ローマ字とは

ローマ字の 定義

ローマ字
ローマ字

そもそも ローマ字とは 何でしょうか? ローマ字は 日本語の 書きかたの ひとつで,日本語を ラテン文字で 書く 方法です。また,そのように 書かれた 日本語です。ラテン文字とは いわゆる アルファベット(ABC...)の ことですより 正確には「ラテン アルファベット」と いいます。せまい 意味の アルファベットは ラテン アルファベット(ラテン文字)の ことですが,ひろい 意味の アルファベットは 表音文字の ことで,音節文字まで ふくみます。たとえば,ジャパニーズ アルファベットは かな文字を,コリアン アルファベットは ハングルを 意味 します。学問的には 音素文字を アルファベットと よんでいます。


かな文字
かな文字(カタカナ)

日本語の 文を 書く とき,普通は 漢字と かな文字(ひらがな,カタカナ)を つかいます「かな文字」は すこし 変な ことばです。「名(な)」は「字」の ふるい よびかたで,昔は 漢字を「真名(まな)」,ひらがな を「仮名(かな)」と いいました。「仮名」は「字」の 意味を ふくんでいます。ですから,「かな文字」だと「字」の 意味が だぶって しまいます。漢字で「仮名」とだけ 書けば いい ような ものですが,「仮名」は「かりな」「かんな」とも 読めるだけで なく,ちがう 意味の「カメイ」「ケミョウ」とも 読めて しまう,ダメな 漢字表記の 見本です。だからと いって,ひらがなで「かな」と 書けば,助詞の ように みえて しまい,別の 意味で 読みにくく なります。そこで,この サイトでは「かな文字」と 書く ことに しました。これも 昔から つかわれている ことばです。ただし,「現代仮名遣い」など 正式名称が「仮名」に なっている 場合は「かな文字」には していません。。けれども,そう しなければ ならないと きまっている わけでは ありません。ちいさい こどもむけの 絵本は かな文字 だけで 書いてあるでしょう。それと おなじ ように,日本語を ラテン文字 だけで 書く ことも できます。それが ローマ字です。

点字
点字

漢字と かな文字で 書かれた「漢字かな交じり文」と おなじ ように,かな文字 だけで 書かれた「かな文字文」や ラテン文字 だけで 書かれた「ローマ字文」も 立派な 日本語です。すこし 特殊な ものでは,点字に よる「点字文」も あります。日本語の 書きかたには いろいろな 方法が ある わけです。

日本語は 漢字かな交じり文で 書く ものだと おもっている 人が おおいかも しれません。しかし,それは 勝手な おもいこみです。実は,日本語の 書きかたに「正しい 書きかた」という ものは ありません。極端な 例ですが,選挙の 投票用紙に 候補者や 政党の 名前を ローマ字で 書いたって かまいません1920(大正9)年に 大審院(今の 最高裁判所)が ローマ字に よる 投票を 有効と する 判決を だしています。

ラテン文字,ローマ字,ローマ字文

ラテン文字 そのものを ローマ字と よぶ ことも よく あります。「漢字,ひらがな,カタカナ,ローマ字」と ならべて いう ときの「ローマ字」は これです。さらに,ローマ字で 書かれた 文を ローマ字と よぶ ことも あります。石川啄木の「ローマ字日記」を みて「英語かと 思ったら ローマ字なのね。」と いう ときの「ローマ字」は これです。

このように,「ローマ字」という ことばは いろいろな 意味で つかわれています。もともと「ローマ字」は 文字の 名前でしたが,その ローマ字で 日本語を 書く 方法や,その 方法で 書かれた 日本語を 単に「ローマ字」と いう ことが おおく なり,ややこしく なって しまった わけです。

そこで,この サイトは 文字の ローマ字を ラテン文字と よぶ ことに しました。そして,ラテン文字で 日本語を 書く 方法や,その 方法で 書かれた 日本語を ローマ字と よび,ラテン文字だけで 書かれた 日本語の 文を「ローマ字文」と よびます。

普通は すべて ローマ字で 通じますが,誤解を まねく ことも ありますから,気を つけて ください。ローマ字の つもりで いったのに ラテン文字の 意味に とられたり,その 逆だったり する ことは よく ありますラテン文字」は 専門用語 みたいで むつかしい,と 感じるので あれば,「ローマ文字」でも いいでしょう。これ だけでも 誤解は すくなく なります。「ギリシャ文字」「アラビア文字」「マヤ文字」の ように「~文字」に すれば わかりやすいでしょう。日本では ラテン文字の ことを「アルファベット」と よぶ ことも おおいのですが,これは 学者が つかう 意味と ちがい,誤解を まねく ことが あるため,おすすめ しません。

また,パソコンなどの 機械で 日本語を 入力 する ときに つかう「ローマ字入力」でも ローマ字が つかわれています。この サイトは「ローマ字入力」の ローマ字を「パソコンの ローマ字」と よびます。

よく ある おもいちがい

ローマ字を 正しく 理解 している 人は あまり いません。本当の ローマ字を わすれて,ローマ字で ない ものを ローマ字だと おもっている 人も おおい ようです。よく ある おもいちがいは つぎの ような ものです。

かな文字を ラテン文字に 変換 した もの?

ローマ字は 日本語の かな文字(ふりがな,読みがな)を ラテン文字に おきかえた ものだと かんがえている 人が います。ローマ字は かな文字を ラテン文字に 転写 する 規則だと 説明 される ことも よく あります。しかし,これは まちがいで,ローマ字と かな文字に 直接の 関係は ありません。ローマ字は 日本語の 音声を ラテン文字で 書いた ものです。

世界の ほぼ すべての 言語は 音声を そのまま 表音文字で 書きます。どんな 文字を つかうかは いろいろで,どんな 音声を どんな つづりで 書くかの 規則も さまざまですが,音声を 表音文字で 書くという 点では すべて おなじです。ローマ字は これと おなじ やりかたで 日本語を 書きます。つかう 表音文字は ラテン文字で,どんな 音声を どんな つづりで 書くかの 規則を まとめた ものが いわゆる「ローマ字表」です。

つまり,「ローマ字表」に 書いてある かな文字は 文字では なく 音声を 意味 しています。たとえば,「か」の 下に ka と 書いてあったら,それは 文字の「か」を ka と 書くという 意味では なく,音声の「か」を ka と 書くという 意味です。

ローマ字は 普通の 日本語では ない?

ローマ字は 普通の 日本語では なく「外国語の 中に 日本語を いれる ときの 特殊な 書きかた」とか「日本語と 英語の 中間的な もの」と かんがえている 人が います。しかし,そうでは ありません。ローマ字は 純粋な 日本語です。外国語とは 関係 ありません初期の ローマ字は 外国人が つかう ものでしたから,これは 外国語と 関係が あります。ヘボン式は 初期の ローマ字の 一種と かんがえる ことが でき,英語と 関係が あります。

たしかに,外国語の 中に 日本語の ことばを いれる ときは ローマ字表記に します。けれど,この ローマ字も 日本語です。英文の 中に フランス語や ドイツ語の ことばを いれる ときに どう するか,かんがえてみて ください。たとえ 英文の 中でも,フランス語や ドイツ語の ことばは フランス語や ドイツ語の つづりで 書くでしょう。日本語も おなじです。たとえ 英文の 中でも,日本語の ことばは 日本語の つづりで 書きます。日本語の 場合は 文字を ラテン文字に かえなければ ならないので,すこし ちがって みえる だけです国際的な 場では 日本語も 世界に 通用 する 文字で 書かなければ なりません。

ローマ字は 外国人の ために ある?

ローマ字は 外国人の ために あると おもっている 人が います。しかし,それは おおまちがいです。 日本語を ローマ字書きに する 目的は いくつか ありますが,いずれに しても,まず 第一に 日本語で 生活 している 人の ためです。すなわち,日本語を 世界に 通用 する 文字で 合理的に 日本語らしく 書く ためです。そうする ことで,海外では 日本の 事情や 主張が 理解 されやすく なり,国内では 日本の 産業や 文化が 発展 しやすく なります。また,日本人の 日本語能力が たかまって,日本語 そのものも 発展 します。

ローマ字は 外国人の ために あると 勘ちがい する 人が いるのは,英語風に 変形 した ローマ字が よく つかわれているからです。自分の ことばを わざわざ 外国語風に ねじまげて 書いている 先進国は 日本くらいしか ありません先進国で なければ そういう 国は あります。植民地の 時代に 宗主国から おしつけられた 制度から ぬけだせずに 苦労 している 国が たくさん あります。外国人が 日本を みれば,そういう 国と おなじに みえるかも しれません。。外国人の 一部は 日本の ローマ字が 英語に にている ことを たいへん 不思議に おもっています。

英語は 英語らしい つづりかたです。フランス語は フランス語らしい つづりかたです。中国や 韓国にも ローマ字に あたる ものが ありますが,それらは 中国語らしい つづりかた,韓国語らしい つづりかたに なっています。本当は 日本の ローマ字も 日本語らしい つづりかたで なければ いけません。

ローマ字なら 外国人でも 読める?

外国人に 日本語の 発音を しめす ための 書きかたが ローマ字だと おもっている 人が います。これも まちがいで,ローマ字は 外国人むけの フリガナでは ありません。

ローマ字は 日本語の 音声を ラテン文字で 書いた ものですが,外国人が その つづりを みた だけで 正確な 発音が わかる 発音記号の ような ものでは ありません。ローマ字を 正しい 発音で 読めるのは 日本語を しっている 人だけです。日本語を しらない 外国人は ローマ字を みても 正しい 発音では 読めません。ヘボン式なら 外国人が 正しい 発音で 読んで くれると おもっている 人が おおいのですが,実際には 読めません。ローマ字は 日本語で あり,外国人から みれば 外国語です。外国語は その 読みかたを 勉強 し,その 発音を 練習 して,はじめて 読める ように なる ものです。日本語の 読みかたを しらず 発音も できない 外国人に 正しく 読める はずが ないでしょう。

日本語の 正しい 発音を 外国人に おしえて あげたい ときは 発音記号を つかって ください。これが もっとも たやすく かつ たしかな 方法で,しかも 世界中に 通用 しますよく,相手の 言語に あわせた つづりを ひねりだそうと する 人が いるのですが,これは 無駄ですから,やめた ほうが いいでしょう。

ローマ字は 英語の 初歩?

ローマ字を 英語教育の 初歩と かんがえている 人が います。これも まちがいです。ローマ字は 外国語の 入門では ありません。その 証拠に,小学校の「国語」で ローマ字を おしえているでは ありませんか。ローマ字が 日本語で ある ことを しらないから 勘ちがいを して しまうのでしょう。

ときどき,小学校で ローマ字を おしえるから こどもが 英語を「ローマ字読み」して こまる,などと いう 保護者が います。これは ひどい いいがかりです。むしろ,日本語も おぼつかない 小学生に 日常の 生活で つかわない 英語を おしえる ことの ほうが,よほど おおきな 教育上の さしさわりが ある,というのが おおくの 学者や 専門家の 一致 した かんがえですこどもを 外国語に ふれさせるのは よい ことで,特に 発音に かんする 能力は こどもの 時期の ほうが 身に つきやすい ことも わかっています。しかし,それを するのに ほかの 教科の 授業時間や やすみ時間を けずるので あれば,える ものと うしなう ものの 両方を かんがえなければ なりません。しかも,日本の 外国語教育は はなはだしく 英語に かたよっているため,かえって 教育的で ない 面が あります。

ローマ字と ローマ字入力は おなじ?

パソコンなどの 機械で 日本語を 入力 する ときの「ローマ字入力」と ローマ字を 混同 している 人も おおい ようですが,これも あやまりです。

ちょっと かんがえてみれば わかる ことですが,パソコンも ワープロ(専用機)も なかった 明治時代から ローマ字は つかわれていました。「ローマ字入力」は ローマ字を あたらしい 技術に 応用 した ものに すぎません。応用ですから,正しい ローマ字では なく,まったく 別の ものです。

ローマ字と「ローマ字入力」は にている ところも ありますが,そもそも 目的が ちがいます。ローマ字の つづりかたと「ローマ字入力」の キーの おしかたも ちがいます。

パスポートの 名前の 書きかたが 正式?

パスポートの 名前の 書きかたが 正式の ローマ字だと おもっている 人も おおい ようです。これも ちがいます。

パスポートの 名前の 書きかたは 昔から ある「英語式」を もとに して 外務省が つくった ルールです。「英語式」は 学校の「英語」で おしえている 書きかたですが,これは 正しい ローマ字では ありません。

「英語式」では「大野」を Ono と 書きますが,これでは「大野」なのか「小野」なのか わかりません読みかたの 可能性としては〈オノ〉〈オーノ〉〈オノー〉〈オーノー〉〈オンオ〉〈オーンオ〉〈オンオー〉〈オーンオー〉が かんがえられます。これらを ローマ字表記に すると,Ono, Ôno, Onô, Ônô, On'o, Ôn'o, On'ô, Ôn'ôと すべて ちがう つづりに なって 区別 できます。。ローマ字は こんな いいかげんな 書きかたとは ちがい,「大野」と「小野」を はっきり 区別 します。ローマ字は 日本語の 音声を 書きとめておく ものですから,かならず もとの 音声を 復元 できる ように なっています。

インターネットで しらべたら わかる?

今の 学校は ローマ字を きちんと おしえません。日常の 生活で 正しい ローマ字を 目に する ことも ほとんど ありません。そのため,ローマ字を 正しく 理解 している 人が すくなく,親切の つもりで まちがった 情報を インターネットに 書きこむ 人が あとを たちません。

ですから,インターネットで ローマ字に ついて しらべても,みつかる 情報は まちがいだらけです。残念ながら,ごく わずかの すぐれた ウェブサイトを のぞいて,まったく あてに ならない ありさまです。そして,この ことが「よく ある おもいちがい」を ますます ひろめる もとに なっています。

ローマ字の 特徴

ローマ字には みっつの おおきな 特徴が あります。ひとつめは,ラテン文字で 書く ことです。これは 重要です。なぜなら,ラテン文字は 世界共通の 文字だからです。日本語の 話し手にしか 通用 しない 文字では なく,世界に ひらかれた 文字で 書く ところに 意義が ある わけです。ローマ字には「日本語を 世界に ひろめよう」という ポリシーが あります。

ふたつめは,読むのも 書くのも たやすい ことです。これは 漢字を つかわないからです。たくさんの 漢字を おぼえる 無駄が ありませんし,むつかしい 漢字の ことばを つかいこなす 必要も ありませんかな文字だけで 書くよりも,ローマ字だけで 書く ほうが ずっと 簡単です。もちいる 文字の 数が すくなく,つづりかたの ルールも やさしいからです。。機械で 入力・出力 するのにも 適しています。これが ローマ字書きに する もっとも おおきな 利点です。ローマ字には「日本語の 表記を やさしく しよう」という ねらいが あります。

みっつめは,音声情報 だけを あらわしている こと です。ラテン文字は 表音文字ですから,音声情報しか 書きあらわせません。つまり,ローマ字は「日本語の 音声を ラテン文字で 書いた もの」という ことが できます。たとえば,「日本」を ローマ字書きに しようと おもっても,その 読みかたが〈ニホン〉なのか〈ニッポン〉なのか,あるいは〈ヤマト〉か〈ヒノモト〉か,わからないと 書けません。ローマ字の 世界では「ことばの 本質は 文字で なく 音声で ある」と かんがえますくわしくは「ことばと 文字の 関係」で 説明 しています。

これらの 特徴は 学校で ローマ字を まなぶ 理由に つながっています。これに ついては「ローマ字の 目的」で 説明 しています。

ローマ字の 歴史

ローマ字の はじめ

フランシスコ ザビエル
フランシスコ ザビエル

ローマ字を 発明 したのは 日本人では ありません。16世紀の 末に,ポルトガル語を 公用語に していた イエズス会の 宣教師たちが 日本に やってきました。そして,彼らの 文字(ラテン文字)を つかって 当時の 日本語を 書きうつしました。現代の 日本人も 外国語を カタカナで 書きうつしたり しますが,それと おなじ ことを した わけです。このとき,日本語が ラテン文字で 記述 されたのですから,これは ローマ字で あると いえます。

ローマ字は キリスト教の 宣教師が つくった ものでした。きっと フランシスコ ザビエル(シャビエル)も この ローマ字を つかっていたのでしょう。

ヘボン式,日本式,訓令式

1867年,アメリカ人の 宣教師 ヘボンが 辞典を つくった ときも,やはり 彼らの 文字(ラテン文字)で 日本語を 書きうつしました。こうして つくられた 英語風の ローマ字が ヘボン式の はじまり です。これは 日本人の あいだでも つかわれる ように なり,こまかい 修正を へて,現在 もっとも ポピュラーな ローマ字に なっています。

1885年,天文学者 寺尾寿(てらお ひさし),物理学者 田中館愛橘(たなかだて あいきつ)に よって,日本語を 書きあらわすのに ふさわしい ローマ字が となえられました。日本式の はじまり です。この ローマ字も,こまかい 修正を へて,訓令式と よばれる 公式の ローマ字に なっています。


ヘボン式日本式は 根本的な ところで かんがえかたが ことなり,それぞれの 支持者は 明治時代から はげしく 対立 してきました。昭和の はじめごろ,日本式の かんがえかたを うけついだ 訓令式が 公式の ローマ字として 制定 されると,今度は ヘボン式訓令式が 対立 する ように なりました。

訓令式は 学校で おしえている 公式の ローマ字です。しかし,日ごろ 目に する ローマ字は ヘボン式の なかま ばかりです。これを 疑問に おもっている 人も いるでしょう。その 理由は おもに 政治的な ものです。日本が 戦争に まけて 占領の 時代を へてきた ことに かかわっています。また,日本人に 特有の よくない 精神文化も 影響 していると かんがえられます。

99式

1999年には 99式ローマ字が 提案 されました。公式の 規格では ありませんが,挑戦的な こころみと いえるでしょう。

この 方式は パソコンなどの 機械で 日本語を 入力 する ときに つかう「ローマ字入力」に にているので,おおくの 人に とって おぼえやすい 利点が あります。また,外来語や オノマトペなどを 書きあらわすのに 必要な〈ティ〉〈ファ〉〈チェ〉といった 特殊音の 書きかたを さだめている 点に あたらしさが あります。

より くわしく

ローマ字の 歴史に ついての くわしい 解説は「なりたち」に あります。

ローマ字の 種類

今の ローマ字

ローマ字の 方式には いくつも 種類が あって,実際に もちいられている 方式は 統一 されていません。学校で おしえている 方式は 訓令式ヘボン式ですが,よく 目に する ローマ字は ヘボン式の なかまが ほとんど です。パスポートの 姓名道路標識の 地名鉄道の 駅名などが その 代表です。


公式には「ローマ字のつづり方」という 規格が あります。今の ところ,これが ローマ字の 書きかたを さだめている ただ ひとつの ルールです。

この 中では,訓令式が 正しい ローマ字で あると きめられています。また,特別な 事情が ある 場合という 条件つきで,ヘボン式を とりいれた 書きかたを つかっても いい ことに なっています。

国際的には,国際標準化機構(ISO)の ISO 3602が あります。この 中でも,訓令式が 正しい ローマ字で あると きめられています。

この 国際規格は,強制力こそ ありませんが,世界中に 通用 します。国際的な ビジネス,輸出 する 工業製品,学術分野などで ローマ字を つかう 場合には,これが 関係 してくる 可能性が あります。

たとえば,外国の 図書館が 日本語で 書かれた 書籍を もっていて,その リストを つくろうと すれば,日本語の タイトルを ラテン文字化 する 作業を しなければ なりません。このような ときに ISO 3602 を もちいる ことが 期待 されています。

ふるい ローマ字,あたらしい ローマ字,変な ローマ字

今は つかわれていない,ふるい ローマ字も あります。たとえば,ローマ字の 元祖で ある ポルトガル式が それです。この ほかにも,オランダ式,ドイツ式,フランス式が ありました。

あたらしい ローマ字も かんがえられています。新日本式や 99式が その 代表です。

変な ローマ字を みかける ことも めずらしく ありません。これは おおくの 日本人が ローマ字を 正しく 理解 していない ために,まちがって 書かれた ローマ字です。

まちがいが おこる 原因としては,ヘボン式訓令式が 混在 している ために「ちゃんぽん式」が つくられやすい ことが かんがえられます。また,パソコンなどの 機械で 日本語を 入力 する ときに つかう「ローマ字入力」と ローマ字が 混同 されやすい ことも あります。パスポート,「英語」の 教科書,企業の ロゴタイプなどで つかわれている「英語式」も まちがいの もとに なっています。

各方式の 比較

日本式訓令式99式は,日本語を 書きあらわす ために つくられた,日本語らしい つづりかたです。それぞれ よく にています。それに 対して ヘボン式は,英語の 話し手に とって 都合が いい ように つくられた,英語に にた つづりかたです。日本式訓令式99式の グループと ヘボン式を ならべてみると,その ちがいが はっきり します。

日ごろ よく 目に する 道路標識や 駅名などで つかわれる ローマ字の 方式は すべて ヘボン式を もとに して つくられた ものですが,それぞれが すこしずつ ちがっており,いずれも 設計に いいかげんな ところが あります。中でも パスポート式には 不具合が おおく,しばしば 批判の 的に なってきましたが,2000年代に はいってから 改善の うごきが あります。

どの 方式を つかえば いいの?

いろいろな 方式が あって,どれを つかったら いいのか わからない,という 疑問は よく あります。これは,状況に あわせて つかいわける,というのが こたえです。ただし,基本的には 訓令式を つかいます。これが 原則です。

実際問題として,ローマ字を つかうのは 自分の 名前を 書く とき くらいだ,という 人が おおいでしょう。それなら,訓令式 だけ おぼえて おけば 十分です。

ただ こまった ことに,パスポートや クレジット カードでは 長音符号つき文字が つかえないので 訓令式で 書く ことが できませんパスポートなどの システムが 時代おくれ だからです。。そこで,この サイトでは これに 手を うつ やりかたを 提案 しています。(くわしくは「符号つきの文字が つかえない とき」「あたらしい ルール(非ヘボン式)」を お読み ください。)

より くわしく

ローマ字の 種類・比較・つかいわけに ついての くわしい 解説は「いろいろ」に あります。

ローマ字の 書きかた

ローマ字の かんがえかた

ローマ字は 音声が 中心

よく「飛行機」を ローマ字の つもりで hikouki と 書いて しまう 人が います。これは ローマ字の かんがえかたが わかっていないから おこる まちがいです。

ローマ字は かな文字(ふりがな)を ラテン文字に おきかえた ものでは ありません。そうでは なくて,日本語の 音声を そのまま ラテン文字で 書いた ものです。これが ローマ字の かんがえかたです。それを すこし くわしく 説明 します。


ローマ字を 書くには,まず 頭の 中で ことばの 音声を かんがえ,それを ラテン文字に 変換 します。たとえば,「こんばんは」を ローマ字書きに する 場合,まず 頭の 中で〈コンバンワ〉という 音声を かんがえ,それを ラテン文字に 変換 します。

漢字と かな文字で 書いてある 日本語を ローマ字に 書きかえる 場合は,まず その 漢字と かな文字を 音声に 変換 し,それを ラテン文字に 変換 する,という 2段階の 作業に なります。たとえば,漢字で 書かれた「帽子」を ローマ字に 書きかえる 場合,まず「帽子」という 漢字を〈ボーシ〉という 音声に 変換 し,それから ラテン文字に 変換 します。

音声を〈 〉で あらわすと,下の 図の ように なります:

頭の 中で かんがえる 場合:
〈コンバンワ〉  → konbanwa
はじめに 文字が ある 場合:
帽子 → 〈ボーシ〉  → bôsi


ローマ字の 世界では,音声が ことばの《本質》です。つまり,〈コンバンワ〉や〈ボーシ〉が ことばの《本質》で,それを 漢字と かな文字の《形》に すれば「こんばんは」「帽子」と なり,ラテン文字の《形》に すれば konbanwa, bôsi に なる,と かんがえる わけですもう すこし 正確には,ことばは 意味と 音声が むすびついた もので,その 音声を 記録 する システムが 文字で ある,という かんがえかたです。この 立場では,文字は 言語に 必須の 要素では ありません。しかし,この かんがえかたには すこし 無理が ある ようにも おもえます。〈コンバン〉〈ボーシ〉は「今晩」「帽子」という 熟語の 音読みです。はじめに 文字(漢字)が あって,それを 読みあげた ものが 音声じゃないのか,と 感じる 人も おおいでしょう。ここに 日本語の 表記システムが かかえる 問題が あります。くわしくは「ことばと 文字の 関係」で 説明 しています。

この サイトは 文字で 説明 していますから,はじめに 文字が ある 場合の 手順で 図を えがく ことも あります(矢印が 2個 ある 2段階の パターン)。しかし,文章を かんがえながら 書いていく 場合は,頭に うかんだ ことば(音声)を そのまま ローマ字書きに していく わけですから,1段階の パターンです。この ちがいを しっかり 理解 して ください。

よく ある まちがい

ローマ字で よく ある まちがいは,音声で かんがえるのでは なく,かな文字(ふりがな)で かんがえて しまう ケースです。「こんばんは」「帽子」の 例だと,下の ような まちがいを して しまいます:

頭の 中で かんがえる 場合:
「こんばんは」  → × konbanha
はじめに 文字が ある 場合:
帽子 → 「ぼうし」  → × bousi


かな文字を ラテン文字に おきかえて しまう まちがいは,ことばと 文字の 関係を きちんと 理解 していないから おこります。外国語を かんがえてみて ください。中国語と 日本語を のぞいて,世界の 言語は すべて ことばの 音声を そのまま 表音文字で 書いています。世界では これが 普通の 書きかたです。ローマ字は これと おなじ やりかたで 日本語を 書く ものです。

ことばと 文字の 関係」も お読み ください。

漢字と かな文字を しらなくても 書ける

ローマ字の かんがえかたは 音声が 中心ですから,ローマ字を 書く とき,漢字や かな文字で どのように 書くかは まったく 関係 ありません。極端な いいかたを すれば,日本語で 会話が できる 人なら,漢字と かな文字を まったく しらなくても ローマ字は 書けます。

たとえば,「蒲公英」を 書けと いわれたら こまって しまう 人も いるでしょうが,〈タンポポ〉を ローマ字で 書くのは 簡単です。「氷」が「こおり」なのか「こうり」なのか よく わからない 小学生でも,〈コーリ〉を ローマ字で 書くのは たやすいでしょう。

このように,ローマ字は 書くのが 簡単です。そして,読むのも 簡単です。こどもでも すぐに おぼえて つかいこなす ことが できます。これが ローマ字の すぐれている ところです。

ちいさい こどもむけの 絵本は かな文字 だけで 書いてありますが,ローマ字書きに すれば もっと やさしく なります。ローマ字書きは かな文字書きよりも もちいる 文字の 数が すくなく,文字の 形が わかりやすく,つづりかたが おぼえやすいからです訓令式では 通常 19文字 しか つかいません。大文字と 小文字が あるので その 倍としても 38文字です。ローマ字書きの つづりかたが おぼえやすい 理由は つづりと 発音が 対応 しているからです。かな文字書きでは 変則的な つづりかたを する ことばが たくさん あって,それらを 丸暗記 しなければ なりません(「私は」の「は」や「大きい」の「おお」など)。。これは 外国人が 日本語を つかう ときにも 利点に なります。外国人に 日本語を おしえる 日本語教育や インターネットの チャットなどでも ローマ字が 利用 されています。

変換の しかた

音声を ラテン文字に 変換 するには,いわゆる「ローマ字表」を つかいます。下に しめした 表は 訓令式の ものです。これで ことばを 音声の 単位に くぎってから おきかえていきます。たとえば,「絵」は 〈エ〉で e,「顔」は〈カ・オ〉で kao,「桜」は〈サ・ク・ラ〉で sakura に なります。

〈キャ〉〈キュ〉〈キョ〉などの 拗音(ようおん)は,2文字が 1音を あらわします。この まとまり で 変換 する ことに 気を つけて ください。たとえば,「お茶」は 音声の 単位で〈オ・チャ〉と くぎって otya に します。文字の 単位で「オ・チ・ャ」と くぎって otiya に しては いけません。

aiueo
キャキュキョ
kakikukekokyakyukyo
シャシュショ
sasisusesosyasyusyo
チャチュチョ
tatitutetotyatyutyo
ニャニュニョ
naninunenonyanyunyo
ヒャヒュヒョ
hahihuhehohyahyuhyo
ミャミュミョ
mamimumemomyamyumyo
yayuyo
リャリュリョ
rarirureroryaryuryo
wao
ギャギュギョ
gagigugegogyagyugyo
ジャジュジョ
zazizuzezozyazyuzyo
ヂャヂュヂョ
dazizudedozyazyuzyo
ビャビュビョ
babibubebobyabyubyo
ピャピュピョ
papipupepopyapyupyo

※ カタカナは 音声を しめしています。

印刷用の「ローマ字表」(A4サイズ,2ページ,PDFファイル)も ありますPDFファイルの 表示と 印刷には Adobe Acrobat Readerを インストール する 必要が あります。インストールの 途中で ほかの ソフトも インストール する ように すすめられますが,これは PDFファイルと 関係 ないので いりません。


〈ン〉〈ッ〉や「ー」の つく 音は,「ローマ字表」とは 別に 定義 されています。それぞれ,撥音,促音,長音 と よばれています。

撥音(はつおん)は〈ン〉の 音です。これは n と 書きます。たとえば,「温泉」は onsen に なります。

促音(そくおん)は〈ッ〉の 音ですたとえば,「カッパ」の〈ッ〉が 促音です。〈カッ〉や 〈ッパ〉では ありません。。これは つぎの 音の 子音字を 書きます。たとえば,「切符」は つぎの 音が〈プ〉ですから,pu の 子音字 p を 書きます。

長音(ちょうおん)は「ー」の つく 音です。これは のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせます。たとえば,「空気」は のばす 音が〈ク〉ですから,ku の 母音字 u山形(^)を のせます。

温泉 → 〈オンセン〉 → onsen
切符 → 〈キップ〉 → kippu
空気 → 〈クーキ〉 → kûki

ローマ字に なれない うちは 長音が むつかしい ようです。長音が 苦手な 人は,まず「ー」を つかって 読みかたを 書く 練習から はじめると いいでしょう。たとえば,「お母さん」「お父さん」を「オカーサン」「オトーサン」と 書く 練習です。そして,ローマ字を 書く ときに,この「オカーサン」「オトーサン」を おもいうかべる ように すれば まちがいません。ふりがなの「おかあさん」「おとうさん」を おもいうかべて しまうと,よく ある まちがいが おこりますここでは 手みじかに 説明 していますが,長音には かなり ややこしい ところも あります。くわしくは「書きかた」で 説明 しています。

機械で ローマ字を 書く とき

フォントと 文字コード

Unicodeに 対応 した フォントを つかって ください。Unicode に 対応 していない ものは 長音符号つき文字を 表示 する ことが できません。

よく つかわれる フォントは,セリフ体では Times New Roman,サンセリフ体では Arial, Helvetica などです。

文字コードは「Unicode」「UTF-8」などに して ください。ふるい ソフトウェアには これらを あつかえない ものが ありますが,あたらしい ソフトウェアなら 問題ない ことが おおいです。

長音符号つき文字

手書きなら どんな 文字でも 書けますが,パソコンなどの 機械で 書く ときは 長音符号つき文字â, î, û など)が 入力 しにくい,という 問題が あります。

長音符号つき文字を 入力 する 方法は 下に あげた ように いろいろ あります。ここでは おもに Windowsパソコンむけの 方法を 説明 しますが,環境に よらない 方法(※)も あります。

より くわしく

ローマ字の 書きかたに ついての くわしい 解説は「書きかた」に あります。

長音符号つき文字の 入力に ついての くわしい 解説は「長音符号つき文字」に あります。

ローマ字の 書きかたを ひとりで まなべる 印刷教材「ローマ字 手ほどき」も あります(PDFファイル)。こどもむけの 教材ですが,ローマ字の 正しい 書きかたを きちんと まなびたい,という おとなが 読んでも 役に たちます。

ローマ字運動

ローマ字論と ローマ字運動

現在,日本語の 文章を すべて ローマ字で 書く ことは,一般には おこなわれていません。しかし,日本語を ローマ字で 書く かんがえは 江戸時代から ありました。これを「ローマ字論」と よびます。その 実現を めざす 運動が「ローマ字運動」です。

もちろん,これには ながい 時間が かかります。100年単位で かんがえなければ ならない 大仕事です。昔の ローマ字論者たちも,その 道のりが ながい ことを しっていました。それでも,日本と 日本語の 将来を おもって 声を あげたのでした。


世界の 言語の 中で みると,日本語は 習得が やさしい 言語ですもちろん,読み書きを のぞけばの 話です。仕事の 都合で 日本に きた 外国人は,日常会話レベルの 日本語は たやすく マスター しますが,読み書きは むつかしいと いいます。海外の 日系人も 日本語の 会話は できても 読み書きは できない ことが おおい ようです。モンゴル出身の 力士が すぐに 日本語を おぼえるのも,モンゴル語と 日本語が にている ことだけが 理由では なく,日本語が それほど むつかしく ないからでしょう。よく 敬語・助数詞・人称代名詞などで 日本語の むつかしさを うったえる 人が います。しかし,これらは すこし 意味が ちがいます。日本人でも よく 敬語を まちがえますし,助数詞を よく しらない 人も いますが,そういう 人たちを さして「日本語が 話せない」とは いいません。日本文化の 知識が たりない だけです。外国人も おなじで,日本語が むつかしいのでは なく,日本文化が むつかしい だけです。そして,外国の 文化が むつかしいのは あたりまえで,それは どこの 国も おなじです。日本 だけが 特別 なんて ことは ありません。。また,その 話者数の ランキングで トップ10に はいる 大言語です1位:中国語,2位:英語,3位:ヒンディー語,4位:スペイン語,5位:アラビア語,6位:ベンガル語,7位:ポルトガル語,8位:ロシア語,9位:日本語,10位:ドイツ語。。さらに,「今後,世界のコミュニケーションで必要になると思われる言語」の 調査で 日本語を 上位に あげる 国は おおく,日本語に 対する 期待の たかさは 日本人が おどろく ほどです1980年代には 世界で 日本語ブームが おこっていた ほどです。ところが,そのころは 外国人に 日本語を おしえる 環境が ととのっていませんでした。それで,国を あげて 日本語教師の 養成などに とりくむ ように なったのでした。現在,日本語教育の 環境は ずいぶん よく なりました。しかし,その 成果は 満足の いく ものでは ありません。日本語への 関心と 熱意を もっている 人でさえ,なかなか こえられない 漢字の 壁が あるからです。

日本の 経済力・文化力から かんがえれば,本当なら 日本語は 世界的に 有力な 言語の ひとつに なっていた はずです。そう ならなかった 理由は,日本語の 表記システムが 複雑すぎる こと,これに つきます。

はなしことばが 自然に かわっていく もので あるのに 対して,書きことばは 人為的に かえていく もの ですここでは「書きことば」を おもに「文字表記」の 意味で つかっています。。ところが,日本人は 書きことばを 改善 していく 努力を 1000年間 ほとんど してきませんでしたその 反対に,話しことばを 無理やり かえようと してきました。これは おおくの 先進国が やってきた ことですが,それの 何が いけないのかを 理解 しなければ なりません。ことばは 文化で あり,話しことばを ねじまげる ことは 文化の 破壊に つながるからです。文化は 国ごとに 色わけ される ような ものでは なく,土地ごとに 文化が あります。インターネットの 発達で,土地に 根ざさない コミュニティーも ふえてきましたが,このような 集団も 文化を うみだします。。この 不作為が もたらした 損失は はかりしれません。

外国の ある 日本研究家は つぎの ように のべています:

このような侮辱的な表現をつかうことには気がひけるのだが,日本の書きことばは一部のものにとっては魅力ある研究分野となるものの,実用的な道具としてはこれに劣るものはおそらくないであろう。

ローマ字論は,日本語の 書きことばを 根本から みなおして 大胆に かえていこうと する アイデアの ひとつです。日本語の 書きことばを あらためる 提案には いろいろ ありますが,それらの 中でも ローマ字論は もっとも 前衛的と いえるでしょう。

表音文字で 書く こと

ラテン文字は 表音文字です。日本語が 表音文字だけで 書けるのか うたがう 人も いるでしょう。しかし 世界の 言語は,中国語と 日本語の ほかは,すべて 表音文字だけで 書いています。中国語と 日本語だけが 特別とは かんがえられませんから,中国語も 日本語も 表音文字だけで 書ける はずです。実際,世界の 文字は(漢字を ふくめて)すべて 表語文字から 表音文字に 発展 してきた ことが わかっています。表語文字より 表音文字の ほうが(道具として)すぐれているからです。

今の 日本語が 漢字を つかっているのも ただの 偶然です。たまたま となりの 先進国が 漢字を つかっていたから それを とりいれた だけです。もともと 日本語と 漢字の あいだに 本質的な むすびつきは ありません文字を もたない おくれた 国が すすんだ 国から 文字を とりいれようと する とき,言語が ちがう ために その 文字が つかいにくかったり,その 文字を つかう ことで 大国の 文化に のみこまれて しまうのを きらったり する ことが あります。そのような 場合,自分たちの 言語に 適した 文字を つくりだす ことが よく おこなわれます。古代中国の 周辺では,こうして 独自の 文字が いくつも かんがえだされました:突厥文字,契丹文字,西夏文字,女真文字などです。これも プライドを もった 国の やりかたです。


人間の 歴史を かんがえれば,文字の ひろまりは つい 最近の ことです文字は おおよそ 5000年前から ありますが,特権階級 だけで なく 庶民も 学校で 読み書きを まなぶ ように なったのは たかだか 100年ほど 前からに すぎません。。そして,文字が なかった 時代にも 言語は ありました。それは 音声 だけの 言語です。言語の 本質は 文字では なく 音声で あると いっても いいでしょう。

しかし,そう いわれても ピンと こない 人が おおい はずです。それは,はじめて みた むつかしい 熟語でも おおよその 意味が わかり,読みかたも しらない 人名に こめられた 意味が わかる,そんな 体験を 日常的に しているからです。これらの 場合,その 熟語や 人名が もっている 意味は,音声では なく,文字(漢字)に よって つたえられています。それが あたりまえに なって,文字が 主役の ように おもって しまう わけです。「文字は ことばを うつす もの」と かんがえるのが 世界の 常識ですが,日本では「ことばは 文字を くみあわせて つくる もの」と さかさまに かんがえています。

こんな おもいちがいを しているのは 世界中で 日本人 だけでしょう。中国人は そんな 感覚を もっていません。なぜなら,中国の 漢字は 意味を あらわす 文字で あると 同時に,音声を あらわす 文字でも あるからです漢字は 字義(意味)・字形(文字)・字音(音声)の みっつが むすびついた 結合体です。意味と 音声が むすびついた ものが ことばですから,漢字は ことばと むすびついた 文字,すなわち ことばを あらわす 文字です。このような 文字を「表語文字」と いいます。以前は 漢字を「表意文字」と いっていましたが,今は いいません。意味と 文字の ふたつが むすびついた 結合体を「表意文字」と かんがえれば,携帯電話の 絵文字,ピクトグラム,家紋などが これに あたります。

日本語の 特異性に ついては「ことばと 文字の 関係」で くわしく 説明 しています。


古事記や 万葉集の 時代,日本人は 漢字を 表音文字として もちい,日本語を 書きあらわす ことに 成功 しました。源氏物語や 枕草子の 時代,日本の 文学は かな文字に よって おおきく 発展 しました。このように,日本語を 表音文字で 書く ことは,昔から おこなわれてきた ことです。日本の 伝統と いっても よいでしょうかな文字書きの 日本語が 発達 する 可能性も あった はずですが,そうは なりませんでした。これは,文字が 特権階級に 占有された こと,書きことばが 実用性を 推進力として 発展 しなかった ことなどが 理由です。

かな文字書きから 一歩 すすめて,より つかい勝手の よい ローマ字書きに する かんがえは,大胆では ありますが,現代人に よる 自然な アイデアと いえます。

日本語の 問題点

そうは いっても,日本語を ローマ字書きに すると 読みにくく なって しまいます。一番の 理由は なれていないからですが,それは 感覚的な 問題で,なれれば 解決 します。重要なのは 論理的な 読みにくさで,ローマ字書きに すると 意味が つたわらない 場合が あります。同音異義語の 問題です。


たとえば,学校教育を テーマに した 文章の 中に siritu と 書かれていたら,「私立」か「市立」か わかりません。この 問題は 日本語が 漢字に たよりすぎている ことから おこります。日本語は,音声では なく,文字で 情報を つたえている 部分が おおすぎる わけです。

これは 日本語の きわだった 欠点です。外国語にも 同音異義語は ありますが,それを 大量に かかえこんでいるのは 日本語 だけです。「私立」と「市立」の ように,文脈の たすけを かりても 解決 できない 同音異義語は,外国の 言語学者が おもしろがる ほど めずらしい ものです。

よく,漢字を みれば 意味が わかって 便利だ,などと いう 人が いるのですが,それは とんでもない まちがいです。漢字を みなければ 意味が わからない ことが おかしいのです。世界の 言語は,中国語も ふくめて,耳で きいた だけで 意味が わかります。これが ことばの 基本機能です。耳で きいた だけでは 何を いっているのか わからない 言語は まともな 言語では ありません。言語の できそこないです。

近代的な 国の 言語で 日本語ほど 不完全な 言語は ありません。日本人は 漢字を 無批判に つかいすぎた せいで,日本語 そのものを スポイル して しまったと いっても いいすぎでは ありませんこの 議論は 芸術,広告,あそびなどに もちいる 言語には あてはまりません。むしろ,ゆたかな 熟字訓,奇抜な ふりがな,たくみな 漢字駄洒落などは 知的な いとなみで,大切な 文化で ある,と かんがえられています。ローマ字論が 対象に するのは そういう 言語では ありません。情報を つたえる 道具としての 言語,文明社会を ささえる インフラとしての 言語です。この 土台の 上に 文化としての 言語活動が ある,と かんがえます。


いうまでも なく,日本が 漢字の ことばを 積極的に とりいれなかったら,明治時代からの めざましい 発展は なかったでしょう。日本語が 漢字の 中毒に なって しまったのも,半分は しかたが ない ことです。しかし,のこりの 半分は 国語政策の 失敗です。日本人の わるい くせで,不合理な 精神論に ながされて しまったからですこれは いわゆる 文系の 人(特に,文字で 仕事を している 作家や 評論家など)の 発言力が つよい ことも 原因です。日本では,いわゆる 理系の 人が パブリックな 発言を しない かたむきが あります(政治家も 文系の 人が おおい)。また,合理的な 思考が 苦手で 感情に ながされやすい 人が おおいと,情緒に うったえる ことばが 力を もちます。たくみな ことばで 感情を あやつる プロが 世論を 誘導 して しまうのです。


このような 問題が ある ため,今の 日本語を そのまま ローマ字書きに して 実用に たえられるのかと とわれれば,かなり きびしいと こたえなければ なりません。

ところが,それを 十分に わかった 上で,日常の 生活で つかう 日本語を どんどん ローマ字書きに していこう,と いっているのが 現代の ローマ字運動です。

より くわしく

ローマ字運動に ついての くわしい 解説は「ローマ字運動」に あります。

【読み物】寺田寅彦

随筆家として 有名な 寺田寅彦(てらだ とらひこ)は 物理学者でした。彼の 研究テーマには「尺八の音響学的研究」「金平糖の角の研究」など 一風 かわった ものが あります。これらは 日常の 題材を あつかっていながら,科学的に 高度な ものです。彼が 庶民の 感性と 科学者の 知性の 両方に ひいでた 人で あった ことを よく あらわしています。

彼は 夏目漱石の おしえ子でした。正確には,ペンネームで あった 吉村冬彦(よしむら ふゆひこ)の 師匠が 漱石でした。では,物理学者 寺田寅彦の 師匠は 誰かと いうと,それは 物理学者 田丸卓郎(たまる たくろう)です。寺田寅彦は 学生時代に 英語教師の 夏目漱石,物理学教師の 田丸卓郎と であい,文学と 科学の 両方を こころざしたと いわれています。

海の物理学
"Umi no Buturigaku" (1913)

田丸卓郎は ローマ字論者で,ローマ字論の バイブルと よばれている「ローマ字国字論」「ローマ字文の研究」を あらわした 人です。

寺田寅彦も 熱心な ローマ字論者でした。彼の 著書には ローマ字書きの 教科書なども あります。図は 約100年前に 書かれた「海の物理学(Umi no Buturigaku)」です。

寺田寅彦の 門下生には 雪の 結晶の 研究で 有名な 物理学者 中谷宇吉郎(なかや うきちろう)が います。彼も また 随筆家で,「雪は 天から 送られた 手紙で ある」は よく しられた ことばです。