧」
「フランクリンと凧」(ローマ字世界)

ここでは【フィ】hwi と かいて います。

「幼き日のモツアルト」
「幼き日のモツアルト」(昔の 教科書)

ここでは【ウィ】【ウェ】【ツェ】wi, we, twe と かいて います。

学校は「国語」でも「英語」でも 特殊音の かきかたを おしえません。そのため,こどもが 外来語を ローマ字で かこうと しても かけない ことが あります。おそらく,ほとんどの 教師も その かきかたを しりません「国語」の 学習指導要領は「日常使われている簡単な単語」を よみかき できる レベルを 学習の 目標に して います。ところが,日常 つかわれて いる 単語は ただしい ローマ字表記が されて おらず,外来語を 原つづり(ほとんどは 英語)で かいて いるため,特殊音の ローマ字表記は つかわれて いません。そこで,「簡単な」と いう 条件を つけて 特殊音を きりすてて,「国語」で 特殊音の かきかたを おしえません。「英語」は ローマ字を 日本語の 表記法と みなして おらず,英語の 発音を おしえる 道具 または 日本の 固有名詞を ABC表記に する 規則と して つかうだけです。そのため,「英語」でも 特殊音の かきかたを おしえません。

特殊音の かきかたは,一般的な 外来語に つかわれる ものだけでも 公式の ルールで さだめ,それを 学校で おしえないと いけません。ローマ字は ローマ字入力と 混同 されやすいので,学校で 特殊音の かきかたを おしえないと,【ティ】thi と かく ような まちがいが ひろまって しまう おそれが あります。

鼻濁音
Bidakuon

鼻濁音(びだくおん)とは 発音 する とき 息が 鼻に ぬける 濁音です。「学校」の【ガ】と「小学校」の【ガ】を 区別 して 発音 する 人が いますが,このときの 後者の【ガ】が 鼻濁音です昔は 関東地方や 東北地方で つかわれて いましたが,いまは つかう 人が すくなく なって います。西日本では ほとんど つかわれません。アナウンサーには いまでも 鼻濁音を きっちり 発音 する 人が います。ただし,そのような 区別を する ことが ただしいとか うつくしいとか,そいいう 意味では ありませんから,気を つけて ください。

ローマ字は 鼻濁音と 通常の 濁音を 区別 しません。じっさいは 鼻濁音で 発音 されて いても,ふつうの 濁音と おなじ ように かきます。

gakkô(学校) syôgakkô(小学校)

ラ行音
Ra-gyôon

日本語には L音と R音の 区別が ないので,ラ行の 子音を ローマ字で かく とき,Lと Rの どちらを つかっても いい 状況に あります。そのため,Lと Rの どちらが ただしいのかと いう 質問が よく あります。江戸時代に かかれた ふるい ローマ字の 中には Lを つかって いる ものも ありますが,いまは ローマ字の 方式(訓令式ヘボン式日本式)に かかわらず Rと きまって います。したがって,ただしい かきかたは Rです日本語には L音と R音の 区別が ないと いう いいかたは 一般的ですが,流音が ひとつしか ないと いった ほうが 正確です。流音とは 一般に Lや Rで かかれる 音声です。英語には 流音が 複数 あるので Lと Rで かきわけないと いけませんが,日本語には それが ひとつしか ないので Lか Rか どちらか ひとつが あれば いい わけです。流音は 言語に よる 発音の ちがいが おおきく,はばの ひろい 音声です。日本語の ラ行音は,単語の 先頭に あるか そうで ないか などの 条件にも よりますが,英語の L音とも R音とも ちがいます。なお,ローマ字の 公式ルールから はずれますが,標準式と いう 方式の ローマ字には Lを つかう かきかたも あります。

はじめて ローマ字を つくったのは 外国人ですが,そのとき 採用 されたのは Rでした。ラ行の 子音が たまたま 外国語の R音に にて いたからです。いまの ルールは この Rを うけついで います。これが Rに なって いる 理由です。

ただし,ラ行の 子音が 外国語の R音と にて いるから Rが ただしいと いう 理屈では ないので,気を つけて ください。世界共通の 発音記号と ちがって,ABCは 言語に よって 発音が かわります。どんな 音声を どんな つづりで かくか,どんな つづりを どんな 音声で よむか,それは 言語に よって まちまちです。したがって,ある 外国語が Rで かいて いる 音声は 日本語の ラ行音と にて いないかも しれません。また,ある 外国語が ラ行音と よく にた 音声を Xと かいて いたと しても,それは 日本語の ラ行音を Xと かかなければ ならない 理由に なりません。

ラ行の 子音は Lで かく べきだと いう 意見を ときどき みかけます。おそらく,これは 英語や 中国語を 中心に かんがえた ために おきた まちがいです。これらの 言語が Lや Rで かいて いる 音声を 日本人が きくと,ラ行の 子音は R音より L音に ちかいと かんじる ことが あります。それで,ラ行の 子音を Rで かくのは おかしいとか,Lで かく べきだとか,そんな 意見が でて くるのでしょう。ローマ字が 発音記号で ない ことや ABCの 発音は 言語に よって ちがうと いう 語学の 基礎を 学校が きちんと おしえて おらず,これが はやとちりの もとに なって います。

アクセント
Akusento

「雨/飴」「箸/橋」などは 耳で きいただけで 判別 できます。アクセントが ちがうからです英語 などは 強弱アクセントですが,日本語は 高低アクセントです。

ところが,ローマ字で かくと まったく おなじ つづりに なって しまい,みわけられません。ローマ字は 日本語の 音声を かきますが,すべての 音声情報を 記号化 して いる わけでは なく,ぬけおちる 情報も あります。そのため,耳で きくと 区別 できるのに,目で みると 区別 できない ことばが ありますローマ字は じっさいの 音声を 録音 する ように 記録 して いる わけでは ありませんから,しゃべる はやさ,声の おおきさ,アクセント(つよい/よわい/たかい/ひくい),イントネーション,鼻声か ガラガラ声か などは わからなく なります。これらの ほとんどは ことばの 意味に かかわらない 情報ですが,アクセントは ことばの 意味に かかわります。同音異義語の おおくは 文脈で 区別 できるので,印を つけなくても 実用レベルでは 問題が おこりません。

いまの ローマ字は この 状況に 対処 して いません。そのため,耳で 区別 できる ものは 目でも 区別 できる ように つづりに ちがいを だしたいと いう 要求が あります。

そこで,ひとつの かんがえと して,アクセントの 情報を 記号で しめす 方法が あります。一部の ことばに アクセントを あらわす 印を つけて,みた目で 区別 できる ように する アイデアです。ただし,アクセントは 地方に よって ことなりますから,共通語を 基準に する などの とりきめが 必要ですイタリア語には これに にた かんがえかたで 記号を つける つづりが あります。例:e(そして),è(ある)[三人称単数];li(彼ら,それら),(そこ)。

áme, ame(雨,飴)
hási, hasi(箸,橋)
sáke, sake(鮭,酒)
káu, kau(飼う,買う)


この アイデアの 目的は じっさいの アクセントを しめす ことでは ありません。おなじ つづりの ことばに 目印を つけて みた目で 区別 できる ように する ことです。その 目印の つけかたに アクセントを 利用 するだけです。したがって,複合語に なって アクセントが かわったり しても 印は かえません。

áme(雨)
ámehuri(雨ふり)
niwakaáme(にわか雨)


けれども,このアイデアには 問題が あります。アクセントが おなじ 同音異義語も この やりかたで 区別 しようと する 人が かならず でて くるからです。それでは 漢字で かいて 区別 するのと おなじです。もっと いえば,文字に 色を つけて 区別 する 悪趣味と かわりません。意味の ちがいを みた目の ちがいで 区別 する やりかたは,日本語を 不完全な 言語に するので,さけなければ なりません。

また,どの 部分に どんな 印を つけるかも 問題です。長音符号が ついて いる 母音字の 上に もうひとつ 印を つけるのは むつかしく,たとえ つけても よみにくいでしょう。

かんがえなければ ならない ことは いろいろ ありそうです。アクセントの 表記は これからの 課題です。

きこえない 母音
Kikoenai boin

母音の 一部は きこえなく なる ことが あります。たとえば,「です」「ます」の 発音は【デス】【マス】よりも【デs】【マs】に ちかいでしょう。「たくさん」【タkサン】「ネクタイ」【ネkタイ】と 発音 して いる はずです。このような ことばを かく とき,じっさいの 発音に ちかづけて des, mas, taksan, nektai の ように する べきだと かんがえる 人が いるかも しれません関東地方 などで「北」【キ】「光」【ヒ】の 母音が 無声音(声帯が ふるえない 音)に なって きこえなく なる ことも あります。

しかし,そういう かきかたは しません。ローマ字は じっさいに 口から でる 物理的な 音声を かく 発音記号と ちがって,頭の 中に ある 心理的な 音声を かく ものだからです。口から でる 音声が【デs】でも 頭の 中では【デス】と いって いる つもりだから desu と かく わけです。意識 して いない ものは かけません。

「です」des と かく アイデアは 昔から ありますが,公式の ルールには 採用 されて いませんもし じっさいの 音声を かく ルールに したら,じっさいの 音声を しって いる 言語学の 専門家の ほかは ローマ字が かけなく なって しまいます。ただし,この 問題は もう すこし ふかく かんがえて みる ことも できます。なぜ【デス】と いって いる つもりなのかと いえば,それは ちいさい ときから「です」と かかれた 文章を よんで そだったからです。つまり,かな文字表記に つられて そう おもいこんで いるだけです。言語学に あかるい 人は じっさいの 音声が【デs】だと しって いるので,もし 日本語を ローマ字で かく ことが 一般化 すれば,かならず des と かく 人が でて きます。すると,それを よんだ 人も じっさいは【デs】だと 気づくでしょう。そして,本当は【デs】だと いう 意識を もつ ように なれば,des と かくのが 自然に なる はずです。こうして,だんだん des が ひろまって いく 可能性も あります。大正時代に,きこえない u を かかない「有機式」ローマ字を 提唱 した 鳴海要吉と いう 人が いました。かれは 短歌雑誌「アカツキ文学」を つくって いましたが,その ローマ字表記は「有機式」の Akatki Bungak でした。

desu(です) masu(ます)
takusan(たくさん) nekutai(ネクタイ)

無音
Muon

ことばの 途中に ある すきまや 完全な 無音を 文字で あらわしたい ばあい,また 文末の 省略や 余韻を あらわしたい ばあいは ... を つかいます。漢字仮名交じり文では 三点リーダー(…)を 2個 つなげた 記号を つかう ことが おおい ようですが,ローマ字文では とめの印(.)を 3個 つなげた 記号を つかいます。文末で 文の おわりも しめす ばあいは とめの印(.)が 4個に なります。

ta...su...ke...te
(た……す……け……て)
ara, mâ...(あら,まあ……)
zawa... zawa...
(ざわ… ざわ…)
....(……。)

「卵と人間」
「卵と人間」(昔の 教科書)

もっと 日本語らしい かきかた
Motto Nihongo-rasii kakikata

はじめて よむ 人は ここを よみとばしても かまいません。

訓令式の 弱点
Kunreisiki no zyakuten

いまの ローマ字には 日本語を 日本語らしく かく 目的が あります。訓令式は 日本語の 性質に あわせて 設計 された 日本語らしい かきかたですが,この 点から みれば すこし まずい ところが あります。ここでは その 中の ふたつを とりあげ,それらを あらためる かんがえを しめします。

漢語の「エ段+い」
Kango no "e-dan + i"

いまの ローマ字は ふりがなと ちがって 音声を ほぼ その とおりに かきますが,そう なって いない ところが あります。それは 漢語の「エ段+い」です。たとえば,「営利」【エーリ】に ちかい 音声なのに,ローマ字の つづりは eiri です。漢語の「エ段+い」は ei と かくのが きまりだからです。しかし,これでは ふつう ちがう 発音で よむ「営利」「絵入り」が おなじ つづりに なって しまい,不合理です。よむ ときも 不便です。

eiri(営利)
eiri(絵入り)


この 問題の 解決策は,漢語の「エ段+い」を 長音と みなして ê と かく ことです。漢語の「エ段+い」は【エー】と 発音 する ことが おおい はずです。「携帯電話」「ケータイ」に なった くらいですから,ei より ê の ほうが 感覚的にも 自然でしょう。

êri(営利)〔あらため案〕
eiri(絵入り)


この かんがえかたは 昔から あり,大阪ローマ字会は 以前から この かきかたを 採用 して いました。外国人に 日本語を おしえる 日本語教育の 教科書には「とけい」tokee と かいて いる ものが あります。これは ローマ字を 発音記号の 代用品と して つかって いるだけですが,その 結果,ローマ字表記が じっさいの 発音に ちかづいて,「エ段+い」が 一歩 すすんだ かきかたに なって います。ただし,eeê に くらべると 性能が おとりますtumeeri(詰襟,ツメーリ?),teeen(庭園,テエーン?)などで よみかたが わからなく なるからです。わかる ように するには 記号を いれて tee'en, tume'eri と かかないと いけません。

この ê を つかって いる ローマ字がきの 小説も あります。Miti(道)」を よんで みて ください。

四つ仮名
Yotugana

「じ」「ず」「ぢ」「づ」を まとめて 四つ仮名と いいます。ローマ字(訓令式)は これらの 音声を つねに zi, zu, zi, zu と かきます。しかし,これでは【チ】【ツ】が にごって いる ことばの つづりが 不自然です。

hanazi(鼻血)
tizimu(縮む)
mikazuki(三日月)
tuzuku(続く)

ローマ字には 日本語を 民主化 する 目的が あります。だれでも よみかきが できる やさしい かきかたに する ため,できるだけ 発音の とおりに かく かんがえを 採用 して います(表音主義)。

これを ふりがなの かきかたで 説明します。昔は ふるい かなづかいが つかわれて いて,発音どおりの やさしい かきかたでは ありませんでした。たとえば,「川」「かは」と かいて いただけで なく,「じ/ぢ」「ず/づ」も ことばに よって かきわけて いました。そのため,「川」「か「かか,「味」「あ「あか,「水」「み「みか,いちいち おぼえなければ ならず,たいへん 不便でした。こんな かきかたは 教育に 時間と おかねを かけられる 人にしか つかいこなせません。それでは 民主的と いえないでしょう。そこで,戦後に かなづかいの ルールが あらためられ,「川」は 発音の とおりに「かわ」と かき,「じ/ぢ」「ず/づ」の かきわけは やめて,基本的に「じ」「ず」で 統一 する ことに なりました。よみかきを やさしく する ため,発音どおりの かきかたに した わけです。

ローマ字も 表音主義を 採用 して いるので,「川」kawa と かき,「味」「水」azi, mizu と かきます。ローマ字は これが 徹底 して いて,「公理(こうり)」「氷(こおり)」は おなじ つづりの kôri です。「甲羅(こうら)」「コーラ」は おなじ つづりの kôra です。助詞の「は」「へ」「を」も 発音どおりに wa, e, o と かきます。したがって,ローマ字の かきかたは ふりがなの かきかたより やさしく,全体的に みれば よく できて います。

ところが,ローマ字(訓令式)には これを やりすぎて 不自然な かきかたに なって いる ところが あります。それが「ぢ」「づ」です。いまの ルールでは,「鼻血」「三日月」hanazi, mikazuki と かきますが,これでは【チ】【ツ】が にごって いる ことが わからず,「鼻血」「三日月」「血」「月」との つながりを うしなって います。ローマ字には 日本語を 日本語らしく かく 目的も あるのですから,これでは いけません。

この 問題は 連濁の 規則性を かんがえると よく わかります。カ行・サ行・ハ行の 連濁は K→G, S→Z, H→B と いう 法則で 説明 できるのに,タ行の 連濁が T→D と いう 法則で 説明 できません。連濁は 日本語が もって いる 性質ですが,それを うまく かきあらわせない ローマ字は 日本語らしい かきかたと いえないでしょう。

K→G
 傘
雨傘
    kasa
 amagasa
 岸
川岸
    kisi
kawagisi
 雲
綿雲
    kumo
watagumo
 毛
鼻毛
    ke  
hanage  
 米
生米
    kome
namagome
S→Z
 猿
子猿
    saru
  kozaru
 汁
梨汁
    siru
nasiziru
 炭
消炭
    sumi
kesizumi
 背
猫背
    se  
nekoze  
 空
青空
    sora
  aozora
T→D, Z
  竹
 竿竹
    take
 saodake
  血
 鼻血
    ti  
hanazi  
  月
三日月
    tuki
mikazuki
  寺
 山寺
    tera
yamadera
  鳥
 水鳥
    tori
mizudori
H→B
 針
編針
    hari
 amibari
 人
恋人
    hito
 koibito
 舟
小舟
    hune
  kobune
 塀
石塀
    hei 
 isibei 
 堀
内堀
    hori
 utibori

この 問題の 解決策は,【チ】【ツ】が にごって いる ことばでは Z で なく D を つかう ことです。

hanadi(鼻血)
tidimu(縮む)〔あらため案〕
mikaduki(三日月)
tuduku(続く)〔あらため案〕

そう すれば,タ行の 連濁が T→D と いう 法則で 説明 できます。「鼻血」「三日月」は,【チ】【ツ】が にごって いる ことが わかるので,「血」「月」との つながりを とりもどせます。

T→D
  竹
 竿竹
    take
 saodake
  血
 鼻血
    ti  
hanadi  
  月
三日月
    tuki
mikaduki
  寺
 山寺
    tera
yamadera
  鳥
 水鳥
    tori
mizudori

もう すこし くわしく 説明 すると,かき手の 意識に もとづいて,みっつの ばあいに わけて D と Z を つかいわけます。

(1) 【シ】【ス】【シャ】【シュ】【ショ】が にごって いる 意識が ある ことばは Z で かく。

mezirusi(目印)
hitoziti(人質)
misezimai(店じまい)
morizio(盛り塩)
simazima(島々)
sizimi(シジミ)
usuzumi(薄墨)
nigirizusi(握りずし)
zumi(用済み)
karizumai(仮住まい)
sumizumi(隅々)
suzume(スズメ)
dazyare(駄洒落)
syuzyu(種々)
kenkyûzyo(研究所)

(2) 【チ】【ツ】【チャ】【チュ】【チョ】が にごって いる 意識が ある ことばは D で かく。

hanadi(鼻血)
sokodikara(底力)
warudie(悪知恵)
moraiditi(貰い乳)
tikadika(近々)
tidimu(縮む)
mikaduki(三日月)
kodutumi(小包)
kandume(缶詰)
oriduru(折り鶴)
tunedune(常々)
tuduku(続く)
waredyawan(割れ茶碗)
sekaid(世界中)
turidyôtin(つり提灯)

(3) どちらの 意識も ない(語源が わすれられて 意識 できなく なった)ことば,漢字の 音よみで もともと 濁音の ものは Z で かく。

azi(味)
mazime(真面目)
omikuzi(おみくじ)
hizi(肘)
huzi(フジ:藤)
momizi(モミジ)
mizu(水)
kazu(数)
nezumi(ネズミ)
kizu(傷)
kazura(カズラ:葛)
azuki(アズキ)
kizuna(絆)
sakazuki(盃)
tumazuku(躓く)
zi(字)
zu(図)
z(十)

ふりがなの かきかた(現代仮名遣い)は この かんがえかたを 採用 して います。「鼻血」「三日月」の ふりがなは「はな「みかき」ですが,これは【チ】【ツ】が にごって いる 意識が あるからです。「気付く」「築く」の 発音は おなじですが,ふりがなは「きく」「きく」で ちがいます。「気付く」には【ツ】が にごって いる 意識が あるけれども「築く」には その 意識が ないからです。(「築く」は 語源と むすびつかない 漢字で かいて いる せいで 語源が わすれられて 意識 できなく なりました。)


ふりがなと ローマ字(訓令式)を くらべると,全体的には ローマ字の かきかたの ほうが よく できて います。けれども,四つ仮名の 部分に かぎれば ふりがなの かきかたの ほうが うまく 設計 されて います。そこで,この 部分は ローマ字の かきかたを あらためて ふりがなの かきかたに あわせようと いう わけです。物理的に おなじ 音声でも,語源の 意識に 影響 されて 心理的に ちがう 音声に なって いる ものは,ちがう つづりで かく ほうが 自然な はずですすこし むつかしい はなしに なりますが,言語学に「共時態」「通時態」と いう ことばが あります。前者は 言語を 時間軸上の 一点で とらえた ばあいの 状態で,後者は 言語を 時間の ながれに そって ながめた ばあいの 状態です。そして,いまの ふりがなや ローマ字の かきかたは 共時態を 重視 して 設計 されて います。いま 日本語で くらして いる 人の 意識に あわせた かきかたに して いる わけです。「築く」は 語源から いえば【ツ】が にごって いる ことばですが,語源が わすれられて しまったので,ふりがなを「きづく」に すると いま 日本語で くらして いる 人の 意識に あいません。それで 語源との つながりは きりすてて,発音に あわせた「きずく」に して います。ローマ字も「築く」は 発音に あわせた kizuku に して いますが,これを やりすぎて「気付く」まで kizuku に して います。これでは「気付く」の ほうが 意識に あいません。そこで,この やりすぎて いる 部分を あらためようと いうのが この サイトの 提案です。

ローマ字は 心理的な 音声を かきますが,これには ふたつの 意味が あります。(1) ひとつは 物理的に ちがっても 心理的に おなじ 音声は おなじ つづりで かくと いう 意味です。(2) もう ひとつは 物理的に おなじでも 心理的に ちがう 音声は ちがう つづりで かくと いう 意味です。訓令式の 弱点は ふたつめの 意味が ぬけおちて いる ところです。

(1) panda(パンダ)
sanma(サンマ)
(2) monozuki(物好き)
mikaduki(三日月)〔あらため案〕

四つ仮名の かきかたを あらためた hanadi(鼻血)と mikaduki(三日月)が 日本式の つづりと おなじなのは 偶然では ありません。日本語らしい かきかたを おいもとめて 設計 された ローマ字が 日本式だったからです。おおまかに いえば,訓令式日本式を あたらしく した 方式ですが,四つ仮名の 部分に かぎれば 劣化 して いるとも いえます。そこが 訓令式の 弱点に なって います。


この あらため案は motizuki(餅好き)と motiduki(望月)を 区別 できて 便利ですが,不便な ところも あります。たとえば,inazuma(稲妻)は inaduma と かかれるかも しれません。「稲妻」の 語源を しって いる 人は【ツ】が にごって いる 意識を もって いるかも しれないからです。こうして 表記の ゆれが おこりますはじめて 耳に した 固有名詞の つづりが わからない ことも あります。【ユズル】と いう 名前を,結弦さん【ツ】が にごって いる 意識が あるので Yuduru と かき,譲さんは その 意識が ないので Yuzuru と かくでしょう。したがって,【ユズル】と いう 名前を はじめて きいた ときには,その ローマ字が YuduruYuzuru か わかりません。(これは ふりがなでも おなじで,「ゆる」「ゆる」か わかりません。)ローマ字入力は どちらの つづりでも 変換 できる ように して おく 必要が あります。

けれども,これは ルールの 設計が まずいから おこる 不具合では ありません。日本語の はなし手が もって いる 意識の 多様性を うつしだして おこる 現象です。そうで あれば,それを たいせつに する べきです。


語源 などを 解説 する ときは ふだん 意識 して いない ことばも D と Z を つかいわけます。

ine(稲)+ tuma(妻)→ inaduma(稲妻)
sake(酒)+ tuki(坏)→ sakaduki(杯)
tume(爪)+ tuku(付く)→ tumaduku(躓く)
Tôkyô de wa(東京では)→ Tôkyô dya(東京じゃ)
sinde simae(死んでしまえ)→ sindimae(死んじまえ)


四つ仮名の 問題は 別の やりかたでも 解決 できます。それは ローマ字の 方式を 新日本式に する ことです。新日本式は,タ行を ta, ci, cu, te, to,ダ行を da, zi, zu, de, do と かく 方式です。こう すると,タ行の 連濁を T→D,C→Z と いう 法則で 説明 できます。

T→D,C→Z
  竹
 竿竹
    take
 saodake
  血
 鼻血
    ci  
hanazi  
  月
三日月
    cuki
mikazuki
  寺
 山寺
    tera
yamadera
  鳥
 水鳥
    tori
mizudori

ただし,これには タ行の 子音字が T と C に わかれて しまう 弱点が あります。

単語の かきかた
TANGO NO KAKIKATA

分かち書き
Wakatigaki

ローマ字文は ことばを 空白で くぎって かき,ふつうは 空白の ところで 改行 します。こういう かきかたを「分かち書き」と いいます。ローマ字文は おおよそ 単語ごとに 空白を いれます。くわしい 解説は「分かち書き」に あります。

この 章は そのように くぎられた 単位の つづりに ついて 説明 します。かんたんに いえば,単語の かきかたです。

「大クラウスと小クラウス」
「大クラウスと小クラウス」

普通名詞と 固有名詞
Hutû meisi to koyû meisi

普通名詞
Hutû meisi

「ローマ字のつづり方」は 普通名詞の 先頭を 大文字で かいても いい ことに して います(そえがきの 第6項)。こう すると,ドイツ語の ような 字面に なります。昔は この かきかたが よく おこなわれて いました。

「私はなんでしょう?」
「私はなんでしょう?」(昔の 教科書)

ここでは「耳」「目」「山」の 先頭を 大文字で かいて います。

この 利点は,助詞と みじかい 名詞を みわけやすい ことです。たとえば,「へ」「絵」「の」「野」「を」「尾」「から」「殻」「空」などを みた目で 区別 でるので,よみやすく なります。

Haru no No no Hana(春の野の花)


しかし,大文字が おおいと かくのが すこし 面倒です。キーボードから 入力 する ときは とりわけ そうです。固有名詞を みわけにくく なる デメリットも あります。

それで,戦後は 普通名詞の 先頭を 小文字で かく ように かわって きました。いまでは 普通名詞の 先頭を 大文字に する かきかたは ほぼ おこなわれて いません。この サイトも 普通名詞の 先頭を 小文字で かいて います。

固有名詞
Koyû meisi

固有名詞は つねに 先頭を 大文字で かきます。

Nippon日本
Huzisan富士山
Yamada Hanako山田花子
Midoriyama Syôgakkô緑山小学校

より くわしい 解説は「固有名詞」に あります。

数値を ふくむ 表現
Sûti o hukumu hyôgen

数値を ふくむ 表現には 下の 3種類が あります。

数値 そのもの
Sûti sonomono

数値 そのものは 数字を つかって かきます。

2 tai 1 de Nippon ga katta.
(2対1で日本が勝った。)
3 tasu 5 wa 8 desu.
(3たす5は8です。)

おおきい 数値は 万・億・兆 などを man, oku, tyô と かいても かまいません。3桁ごとに 空白を いれても いいでしょう。この くぎりに カンマ(,)を もちいるのは おすすめ しません「12,345」は 3とおりに 解釈 できます:(1) 整数の 12345,(2) 小数の 12.345,(3) 整数の 12 と 345。おおきな 数字を どのように くぎるかは 文化に よって ちがいます。インドでは すこし かわった くぎりかたを するので,日本の メーカーが それに あわせた 電卓を うりだして ヒット商品に なった ことが ある そうです。

国内むけで 自然科学 以外の 分野の 文章なら,4桁くぎりに しても いいでしょう。その ほうが よみやすく なります。このときは できれば カンマ(,) 以外の 記号を つかって ください。下の 例は きる印(')を つかって いますが,バッククォート(`)なども かんがえられます。

8 oku 5000 man(8億5000万)
9 192 631 770(9192631770)
1'2345'6789(1億2345万6789)

「蚊と蝿」
「蚊と蝿」(昔の 参考書)

算数の 文章問題から 一部を ぬきだした ものです。(本当は この あとに 設問が あります。)ローマ字の 方式が 日本式で すこし よみにくいかも しれませんが,ここでは 数値の かきかたを みて ください。おおきな 数値を 4桁くぎりに して いる ところも あります。

「数値+助数詞」または「数値+単位」
"Sûti + zyosûsi" mata wa "sûti + tan'i"

「数値+助数詞」または「数値+単位」は,数字を つかう 方法と 数字を つかわない 方法が あります。単位が つく ものは かならず 数字を つかって かきます。助数詞が つく ものは 数値が ちいさい とき(目安と して 10以下)だけ 数字を つかわない かきかたに しても かまいません助数詞と 単位の 区別は わかりにくいかも しれませんが,つぎの ように かんがえて ください。助数詞は 物の 数を かぞえる ときに つける ことばで,豆腐を かぞえる「丁」,人を かぞえる「人(にん)」,馬を かぞえる「頭(とう)」,家を かぞえる「軒(けん)」など。数値に よって よみかたが かわる ことが あります。通常は 自然数(1,2,3,...)に つきます。例:5台,20枚。マイナスの 数値や 小数に つけると すこし 変な かんじが する はずです。一方,単位は 量の 種類を あらわす ことばで,長さを あらわす「メートル」,重さを あらわす「グラム」,電圧を あらわす「ボルト」,温度・角度 などを あらわす「度」など。数値に よって よみかたが かわる ことは ありません。マイナスの 数値や 小数に ついても 違和感が ありません。例:マイナス10度,2.5メートル。

ただし,道路標識の ローマ字駅名標の ローマ字「◯丁目」などを かく ばあいは,すこしでも よみかたが わかる ほうが いいので,数字を つかわない かきかたに します。

Shinjuku-sanchome(新宿三丁目)〔駅名標〕


数字を つかって かく ばあい,数値の うしろに つなぎ(-)を かきます。

1-mai(1枚) 2-hiki(2匹)
3-ko(3個) 4-nin(4人)
5-syaku 6-sun(5尺6寸)
7-kai(7回) sessi 8-do(摂氏8度)
9-mêtoru(9メートル)
10-guramu(10グラム)

名刺
名刺 (いまの 教科書)

ここでは「3年」「2組」つなぎ(-)を かいて います。

「トンネルの話」
「トンネルの話」 (昔の 教科書)

ここでは「100パーセント」に つなぎ(-)を かいて います。

ただし,この あとで 説明 して いる ように,単位記号や おかねの「円」などは つなぎ(-)を かきません。つなぎ(-)を いれる ものと いれない ものが あって ややこしいので,この サイトは 意味が わかりにくく ならない 範囲で つなぎ(-)を はぶいても いい ことに します。

1 mai(1枚) 2 hiki(2匹)
3 ko(3個) 4 nin(4人)


数字を つかわないで かく ばあい,数値の 部分と 助数詞は くっつけて かきます。数値の 部分が 和語で 助数詞と 一体化 して いる ことばも あります。例:「ひとつ」「ふたつ」「ひとり」「ふたり」

Itimai..., nimai..., sanmai...
(一枚……,二枚……,三枚……)
Kanozyo wa hitori de sunde imasu.
(彼女は独りで住んでいます。)
Kita no wa hutari dake desita.
(来たのは二人だけでした。)
Tanuki ga sanbiki orimasita.
(タヌキが三匹おりました。)

数値が ちいさい ときは 数字を つかわない かきかたで いいのですが,「1杯」は 数字を つかって かきます。もし 数字を つかわずに かくと,「たくさん」の 意味だと おもわれる おそれが あります。そこで,「1杯」は かならず 1-pai と かきます。

1-pai(1杯) ippai(いっぱい)

このような ことばと して,ほかに「一番」「一部」「一面」などが あります。

「大クラウスと小クラウス」
「大クラウスと小クラウス」


よむ とおりに かくので,数値に よって つづりが かわる ことも あります。

1-pon, 2-hon, 3-bon
(1本,2本,3本)
1-patu, 2-hatu, 3-patu
(1発,2発,3発)

「トンボ」
「トンボ」 (昔の 教科書)

よむ とおりに かくので,「7匹」「3匹」で つづりが ちがいます。

このとき,「1本」1-ppon の ようには かきません。

6-piki(6匹;6-ppikiに しない)
10-ko(10個;10-kkoに しない)


自然科学の 分野で もちいる 単位には 世界共通の 記号(単位記号)が あります。あまり 専門的な もので なければ,それを つかっても いいでしょう。専門家むけの 文章なら 遠慮は いりません。この ばあい,つなぎ(-)は かきません。

単位記号の おおくは ラテン文字 1文字か 2文字で できて います。大文字と 小文字の 区別が ありますから まちがえない ように して ください。「リットル」は 大文字の L で かく ことを おすすめ します以前は 小文字の エルの 筆記体が よく つかわれて いましたが,これは まちがいです。ただしい かきかたは 小文字 または 大文字の エルの 活字体です。ただし,小文字は 数字の 1(いち)と みわけにくいので,大文字で かく ことが おおく なって います。

100-mêtoru, 100 m(100メートル)
65-guramu, 65 g(65グラム)
1.5-rittoru, 1.5 L(1.5リットル)

「よい選手は言い訳を言わない」
「よい選手は言い訳を言わない」(昔の 教科書)

「1500メートル」は 単位記号を つかって かいて います。

「キロ」「ミリ」などの SI接頭語は くっつけて かくのが 基本ですが,つづりが ながく なると よみにくいので,つなぎ(-)を いれても いいでしょう。

3.5-miri-mêtoru(3.5ミリメートル)
980-hekuto-pasukaru
(980ヘクトパスカル)
500-giga-baito(500ギガバイト)


「◯倍」「◯割」「◯番」「第◯」なども,助数詞・単位と おなじ ように かんがえます。分数を「◯分の◯」と いう ときの「分」なども おなじです。

100-bai(100倍)
3-wari 5-bu(3割5分)
dai 40-kai(第40回)
dai 2 kaigisitu(第2会議室)
20-bun no 3(20分の3)
5 no 2-zyô(5の2乗)

「偉大な母,偉大な娘」
「偉大な母,偉大な娘」 (昔の 教科書)

分数を 250,000,000-bun no 1 と かいて います。

「ごと」「おき」「ずつ」「ぶり」「め」などは きりはなして かきます。ただし,住所の「丁目」は ひとつの ことばと かんがえて ひとつづきに かきます。

4-nen goto(4年ごと)
50-mêtoru oki(50メートルおき)
10-ko zutu(10個ずつ)
1-nen han buri(1年半ぶり)
mae kara 5-ban me(前から5番目)
4-tyôme(4丁目)

「アルプスの山の娘」
「アルプスの山の娘」(昔の 教科書)

ここでは「1匹ずつ」1-piki zutuと かいて います。



値:600円

数字で 金額を かく とき,数字と 通貨単位は きりはなします。つなぎ(-)は かきません。通貨単位の 先頭は 大文字に します。「円」En です。Yen では ありません。

100 En(100円)
200 Doru(200ドル)
300 Won(300ウォン)

ふるいヘボン式の「円」
ふるい ヘボン式の「円」

これは ヘボンが つくった「和英語林集成」と いう 辞典です。「圓」は「円」の ふるい 字体です。

お店の 値札 などで よく みる yen は 英語です。つづりが en で なく yen に なって いるのは 昔の「エ」の 発音が【イェ】だったからです。ふるい 地図には「江戸」Yedo と かいた ものが あります。有名な「ガリバー旅行記」にも Yedo が でて きます。ふるい ヘボン式「円」yen と かく ことが ありました。これが 英語の つづりに なったのでしょう。

通貨単位には 世界共通の 記号(通貨記号)が あります。あまり 専門的な もので なければ,それを つかっても かまいません。専門家むけの 文章なら 遠慮は いりません。通貨記号は 数字に くっつけて かきます通貨記号は 数値の うしろや 途中に かく ものも あります。なお,手がきの ときは「500円」¥500- の ように かきたい 人も いるでしょう。それは 自由に して ください。

¥100(100円)
$200(200ドル)
₩300(300ウォン)

デザインの 都合 などで おかねの「円」を ABC表記に したい ときは,En と かく ことを おすすめ します。英語の はなし手だけを 相手に して いる お店で ない かぎり,もっとも 重要な 情報を 英語で かく 理由は ない はずです。外国人が おおい 観光地の お店 などは 通貨コード(ISO 4217)の JPY に すると まちがいの 心配が なくて いいかも しれません。


この サイトは「何個」「数人」「幾度」などの「何」「数」「幾」を 独立 した ことばと みなして 助数詞や 単位から きりはなしても いい ことに します。ひとつづきに かいても かまいません。

nan nin, nannin(何人)
nan guramu, nanguramu(何グラム)
sû nin, sûnin(数人)
sû guramu(数グラム)
nanzyû nin, nanzyûnin(何十人)
nanzyû guramu, nanzyûguramu(何十グラム)

発音が かわって 一体化 して いる ものは ひとつづきに かく ほうが いいでしょう。

nanzyukko(何十個)
sûhyappiki(数百匹)
sûhyakkiro-guramu
(数百キログラム)

「二百何十」「五千数百」「二百」「五千」の 部分だけを 数字で かいても かまいません。ただし,つなぎ(-)を いれます。

200-sûzyû mai(二百数十枚)
5000-sûhyaku kônen
(五千数百光年)


「二,三回」「五,六時間」などは くぎり(,) または つなぎ(-)を つかって かきます。範囲の 意味なら つなぎ(-)が いいでしょう。「千二,三百人」などは 意味が わかりやすい ように 数字を かきかえても かまいません範囲を しめす ばあい,ダッシュが つかえる ときは ENダッシュを つかっても かまいません。

2,3-kai(二,三回)
5-6-zikan(五,六時間)
24-5-sai(二十四,五才)
1200-1300-nin(千二,三百人)
7-8 man biki(七,八万匹)
2 man 5000-6000-nen
(二万五,六千年)

「一房の葡萄」
「一房の葡萄」 (昔の 教科書)

ここでは「三、四人」3,4-nin と かいて います。

「塩を乗せた船」
「塩を乗せた船」 (昔の 教科書)

ここでは「二、三日」2-3-niti「十三、四の」13-4 no と かいて います。

「イナゴの大旅行」
「イナゴの大旅行」 (昔の 教科書)

ここでは「四十五、六の」を 数字を つかわずに かいて います。

ことばに なって いる もの
Kotoba ni natte iru mono

「ことばに なって いる もの」は 音声の とおりに かきます。数字を ふくむ 人名は この パターンです。

daiiti ni(第一に)
hutarizure(二人連れ)
sanmaime(三枚目)
sisya-gonyû(四捨五入)
Hyakunin Issyu(百人一首)
senmaidôsi(千枚通し)
Itirô(一郎)
Zirô(二郎)
Saburô(三郎)

「数値+助数詞」または「数値+単位」が 別の ことばと むすびついて 複合語を つくって いる ものは 数字を つかった かきかたに しても かまいません。

3-wari dasya(3割打者)
4-bu onpu(四分音符)
1.5 L botoru(1.5Lボトル)
10-nen teiki(10年定期)
24-zikan sei(24時間制)
1985-nen siki(1985年式)

日付と 時刻
Hizuke to zikoku

日付
Hizuke

ふつうの 日付は 数字を つかって かきます。「2月」nigatu に しないと いう 意味です。「日」は よみかたに したがって つづりが かわります。

「年」「月」「日」には 略語の n.(年),gt.(月),nt.(日)が あります。nt. は 記号の ような もので,「1日(ツイタチ)」「2日(フツカ)」などでも nt. です。

1964-nen, 1964 n.(1964年)
10-gatu, 10 gt.(10月)
4-ka, 4 nt.(4日:ヨッカ)
1969 n. 10 gt. 13 nt.
(1969年10月13日)

昔の 元号には 略語が あります。例:Mz.(明治),Tsy.(大正),Syw.(昭和)。ただし,いまは イニシャルの ほうが わかりやすいでしょう。

Mz. 18-nen, M18 n.(明治18年)
Tsy. 5-nen, T5 n. (大正5年)
Syw. 41-nen, S41 n.(昭和41年)
2011(H23) n.(2011(平成23)年)

文章の 中に かく 日付は よみかたが わかる 形に して,独立 して いる 日付は 略語を つかって みじかい 形に すると いいでしょう。

「偉大な母,偉大な娘」
「偉大な母,偉大な娘」(昔の 教科書)

文中の 日付は この かきかたが いいでしょう。

「巨人のあしあと 田中館愛橘博士逸話集」
「巨人のあしあと 田中館愛橘博士逸話集」

独立 した 日付は この かきかたが いいでしょう。

曜日にも 略語が あります。

Get.(月曜日) Kay.(火曜日)
Sui.(水曜日) Mok.(木曜日)
Kin.(金曜日) Doy.(土曜日)
Nit.(日曜日)
4 gt. 15 nt. (Kin.)
(4月15日(金曜日))

下に カレンダーの 例を しめします。こういう ときは デザインを 重視 して とめの印(.)を はぶいても かまいません。

日づけの あとに かく ときは もっと みじかく しても 意味が わかりますから,つぎの ように かいても かまいません。

G, Ka, S, M, Ki, D, N (月・火・水・木・金・土・日)
4 gt. 15 nt. (Ki)
(4月15日(金曜日))

カレンダーの 曜日なら すべて 1文字に しても かまいません。

G, K, S, M, K, D, N (月・火・水・木・金・土・日)


年数・月数を いう ときの「◯ヶ年」「◯ヶ月」は よむ とおりに kanen, kagetu です。

日付の「日」と 日数の「日」は 発音に あわせて niti, ka の どちらも つかえますが,日付の「年」「月」を 略語で かいたら「日」も 略語に して ください。日付の「日」nt. で かいて ある ばあいは よみかたに 気を つけて ください。

5-kanen(5ヶ年)
Heisei 5-nen(平成5年)
3-kagetu kakarimasu.
(3ヶ月かかります。)
3 gt. made kakarimasu.
(3月までかかります。)
Tanzyôbi made ato 2-ka desu.
(誕生日まであと2日です。)
Tanzyôbi wa 11-gatu 2-ka desu.
(誕生日は11月2日です。)
Tanzyôbi wa 11 gt. 2 nt. desu.
(誕生日は11月2日です。)

時刻
Zikoku

ふつうの 時刻は 数字を つかって かきます。「3時」sanzi に しないと いう 意味です。「分」は よみかたに したがって つづりが かわります。

2-zi 35-hun 40-byô(2時35分40秒)
6-zi 3-pun mae(6時3分前)
13-zi tyôdo(13時ちょうど)
gozen 8-zi han(午前8時半)

「6時になった?」
「6時になった?」(昔の 教科書)

みじかい かきかた
Mizikai kakikata

文中に かかれない 日付・時刻は 記号を つかって みじかく かいても かまいません。ただし,「12/3」の ような かきかたは「12月3日」か「3月12日」か はっきり せず,まちがいの もとです。そこで,国際標準(ISO 8601)の 書式に あわせて かく ことを おすすめ します。これなら かんちがいの 心配が なく,世界中に 通用 します。

2013-05-06(2013年5月6日)
2013-05(2013年5月)
13:25:40(13時25分40秒)
13:25(13時25分)

共通部分を まとめた ことば
Kyôtû bubun o matometa kotoba

「小・中学校」「小学校」「中学校」の 共通部分を まとめた かきかたです。ローマ字でも このように かきたければ,つぎの ように します。

syô-, tyû-gakkô(小・中学校)
syô-, tyû-, kôtô-gakkô
(小・中・高等学校)
mai-asa, -yû(毎朝・夕)
yu-syutu, -nyû(輸出・入)

中点(なかてん)は かかない ことも あります。ローマ字でも そのように かきたければ,全体を ひとつづきに かきます。

syôtyûgakkô(小中学校)
yusyutunyû(輸出入)
reidanbô(冷暖房)
tôkaihyô(投開票)

どちらの かきかたでも かまいませんが,どちらも よみやすいとは いえません。もっと いいのは 省略 しない ことです。

syôgakkô to tyûgakkô
(小学校と中学校)
yusyutu to yunyû
(輸出と輸入)
zyôsuidô to gesuidô
(上水道と下水道)

省略した 固有名詞
Syôryaku sita koyû meisi

漢字表記の 省略した 固有名詞が あります。「沙翁」「比島」などです。これは,できるだけ もとの 名前に もどして かきます。

ただし,「セ氏」「超ド級」の ように,完全に ひとつの ことばに なって いる ものは 発音の とおりに かきます。

sessi(セ氏<セルシウス)
tyôdokyû(超ド級<ドレッドノート)

文字を ふくむ ことば
Mozi o hukumu kotoba

かな文字を ふくむ もの
Kanamozi o hukumu mono

「ト音記号」「ト」など,かな文字を ふくむ ことばが あります。これは 発音どおりに かくだけでは わかりにくいので,つなぎ(-)を いれます。

to-on kigô(ト音記号)
hen-ho-tyôtyô(変ホ長調)
sa-gyô(サ行) i-onbin(イ音便)
ra-nuki-kotoba(ら抜き言葉)

外国の 文字を ふくむ もの
Gaikoku no mozi o hukumu mono

外国の 文字(ラテン文字や ギリシャ文字 など)を ふくむ ことばが あります。たとえば,「A案」「B級」「Tシャツ」「Uターン」「β線」などです。これらは,その 文字を そのまま つかって かきます。ただし,つなぎ(-)を いれます。

それが ラテン文字の ばあい,できれば イタリック体(斜体)に します。そう しないと,A-siki「A式」「ア式」か わかりません。

大文字と 小文字の 区別も します。小文字で はじまる 表記が 文の 先頭に くると,その 文は 小文字で はじまる ことに なります。

A-an(A案) T-syatu(Tシャツ)
X-sen(X線) γ-senγ線)
LC kairo(LC回路) SN-hi(SN比)
P-V-kyokusen(P-V曲線)
U-tân wa dekinai yo.
(Uターンは できないよ。)
n-zi no keisû o motomeru.
(n次の係数を求める。)


「偉大な母,偉大な娘」(昔の 教科書)

「X線」X-senと かいて います。

文字の 形を もとに した もの
Mozi no katati o moto ni sita mono

文字の 形を もとに した ことばが あります。たとえば,「大の字」「くの字」「8の字」などです。これを ローマ字で かく ときは つぎの ように すると いいでしょう。

zyûzika(十字架)
teiziro(丁字路)
kinzitô(金字塔)
dainozi(大の字)
kunozi ni(くの字に)
konozigata(コの字型)
kuti o henozi ni site
(口をへの字にして)
L-zigata(L字型)
gyaku-S-zi(逆S字)
V-zi kaihuku(V字回復)
8-nozi undô, hatinozi undô
(8の字運動)
4-nozi-gatame, yonnozi-gatame
(4の字固め)

「大の字」dai-no-zi と かけば さらに わかりやすく なりますが,かくのが すこし 面倒かも しれません。


漢字や かな文字の 形を もとに した ことばを ローマ字で かくと,視覚的な おもしろさが うしなわれて しまいます。「大の字」「川の字」を ローマ字で かいて いたら,だんだん ことばの 由来が わからなく なって いくかも しれません。これは おおきな 損失の ように おもえます。

しかし,それほど 深刻に ならなくても いいでしょう。ことばの 由来が わからなく なっても,ことば そのものが うしなわれる わけでは ありません。「金字塔」の 語源を 理解 して つかって いる 人は あまり いないでしょう。そう かんがえると,語源の 文字(漢字や かな文字)を かく 必要は ありません。英語でも delta(三角州)は ギリシャ文字の Δ を かかないで よみかたを かいて います。

頭字語
Tôzigo

頭字語とは,いくつかの 単語から 構成 される 語の 頭文字を つなげて つくられた ことばです。頭字語は イニシャリズムと アクロニムに わけられます。イニシャリズムは 文字を 1文字ずつ よむ もので,USA, NHK などです。アクロニムは 文字の ならびを ふつうの ことばの ように よむ もので,UNESCO, rader などです。頭字語は そのまま かきます。

専門家で ないと よみかたが わからない ような アクロニムは カタカナ語の ように かいても かまいません。専門家むけの 文章なら 遠慮は いりません。

USA(アメリカ合衆国)
NHK(日本放送協会)
UNESCO, Yunesuko(ユネスコ)
radar, rêdâ(レーダー)

外来語
Gairaigo

外来語は 完全に 日本語に なって いる ことばですから 外国語の つづりで なく 日本語(ローマ字)の つづりで かきます。

beddo(ベッド) miruku(ミルク) razio(ラジオ)
gâze(ガーゼ) meruhen(メルヘン) wakutin(ワクチン)
ankôru(アンコール) kurowassan(クロワッサン) zubon(ズボン)
birôdo(ビロード) pan(パン) tenpura(てんぷら)
orugôru(オルゴール) penki(ペンキ) randoseru(ランドセル)
interi(インテリ) kanpa(カンパ) noruma(ノルマ)
kyûkâbu(急カーブ)
kappumen(カップ麺)
simin sentâ(市民センター)
garasu sen'i(ガラス繊維)
hotto yoga(ホットヨガ)
têma pâku(テーマパーク)


「野球大会」(昔の 教科書)

ここでは 野球の「ショート」「プレイ ボール」syôto, purei bôru と かいて います。

外来語を ローマ字表記に する ときは 原つづりで かく ものだと おもって いる 人が おおい ようです。道路標識や 駅名標の ローマ字が じっさいに そう なって いる ことが あるので,かんちがい するのかも しれません。とくに 英語から 日本語に なった ことばは 原つづりを しって いる ことが おおいので,うっかり それを かいて しまう ことも ありますから,気を つけて ください。語源が おなじ ことばでも 言語が ちがえば 発音も つづりも ちがうのが あたりまえです。下の 例は Google翻訳で しらべた ものです。

「コーヒー」
coffee〔英語〕
café〔フランス語〕
Kaffee〔ドイツ語〕
kahvila〔フィンランド語〕
kôhî〔日本語〕

「タバコ」
tobacco〔英語〕
tabac〔フランス語〕
Tabak〔ドイツ語〕
tabaco〔ポルトガル語〕
tabako〔日本語〕

「テレビ」
television〔英語〕
telewizja〔ポーランド語〕
televizyon〔トルコ語〕
telebista〔バスク語〕
terebi〔日本語〕


外来語を 原つづりで かくのが おかしい ことは つぎの 例からも わかるでしょう。「マシン/ミシン」「アイアン/アイロン」「トラック/トロッコ」などは 原つづりで かくと よめません。「ビル」「ハンカチ」「コンビニ」なども もとの(省略 しない)つづりで かくと どう よんだら いいか わかりません。日本語の つづりなら ひとつづきに かける 複合語も 原つづりで かくと つなぎ(-)を いれなければ ならず,とても 不便です。もとの 外国語と かけはなれた 意味で つかわれて いる「アルバイト」「カルテ」「マンション」を 原つづりで かいて いいでしょうか。和製外来語の「シュークリーム」「テーマソング」「サラリーマン」を 原つづり(?)で かく 意味が あるでしょうか。「ガラス」「イギリス」の 原つづりは なんでしょうか。「ビー玉」「朝ドラ」は どう かけば いいでしょうか。

そして,なにより 大事な ことですが,日本語の つづりで かかないと 日本語が おとろえて しまいます。

masin(マシン) misin(ミシン)
aian(アイアン) airon(アイロン)
biru(ビル) hankati(ハンカチ)
haburasi,  ha-brush(歯ブラシ)
gêmuki,  game-ki(ゲーム機)
meronpan,  melon-pão(メロンパン)


外国人むけの 表示では 原つづりの ほうが いいと いう 意見も ありますが,これも まちがいです。英語には フランス語から はいって きた 借用語が たくさん あります。フランス人は 英文を よむ とき dance より danse の ほうが よみやすい はずですが,「フランス語の つづりを かけ!」とは いいません。それなら,日本語の つづりが dansu でも いいでしょう。


原つづりで 分かち書き されて いた ことばを その とおりに きりはなす 必要は ありません。「カフェオレ」「アラカルト」などを ローマ字で かく とき,原つづりを しって いると かきかたに まようかも しれませんが,それは かき手の 気もちで きめて かまいません。つなぎ(-)を つかっても いいでしょう。

kahweore(カフェオレ):
café au lait
arakaruto(アラカルト):à la carte
guranpuri(グランプリ):
grand prix
kûdetâ(クーデター):coup d'État
akapera(アカペラ):a cappella
bosanoba(ボサノバ):bossa nova
omu-raisu(オムライス):omelette + rice
têma-songu(テーマソング):Thema + song

カタカナ表記を ヒントに する 手も あります。たとえば,New York「ニュー・ヨーク」で なく「ニューヨーク」と かくのが ふつうですから,これに あわせて Nyûyôku に します。Santa Claus「サンタ・クロース」で なく「サンタクロース」と かくのが ふつうですから,これに あわせて Santakurôsu に します。


「手を振る機関車」(昔の 教科書)

ここでは San FranciscoSanhuransisuko と かいて います。

きりはした ほうが いい ものも あります。たとえば,化合物の 名前です。これは ひとつづきに かくと ながく なりすぎる ことが ありますから,適当な ところで きりはなすと いいでしょう。ただし,「~酸」「~化」san, ka は くっつけます。

sakusan (酢酸): acetic acid
enka natoriumu(塩化ナトリウム):
sodium chloride
2-sanka tanso(二酸化炭素):
carbon dioxide
pori(biniru arukôru)
(ポリビニルアルコール):
poly(vinyl alcohol)

外国語
Gaikokugo

ローマ字文の 中に 外国語の 語句を 原つづりの ままで かく ばあい,できれば イタリック体(斜体)に します。外国の 固有名詞(人名・地名 など)を 原つづりで かく ときも おなじです。専門家むけの 文章 などで,日本語訳の さだまって いない 専門用語を 英語の つづりで かく ばあいも ありますが,これも おなじです。

文を まるごと 引用 する ときは ふつうの ローマン体(立体)で かまいません。

Neko wa Katze desu.
(ネコは Katze です。)
McDonald's no kanban ga mieta.
(マクドナルドの看板が見えた。)

人に よって 発音が ことなる ことば
Hito ni yotte hatuon ga kotonaru kotoba

「言う」【イウ】と 発音 するでしょうか? それとも【ユウ】【ユー】に ちかい 発音を するでしょうか? じっさいの 発音は 人に よって ちがいます。このような ばあいに どう かくかと いう 問題が あります。

ふつう,「言う」iu と かきます。しかし,じっさいの 発音が【ユー】に ちかかったら その とおりに かく べきだと 主張 する 専門家も います。この サイトは どちらでも かまわない ことに します。かき手の 気もちで きめて ください。

いまの ところ,「言う」【ユワナイ】【ユイマス】【ユウ】の ように 活用 させる 人は すくない ようです。そこで,「そういう~」「~という~」など,「言う」の 意味が うすれて いる ものだけ よむ とおりに かいても いいでしょう漢字仮名交じり文で「そう言う~」「~と言う~」と かかないのは「言う」の 意味が うすれて いるからです。

iu, yuu(言う)
Sô yû koto ka.(そういうことか。)
Ningen to yû mono wa...
(人間というものは……)


「十戒」【ジュッカイ】と よむ 人が おおいでしょう。「消耗」「早急」「重複」の ように,まちがいが 一般に ひろまって よみかたが かわって いく ことばも あります。複合語の 中には 連濁の ありなしが 人に よって ちがう ものが あります。たとえば,「研究所」の 発音には【ケンキューショ】【ケンキュージョ】が あります。これらも かき手の 判断に まかせますかき手が まちがいに 気づいて いない ばあいは どちらでも いいと 説明 する 意味も ありませんが。

zikkai, zyukkai(十戒)
kenkyûsyo, kenkyûzyo(研究所)
sakkyû, sôkyû(早急)
tyôhuku, zyûhuku(重複)

ことばの ならべかた
Kotoba no narabekata

辞書・索引・名簿で 語句・項目・人名を ならべる ばあい など,ならべる 順序は ABC順です。五十音順では ありません。

順序を きめる ときは 長音を 母音字の 連続に おきかえ,きる印(') などを とりのぞき,大文字・小文字を 区別 しません。

1 aaa
2 aab
3 âcaac と かんがえる)
4 Aadaad と かんがえる)

人名の リスト(名簿 など)は,まず「姓」の ABC順で ならべ,つぎに おなじ「姓」の 人を「名」の ABC順で ならべます。外国人の 人名も「姓」に 相当 する 部分を 前に します。

1 Tanaka, Itirô
2 Tanaka, Saburô
3 Tanaka, Zirô
4 Tanakadate, Aikitu

語句や 人名の ならべかえには「ローマ字の ならべかえ」ツールを おつかい ください。

文章の かきかた
BUNSYÔ NO KAKIKATA

文・改行・段落
Bun, kaigyô, danraku


Bun

文の かきだしは 大文字に します。平叙文の 末尾には とめの印(.)を,疑問文の 末尾には といの印(?)を,感嘆文(ときには 命令文も)の 末尾には つよめの印(!)を かきます。漢字仮名交じり文では 疑問文・感嘆文の 末尾に 特別な 記号を かかないのが ふつうですから,記号を わすれない ように して ください。

これらの 記号の すぐ あとで 改行 しない ばあいは,記号と つぎの 文の あいだに 1文字分の 空白を いれます。

Sakura ga saita.(サクラが咲いた。)
Sakura wa saita?(サクラは咲いた?)
Sakura mo saita!(サクラも咲いた!)
Are ga zô da yo. Ôkii nê!
(あれがゾウだよ。大きいねえ!)


文の 途中の くぎりには くぎり(,),おおくぎり(;),ふたつ点(:)を つかいます。くぎり(,)は ちいさい くぎり,おおくぎり(;)は おおきい くぎりに つかいます。ふたつ点(:)は「すなわち」「つぎの とおり」と いいかえられる ような くぎりや 対比を しめす ときに つかいます。

これらの 記号の すぐ あとで 改行 しない ばあいは,記号の うしろに 1文字分の 空白を いれます。

Yamada kun, zabuton 2 mai.
Ame ga huttara, toriyame ni simasu.
Aoki, Inoue; Ueda, Endô no 2 kumi.
Tarinai mono ga aru: zyagaimo, miruku sore kara batâ mo.

改行
Kaigyô

改行 する とき,ひとつづきの つづりを 途中で きっては いけませんが,ながい つづりは 途中に つなぎ(-)を いれて その すぐ あとで 改行 できます。たとえば,「花屋」hana-ya の ように きりはなし,hana- までを 行末に かき,ya を つぎの 行頭に おくれます。これを 分綴と いい,その 規則を 分綴法と いいます。ハイフネーションと いった ほうが わかりやすいかも しれません。ワープロ機能が ついた ツールで 文章を かく ばあい,この 処理は 自動的に おこなわれますハイフネーションの ルールは 言語に よって ことなる うえに かなり 複雑な ことも あり,英語でも 正確な ルールが わかるのは 出版・印刷業界の 人 くらいだ そうです。


直音・拗音・長音は それより こまかく きりません。撥音・促音は 前に くっつけます。きる 位置に きる印(')が ある ときは それを とりのぞきます。きれる 位置を /で しめすと,つぎの ように なります。

yu/ki(雪) ha/na/bi(花火) ka/za/gu/ru/ma(風車)
kyo/ka(許可) syu/hu(主婦) gyo/gu(漁具)
kô/zi(工事) tô/hu(豆腐) sô/ko(倉庫)
hen/ka(変化) sin/sa(審査) gen/go(言語)
hap/pa(葉っぱ) gak/ki(楽器) zas/si(雑誌)
hon/ya(本屋;hon'/yahon/'ya に しない)

行末に 1文字だけ のこしたり,行頭に 1文字だけ おくったりは しません。分綴 された 行末が できるだけ 連続 しない ように します。ページの さかいめでも きりません。つまり,ひとつの ことばが ページを またがない ように します。

人名は つづりの 途中で 改行 しません。「姓」と「名」の あいだでも,名前と 敬称の あいだでも,できるだけ 改行 しない ように します。一部を イニシャルに した 人名は 改行 しても かまいません。

ie(家) aoi(青い) asa/gao(アサガオ)
Yamada Hanako山田花子Itô San伊藤さん)

数字の うしろに 記号が ついて いる ものは 数字の うしろの 空白で 改行 しません。たとえば,100 guramu100 の うしろで 改行 できますが,100 g100 の うしろで 改行 できません。

100/guramu(100グラム) 100 g(100グラム)

なるべく ことばの くみたてに したがって きる ように します。

yama/nobori (山登り; ya/manobori, yamano/bori などを さける)


ワープロ機能が ある ツールで 文章を かく ばあい,つぎに しめす 特殊な 文字が つかえます。

改行 しない 空白
その 位置で 改行 しない 空白です。人名の「姓」と「名」の あいだの 空白 などに つかいます。Microsoft Word は Ctrl+Shift+Space で 入力 できます。
ソフトハイフン
その 位置で きる 必要が ない(と 機械が 判断 した)ときには 何も 表示 せず,きった ほうが いい(と 機械が 判断 した)ときには つなぎ(-)を 表示 する 指定です。つづりの ながい ことばは きりの いい ところに ソフトハイフンを 挿入 して おくと いいでしょう。Microsoft Word は Ctrl+- で 入力 できます。ただし,きる印(')を とりのぞく 処理は できない ようです。

特殊な 記号の はたらきを たしかめる デモを つくりました。[デモ]ボタンで テキスト ボックスの はばが ゆっくり ちぢんで いき,それに つれて 改行位置が 自動的に かわります。特殊な 記号の ふるまいを みて ください。

Kare ga Yamada Tarô desu.

 YamadaTarô の あいだの 空白は「改行 しない 空白」です。

Asita minna de yama­nobori ni ikimasu.

 yamanobori の あいだに「ソフトハイフン」が いれて あります。

段落
Danraku

段落の 先頭では 数文字の 字さげ(インデント)を おこないます。ワープロ機能が ついた ツールで 文章を かく ばあい,この 処理は 自動的に おこなわれます。

  Ningyo wa, minami no hô no umi ni bakari sunde iru no de wa arimasen. Kita no umi ni mo sunde ita no de arimasu.
  Hoppô no umi no iro wa, aô gozaimasita. Aru toki, iwa no ue ni, onna no ningyo ga agatte, atari no kesiki o nagame nagara yasunde imasita.

段落に「両端ぞろえ」の 書式設定を すると,行末が そろって みばえが よく なります。書式設定が できない ときは 行末が 不ぞろいに なりますが,それでも かまいません。

記号
Kigô

ローマ字文で つかう 記号
Rômazi-bun de tukau kigô

ローマ字文で つかう 記号は すべて 半角の 記号です。これらの 記号には 日本語の 名前が ついて います。ただし,昔の 教科書でも 名前は 統一 されて いなかった ようです。いまの 学校は これらの 名前を おしえません。

下に 一般的な 名前と この サイトが すすめる 名前を しめします。

記号名前(一般的)名前(この サイト)
.とめ,とめの印,とめ点とめる印
?といの印,うたがいの印,みみとう印
!つよめる印,つよめの印,なみだつよめる印
,くぎり(ちいさく)くぎる印
;おおくぎりおおきく くぎる印
:ふたつ点くらべる印
-つなぎつなぐ印
'きる印,つまる印,ぬけ字の印きる印,つまる印,はぶく印
" "引用の印,しばり(ふたえの)ぬきだす印
' '一重の引用の印,一重のしばりひとえの ぬきだす印
( )括弧(まるい)まとめる印
[ ]角括弧しかくい まとめる印
^やまがたやまがた
¯ぼうよこぼう

漢字仮名交じり文で つかう 記号
Kanzi-kanamaziri-bun de tukau kigô

漢字仮名交じり文で つかう 記号は すべて 全角の 記号です。ローマ字文では あまり つかわない 記号も よく つかいます。これらを ローマ字文に かきなおす ばあい,記号を どのように かきなおしたら いいかを 例で しめします。


句点(。),疑問符(?),感嘆符(!)は つぎの ように します。

天気が いい。  → Tenki ga ii.
これですか?  → Kore desu ka?
わかった!  → Wakatta!


読点(、)は つぎの ように します。

はい、そうです。 → Hai, sô desu.
東京、大阪、名古屋
 → Tôkyô, Ôsaka, Nagoya
二、三人  → 2,3-nin
四、五時間  → 4-5-zikan


コンマ(,),セミコロン(;),コロン(:)は つぎの ように します。

東京,大阪,名古屋
 → Tôkyô, Ôsaka, Nagoya
二日で神戸,大阪;京都,奈良を回ります。
 → Hutuka de Kôbe, Ôsaka; Kyôto, Nara o mawarimasu.
明日は 雨だ:運動会は 延期だろう。
 → Asita wa ame da: Undôkai wa enki darô.


中点(・)は つぎの ように します。

東京・大阪・名古屋
 → Tôkyô, Ôsaka, Nagoya
ジョージ・ワシントン
 → Zyôzi Wasinton
三・一四  → 3.14国際標準化機構(ISO)の とりきめに よると,小数点の 記号には くぎり(,)を つかうのが 国際標準です。しかし,日本は とめの印(.)を つかって います。日本が この 習慣を あらためる までは,ローマ字文でも とめの印(.)に します。論文を かく ときは 規定に したがって ください。
二・二六事件  → 2.26 ziken
小・中学校  → syô-, tyû-gakkô または syôtyûgakkô または syôgakkô to tyûgakkô
元・総理大臣  → moto sôri daizin


等号(=)は つぎの ように します。

レヴィ=ストロース
 → Rebi-Sutorôsu
チェコ=スロバキア
 → Tyeko-Surobakia


ダッシュ(–,—)は つぎの ように します。

東京―大阪 → Tôkyô-Ôsaka
三十二―三十三ページ
 → 32-33 pêzi
その朝は――もう4月だったが――雪が降った。
 → Sono asa wa—mô 4 gatu datta ga—yuki ga hutta.

※ ダッシュには,すこし みじかい EN ダッシュ(–)と すこし ながい EM ダッシュ(—)が あります。範囲を しめす ときは EN ダッシュ(–),語句の 挿入や 引用を しめす ときは EM ダッシュ(—) と いう つかいわけが あります。ダッシュが つかえない ばあいは,1個 または 2個の つなぎ(-)で 代用 します。


波ダッシュ(~)は つぎの ように します。

100~200人 → 100-200-nin


リーダー(…)は つぎの ように します。

そう……ですか。 → Sô... desu ka.
おや,まあ…… → Oya, mâ...
……。 → ....
夏の大三角形……ベガ,アルタイル,デネブ
冬の大三角形……シリウス,プロキオン,ベテルギウス
↓ 
Natu no daisankakkei—Bega, Arutairu, Denebu
Huyu no daisankakkei—Siriusu, Purokion, Beterugiusu

※ 文中の 空白や 文末の 省略や 余韻を しめしたい とき,漢字仮名交じり文は 三点リーダー(…)を 2個 つなげた 記号を よく つかいますが,ローマ字文は とめの印(.)を 3個 つなげて つかいます。文末で 文の おわりを しめす ときは さらに とめの印(.)が くわわります。点線の イメージで もちいられて いる リーダーは ダッシュに おきかえます。


丸かっこ( ( ) )は つぎの ように します。

六月十日(土) → 6 gt. 10 nt. (D)


カギかっこ( 「 」,『 』 ),ノノカギ(〝 〟)は つぎの ように します。

「おはよう。」
→ "Ohayô."
「おはよう」と言った。
→ "Ohayô," to itta.
「火事だ!」と叫んだ。
→ "Kazi da!" to sakenda.
それは「危険」を意味する。
→ Sore wa "kiken" o imi suru.
判定は「B」です。
→ Hantei wa 'B' desu.
『漱石全集』の「明暗」
→ "Sôseki Zensyû" no "Meian"
月刊『養豚ジャーナル』
→ gekkan Yôton Zyânaru
スイッチを〝A〟に あわせた。
→ Suitti o 'A' ni awaseta.

※ 漢字仮名交じり文では とじる カギかっこの 前には 句点(。)を かかない ことが おおいのですが,ローマ字文は かならず とめの印(.)を かきます。その あとに 文が つづく ときは くぎり(,)を かきます。この 記号は といの印(?)や つよめる印(!)に なる ことも あります。

※ 書籍・雑誌の 名前と 作品・記事の 題名を かっこの 種類で 区別 する きまりは ありません。新聞・雑誌の 名前に かっこは いりません。


「夏の小半日」 (昔の 教科書)

ここでは「仕事」が 物理学の 専門用語で ある ことを しめして います。


引用符(“ ”, ‘ ’)は つぎの ように します。

“NO SMOKING”
 → "NO SMOKING"
判定は‘B’です。
 → Hantei wa 'B' desu.


方向の ある 引用符

※ 方向の ある 引用符(左側と 右側で ペアに なって いる もの)を もちいるかは 自由です。こまかい ことを いうと,引用符には いろいろな 形が あり,ヨーロッパの 言語でも 統一 されて いません。この サイトは 英語風の 引用符を つかって います。


かっこや 引用符が いれ子に なった ときに どう するかと いう 問題も ありますが,この サイトは そこまで こまかい 規則を きめて いません。

せりふ
Serihu

戯曲 などの せりふ は つぎの ように かきます。引用符は はぶいても かまいません。

A: "Kyô wa nan niti datta?"
B: "Sâ."
A: "Soko ni sinbun ga aru. Hizuke o mite goran."
B: "Dame desu yo. Kore wa kinô no sinbun desu kara."

わかりやすい ローマ字文の ために
WAKARIYASUI RÔMAZI-BUN NO TAME NI

ことばの いいかえ
Kotoba no iikae

耳で きいても わかる 文章
Mimi de kiite mo wakaru bunsyô

ローマ字文は 耳で きいても 意味が わかる 文章に します。漢字を みて はじめて 意味が わかる ようでは いけないので,同音異義語が おおい 熟語や「計(けい)」「講じる」などは やさしい ことばに いいかえます。和語にも いいかえた ほうが いい ことばが あります。

ただし,道路標識の ローマ字駅名標の ローマ字の ように,固有名詞(地名・駅名)の 表記を 国際化 する ばあいは,よみかたを そのまま ローマ字表記に します。外国語に 翻訳 しては いけません。

また,動画の 字幕,カラオケの 歌詞を 外国人むけに 表示 する ばあいも,よみかたを そのまま ローマ字表記に します。もっとも,これらは 耳で きいて 意味が わかる ことばを つかって いる はずですが。

日本語の 文章を ローマ字で かく 目的は「国語国字問題」で 説明 して います。

熟語
Zyukugo

ことばいいかえ例
移植/委嘱うつしかえる/ゆだねたのむ
異同/異動ちがい/役がえ,役がわり
改定/改訂あらため/つくろい
回答/解答へんじ/こたえ
解放/開放ときはなつ/あけはなつ
科学/化学かがく/ばけがく
鑑賞/観賞あじわう/たのしむ
機運/気運めぐりあわせ/なりゆき
起点/基点はじめ,おこり/基準点
驚異/脅威おどろき/おどし
好意/厚意このましさ/おもいやり
講演/公演とききかせ,レクチャー/みせもの,パフォーマンス
侯爵/公爵こうしゃく/きんしゃく
最小/最少もっとも ちいさい/もっとも すくない
私立/市立わたくしりつ/いちりつ
私案/試案わたくし案/こころみ案
収集/収拾あつめる/まとめる
終了/修了おえる/おさめる
紹介/照会なかだち/たしかめ,といあわせ
商品/賞品うりもの/ほうび
正当/正統ことわりただしい/ちすじただしい
全文/前文ぜんぶん/まえぶん
専有/占有ひとりじめ/わがもの
体制/態勢しくみ/かまえ,身がまえ,心がまえ
追求/追及おいもとめる/といただす,といつめる
特徴/特長もちあじ,特性,特色/とりえ,長所,利点
波線/破線なみ線/やぶれ線
配布/配付くばりひろめる/くばりつける
保証/保障うけあう/まもる
猟師/漁師けものとり/さかなとり

1文字の 漢語
1-mozi no kango

ことばいいかえ例
圧(あつ)おしつけ,圧力,プレッシャー
案(あん)かんがえ,もくろみ,提案,アイデア
餡(あん)あんこ,つぶあん,こしあん,くずあん
意(い)こころもち,意味
絵(え)さし絵,くち絵,あぶら絵,すみ絵,みず絵,絵画
縁(えん)えにし,ゆかり,つづきあい,へり,縁側
害(がい)わざわい,害毒
額(がく)金額,額ぶち
具(ぐ)うつわ,たね,具材
群(ぐん)むらがり,あつまり
気(き)気もち
苦(く)くるしみ
刑(けい)刑罰
計(けい)はかりごと,合計
系(けい)系統,システム
芸(げい)わざ,芸能,エンタメ
劇(げき)しばい,演劇
剣(けん)つるぎ,刀剣
券(けん)ふだ,てがた,きっぷ,カード
弦(げん)つる,ゆづる
験(げん)縁起
差(さ)ちがい,へだたり,さしひき
座(ざ)場所,位置,地位
氏(し)うじ
師(し)先生
死(し)死去,逝去,往生,永眠,他界,絶命
字(じ)文字
辞(じ)ことば
軸(じく)心棒,かけ軸,ペン軸,くき,かなめ
銃(じゅう)拳銃,小銃,鉄砲
塾(じゅく)学習塾
順(じゅん)みちすじ,順序,順番,シーケンス
序(じょ)はじめ,いとぐち
情(じょう)なさけ,まごころ
芯(しん)心棒
陣(じん)いくさ
税(ぜい)税金
贅(ぜい)贅沢
説(せつ)かんがえ,説明,論説,意見
栓(せん)とめ栓,元栓,中栓
祖(そ)はじめ,もと,祖先
台(だい)おき台,のせ台,ふみ台,かざり台
段(だん)くぎり,しな,きざはし,階段,段位
伝(でん)いいつたえ,やりかた
塔(とう)鉄塔,仏塔,宝塔
胴(どう)胴体
毒(どく)わざわい,毒薬,害毒
番(ばん)みはり,当番,順番
品(ひん)ひとがら,品格,気品
美(び)うつくしさ
便(びん)たより
法(ほう)法律
幕(まく)とばり,たれぬの,場面,おしまい
命(めい)いいつけ,命令
銘(めい)かきつけ,しるし,銘文
門(もん)でいりぐち,かど,いえがら
役(やく)役目,役割
乱(らん)騒乱,騒動,動乱
利(り)もうけ,利点,利益
理(り)ことわり,すじみち
論(ろん)議論,理論,論説

ことばいいかえ例
圧するおさえつける
逸するのがれる,はなれる,はなす,うしなう
映ずるうつる,うつす
応ずるこたえる,したがう,あてはまる
臆するおじける,気おくれ する
概しておおむね,ひっくるめて
介するさしはさむ,仲だちに する
会するあう,であう,よりあう
解するわかる,理解 する
害する傷つける
画するくわだてる,くぎる
架するかけわたす
課するおわせる
期する予期 する,約束 する
帰するおちつく,おしつける
擬するまねる,みせかける,なぞらえる
喫するたべる,のむ,すう,こうむる
窮するいきづまる
供するそなえる,さしだす,役だてる
興ずるおもしろがる
饗するもてなす,ふるまう
御するおもいどおりに する
禁ずるとどめる,さしとめる
寓するかこつける,ことよせる
遇するもてなす,あつかう
具するそなわる,そなえる,つれて いく
決するきまる,きめる
献ずるたてまつる,さしあげる
滅ずるへる,へらす
抗するさからう,あらそう
講ずるかんがえる,とりきめる
高ずるたかまる
号する名づける,いいふらす
策する画策 する
察するおしはかる,おもいやる
産するうまれる,うみだす
資するたすけと する,役だてる
辞するやめる,ことわる
失するうしなう
祝するいわう,ことほぐ
熟するうれる,ととのう,なれる
準ずるのっとる,なぞらえる
称するとなえる,よぶ,いう
乗ずるつけいる,つけこむ
生ずるうむ,うまれる,おこす
処するとりさばく,処理 する,対処 する
制するさだめる,おさえる,とどめる
製するつくる,こしらえる
接するつながる,まじわる,でくわす
絶するたえる,つきる,かけはなれる
奏するかなでる,なしとげる
則するしたがう,のっとる
即するぴったりと つく
託することづける,かこつける,ことよせる
断ずるきめる,裁断 する,断行 する
談ずるはなす,はなしあう,かけあう
通ずるとどく,むすびつく,しりつくす
呈するさしだす,あらわす
転ずるまわる,まわす,ころぶ,ころばす,反対に なる
投ずるなげこむ,つぎこむ,つけいる,つけこむ,あう
動ずるおそれあわてる
任ずるひきうける,ひきうけさせる,まかせる
念ずるいのる,おもいつづける
廃するすてる,やめる,やめさせる
拝するおがむ,ありがたく うける,つつしんで みる
排するおしのける,しりぞける
配するくばる,とりあわせる
博するえる,ひろめる
発するはじまる,はじめる,だす,はなつ
比するくらべる,なぞらえる
秘するひめる,かくす
表するあらわす,しめす
評する品さだめ する,批評 する
瀕するせまる,のぞむ,ちかづく
封ずるとじこめる,やめさせる
伏するかがむ,かくれる,降伏 する
復するもとへ もどす,くりかえす,しかえし する
服するつきしたがう,ききいれる,うちなびく
扮するよそおう,扮装 する
変ずるかわる,かえる
弁ずるわきまえる,はからう,のべる
報ずるむくいる,しらせる
奉じるささげる,たてまつる,まかなう
命ずるいいつける,名づける
免ずるゆるす,やめさせる
黙するだまる,もだす
目するみる,みなす
模するにせる,まねる
約するたばねる,はぶく,約束 する
有するもっている
擁するかかえる,ひきいる
要する必要と する
浴するあびる,うける
利する利益を あたえる
律するおきてを さだめる
略するはぶく,かんたんに する
列するならぶ,つらなる
労するはたらく,骨を おる
弄するもてあそぶ,からかう,あざける
和するおだやかに なる,調子を あわせる

「ずる」「じる」に かえた ことばも おなじです。

「決する」「失する」など,同音異義語が ない ものは そのままの ローマ字表記でも 意味が わかります。しかし,漢字の 知識を 自慢 する ような ことばなので,できるだけ いいかえる よう,おすすめ します。(「decide する」「lose する」などと いって 英語の 知識を 自慢 するのと おなじだと いう 意味です。)

1文字の 漢字で あらわした 人名・地名
1-mozi no kanzi de arawasita zinmei, timei

人名・地名を 1文字の 漢字で あらわして いる ことばは もとの 名前に もどします。「英語」の ように 定着 して いる ものや「信越」の ように もとに もどしても わかりやすく ならない ものは そのままで かまいません。

Syêkusupia (Shakespeare) (沙翁)
Ri Haku (Li Bai), To Ho (Du Fu) (李杜)
Aomori-Hakodate renrakusen
(青函連絡船)
Nihongo-Huransugo ziten
(日仏辞典)
Nippon-Doitu-Itaria Sangoku Dômei
(日独伊三国同盟)

1拍の 和語
1-paku no wago

和語でも みじかすぎる ものは 助詞 などと みわけにくく なる ことが あります。ばあいに よって,いいかえを おすすめ します。

ことばいいかえ例
柄(え)とって,ハンドル
江(え)いりえ
尾(お)しっぽ
緒(お)ひも,はなお
木(き)たちき,こだち,樹木,木材
毛(け)かみのけ,頭髪
子(こ)こども
粉(こ)こな
巣(す)かくれが
酢(す)おす
背(せ)せなか,せたけ
田(た)たんぼ
血(ち)ちしお,ちのけ,ちのり
手(て)てのひら,こぶし,うで
戸(と)とびら,ひらきど,ひきど,おりど
名(な)なまえ
菜(な)あおな,なっぱ
荷(に)にもつ
根(ね)ねっこ,ねもと
音(ね)おと,なきごえ
野(の)のはら,のべ
葉(は)はっぱ
刃(は)やいば
羽(は)はね
端(は)はし,はた,へり
火(ひ)ほのお
日(ひ)ひづけ,ひどり
舳(へ)へさき
間(ま)あいだ,いとま,すきま,ころあい
身(み)からだ
実(み)きのみ,このみ,たね,さね
目(め)めだま,めつき,まなざし,あみめ
芽(め)めばえ,ふたば,新芽
喪(も)とむらい
矢(や)ゆみや,やじり,やはず,やがら
湯(ゆ)おゆ,さゆ,いでゆ
世(よ)よのなか,世間
夜(よ)よる,やみよ,つきよ,くらやみ
輪(わ)わっか,わがた,リング,サークル

省略 した ことば
Syôryaku sita kotoba

「就活」「東大」の ように 省略 した ことばは,あたらしい 熟語を つくって いるのと おなじで,同音異義語を ふやします。例:「就活/終活」「当確/倒閣」。このような ことばは できるだけ さけて,省略 しない いいかたに します。

syûsyoku katudô(就活)
tôsen kakuzitu(当確)
Kanzi Kentei(漢検)
Tôkyô Daigaku(東大)


「電卓」「地下鉄」の ように 定着 して いる もの,「特急」「魚雷」の ように もとの ことばを 意識 しないで(あるいは しらずに)つかって いる ものは そのままで かまいません。「パソコン」「リモコン」の ように 外来語を 省略 した ことばも,もとの ことばを 意識 して いないので,そのままで いいでしょう「パソコン」「リモコン」「エアコン」「マザコン」「コン」は 同音異義語 みたいな ものですが,「コン」だけで つかう ことは ないので 問題が おこりません。

dentaku(電卓)
tikatetu(地下鉄)
tokkyû(特急)
gyorai(魚雷)
pasokon(パソコン)
rimokon(リモコン)

あたらしい ことば
Atarasii kotoba

あたらしい ことばの 中には 専門的すぎて わかりにくい ものが あります。とくに 外国語を そのまま カタカナ表記に した ことばは もとの 外国語の 意味が わからない 人に つたわりません。このような ことばは できるだけ さけて,わかりやすい ことばで いいかえる ように して ください。

ことばいいかえ例
オーバーシュートいきすぎ
クラスターかたまり
ソーシャルディスタンスへだたり
ロックダウンとじこめ

ふるい ことば
Hurui kotoba

ふるい ことばで 時代に そぐわなく なって きた ものは いいかえを すすめて いくと いいでしょう。

ことばいいかえ例
主人つれあい,おっと
家内つれあい,つま
旦那さんおつれあい
奥さんおつれあい

文の 構造を わかりやすく する
Bun no kôzô o wakariyasuku suru

ローマ字文に かぎらず,複文・重文や 修飾節の おおい 文は ながく なります。そして,ながい 文は 構造が わかりにくく なりがちです。文の 構造を わかりやすく するには,文を みじかく するのが 一番です。40文字とか 50文字とか(漢字仮名交じり文で),具体的な 目安を きめて みじかい 文を こころがけて いる 人も います。

くぎり(,)や おおくぎり(;) で くぎる ことでも 文の 構造を わかりやすく できます。声に だして いうと したら,くぎりの ところで 一瞬の すきまを あけて 発音 する はずです。その すきまを 記号で しめして いると かんがえても いいでしょう。意味の ちがいを みた目の ちがいで あらわして いるのでは ない ことに 気を つけて ください。

Boku no uti ni aru huruido kara dete kita koban ga aru.
(僕の うちに ある 古井戸から でて きた 小判が ある。)
Boku no uti ni, aru huruido kara dete kita koban ga aru.
(僕の うちに,ある 古井戸から でて きた 小判が ある。)