ラテン文字

ラテン文字とは

ラテン文字とは いわゆる アルファベットの ことですが,ラテン アルファベットと いう ほうが 正確です。アルファベットとは 表音文字の ことで,たくさんの 種類が あります。日本の かな文字(ひらがな,カタカナ)も ひろい 意味の アルファベットと かんがえる ことが できますひろい 意味の アルファベットは かな文字や ハングルなどの 音節文字まで ふくみます。一般に アルファベットと いえば 音素文字(ラテン文字,キリル文字,ギリシャ文字,アラビア文字など)を 意味 します。学者も これに ちかい 意味で いいます。せまい 意味の アルファベットは ラテン アルファベットです。


ラテン文字は 26文字の セット(集合)ですこまかい ことを いうと,「文字」という ことばには,(1)「漢」「あ」「A」などの 単独の 文字,(2) 単独の 文字を いくつか ならべた もの,そして (3) おなじ 種類の 文字を すべて まとめた 集合,以上の 3段階が あります。これらを 区別 したい ときは,(1)を「文字要素」 または 単に「文字」,(2)を「文字列」,(3)を「文字集合」と よべば いいでしょう。この いいかたを つかうと,ラテン文字は 文字集合です。。大文字(おおもじ)と 小文字(こもじ)が あります。大文字と 小文字の 発音は おなじです。このままの 形で つかう だけで なく,文字の 上や 下に 符号を つけくわえる ことも あります言語に よっては 26文字に 特殊な 文字を つけくわえる ことも あります。たとえば,ドイツ語では ß という 文字が くわわります。

大文字:
ABCDEFGHIJKLMN​OPQRSTUVWXYZ
小文字:
abcdefghijklmn​opqrstuvwxyz

ローマ字を 書くとき,26文字の すべてを つかう わけでは ありません。訓令式普通の 書きかたでは 19文字を つかいます。


ラテン文字 そのものを「ローマ字」と よぶ ことも ありますが,この サイトでは 文字は「ラテン文字」と よぶ ことに しています。

ラテン文字と 言語

ラテン文字は なぜ ラテン文字なのかと いうと,ローマ帝国の 時代に ラテン語を 書きあらわすのに つかわれた 文字だからです。ラテン語は 死語に なりましたが,ラテン文字は ほかの 言語に とりいれられて いきのこりました。

現在,ラテン文字を つかって 書く 言語の 代表は 英語です。このほか,スペイン語,ポルトガル語,フランス語,イタリア語,ドイツ語,オランダ語,デンマーク語,スウェーデン語,ノルウェー語,アイスランド語,ポーランド語,チェコ語,スロバキア語,スロベニア語,クロアチア語,ラトビア語,リトアニア語,アイルランド語,バスク語,マジャール語,スオミ語,エストニア語,アルバニア語,ルーマニア語,インドネシア語,ベトナム語,トルコ語,タガログ語,マレー語,スワヒリ語などが ラテン文字を つかいます。

ラテン文字の 世界分布
ラテン文字の 世界分布

図は ラテン文字を つかって 書く 言語の ひろがりを しめしています。くらい 緑色の 地域は ラテン文字 だけを つかっています。あかるい 緑色の 地域は ラテン文字と ほかの 文字を つかっています。灰色の 地域では アラビア文字,キリル文字,漢字などを つかっています。


ラテン文字は 世界中で つかわれる ように なったので,今では 世界共通の 文字と みなされています。数値を 書きあらわす アラビア数字(算用数字)と おなじ ように,どこかの 地域に うまれて 発達 した システムで ありながら,世界に ひろまった スタンダード(標準)です。

このような システムが 世界の 標準に なるには 条件が あります。それは「発祥の 地」の 文化を ひきずっていない ことです。たとえば,インドうまれの アラビア数字が 世界の 標準に なれたのは,それが インドの 文化と むすびついていないからです。メートル法が 世界の 標準に なれたのは,それが 人工的に つくられた もので,(建前としては)特定の 文化と むすびついていないからですある システムが 特定の 文化と むすびついていたら,それは 世界の 標準に なれません。たとえば,英語は 世界中で つかわれていますが,英語圏の 文化と むすびついているため,世界共通の 言語に なる 資格が ありません。西暦(グレゴリオ暦)は おおくの 先進国で つかわれていますが,特定の 宗教と むすびついている ため,世界共通の 暦に なる 資格が ありません。

ラテン文字の ほかに 便利な 文字が なかった わけでは ありません。また,世界中の 言語を 書きあらわす 役割の おおきさを かんがえると,ラテン文字には 機能の 面で すこし たりない ところが あります。にも かかわらず,ラテン文字が 世界の 標準に なれたのは なぜでしょうか? それは たまたま 有力な 国々が ラテン文字を つかっていたからです帝国主義の 時代に 有力な 国の 言語と 文字が 植民地に ひろまった 事情も あります。

ラテン文字の 名前

ラテン文字は 音声を あらわす 表音文字で,音声と 文字が 対応 しています。けれども,その 対応関係は 簡単では ありません。おなじ 文字を つかっていても,それぞれの 文字を どのように 発音 するかは 言語に よって ことなるからです。このため,文字の よびかた(名前)も 言語に よって ちがいます。

たとえば,A, B, C は,英語では〈エー,ビー,スィー〉と いいますが,ドイツ語では〈アー,ベー,ツェー〉,フランス語では〈ア,ベ,セ〉,イタリア語では〈ア,ビ,チ〉,と いった 具合に ばらばらです。

日本語では どう なるのかというと,つぎの ように なります。3種類を しめします:

ABCDEFG
アーベーセーデーエーエフゲー
アーベーセーデーエーフーゲー
HIJKLMN
ハーイーヨーカーエルエムエン
ハーイーヨーカールーマーナー
OPQRSTU
オーペークーラーエステーウー
オーペークーラーサーターウー
VWXYZ
ブイワーエッキスヤーゼット
ボーワーキーヤーゼー

この 名前を おぼえる 必要は ありません。小学校でも おしえていない はずです。ひとつめは 昔の 文部省が かんがえていた 案,ふたつめは ローマ字論者 田丸卓郎による もの,みっつめは この サイトの 提案ですきめかたは つぎの とおり:(1) すべて 長音に する; (2) 母音は そのままの 音を つかう A, I, U, E, O); (3) 清音は ア段の 音を とる K, S, T, N, H, M, Y, R, W); (4) 濁音と 半濁音は エ段の 音を とる G, Z, D, B, P); (5) 通常 訓令式で つかわない 文字は そのほかの 名前に する C, F, J, L, Q, V, X); (6) 子音は 英語式の 名前と かさならない ように する(母音は かさなっても しかたが ない)。。ほかにも いろいろな かんがえが ありました。今の ところ,公式の ものは ありません。

ここで おぼえてほしいのは,ローマ字の A, B, C は 本当は〈エー,ビー,スィー〉では ない ことです。ローマ字は 日本語で あって,英語では ないからです。ローマ字を 英語の 入門だと 勘ちがい している 人は おおいのですが,文字の 名前を 英語式に している ことに 原因が あるのでは ないかと おもわれます。


ところで,文字の 名前を おしえないで 一体 どう やって 小学生に ローマ字を おしえるのか,不思議に おもいませんか? 先生が こまるんじゃ ないかと 心配 する 人も いるでしょう。

けれども,訓令式ローマ字なら 先生が こまる ことは ありません。まず,A, I, U, E, O を〈ア,イ,ウ,エ,オ〉と おしえ,つぎに K を「カキクケコの 印」,S を「サシスセソの 印」,T を「タチツテトの 印」という ふうに 説明 できるからです。

そうは いっても,やはり 文字に 名前が ないと 不便ですから,英語式の〈エー,ビー,スィー〉が つかわれているのが 現実です英語式の 名前と 日本語式の 名前を ふたつも おぼえるのは 無駄じゃ ないかと おもう 人も いるでしょう。しかし,ラテン文字は 英語専用の 文字では ありません。それに,英語式の 名前は 日本語と 発音が うまく 対応 しません。母音は 発音が まったく ちがいます。子音も G(ジー),H(エイチ),W(ダブリュー)などは 発音と あいません。フランス語を ならう ときに A, B, C を〈エー,ビー,スィー〉と いうでしょうか? ローマ字を ならう ときも 本当は 日本語式の 名前を つかう べきでしょう。

英語式の 名前は 日本語の 発音と うまく 対応 しませんから,つかいにくい ところが あります。本当なら,日本人に とって つかいやすい 日本語式の 名前が つくられていなければ ならないのですが,そんな 明治時代からの 宿題が まだ できていません。


D を〈デー〉または〈ダー〉,T を〈テー〉と いう ことも あります。昔の 日本語には〈ディ〉〈ティ〉という 発音が なかったので,上の 文部省の 案などでも そうですが,〈デー〉〈テー〉と いっていました。それが 今でも のこっているのだと おもわれます。〈ダー〉は ききまちがいを ふせぐために 一部の 業界で つかわれています。誤解が なければ,これらを つかっても かまいません。

書体と 書きかた

活字体

印刷 されている ラテン文字の 書体を 活字体と よびます。これには,「セリフ」と よばれる ヒゲかざりを もつ「セリフ書体」と,それを もたない「サンセリフ書体」が あります「サン」は フランス語で「~のない」という 意味です。

セリフ書体
活字体(セリフ書体)

サンセリフ書体
活字体(サンセリフ書体)

ブロック体

ローマ字を 手書き する ときは ブロック体で 書きます。

ブロック体
ブロック体(マヌスクリプト体)

昔は ブロック体を「マヌスクリプト(manuscript)体」とか「マヌ体」と よんでいました。「マヌスクリプト」とは「手書き」の 意味です。活字の 印刷に 対する 手書きという 位置づけです。

下の テキスト ボックスに ラテン文字で 何か 書きこんでみて ください。ブロック体風の 書体で 表示 します。

筆記体

筆記体は つづけて 書ける 形を しているので,すばやく 書けます。ただし,書く 人の くせが でやすく,読みにくい 欠点が あり,あまり このまれません。漢字と かな文字の「つづけ字」が 敬遠 されるのと おなじです一般に,あらたまった 文書は 手書きの 文字が よく,特に 目上の 人への 手紙などは 手書きでないと 失礼だ,という かんがえが あります。これは 外国でも おなじ ようです。けれども,それは 形式の 話で,実際には 読みにくい 文字は 歓迎 されません。

筆記体
筆記体

手書きの 文字で 情報を つたえる ときに もっとも 大切な ことは 読みやすさ です。書きやすさと うつくしさは あとまわしに します。この 理由から,他人に 読んでもらう 文章は 筆記体で 書かないのが 基本です最近は 外国人でも 筆記体を つかう ことは すくなく なっています。昔は はやく 書きたい ときに 筆記体を つかったのですが,今は 機械を つかえば はやく 処理 できるからです。また,昔は ペンで 文字を 書いていた ことも 筆記体が つかわれた 理由だと いわれています。ペン先を 紙から できるだけ はなさない ほうが インクが よく でて 書きやすいからです。今は ペンを つかう ことも ありませんから,この 意味でも 筆記体を つかう 理由が なくなっています。

自分用の メモや 友人あての 手紙などで あれば,書きやすさを 優先 して,筆記体で 書いても かまいません。逆に,本人確認の 署名などで わざと 筆跡の くせを だしたい 場合は,筆記体で 書く ように しても いいでしょう外国で 署名を する ときは 漢字や かな文字で 書く 手も あります。まね されにくいからです。

下の テキスト ボックスに ラテン文字で 何か 書きこんでみて ください。筆記体風の 書体で 表示 します。

装飾的な 書体

うつくしさや おもしろさが もとめられる 場合も あります。グリーティング カードや 広告などの 文字が そうです。これらには 装飾的な 書体を つかう ことが あります。

装飾的な 書体
装飾的な 書体

下の テキスト ボックスに ラテン文字で 何か 書きこんでみて ください。装飾的な 書体で 表示 します。

書体の 比較

下に 活字体,ブロック体(マヌスクリプト体),筆記体の 比較表を しめします。

活字体,ブロック体,筆記体
活字体,ブロック体,筆記体

ローマン体と イタリック体

普通の ラテン文字は 垂直に たった 形を しています。これを ローマン体(または 立体)と いいます。これとは ちがって,すこし 右に かたむいた 形を した 字体も あります。これは イタリック体(または 斜体)と いいます。

Rômazi Aiueo(ローマン体)
Rômazi Aiueo(イタリック体)

ローマ字文は ローマン体で 書きますが,外国語の 語句を ふくむ ときは そこだけ イタリック体で 書く ことが あります。そう やって 外国語の 部分を みわけやすく します。

Neko wa Supeingo de gato desu.
(猫は スペイン語で gato です。)

書きかた

漢字かな交じり文は 縦にも 横にも 書けますが,ローマ字文は 横にしか 書けませんから,かならず 横書きです。左から 右に すすんでいく 左横書きに します。行は 上から 下へ,ページは 左から 右へ すすみます。したがって,本は 左とじに なります。

書き順

ラテン文字に きまった 書き順(筆順)は ありません。ブロック体は 自由な 書き順で 書けますから,書きやすい ように 書いて かまいません。インターネットで 公開 されている 初級英語の 教材には すぐれた ものが たくさん あります。それらを 手本に して ください。[参考-1 ][参考-2

ラテン文字を 書く 練習

ラテン文字が はじめての 人や 書きなれていない 人は 英語用の 罫線つきノートを つかって 練習 すると いいでしょう。わざわざ ノートを かうのは ちょっと,という 人の ために 罫線ページを 提供 しています(PDFファイル)。印刷 して おつかい くださいPDFファイルの 表示と 印刷には Adobe Acrobat Readerを インストール する 必要が あります。インストールの 途中で ほかの ソフトも インストール する ように すすめられますが,これは PDFファイルと 関係 ないので いりません。

文字の 練習では つぎの ような 点を 目標に しましょう:

すばやく 書くとか うつくしく 書くとか,そういう ことは かんがえなくて かまいません日常の 生活で 文字を すばやく 書かなければ ならない ことは まず ないでしょう。また,文字の うつくしさに 基準は ありません。。なお,文字を 丁寧に 書くのは よい 心がけですが,文字には 人柄が あらわれる,などの かんがえは しりぞけて ください。

こどもに 文字の 練習を させる とき,たかすぎる 目標を さだめると,こどもに 劣等感を うえつけて しまうかも しれません。他人が まちがいなく 読める 文字が 書ける ように なったら,それで 十分です。

左ききの 人は 文字(特に 筆記体)を お手本どおりに 書くのが むつかしいかも しれません。文字を 書くという 身体運動 そのものが あまり 得意で ない 人も います。教師や 保護者は この 点も 心に とめておいて ください。

長音符号つき文字と 代用表記

ローマ字は 符号の ついた 特殊な 文字を つかいますが,パソコンなどの 機械で これを 入力 するのが むつかしい,という 問題が あります。これに ついては「長音符号つき文字」で 説明 しています。

この サイトは 長音符号つき文字を ふくむ ローマ字文の 入力が しやすい ように つくられた「メモ帳」(テキスト エディター)を 公開 しています。

「メモ帳」を つかう


長音符号つき文字は あつかいにくいので,これを つかわないで ローマ字を 書く やりかたも あります。たとえば,「太郎」「優子」は Tarô, Yûko と 書きますが,特殊な 文字が つかえない ときは,その かわりに Taroo, Yuuko と 書いても かまいません。

この まにあわせの 書きかたは「代用表記」で 説明 しています。

【読み物】切手の ローマ字

日本が 発行 した 切手には NIPPON と 書いてあります。切手には それを 発行 した 国や 地域の 名前を ラテン文字で しるす,という ルールが 万国郵便条約で さだめられているからです。

ただし,言語は きまっていません条約では「ローマ文字で記載された発行郵政庁の属する加盟国又は地域の名称」を 書く ことに なっています。この「ローマ文字で(英: in roman letters)」の 解釈が 国に よって ちがう らしく,ヨーロッパの 国は それぞれの 言語で,日本も 日本語で 書いていますが,中国や 韓国は 英語で 書いています。。英語で 書く ルールに なっていない 理由は,万国郵便条約が できた 当時は フランス語が もっとも つよい 言語だったからです。ですから,国際郵便の あて先は フランス語で 書いても いい ことに なっています。「日本」が JAPON と 書いてあるのを みた ことが ある 人も いるでしょう。

「日本」の 読みかたを〈ニッポン〉に きめたのは 昔の 郵政省です1965年の ことです。それより 前の 1934年に 文部省も〈ニッポン〉と きめていましたが,このときは きめかたが 不完全でした。NIHON は 欧米の 人に 正しい 発音で 読まれにくい つづりなので NIPPON に きまったと いわれています切手に〈ニッポン〉と 書かれる ように なったのを しって,絶対に〈ニホン〉だと いいはって おおさわぎ する 人も いました。そのためか わかりませんが,今は「日本」が〈ニッポン〉か〈ニホン〉かを きっちり きめない ことに きまっています。これでは 外国人が こまるのですが,自分の 感情を すっきり させる ことしか かんがえていない 一部の 日本人に とって,そんな ことは どうでも いいのでしょう。

図は ヨーロッパの 国が 発行 している 切手です。

切手1切手2
切手3切手4
ヨーロッパの 切手