前おき

正書法

ある 言語の ただしい かきかたを「正書法」と いいます。たとえば,英語は 文の 先頭を 大文字に して 末尾に ピリオドを うちます。人称代名詞の I は つねに 大文字という ふうに,単語の つづりは 辞書に のって いる 形が ただしい ものと きまって います。このほかにも いろいろな きまりを しって いるでしょう。それらを まとめた ものが 英語の 正書法です。一般に,文字を もつ 言語には 正書法が あり,特に 国の 公用語 などには きちんとした 正書法が あります。

ところが,日本語は この 正書法が おおづかみに しか さだめられて いません。たとえば,〈タバコ〉という ことばの つづりは「たばこ」「タバコ」「煙草」が つかわれて いて,どれが ただしいとも きまって いません。〈アカルイ〉の おくりがなは 公用文 などで なければ「明い」「明るい」「明かるい」の どれでも かまいません。〈ウケツケ〉は「受け付け」「受付け」「受付」の ように ばらばらです。

きまりが ないと,かく ときに 自由で ある 反面,まよって しまう 不便が あります。よみ手に とっては いい ことが まったく ありません。たとえば,インターネットで 検索 する とき,かきかたが 統一 されて いない ために,おもいどおりに ヒット しない ことが よく あります。先進国と よばれる 国の 言語で,正書法が きちんと さだまって おらず,不合理な ままに なって いるのは 日本語 だけです学校の「国語」でも,漢字の かき順,トメ・ハネ,手紙の 様式,原稿用紙の つかいかた などは おしえますが,もっとも 大切な はずの 日本語の かきかたという ものを きちんと おしえて おらず,それらが 世の中に ゆきわたって いません。たとえば,擬態語は ひらがなで かき,擬音語は カタカナで かくという きまりが あります。副詞・形式名詞・補助動詞 などは かな文字で かくのが ふつうです。しかし,このような かきわけを 意識的に やって いる 人は あまり いないでしょう。会話を ふくむ 文では とじる かぎかっこの 前に 句点(。)を かかないと いけませんが,ほとんどの 作家も 新聞も そんな かきかたは して いません。

これには ふたつの 理由が あります。ひとつは,日本語の 表記システムが あまりにも 複雑すぎて ルールづくりが むつかしい ことです。もう ひとつは,ルールという 枠を はめる ことに たいして 感情的に 反発 する 人が おおい ことです。

日本語の かきかたを 文字で 分類 すると「漢字仮名交じり文」「かな文字文」「ローマ字文」の 3種類 ありますが,どの かきかたにも きちんと した 正書法は ありません。この サイトで 解説 して いる ローマ字文の かきかたも 日本語の ルールとして 公式に さだめられた ものでは ありません。いって みれば,まにあわせの 正書法です。明治時代から ローマ字論者が ねりあげて きた かきかたに この サイト 独自の かんがえを くわえた 提案を しめして います。


具体的な 説明の 前に,まず ローマ字の 基本的な かんがえかたを 確認 して おきます。それから 章を あらためて,〈ア〉〈キャ〉などの 音声の かきかた,その つぎに「山」「美しい」などの 単語の かきかた,そして「桜が 咲いた。」などの 文・文章の かきかたという 順番で 説明 します。

ローマ字の かんがえかた

ローマ字は 音声を かく


「飛行機」

「飛行機」を ローマ字で hikouki と かいて しまう 人が います。これは ローマ字の かんがえかたが わかって いないから おこる まちがいです。ローマ字は ふりがなを ラテン文字(ABC)に 変換 した ものでは ありません。日本語の 音声を ラテン文字で かいた ものです。以下,必要に 応じて 文字を「 」で,音声を〈 〉で しめします。

ローマ字の 世界では,まず はじめに ことばの 音声が あって,その 音声を かきあらわす ために 文字が あると かんがえます。まず はじめに〈ヒコーキ〉という 音声が あって,それを 漢字で かけば「飛行機」に なり,ひらがなで かけば「ひこうき」に なり,ラテン文字で かけば hikôki に なると かんがえる わけです。


ローマ字を かく ときには,頭の 中で かんがえた ことばを そのまま ローマ字で かく ときと,漢字や かな文字で かかれて いる ことばを ローマ字で かきなおす ときの ふたつが ありますが,いずれも ことばの 音声を ラテン文字に 変換 します。

頭の 中で かんがえた「飛行機」を ローマ字で かく ときは,〈ヒコーキ〉という 音声を ローマ字の ルールで hikôki に 変換 します。

〈ヒコーキ〉 → hikôki

漢字で かかれた「飛行機」を ローマ字で かきなおす ときは,「飛行機」という 文字を いったん〈ヒコーキ〉という 音声に もどして,それを ローマ字の ルールで hikôki に 変換 します。

「飛行機」 → 〈ヒコーキ〉 → hikôki

ひらがなで かかれた「ひこうき」を ローマ字で かきなおす ときは,「ひこうき」という 文字を いったん〈ヒコーキ〉という 音声に もどして,それを ローマ字の ルールで hikôki に 変換 します。

「ひこうき」 → 〈ヒコーキ〉 → hikôki

これが ローマ字の かんがえかたです。ふりがなを 変換 しないで,かならず 音声を 変換 します。「おはよう」だったら,文字の「おはよう」を ohayou に 変換 するのは まちがいで,ただしくは 音声の〈オハヨー〉を ohayô に 変換 します。「こんばんは」だったら,文字の「こんばんは」を konbanha に しないで,音声の〈コンバンワ〉を konbanwa に します。

「おはよう」 → 〈オハヨー〉 → ohayô
「こんばんは」 → 〈コンバンワ〉 → konbanwa

ローマ字と ふりがな

ローマ字の つづりと ふりがなの つづりは 対応 しない ことが あります。そのため,ふりがなは 〇〇なのに ローマ字が ××なのは なぜですかという 質問を する 人が よく います。こんな 疑問が でて くるのは ふりがなを ABCに 変換 した ものが ローマ字だと おもって いるからです。これは よく ある おもいちがいで,ローマ字入力が つかわれる ように なってから,この かんちがいを する 人が ふえて います。


ローマ字と ふりがな

ローマ字と ふりがなは おなじ 音声を ちがう 表音文字で かいた ものです。

日本語の 音声を ラテン文字(ABC)で かいた ものが ローマ字で,かな文字で かいた ものが ふりがなです。したがって,ローマ字と ふりがなに 直接の つながりは ありません。ローマ字を かく ときに 必要な 情報は 音声です。ローマ字の つづりは 音声で きまります。ふりがなでは きまりません。たとえば,「合唱」の ふりがなは「がっしょう」だから ローマ字は ka"tusiyou かと いうと,そうでは なく,gassyô です。このように,ローマ字と ふりがなは 対応 しないのが ふつうです。

ローマ字が 音声を かいて いる 事実は ローマ字の なりたちを かんがえると はっきり します。16世紀の 日本に やって きた 外国人は「奉公(ほうこう)」を fôcô と かいて いました(当時の 発音は〈フォーコー〉だったので)。明治時代の 日本人は「川(かは)」「今日(けふ)」「声(こゑ)」を kawa, kyô, koe と かいて いました。ローマ字は はじめから 音声を かいて いたのが よく わかるでしょう。


ローマ字を ふりがなに(または ふりがなを ローマ字に)変換 する 処理を 表計算ソフト(アプリ)などを つかって 自動的に おこないたいと かんがえる 人は おおいでしょう。しかし,この 処理は 完全に 自動では できません。ふりがなを ローマ字に 変換 する ツールは インターネットに 公開 されて いる もの だけでも たくさん あります。しかし,それらは すべて 不完全で,ときどき 変換に 失敗 して まちがった 結果を 出力 します。くわしくは「なぜ ふりがなでは ダメなのか?」を およみ ください。


ローマ字と ふりがなが 対応 する ように ローマ字の かきかたを かえる べきだと かんがえる 人が いるかも しれません。しかし,その かんがえは まちがって います。ローマ字と ふりがなを 対応 させる かんがえは まちがって いませんが,そのために あらためるのは ローマ字の かきかたでは なく ふりがなの かきかたです。つぎの ふたつの 節で その 理由を 説明 します。

ふりがなは 音声を かいて いない?

ローマ字も ふりがなも 音声を 文字列に 変換 した ものですが,つかう 文字が ちがう だけで なく,音声を 文字列に 変換 する ルールも ちがいます。ローマ字は 音声を ほぼ その とおりに 変換 します。そのため,ローマ字は ほぼ よんで いる とおりに かけて,かいて ある とおりに よめます。ところが,ふりがなは 音声を その とおりに 変換 しません。そのため,ふりがなは よんで いる とおりに かけなかったり,かいて ある とおりに よめなかったり します。ふりがなは 音声と つづりの 対応が すこし ずれて いる わけです。具体的には つぎの ところが ずれて います。

ふりがな音声ローマ字
こんばんはこんばんはコンバンワkonbanwa
お母さんおかあさんオカーサンokâsan
お姉さんおねえさんオネーサンonêsan
おおかみオーカミôkami
王様おうさまオーサマôsama
鼻血はなぢハナジhanazi
三日月みかづきミカズキmikazuki


「めだかの学校」 (「童謡(増訂版)」(野ばら社)より)

歌詞の「がっこう」「おゆうぎ」に 記号が つけて あり,「こう」「ゆう」を〈コー〉〈ユー〉と よむ ように うながして います。こどもが まちがった よみかたを するのでしょう。特に,長音が ふたつの 音符に またがって いると,それが おこりやすいのかも しれません。現場の 苦労が しのばれます。歌詞を ローマ字で かけば こんな 気くばりは いりません。

ふりがなも 音声を かいて いた

かな文字は 音声を かく ために 発明 された 文字ですから,昔は ふりがなも 音声を その とおりに かいて いました。ところが,いまは 音声と つづりの 対応が すこし ずれて います。これは 日本語の 発音が かわったからです。一部の ことばの 発音が かわったのに,その ことばの つづりを じっさいの 発音に あわせて かえる ことを しなかった ため,ずれが できて しまった わけです。数百年という ながい 時間が たてば,音声と つづりの 対応は ずれて きます。これは 日本語に かぎらず 外国語でも 自然に おこる 現象です英語は この ずれが ひどい 言語として しられて います。英単語の つづりが おぼえにくい 理由の ひとつが これです。そして,英語も はじめから ずれて いた わけでは ありません。ふるい 英語は name, time を つづりの とおりに〈ナーメ〉〈ティーメ〉と よんで いました。

明治時代から 正式の ルールに なった 歴史的仮名遣いは 平安時代の 発音に あわせた かきかたで,いまの 発音との ずれが はなはだしく,たいへん あつかいにくい ものでした。これを きちんと よみかき できたのは 教育に 時間と お金を かけられる 一部の 人 だけでした。これでは 民主的と いえません。そこで,戦争が おわった あと,この ルールが あらためられて 現代かなづかいが できました。これで ほとんどの ずれが なく なって よみかきが やさしく なり,日本の 教育水準は いちじるしく あがりました。ただし,あまりにも ずれが おおきかったのと 改革に 抵抗 する 人が おおかった ために,このときは ずれを なおしきれませんでした。それで,まだ いくつかの ずれが のこって います。

じつは,明治時代にも ふりがなの かきかたを あらためようと した ことが あったのですが,その もくろみは 失敗に おわりました。もし 成功 して いたら,ローマ字の かきかたと ふりがなの かきかたは ほぼ おなじに なって いました。戦後,ふりがなの かきかたは あらためられましたが,まだ ローマ字の かきかたに おいついて いない ところが あり,近代化が おくれて います。


こういう わけで,ローマ字の かきかたと ふりがなの かきかたを くらべると,全体的に みれば ローマ字の かきかたの ほうが よく できて います。したがって,ローマ字の かきかたと ふりがなの かきかたが 対応 する ように 一方を あらためると すれば,ふりがなの かきかたを あらためないと いけません。

そして,そのような ふりがなの かきかたは すでに あり,じっさいに つかわれて います。この サイトも〈 〉で 発音を しめす ときに つかって います。くわしくは「棒引き仮名遣い」を およみ ください。

ローマ字と ローマ字入力

ローマ字入力は ローマ字を 日本語入力システムに 応用 した ものです。ただし,その 設計に まずい ところが あり,ただしい ローマ字を 入力 して それを そのまま 漢字かな表記に 変換 する 自然な しくみに なって いません。独自仕様の ローマ字で ふりがなを 入力 して それを 漢字かな表記に 変換 するという ややこしい しくみです。たとえば,ローマ字の hikôki を 入力 して「飛行機」に 変換 するのでは なく,hi, ko, u, ki で「ひ」「こ」「う」「き」を 入力 して それを「飛行機」に 変換 します。このように,ローマ字と ローマ字入力は まったく ちがう 別の ものに なって いますローマ字と ローマ字入力は 別の ものですが,にて いる ところは おおいので,混同 されやすい 問題が あります。ローマ字で「きゃ」を kiya と かいたり「葉っぱ」を hatupa と かいたり する まちがいは ほとんど みかけないのに,「こんばんは」を konbanha と かいたり「飛行機」を hikouki と かいたり する まちがいは よく みかけます。これは ローマ字と ローマ字入力を 混同 して いる 人が おおいからです。学校の「国語」で ならった ローマ字を わすれて しまった あとに ローマ字入力を おぼえた 人は この まちがいを しがちです。小学校で ローマ字と ローマ字入力を 同時に おしえられた 人は はじめから ふたつの ちがいを 理解 して いない ことも あります。なお,中国にも ピンインという ローマ字が あり,ピンイン入力も あります。これは 日本の ローマ字入力と ちがって,ただしい ピンインを 入力 して それを そのまま 漢字表記に 変換 する しくみです。ピンインの かきかたと ピンイン入力の キーの おしかたは おなじに なり,日本の ような まちがいが おこりません。

ローマ字ローマ字入力
こんにちは 〈コンニチワ〉→ konnitiwa konnnitiha →「こんにちは」
王様〈オーサマ〉→ ôsama ousama →「おうさま」
オオカミ〈オーカミ〉→ ôkami ookami →「おおかみ」
空気〈クーキ〉→ kûki kuuki →「くうき」
ケーキ〈ケーキ〉→ kêki ke-ki →「けーき」

ローマ字入力が つかわれる ように なってから,ローマ字と ローマ字入力を 混同 して,「ワープロ式」と よばれる まちがった ローマ字を かいて しまう 人が ふえて います。いまは 小学校で ローマ字と ローマ字入力を 同時に おしえて いますが,これが かえって ローマ字の 理解を さまたげて います。


ローマ字と ローマ字入力が 一致 する ように ローマ字の かきかたを かえる べきだと かんがえる 人が いるかも しれません。しかし,その かんがえは まちがって います。ローマ字と ローマ字入力を 一致 させる かんがえは まちがって いませんが,そのために あらためるのは ローマ字では なく ローマ字入力です。くわしくは「ふたつの ローマ字を 統一 する」を およみ ください。

表語文字と 表音文字

ことばを 文字で かきあらわす やりかたには 表語文字を もちいる 方法と 表音文字を もちいる 方法が あります。漢字は 表語文字で かな文字と ラテン文字は 表音文字です。

表語文字を もちいると,ひとつの ことばが ひとつの 文字で かけます。これは たいへん わかりやすい かきかたに おもえますが,じっさいには 欠点が おおく,つかいにくい かきかたです。そのため,表語文字は だんだん すたれて いき,ほとんど なく なって しまいました。いまも いきのこって いる 表語文字は 漢字 だけで,その 漢字を つかって かく 言語は 中国語と 日本語 だけです。

表音文字を もちいると,ひとつの ことばを かくのに ひとつ 以上の 文字が 必要です。ことばの 音声を ばらばらに 分解 して,それぞれの 音声に 対応 した 文字列を ならべて かきます。なんだか ややこしい かきかたに おもえますが,じっさいには 利点が おおく,つかいやすい かきかたです。そのため,いまは ほとんどの 言語が この かきかたを して います。

世界の 中で みれば,表音文字を もちいる かきかたが ふつうです。文字は そのように 発展 して きました。昔は 漢字を つかって いた 韓国語と ベトナム語も いまは 表音文字を つかって います。日本語も 表音文字で かく ように すれば 便利に なりますから,日本語を かな文字や ラテン文字で かく かんがえが あります。これを かな文字論ローマ字論と いいます。

ラテン文字で ことばを かく」「ことばと 文字の 関係」も およみ ください。

「音声を かく」の 意味

ローマ字を 外国人むけの 発音記号 みたいな ものと かんがえて いる 人は おおいのですが,それは よく ある おもいちがいです。ローマ字は ことばの 音声を かきますが,発音記号では ありません。発音記号が かく 音声は じっさいに 口から でる 音声です。それに たいして,ローマ字が かく 音声は 頭の 中に ある 音声です。そして,これらの 音声は ちがう ものです。ちょっと ややこしいので,これを 説明 します。

文字の 役割は ことばを 記録 する ことです。表音文字を ならべて ことばを かく ときも,その ことばが わかる ように かけば それで 役目を はたせます。そのため,ことばの 音声を かくと いっても,ことばの 区別に かかわらない 程度の 発音の ちがいは いちいち かきわけません。それどころか,ふだんは その ちがいを 意識 して いません。意識 する 必要が ないからです。

つまり,ローマ字は ことばの 音声を かきますが,音声を 機械で 録音 する ように 正確に うつしとる ものでは ありません。言語学者が こまかく 分類 した 音声を かきあらわす ものでも ありません。声の 質や おおきさ,しゃべる はやさ などの 情報も ことばの 区別に かかわらないので かきません。もし ふたつの 音声が おなじ ことばに きこえたら,たとえ それらの 波形が ちがっても,発音記号が ちがっても,声の おおきさが ちがっても,それらは おなじ つづりで かきます。反対に,もし ふたつの 音声が ちがう ことばに きこえたら,それらは ちがう つづりで かきます。ことばの 音声を かくというのは こういう 意味です。

これは「足(シ)」は「石(シ)」や「牛(シ)」とは ちがうという レベルの はなしに とどまりません。もっと こまかい 音声に かんしても そうです。たとえば,言語学者の 分類に よれば「音程(オテイ)」「音符(オプ)」「音楽(オガク)」の〈ン〉は すべて ちがいます。〈ハ〉〈ヒ〉〈フ〉の 子音も すべて ちがいます。しかし,日本語で くらして いる 人は これらの ちがいを 意識 して いません。このとき,発音記号は ちがいを かきわけますが,ローマ字(訓令式)は おなじ つづりで かきます。すなわち,「音程」「音符」「音楽」の〈ン〉を すべて n と かき,〈ハ〉〈ヒ〉〈フ〉の 子音を すべて h と かきます。「音程」「音符」「音楽」の〈ン〉も,〈ハ〉〈ヒ〉〈フ〉の 子音も,日本語で くらして いる 人の 頭の 中では おなじ 音声だからです。

ヘボン式が「音符」の〈ン〉を m と かき,〈フ〉の 子音を f と かくのは 英語で くらして いる 人の 頭の 中では これらの 音声が ほかと ちがうからです。

音声を かく ルール

ローマ字が 発音記号で ない ことは 別の 意味からも いえます。発音記号の かきかたは 世界共通ですが,表音文字の かきかたに 世界共通の ルールは ありません。表音文字を ならべて ことばの 音声を かく とき,どんな 音声を どんな つづりで かくか,どんな つづりを どんな 音声で よむか,これは 言語に よって ルールが ことなります。たとえば,英語の ja は〈ジャ〉ですが,ドイツ語の ja は〈ヤ〉です。英語の cho は〈チョ〉ですが,フランス語の cho は〈ショ〉です。イタリア語の ca は〈カ〉ですが,マジャル語(ハンガリー語)の ca は〈ツァ〉です。それぞれの 言語の 性質に あわせた ルールに して あるからです。ローマ字も 日本語の 性質に あわせた ルールに して あります。その ルールを まとめた ものが「ローマ字表」です。

こういう わけですから,しらない 言語の つづりは よみかたが わかりません。たとえば,フランス語を しらない 人が フランス語の つづりを みても ただしい 発音では よめません。フランス映画の おしまいに うつしだされる FIN を みた こどもが〈フィン〉と いって しまうのは フランス語を しらないからです。これと おなじで,日本語を しらない 人が ローマ字を みても ただしい 発音では よめません。道路標識や 駅名標には ローマ字が かいて ありますが,外国人は それらを ただしい 発音では よめません。おおよその よみかたが わかる だけです。

漢字と かな文字を しらなくても かける

ローマ字の つづりは 音声で きまりますから,ローマ字を かく だけなら 漢字や かな文字の 知識は いりません。日本語で 会話が できる 人なら,漢字と かな文字を まったく しらなくても,ローマ字を おぼえて つかいこなせます。

日本に すんで いる 外国人の おおくは,漢字仮名交じり文の よみかきは できなくても,日常の かんたんな 会話は できます。したがって,ローマ字を つかえば そういう 人と メールや チャットが できます。「タンポポ」を 漢字で かけない 日本人でも ローマ字なら かんたんに かけます。「氷」の ふりがなが「こおり」か「こうり」か わからない こどもでも ローマ字なら まちがいなく かけるでしょう。ちいさい こどもむけの 絵本は かな文字 だけで かいて ありますが,ローマ字がきに すれば もっと やさしく なります。ローマ字は,(1) 文字の 形が わかりやすく,(2) 文字の 数が すくなく,(3) かきかたが 規則的だからです。本当は 小学校で かな文字の 前に ローマ字を おしえた ほうが いい くらいです(1) ラテン文字は 文字の 形が 幾何学的で おぼえやすいのですが,ひらがなは 複雑な 曲線で できて いる ため かくのも よむのも むつかしい 欠点が あります。外国人が 日本語を まなぶ ときも ひらがなを おぼえるのに とても 苦労 する そうです。 (2) 訓令式で つかう 文字は 通常 19文字です。大文字と 小文字が あるので 2倍の 38文字と しても,小文字には 大文字と おなじ 形で おおきさが ちがう だけの 文字が 10個 ほど あり,おぼえるのは かんたんです。ひらがなと カタカナを あわせると 100文字 ちかくにも なり,外国人が これを おぼえるのは たいへんです。日本語の 初心者が はじめに こえなければ ならない ハードルに しては たかすぎます。 (3) ローマ字は 音声と つづりの 対応が 規則的ですが,ふりがなは 変則的な つづりに なる ことばが たくさん あります。例:「私は」の「は」,「大きい」の「おお」。(4) さらに つけくわえると,ローマ字には こどもに 子音・母音(音素の 概念)を おしえやすい 利点が あります。音素の 概念は「英語」の 勉強で 必要に なるので,できるだけ はやい 段階で おしえて おかないと いけない 基礎知識です。こどもに はじめて 文字を おしえる 段階で,音素の 概念を あつかわない 国は 日本 だけです。

このように,ローマ字は かくのが かんたんです。そして,よむのも かんたんです。日本人でも 外国人でも,おとなでも こどもでも,すぐに おぼえて つかえます。これが ローマ字の すぐれて いる ところです。

ローマ字と ふりがなの 関係

はじめて よむ 人は ここを よみとばしても かまいません。

ローマ字と ふりがなに 直接の むすびつきは ありませんが,ローマ字の かきかたと ふりがなの かきかたには にて いる ところも あります。どれほど にて いて どれほど ちがって いるでしょうか。3種類の かなづかいで かんがえます。

ローマ字は いまの 発音に あわせた かきかたで,表音かなづかいと ほぼ おなじですが,すこし ちがう ところも あります。具体例で しめした ものが 下の 表です。

歴史的仮名遣い現代仮名遣い表音かなづかいローマ字
は(助詞)wa
へ(助詞)e
を(助詞)o
かはかわかわkawa
にはにわにわniwa
こひこいこいkoi
まひまいまいmai
飼うかふかうかうkau
添うそふそうそうsou
うへうえうえue
まへまえまえmae
かほかおかおkao
しほしおしおsio
i
参るまゐるまいるまいるmairu
うゑうえうえue
こゑこえこえkoe
うをうおうおuo
をんなおんなおんなonna
こう(副詞)かうこうこー
近江あふみおうみおーみÔmi
日向ひうがひゅうがひゅーがHyûga
言ういふいうゆーiu *
~でしょう~でせう~でしょう~でしょー-desyô
今日けふきょうきょーkyô
おほやけおおやけおーやけôyake
こほりこおりこーりkôri
とほりとおりとーりtôri
ほほほおほー
あぢあじあじazi
ふぢふじふじhuzi
紅葉もみぢもみじもみじmomizi
みづみずみずmizu
かづらかずらかずらkazura
小豆あづきあずきあずきazuki
鼻血はなぢはなぢはなじhanazi **
近々ちかぢかちかぢかちかじかtikazika **
縮むちぢむちぢむちじむtizimu **
三日月みかづきみかづきみかずきmikazuki **
常々つねづねつねづねつねずねtunezune **
続くつづくつづくつずくtuzuku **
贔屓ひいきひいきひーきhîki ***
夫婦ふうふふうふふーふhûhu
英語えいごえいごえーごeigo *
お母さんおかあさんおかあさんおかーさんokâsan
お兄さんおにいさんおにいさんおにーさんonîsan ***
お姉さんおねえさんおねえさんおねーさんonêsan
お父さんおとうさんおとうさんおとーさんotôsan
上手じやうずじょうずじょーずzyôzu
蒸気じようきじょうきじょーきzyôki
饒舌ぜうぜつじょうぜつじょーぜつzyô­zetu
丈夫ぢやうぶじょうぶじょーぶzyôbu
一帖いちでふいちじょういちじょーitizyô
条約でうやくじょうやくじょーやくzyô­yaku

* ローマ字と 表音かなづかいが ずれて いる ところです。

** ローマ字の ルールが すこし まずい ところです「ぢ」「づ」の かきかたを 問題に して います。ローマ字には 日本語の 表記システムを 民主化 する 目的が あります。だれでも わかる やさしい かきかたに する ため,発音どおりに かく 表音化の かんがえを 採用 して います。けれども,この 表音化を やりすぎて,日本語の 性質に あわない 不自然な かきかたに なって いる ところが あります。それが「ぢ」「づ」です。たとえば,「鼻血」「三日月」は hanadi, mikaduki と かく ほうが 自然でしょう。「もっと 日本語らしい かきかた」も およみ ください。

*** îii と かく ことも あります。「îii と かく?」で 説明 して います。

音声の かきかた

直音

直音は ふつうの 音です。直音は「ローマ字表」の とおりに かきます。

aiueo
kakikukeko
sasisuseso
tatituteto
naninuneno
hahihuheho
mamimumemo
yayuyo
rarirurero
wao
gagigugego
zazizuzezo
dazizudedo
babibubebo
papipupepo

〈ヂ〉〈ヅ〉〈ヲ〉に 気を つけて ください。「鼻血」「三日月」は hanadi, mikaduki では ありません。

e(絵)
yama(山)
sakura(桜)
hanazi(鼻血)
mikazuki(三日月)

拗音

拗音(ようおん)は〈キャ〉〈キュ〉〈キョ〉などの 音です。「ねじれる 音」とも いいます。拗音も「ローマ字表」の とおりに かきます。

キャキュキョ
kyakyukyo
シャシュショ
syasyusyo
チャチュチョ
tyatyutyo
ニャニュニョ
nyanyunyo
ヒャヒュヒョ
hyahyuhyo
ミャミュミョ
myamyumyo
リャリュリョ
ryaryuryo
ギャギュギョ
gyagyugyo
ジャジュジョ
zyazyuzyo
ヂャヂュヂョ
zyazyuzyo
ビャビュビョ
byabyubyo
ピャピュピョ
pyapyupyo

拗音は かな文字の 2字で 1音を あらわしますが,1字ごとで なく 1音ごとに くぎって かんがえます。「お茶」は「お」「ち」「ゃ」と くぎって otiya に しないで,〈オ〉〈チャ〉と くぎって otya に します。

otya(お茶) kyaku(客)
syakai(社会) syuzyutu(手術)

〈ヂャ〉〈ヂュ〉〈ヂョ〉に 気を つけて ください。「割れ茶碗」「丸提灯(まるぢょうちん)」は waredyawan, marudyôtin では ありません。

warezyawan(割れ茶碗)
maruzyôtin(丸提灯)

外来語 などで よく つかわれる 〈ファ〉〈シェ〉〈ウォ〉などの 音は「ローマ字表」に かかれて いません。これらは 特殊音の ところで 説明 します。

撥音(ん)

撥音の かきかた

撥音(はつおん)とは〈ン〉の 音です。「はねる 音」とも いいます。撥音は n と かきます。ローマ字入力に なれて いる 人は うっかり nn と かいて しまう ことが ありますから 気を つけて ください。

panda(パンダ)
kirin(キリン)
tenki(天気)
kanban(看板)

撥音の つぎに 母音字 または y が ある ときは n の うしろに きる印(')を かきます。これは「恋愛」「深夜」が〈レナイ〉〈シニャ〉と よまれるのを ふせぐ ためです。

ren'ai(恋愛)
den'en(田園)
sin'ya(深夜)
hon'yaku(翻訳)


撥音の つぎに ナ行音が あると nn の 形が できます。これは 促音(っ)の かきかたと おなじですが,特別あつかいで 促音と みなしません。それを わかりやすく する ため,この サイトは n の うしろに きる印(')を かいても いい ことに します。「新年」が〈シッネン〉と よまれるのを ふせぐ ためです。ふつうは そんな むりやりの よみかたを しないので,きる印(')は かきません。学校の テストでも きる印(')は かきません。

sinnen, sin'nen(新年)
onna, on'na(女)


「お料理の勉強」(昔の 教科書)

「そんな」「ぼんやり」の かきかたを よく みて ください。


kon'nichiwa

マライア キャリーが かいた「こんにちは」に きる印(')が はいって いました。


この サイトは〈ヌァ〉を nwa と かく ことに して いるので,撥音の つぎに w が ある ときも n の うしろに きる印(')を かきます。「電話」が〈デヌァ〉と よまれるのを ふせぐ ためです。ふつうは〈ヌァ〉を つかいませんから,きる印(')は かきません。学校の テストでも きる印(')は かきません。

denwa, den'wa(電話)
genwaku, gen'waku(幻惑)

ヘボン式の 撥音

一般的な ヘボン式には b, m, p の 前に ある 撥音(ん)を m と かく きまりが あります。学校の「英語」で ならう「英語式」パスポートの ローマ字駅名標の ローマ字は この きまりに したがって います。ただし,道路標識の ローマ字 などは 例外で,撥音を すべて n と かきます。

kamban(看板)
sampo(散歩)
Homma Shimpei(本間新平)
Shimbashi(新橋)

なぜ こんな きまりが あるのかと いうと,ヘボン式は 英語風の つづりかただからです。すこし くわしく いうと,〈ン〉という 発音の 認識には 日本語と 英語で ちがいが あり,ヘボン式は 英語の 認識に あわせて 設計 して あるからです。じつは,日本語の 撥音には いくつか 種類が あります。たとえば,「3台」「3枚」「3回」の〈ン〉は すべて 発音が ちがい,発音記号で かけば ちがう 記号に なります。日本語では これらの ちがいに 意味が なく,日本語の はなし手は その ちがいを 意識 して いませんが,じっさいには ちがう 発音を して います。英語では これらの 一部で ちがいに 意味が あり,英語の はなし手は その ちがいを 意識 して つづりも かきわけて います。英語の pumpkin(カボチャ)を よく みると,p の 前に ある〈ン〉は m に なって いるのが わかります。アメリカ人の ヘボンが ローマ字の かきかたに この m を とりいれたので,一般的な ヘボン式は こういう ルールに なって います。ヘボン式は 英語の はなし手が つかう ものですから,英語の 認識に あわせて ある わけですヘボン式は 英語の はなし手が 日本語の 発音を きいて 英語風の つづりで かきうつした ものです。日本人が 英語の 発音を きいて カタカナで かきうつした「ディス イズ ア ペン」式の カタカナ表記と おなじ ものです。したがって,発音記号の ように 正確な 発音を あらわす ものでは ありません。たとえば,日本語の〈ハ〉と〈ヒ〉の 子音や「3枚」と「3回」の〈ン〉は 発音が ちがい,発音記号で かけば ちがう 記号に なりますが,ヘボン式は これらを かきわけません。


ただし,撥音を n, m で かきわける 表記法が すぐれて いるという 意味では ないので,かんちがい しないで ください。日本語では〈ン〉の 発音の ちがいに 意味が ないので,それらを かきわける 必要が ありません。じっさい,ふりがなは これらを 区別 しないで すべて「ん」と かきますが,それで 不都合は ありません。撥音を n, m で かきわける 表記法は,英語の はなし手が みれば 自然ですが,日本語の はなし手が みれば 不自然で つかいにくい かきかたです。ローマ字は 日本語の 表記法で あって 発音記号では ないのですから,日本語の はなし手が 意識 して いない レベルの わずかな 発音の ちがいで つづりを かえては いけません。

日本語に とって n, m の かきわけは 必要が ないと いうより,むしろ 有害です。日本語を ヘボン式で かくと,ことばの つづりが 一定 しなかったり,ことばを ABC順に ならべる 順序が おかしく なったり するからです。たとえば,インターネットで「金」を 検索 しても「金メダル」が ヒット せず,「缶」を 検索 しても「缶ビール」が ヒット しないというのでは 不便でしょう。名簿で 野間さんが 野田さんより うしろに あるのに 本間さんが 本田さんより 前に あったら おかしいでしょう。百科事典で「ヒガンバナ」が「彼岸」より 前に あったり,国語辞典で「疑問文」が「疑問」より 前に あったり したら つかいにくいでしょう。これらは すべて n, m の かきわけから おこります。日本語を 大切に する たちばから いえば,これは ヘボン式が もって いる 致命的な 欠点です。

kin(金)
kimmedaru(金メダル)
kan(缶)
kambīru(缶ビール)
Noda(野田)
Noma(野間)
Honda(本田)
Homma(本間)
higan(彼岸)
higambana(ヒガンバナ)
gimon(疑問)
gimombun(疑問文)

昔の 和英辞典は みだし語を ヘボン式で かいて いましたが,この 問題を さける ため,n, m の かきわけを しない ように 改造 した ヘボン式を つかって いました。


「新和英大辞典」(研究社)

ローマ字の かきかたを 説明 して いる 部分から 一部を ぬきだした ものです。撥音は すべて n に して います。


さらに,こまかい ことを いうと,b, m, p の 前の〈ン〉だから m に なると 単純に かんがえるのは あやまりです。英語で b, m, p の 前に ある〈ン〉は おおくの ばあい m と かかれますが,つねに そうとは かぎりません。唇を とじる〈ン〉は m に なるという 説明も よく みかけますが,かならず そうとも かぎりません。複合語の sunbeam, gunmetal, pinpoint の つづりを よく みて ください。接頭辞が つく 単語にも,input, unpack の ように,m に ならない ものが あります。地名には Canberra, Edinburgh などが ありますn の〈ン〉が つぎの 音に 影響 されて m の〈ン〉に かわるのは「同化」と よばれる 現象の 一種です。[nb][nm][np]は 発音 しにくいので,発音 しやすく する ため,自然に おこります。発音の 変化に あわせて つづりまで かわるか どうかは また 別の 条件で きまります。たとえば,import は つづりが かわって いますが,input は つづりが かわって いません。


tembin(和英語林集成)

「てんびん」は tembin なのに「てんびん棒」は tembimbō で,「てんびん」の つづりが ねじまげられて います「てんびん」が tembin で「棒」が なら,「てんびん棒」は tembinbō と かく べきです。ところが,ヘボン式は そういう ルールに なって いません。「和英語林集成」は みだし語を ABC順に ならべて いますが,よく みると「てんびん棒」は ABC順に なって いません。これでは 辞書が つかいにくいでしょう。もし「てんびん」という ことばを しらない 外国人が tembimbō の 意味を しらべようと したら,tembimbō を みつけだせないかも しれません。はなしが 脱線 しますが,「和英語林集成」は「てんびん」は「天秤」と かいて いるのに「てんびん棒」は「担棒」と かいて います。「和英語林集成」は ヘボンが ひとりで つくったのでは なく,日本人の 協力者が いました。昔の 日本人が 漢字を つかう ときの 感覚が あらわれて いる ようで,興味ぶかい ところです。

日本語を しらない 外国人は b, m, p の 前の 撥音を,複合語で あろうが なかろうが,みさかいなく m と かいて しまうかも しれません。けれども,それは やりすぎです。そんな かきかたを したら 日本語が ねじまげられて しまいます。この 欠点は ヘボン式が 日本語を かくのに 適さない 理由に なって います。「「あんパン」は ampanか?」でも この 問題を くわしく 説明 して います。


ヘボン式は 撥音の うしろに いれる くぎりの 記号を つなぎ(-)に するのが ふつうです。しかし,この 記号を きる印(')に する かきかたも あります。

ren-ai, ren'ai(恋愛)
jin-in, jin'in(人員)
hon-ya, hon'ya(本屋)
gen-yu, gen'yu(原油)

ほんらい,つなぎ(-)は ふたつの ことばを つなぐ 記号です。発音を きる ときは きる印(')を つかう べきです。しかし,日ごろ よく 目に する 道路標識の ローマ字駅名標の ローマ字つなぎ(-)を つかって いるので,つなぎ(-)が 一般的に なって います。「和英語林集成」も つなぎ(-)を つかって いましたヘボンは 中国語を しって いたので,ひとつの 漢字は ひとつの ことばという 感覚を もって いたかも しれません。くぎりの 記号は 漢字と 漢字の あいだに はいる ケースが おおいので,ふたつの ことばを つなぐ 記号が えらばれたとも かんがえられます。

学校の「国語」で どちらに して いるかは わかりません。テストの ときは 教科書や 教師の かきかたに あわせて ください。


「毎日の言葉」 (昔の 教科書)

ここでは「乱用」を ran'yō と かいて います。

撥音と ナ行の 子音

はじめて よむ 人は この 節を よみとばしても かまいません。

撥音(ん)は n の うしろに 発音を きる 記号を いれなければ ならない ばあいが あります。記号は かくのが すこし 面倒で,タイピングの スピードも おちます。単語の 途中に 記号が はいると 文章を 編集 して いる ときに 単語選択や 単語検索が やりにくい 不便も あります。パスポートや クレジット カードの ように 記号が つかえない 状況も おおい ことを かんがえると,この かきかたには 問題が あります。記号が つかえないからと いって 省略 すると,「銭」と「善意」が おなじ つづりに なって しまいます。

撥音を n で なく nx, nn などで あらわす ことに すれば,この 問題は 解決 できます。しかし,これは ローマ字の 大改造に なるので,昔から 手が つけられない ままに なって います「何(なに)」を〈ナン〉,「物・者(もの)」を〈モン〉と 発音 する ばあいが ある ことから わかる ように,撥音の 表記に n を つかう 設計が 見当はずれという わけでは ありません。撥音の n と ナ行の n を 区別 できる うまい かきかたが もとめられて います。新日本式ローマ字は ñ を 採用 して います。ñ は みた目が すっきり して いて よみやすいのですが,パスポート などでは つかえません。nnローマ字入力の ローマ字で つかわれて いる やりかたですが,kinnnen(近年)の よみにくさが 欠点です。この 表に しめした やりかたの 中では,現行の n'nx に かえた だけの kinxen(禁煙)・kinnen(近年)・kinen(記念)が もっとも 現実的と かんがえられます。その ばあい,よみやすさの ために kinxnen(近年)と かいても かまいません。

撥音(※)禁煙近年記念
n', n, nkin'enkinnenkinen
n', n', nkin'enkin'nenkinen
n', n', n'kin'en'kin'nen'kinen'
nx, n, nkinxenkinnenkinen
nx, nx, nkinxenkinxnenkinen
nx, nx, nxkinxenxkinxnenxkinenx
nn, n, n (NG)kinnenkinnenkinen
nn, nn, nkinnenkinnnenkinen
nn, nn, nnkinnennkinnnennkinenn

※ 左から,母音字 または y の 前の 撥音,n の 前の 撥音,そのほかの 撥音。

促音(っ)

促音の かきかた

促音(そくおん)とは〈ッ〉の 音です。「つまる 音」とも いいます。促音は つぎの 子音字を かさねて かきます。たとえば,つぎの 音が〈キ〉なら ki の 子音字 k を かき,つぎの 音が〈サ〉なら sa の 子音字 s を かきます。促音の つぎに 拗音が くる ときは kya, sya, tya などの 1文字めを かきます。たとえば,つぎの 音が〈ショ〉なら syo の 1文字めの s を かきます。

ふつう,ひとつの ことばの 中で 促音の つぎに ナ行音・撥音・母音が くる ことは ありませんから,このような ことばの かきかたは きまって いません。

一般的な 和語・漢語は 子音字を かさねる ところが kk, ss, tt, pp の いずれかの 形に なります。感動詞・外来語 などは hh, dd, gg などの 形に なる ことも あります。

zassi(雑誌)
kitte(切手)
happa(葉っぱ)
tokkyo(特許)
issyo(一緒)
mattya(抹茶)
ehhen(えっへん)
yahhô(ヤッホー)
beddo(ベッド)
baggu(バッグ)
rozzi(ロッジ)


「あっ」「ほっ」の ように,促音で おわる ことばには つぎの 音が ありません。この ばあいは しかたが ないので,促音を つまる印(')で あらわします。この サイトは かわりに q を かいても いい ことに しますつまる印(')は きる印(')と おなじ 記号です。はたらきの ちがいで よびわけて います。「補助動詞」を かく とき などに つかう ぬけ字の印(')も おなじ 記号です。なお,促音は すべて つまる印(')で あらわせば いいと かんがえる 人が いるかも しれません。しかし,促音の 前に 撥音(ん)が あると,それでは うまく いきません。例:zen'in(全員? ゼンッイン?)。ふりがなでは 促音を「っ」で あらわします。つねに「つ」を つかうので すこし おかしな かんじも しますが,促音は 独立 した 音声ですから,それを ひとつの 文字で あらわすのは 自然です。ローマ字でも 促音は できるだけ 記号を つかわず 文字で あらわす ほうが いいでしょう。

a'(あっ)
ho' to suru(ほっとする)
kora'(こらっ)
uwa'(うわっ)
eq(えっ)
Kazi daq!(火事だっ!)


「はだかの王様」(ローマ字文庫)


ふつう,mm, yy,ww の 形は できません。しかし,この サイトは「甘い」を むりやりの 発音で〈アッマイ〉と いいたい とき,その 発音を ammai と かく ことに します。

ammai(あっまい)
huwwahuwa(ふっわふわ)


nn の 形は 特別で,これは 促音では ありません。「女」を onna と かけるのは このためです。しかし,この ルールには すこし 問題が あります。「イヌ」を むりやりの 発音で〈イッヌ〉と いいたい ときに その 発音を innu と かけません。そこで,この サイトは 促音の つぎに ナ行音・撥音・母音が ある とき,促音を q と かく ことに します。こう すると,「イッヌ」だけで なく「ウッウ」「エッン」なども かける ように なります。

iqnu(イッヌ)
puqnyupunyu(ぷっにゅぷにゅ)
uqu(ウッウ)
gaqô(ガッオー)

ヘボン式の 促音

ヘボン式は 子音字に f, j を つかいますから,促音(っ)を かく ときに ff, jj の 形が できる ことも あります。

促音の つぎに sh, ts が ある ときは,その 1文字めを かきます。促音の つぎに ch が ある ときは 特別で,c で なく t を かきます。

kitte(切手)
sutaffu(スタッフ)
bajji(バッジ)
zasshi(雑誌)
itchi(一致)
mittsu(三つ)

促音の つぎの 子音が ch の ときに cch で なく tch に する 理由は,ヘボン式が 英語風の つづりかただからです。英単語の match, switch, stretch などを かんがえて みれば,tch が 英語風の つづりだと わかるでしょう英語で なければ cch という つづりも あります。ただし,発音は ちがいます。たとえば イタリア語で,ザッケローニ監督は Zaccheroni,ピノッキオは Pinocchio です。


「コペル君の手紙」(昔の 教科書)

ここでは「実地」を jitchi と かいて います。tch の 形に なる 例です。


ヘボン式は〈イッヌ〉の 問題が〈アッマイ〉でも おこります。この サイトが すすめる 解決策は q です。

ammai(あんまい)【ヘボン式
aqmai(あっまい)【ヘボン式

「洗濯機」「三角形」

「楽器」の 発音は〈ガクキ〉で なく〈ガッキ〉です。それでは,「洗濯機」は?〈センタクキ〉か〈センタッキ〉か,まよって しまう 人が いるかも しれません国語辞典で「洗濯機」を ひくと「せんたく・き」などと かいて あり,ただしくは〈センタクキ〉かと かんがえて しまいそうです。しかし,この 説明は 形態素(意味の 最小単位)を しめす もので,発音を しめして いるのでは ありません。

じっさいは どちらの 発音も 流通 して いますから,どちらで かいても かまいません。

sentakuki, sentakki(洗濯機)
sankakukei, sankakkei(三角形)
ryokakuki, ryokakki(旅客機)

長音(ー)

長音の かきかた

長音(ちょうおん)は よみかたに「ー」が つく 音です。「のばす 音」「ひく 音」とも いいます。長音は のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせます。

okâsan(お母さん)
otôsan(お父さん)
onêsan(お姉さん)
onîsan(お兄さん)
Â, sore wa nê...
(ああ,それは ねえ……)
Ê, mâ sô desu.
(ええ,まあ そうです。)
 ieba kô iu.
(ああ 言えば こう 言う。)


「小僧の神様」(昔の 教科書)

「そう」「まあ」「小僧」「奇遇」「ご馳走」は 長音を ふくむ ことばです。

のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせるという 説明が よく わからない 人は じっさいの よみかたを かく 練習から はじめると いいでしょう。まず,「お母さん」「お父さん」を「オカーサン」「オトーサン」と かいて みます。それから,「ー」の 前の 音の 母音字に 山形(^)を のせます。

お母さん
→ オカーサン
→「カ」の 母音字 a に ^ を のせる
okâsan
お父さん
→ オトーサン
→「ト」の 母音字 o に ^ を のせる
otôsan

ローマ字は 日本語の 音声を かく ものですから,ローマ字を かく ときは よみかたを おもいうかべる ように して ください。ふりがなに ひきずられると まちがいます。

何が 長音か?

「奇異」と 鍵の「キー」の 発音は〈キイ〉〈キー〉で あきらかに ちがいます。これは わかりやすいでしょう。「石井」の「しい」や「影絵」の「げえ」も 長音では ありません。「いし・い」「かげ・え」と きりわけて かんがえると よく わかります。

kii(奇異)
(キー)
Isii(石井)
kagee(影絵)

では,「さあ,行こう!」の「さあ」「こう」は 長音でしょうか。「各(おのおの)」「とけい」は〈オノーノ〉〈トケー〉に ちかい 発音を して いますが,これらは 長音でしょうか。「例」を〈レー〉と よむ 人が「礼」を〈レイ〉と いうかも しれません。発音には 個人差が あり,地域・年代・状況による ちがいも ありそうです。

これが 長音の ややこしい ところで,そもそも 何が 長音かが はっきり しません。しかし,ルールは きっちり きめなければ ルールに なりませんから,ローマ字の 世界で 長音と みなす ものが きめられて います。

オノマトペ

一番 わかりやすいのは オノマトペです。たとえば,「ピー」「ブーン」「ザーザー」「モーモー」などが 長音です。

(ピー) bûn(ブーン)
zâzâ(ザーザー) mômô(モーモー)

外来語の「ー」

外来語で「ー」を つけて かく 音は 長音です。たとえば,「コーヒー」の〈コー〉と〈ヒー〉です。ふつう,漢字と ひらがなで かく ことばには「ー」を つかいませんが,カタカナで かく 外来語は のばす 音に「ー」を つけるので,みた目で 長音が わかります。

kôhî(コーヒー) pûru(プール) kânêsyon(カーネーション)

ただし,ひねった つづりの 外来語が あるので 気を つけて ください。おどりの「バレエ」や あそびの「ボウリング」などです。これらは〈バレー〉〈ボーリング〉と 発音 しますから,「レエ」「ボウ」の 部分は「ー」が なくても 長音です。

昔は「ー」を つかわないで 外来語を かく ことが ありました。いまなら「スター」「スキー」「スープ」「スケート」「ストーブ」と かく ところを,昔は「スタア」「スキイ」「スウプ」「スケエト」「ストオブ」と かいたり しました。これらも「ー」は ありませんが 長音です。

barê(バレエ) bôringu(ボウリング)
sutâ(スタア) syô(ショウ)

和語

和語で「ア段+あ」「イ段+い」「ウ段+う」「エ段+え」「オ段+お」「オ段+う」に なって いる ものは 長音です。たとえば,「お母さん」の「かあ」,「お父さん」の「とう」は 長音です。

â(ああ) (さあ) okâsan(お母さん)
tîsai(小さい) nîzuma(新妻) onîsan(お兄さん)
ê(ええ) (へえ) onêsan(お姉さん)
kôri(氷) ôkami(オオカミ) tôi(遠い)
ikô(行こう)
ohayô(おはよう) otôsan(お父さん)


和語の 複合語で「ア段+あ」「イ段+い」「ウ段+う」「エ段+え」「オ段+お」「オ段+う」に なる ものには 気を つけて ください。これらは 長音では ありません。たとえば,「青鬼(あおおに)」の「おお」は 長音では ありません。「あお・おに」と わけて かんがえると わかりやすいでしょう発音に かんしては,この ちがいを 気に しなくても かまいません。じっさい,「青鬼」を〈アオーニ〉と 発音 しても つうじるでしょう。「各(おのおの)」を〈オノーノ〉と いっても わかります。「黄色」が〈キーロ〉でも 問題に なりませんし,〈マツーラ〉と よべば 松浦さんが ふりかえります。

karaage(唐揚げ)
sunaarasi(砂嵐)
yakiimo(焼きいも)
kiiro(黄色)
mizuumi(湖)
yasuuri(安売り)
tumeeri(詰め襟)
kagee(影絵)
aooni(青鬼)
kuroobi(黒帯)
kousi(子牛)
youti(夜討ち)

漢語の「ウ段+う」

漢字の 音よみが「ウ段+う」に なる ものは 長音です。たとえば,「空気」の「くう」,「数字」の「すう」が 長音です。

kûki(空気)
sûzi(数字)
hûrin(風鈴)
gyûnyû(牛乳)

漢語の「オ段+う」

漢字の 音よみが「オ段+う」に なる ものは 長音です。たとえば,「工事」の「こう」,「農家」の「のう」が 長音です〈コウ〉〈ノウ〉などが ただしい 発音で〈コー〉〈ノー〉などは だらしない 発音だと おもって いる 人が いますが,それは まちがいです。

kôzi(工事)
nôka(農家)
hôsô(放送)
syôbô(消防)

漢語の「エ段+い」

漢字の 音よみが「エ段+い」に なる ものも 長音と かんがえて よさそうです。しかし,これは 長音と かんがえない ルールに なって います。たとえば,「映画」の「えい」は〈エー〉,「経済」の「けい」は〈ケー〉に ちかい 発音を して いる はずですが,これらは ê, kê と かきません「えい」「けい」などの ただしい 発音が きまって いる わけでは ありませんが,共通語では ほぼ 完全に〈エー〉〈ケー〉です。アナウンサー なども そのように おしえられる そうです(〈エイ〉〈ケイ〉と おしえて いるという 情報も あります)。いずれに しても,どちらかが ただしいという 意味では ないので 気を つけて ください。〈エイ〉〈ケイ〉が ただしい 発音だという 意識を もって いる 人は いますが,〈エー〉〈ケー〉が だらしない 発音だというのは まちがいです。

eiga(映画)
keizai(経済)
reisei(冷静)
seimei(生命)


これは 上で 説明 した 和語・外来語の かんがえかたと ちがいます。和語・外来語は〈エー〉の 発音を して いたら 長音ですが,漢語は〈エー〉の 発音を して いても 長音では ありません。

(へえ)onêsan(お姉さん)【和語】
gêmu(ゲーム)kêki(ケーキ)【外来語
eiga(映画)keiki(景気)【漢語】

「映画」の 発音は〈エイガ〉でも〈エーガ〉でも それらの 中間でも かまいませんが,「映画」の ふりがなは「えいが」に きまって います。それと おなじで,「映画」の ローマ字は じっさいの 発音に かかわらず eiga に きまって います。


さらに ややこしいのですが,和語の 複合語で「エ段+い」に なる ものが あり,これは かならず〈エイ〉と 発音 します。したがって,ローマ字の ei には,和語の 複合語で かならず〈エイ〉と よむ ものと 漢語で〈エイ〉だったり〈エー〉だったり する ものが あります。

eiri(絵入り) keiro(毛色) teitai(手痛い)【和語】
eiri(営利) keiro(経路) teitai(停滞)【漢語】


漢語の「エ段+い」を 長音と かんがえない 理由は,本当の 発音は〈エイ〉だという 気もちです。じっさいは〈エー〉と 発音 して いる 人も 本当は〈エイ〉が ただしい 発音だという 意識を もって いる ことが あり,この 意識に もとづいた ルールに して あるからですもともとの 発音は〈エイ〉に ちかかったのですが,江戸時代に 発音が かわって〈エー〉に なりました。「となりの 家に かこいが できたってねえ。」「へえ。」という 小話が できた 時代には すでに「へえ」と「塀(へい)」の 発音が おなじだった わけです。しかし,手拍子に あわせて「映画」を ゆっくり 発音 して くださいと いわれたら,〈エ・イ・ガ〉と いう 人が おおいでしょう。現代仮名遣いも「映画」の ふりがなを じっさいの 発音に かかわらず「えいが」と かく ルールに して います。また,〈エイガ〉と 発音 しても 意味が わかりますから,完全に〈エー〉に かわった わけでも ありません。このように,〈エイ〉の 意識が のこって いるのは 事実ですが,その 意識は うすれつつ ある ようです。「携帯電話」は「ケータイ」に なりました。「映画」の ふりがなを「えいが」と かき,ローマ字を eiga と かく 現行の ルールは 現代人の 感覚に あわなく なって きたとも いえます。おまけの はなしですが,ときどき 外来語の「メール」「ゲーム」が「メイル」「ゲイム」と かいて あるのを みかけます。漢語の「エイ」が「エー」に かわって きたのと 反対で,外来語の「エー」が「エイ」に なる 現象です。これは 英語を 崇拝 する 一部の 人が 意識的に やって いる ことだと おもわれますから,一般に ひろまって いくかは わかりません。

けれども,ふつう「絵入り」と「営利」は ちがう 発音で よまれるのですから,これらを おなじ つづりの eiri と かく ルールは 不合理です。これでは よむ ときに 不便なので,「絵入り」を e'iri と かく アイデアも ありますが,それでは かく ときに 不便でしょう。日本語を 日本語らしく かくという ローマ字の 目的から いっても,これは いまの ローマ字が もって いる 弱点です。「もっと 日本語らしい かきかた」も およみ ください。

そのほか

長音は このほかにも あります。基本は 長音の 発音を して いたら 長音と かんがえて いいのですが,すこし 例外が あります。

まず,文法から 長音と かんがえない ものが あります。

これらは 長音と かんがえません。ウ音便は 長音と かんがえます。

kuu(食う) suu(吸う)
yuu(結う) kuruu(狂う)
kiite(聞いて) hiite(引いて) hibiite(響いて)
ii(いい) kawaii(かわいい) ôkii(大きい)
utukusii(美しい) kodomorasii(こどもらしい)
ohayô(おはよう) arigatô(ありがとう)

そして,語源から 長音と かんがえない ものが あります。たとえば,「用いる」の 語源は「持ち率(い)る」ですから「ちい」を 長音と かんがえません。「許婚」の 語源は「言い名付く」の 連用形ですから「いい」を 長音と かんがえません。「炎」の 語源は「火(ほ)の 穂(ほ)」ですから「のお」を 長音と かんがえません。

ただし,語源を どれだけ 重視 するかは かき手の 判断に よります。語源を 意識 しなく なって いる ことばは たくさん あります。語源を しらない ことばも おおいでしょう。名詞は じっさいの 発音を 重視 する ほうが いいという かんがえも あり,それに したがう ばあいは 長音に します。したがって,かき手に よって つづりが かわる ことも ありますが,それで かまいません。

motiiru(用いる)
iinazuke(許婚)
honoo, honô(炎)

まよいやすい ことばを 下に まとめて おきます。

â([副]ああ,[感]ああ) akanbê(あかんべえ)
bâsan(婆さん) ([副]どう)
ê([感]ええ) ([感]へえ)
hiideru, hîderu(秀でる)
hîki(贔屓)
hîragi(ヒイラギ)
honoo, honô(炎)
(頬,ホオ:朴,[感]ほう)
huruu(振るう,奮う,篩う)
ii([形]いい) î(飯)
îe(いいえ) ikidôru(憤る)
imôto(妹) kâsan(母さん)
kawaisô(かわいそう)
([副]こう)
kôgôsii(神々しい)
kômori(コウモリ)
kômuru(被る)
kônotori(コウノトリ)
kôri(氷,郡) kôrogi(コオロギ)
kôru(凍る) kôzi(麹)
kurôto(玄人) kuruu(狂う)
kuu(食う) ([感]まあ)
mîra(ミイラ) ([副]もう)
môderu(詣でる) môkeru(儲ける)
moyôsu(催す) mukô(向こう)
([終助]なあ,[感]なあ)
nêsan(姉さん)
nîsan(兄さん) nîzuma(新妻) nonbê(飲兵衛)
nuguu(拭う)
nuu(縫う) ohayô(おはよう) ô([感]おお)
ôgi(扇)
ôi(多い,覆い,[感]おーい) ôkami(オオカミ)
ôkii(大きい) ômu(オウム)
ômune(概) ôse(仰せ,逢瀬)
ôu(覆う) ôyake(公)
ôyoso(凡) otiiru(陥る) otôto(弟)
([感]さあ) sayônara(さようなら) (シイ:椎)
sîka(詩歌) siiru(強いる)
sîtageru(虐げる)
sîtake(シイタケ)
sirôto(素人) ([副]そう)
sô da([助動]そうだ)
sukuu(救う,掬う,巣食う)
sumô(相撲) suu(吸う) tamasî(魂)
tîsai(小さい)
todokôru(滞る) (十)
tôge(峠) tôi(遠い)
tôri(通り) tôru(通る)
tôsan(父さん)
ureeru(愁える,憂える)
urûdosi(閏年) yazirobê(やじろべえ)
yô da([助動]ようだ)
yosoou, yosôu(装う)
yuu(結う) zîsan(爺さん)

ヘボン式の 長音

ヘボン式の 長音符号は マクロン(¯)に するのが 一般的です。ヘボン式の 変種で 長音符号を つける ものは 大抵 マクロン(¯)に して います。Wikipedia の 英語版で つかわれて いる ヘボン式も 長音符号は マクロン(¯)です。学校の「国語」で おしえる ヘボン式も 長音符号を マクロン(¯)に する ことが ある ようです。

しかし,「ローマ字のつづり方」を すなおに 解釈 すれば,長音符号を マクロン(¯)に するのは ルール違反です。


ヘボン式は 長音符号を かかないと おもって いる 人が いるかも しれません。しかし,それは まちがいです。ヘボン式は 長音符号を かきます。じつは,一般に ヘボン式と よばれて いる かきかたは もともとの ヘボン式では なく,もともとの ヘボン式から 記号を とりのぞいた ものです。「英語」の 教科書や パスポートで つかわれて いる かきかたが それです。英語教育に かかわる 業界や パスポートを あつかう 業界 などが その かきかたを いいかげんに ヘボン式と よんで いる せいで,世の中に かんちがいが ひろまって います。


もともとの ヘボン式

これは ヘボンが つくった 和英辞典です。ここで つかわれた ローマ字が もともとの ヘボン式です。学校の「国語」では 訓令式と この ヘボン式を おしえます(長音符号の 形は ちがうかも しれません)。

この サイトは 記号を はぶく ヘボン式を もともとの ヘボン式と 区別 して「英語式」と よんで います。

小文字の i^ を のせた 文字?


iî

長音は のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせる と 説明 しましたが,こまかい ことを いうと,小文字の i の 上に 山形(^)を のせた 文字は ありません。小文字の i山形(^)を のせると i の 点が なく なります。手がきの ときも 点は かきません。ヘボン式マクロン(¯)を のせる ときも おなじです。


有島武郎「小さき者へ」(ローマ字短編小説集)

tîsaiî を よく みて ください。

じっさいには,点を つけて いる 本も あります。学校の テストでは 教科書や 教師の かきかたに あわせて ください。


「とりかえっこ」(ローマ字絵物語)

ここでは 小文字の i^ を のせて いますが,印刷に すこし 苦労 して いる ようです。

îii と かく?


「アルプスの山の娘」(昔の 教科書)

「おじいさん」「シーツ」が oziisan, siitu と かいて あります。

iî は 形が にすぎて いて みわけにくい こと などから,î の かわりに ii に する かきかたが あります。i は 字体が ほそいので,ふたつ ならべても つづりが ながく ならず,よみにくく なる 心配が ありませんii に するのは ほかにも 理由が ありそうです。機械式の タイプライターで i^ を おなじ 位置に 印字 して むりやり î を つくって いた 時代には,i^ の 相性が わるい ことや,わずらわしい 操作が きらわれた ことも あるでしょう。和語には〈イイ〉か〈イー〉か わかりにくい ことばが あり,かく ときに まよいがちです。î は「のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせる」という 説明の とおりにも なりません(i の 点が きえるので)。これでは こどもが 混乱 するかも しれません。それで,ii で 統一 して しまおうと かんがえられたのかも しれません。

この かきかたは〈イイ〉と〈イー〉を 区別 できませんが,それは おおきな 問題に なりません。〈イイ〉と〈イー〉は 発音が よく にて いるからです。しかも,和語と 漢語には〈イイ〉や〈イー〉を ふくむ ことばが すくなく,〈イイ〉と〈イー〉が 区別が できなくて こまる ことは ほとんど ありません。

onîsan, oniisan(お兄さん)
tîsai, tiisai(小さい)
bîru, biiru(ビール)
sukî, sukii(スキー)

この サイトは 各方式の かきかたを 説明 する とき 「英語式」だけ ii に して いますが,じっさいには 訓令式ヘボン式でも ii が ふつうです。

odîsan(お爺さん)【日本式
ozîsan(お爺さん)【訓令式
ojīsan(お爺さん)【ヘボン式
ojiisan(お爺さん)【「英語式」

学校の テストでは 教科書や 教師の かきかたに あわせて ください。


新潟の ローマ字表記

「新潟」の 発音は〈ニーガタ〉ですから 本当は Nîgata ですが,Niigata と かかれるのが ふつうです。

大文字の 母音字を かさねて かく?

「ローマ字のつづり方」は 長音の 母音字が 大文字なら 母音字を ならべても よいと して います(そえがきの 第4項)。

Ôsaka, Oosaka(大阪)
Ôita, Ooita(大分)
Ôatari da!  Ooatari da!
(大当たりだ!)


「電報」(昔の 教科書)

ここでは「17時」を ZYUUSITIZI と かいて います。



「人魚姫」

Ôzisama, ÂOozisama, Aa と かいて あります。

この きまりが できた 理由は いくつか ある ようです。その ひとつは タイプライターを つかって いた ことです。タイプライターには 長音符号つき文字û,ô など)に 対応 する キーが ありませんから,ローマ字文を かく ときは 山形(^)と 母音字を あわせて 長音符号つき文字を つくって いました。たとえば,a^ を おなじ 位置に 印字 して â を つくって いた わけです。ところが,^ は 大文字(A, I, U, E, O)と うまく かさならないので,大文字の ときは この やりかたが つかえませんでした。いまは もう タイプライターを つかわないので,この 理由は なく なって いますローマ字用の タイプライターには 小文字の û, ô に 対応 する キーを もって いる 製品も ありました。日本語の 長音は ウ段と オ段が 圧倒的に おおいので,これで 操作性は かなり よく なった はずです。

この かきかたの デメリットは 無視 できません。〈アー〉〈イー〉〈ウー〉〈エー〉〈オー〉で はじまる ことばは,文頭に ある ときと 文中に ある ときで つづりが ちがう ことに なります。これでは 小学生が 混乱 します。検索 などの テキスト処理にも 都合が わるいでしょう。

Ookina ôkina sora no sita...
(大きな大きな空の下……)

この サイトは 長音の 母音字が 大文字でも 山形(^)を つけて います。

つねに 母音字を かさねて かく?

長音は つねに 母音字を かさねて かけば いいという わりきった かんがえも あります。かな文字表記は〈オー〉という 音声を「おお」「おう」「オー」と つねに 2文字で かいて います。これは 長音を 2拍に かぞえる 感覚にも あって いて,自然で あるとも いえます。ローマ字表記も おなじ ように すれば いいだろうという わけです。


「ドイツ語の 演説」
(巨人のあしあと 田中館愛橘博士逸話集)

ここでは「東京」「大阪」を Tookyoo, Oosaka と かいて います。

しかし,これには 欠点が ふたつ あります。まず,すべての 長音を 母音字の 連続に すると,つづりが ながく なって よみにくい ことです。もっとも,これは 感覚的な 問題ですから,なれて しまえば 解決です。

hyoosyoozyoo(表彰状)
syuutyuuryoku(集中力)

より 重要なのは 論理的な 問題です。この かきかたで おなじ 母音字が 3個 以上 つづくと,よみかたが わからなく なって しまいます。この 問題は きる印(')を つかわないと 解決 できません。

huuu(風雨,フウー?)
→ huu'u
soooo(相応,ソオーオ?)
→ soo'oo
oootoko(大男,オオートコ?)
→ oo'otoko

長音符号つき文字を つかわない かきかた

長音符号つき文字を つかえない ときが あります。パスポートや クレジット カードの 名前を かく とき,パソコン などの 環境(ハード・ソフト)が 対応 して いない とき,プレゼントの「名入れ」で つかえる 文字に 制限が ある とき などです。そこで,長音符号つき文字を つかわないで 長音を かく まにあわせの やりかたが きめて あります。いくつか ある 方式の 中で,もっとも つかいやすいのは 母音字を かさねて かく 方式です。

raamen(ラーメン)
suteeki(ステーキ)
Taroo(太郎)
Huuka(風花)

これは あくまでも まにあわせです。昔から おこなわれて いる かきかたですが,いまの ローマ字の ルールは これを みとめて いません(大文字の ばあい だけ みとめて います)。正確な よみかたが わからない 欠点も あります。学校の テストでは つかえませんし,この かきかたを しらない 人も います。

けれども,この かきかたは よみまちがいが おこりにくい ように よく かんがえて つくって あり,実用の レベルでは 問題なく つかえます。長音符号つき文字が つかえない ときは これを つかって ください。Tarô(太郎)の 長音符号を はぶいて Taro に するのは もっとも まずい やりかたです。くわしくは「代用表記」を およみ ください。

hoosoo(放送)
kyooryuu(恐竜)
seetaa(セーター)
Toohoku(東北)
Kyuusyuu(九州)
Yooroppa(ヨーロッパ)


友人あての メールや チャット などは きっちり した 文面で なくても いいでしょう。そんな ときは 長音符号つき文字が つかえる 環境でも この かきかたに して かまいません。そう すれば タイピングが 楽に なります。オノマトペ などの 表現力が たかまる メリットも あります。

Zyaa, soo iu koto de yorosiku.
(じゃあ,そういう ことで よろしく。)
gyaaaaaaaaaa
(ギャーーーーーーーーーー)


母音の ながさ(ながい/みじかい)を 区別 する 言語は 日本語の ほかにも あり,ながい 母音を 母音字の 連続で あらわす かきかたも よく あります。

フィンランド語
tee(テー:お茶)
joo(ヨー:はい,ええ)
Alvar Aalto(アルヴァ アールト)

オランダ語
raam (ラーム:窓)
muur(ムーア:壁)
Ton Koopman(トン コープマン)

発音どおりに かかない カタカナ語

カタカナ語の 中には 発音の とおりに かかない ものが あります。このような ことばは 発音に あわせて かきます。

bôringu(ボウリング)
uindô(ウィンドウ)
uebu(ウェブ)
baiorin(ヴァイオリン)
purintâ(プリンタ)

「ぢ」「づ」

「じ/ぢ」は おなじ つづりで zi と かきます。「ず/づ」も おなじ つづりで zu と かきます。いまの 共通語では「じ/ぢ」「ず/づ」の 音声は おなじです。ローマ字は 日本語の 音声を ABCで かく ものですから,たとえ かな文字表記が ちがって いても,おなじ 音声は おなじ つづりで かきます。これと おなじ 理屈で「じゃ/ぢゃ」「じゅ/ぢゅ」「じょ/ぢょ」も おなじ つづりの zya, zyu, zyo です。

hanazi(鼻血)
bakazikara(馬鹿力)
mikazuki(三日月)
kanzume(缶詰)
warezyawan(割れ茶碗)
maruzyôtin(丸提灯)

ふだん ローマ字入力を つかって いる 人は「ぢ」「づ」「ぢゃ」「ぢゅ」「ぢょ」を di, du, dya, dyu, dyo と かいて しまう ことが ありますから,気を つけて ください。


ときどき,「ぢ」「づ」を di, du に して いないのは 外国人が〈ディ〉〈ドゥ〉(または〈デュ〉)と よんで しまうからだという 説明を みかけますが,そんな 理由では ありません。ローマ字は 日本語ですから,日本語を しらない 人が ローマ字を ただしい 発音で よめないのは あたりまえです。


いまの ローマ字には 日本語を 日本語らしく かく 目的が あります。この 点から いえば,「じ/ぢ」「ず/づ」「じゃ/ぢゃ」「じゅ/ぢゅ」「じょ/ぢょ」を つねに zi, zu, zya, zyu, zyo と かく ルールには すこし まずい ところが あります。これは 訓令式の 弱点です。くわしくは「もっと 日本語らしい かきかた」を およみ ください。

ヘボン式は「じ/ぢ」「ず/づ」「じゃ/ぢゃ」「じゅ/ぢゅ」「じょ/ぢょ」を つねに ji, zu, ja, ju, jo と かきますが,これは このままで かまいません。ヘボン式は ふるい タイプの ローマ字で,日本語を 日本語らしく かく 目的を もって いないからです。

Mochizuki(望月)【ヘボン式
Sangenjaya(三軒茶屋)【ヘボン式

「くゎ」「ぐゎ」

昔の 日本語には〈クヮ〉〈グヮ〉という 発音が ありました。江戸時代から だんだん つかわれなく なって,いまは〈カ〉〈ガ〉と おなじに なって いますが,明治時代は まだ〈クヮ〉〈グヮ〉の 発音を する 人が いた ようです。この 発音は いまも 方言で 一部の 地方に のこって います。

日本式は〈クヮ〉〈グヮ〉を kwa, gwa と かきますが,訓令式ヘボン式は〈クヮ〉〈グヮ〉の かきかたを きめて いません。ただし,ヘボン式も 明治時代 くらいの ふるい 文章では kwa, gwa と かいて いました。


土岐哀果「NAKIWARAI」(1910)

土岐哀果(善麿)の 第一歌集です。短歌を ヘボン式ローマ字で かいて います。「哀果」の つづりは AIKWA です。

助詞の「は」「へ」「を」

助詞の「は」「へ」「を」は wa, e, o と かきます。ローマ字は 音声を かく ものだからです。

watasi wa(私は)
anata e(あなたへ)
kore o(これを)


「遠足に行くまで」(昔の 教科書)


「お/を」の 発音は どちらも〈オ〉です。ときどき「を」の 発音は〈ウォ〉だという 意見を みかけますが,これは まちがいです。学校の「音楽」などで「を」を〈ウォ〉と 発音 する よう 指導 する ことが ある そうですが,これは 意味の ない ことです。

もともと「お/を」は 発音が ちがって いて,奈良時代の 発音だと「お」は〈オ〉で「を」は〈ウォ〉でした。かな文字が 成立 した 時代も これらが ちがう 発音 だったから ちがう かな文字で かいて いた わけです。しかし,平安時代の 末に 発音が かわって「お/を」の 発音は どちらも〈ウォ〉に なりました。さらに,江戸時代に 発音が かわって「お/を」の 発音は どちらも〈オ〉に なりました。ただし,ことばの つづりを じっさいの 発音に あわせて かえるという ことを しなかったので,かく ときは「お/を」を 区別 した ままでした。そのため,明治時代に なっても「お/を」の 発音は ちがうという 意識が のこって いました。ふだん「を」を〈オ〉と 発音 する 人が かしこまった 場で〈ウォ〉と 発音 する ことも あった そうです。

〈ウォ〉の 発音は いまも 一部の 地方に のこって います。学校で「を」の 発音は〈ウォ〉だと おしえられたと いいはる 人も いますが,もしかしたら 方言の 大切さを うったえる 教師の 説明が へたで,かんちがい して しまったのかも しれません。わかい 世代には ローマ字入力の 影響で「を」 の 発音は〈ウォ〉だと かんちがい して いる 人も います戦後の 国語改革で,「お/を」の かきわけは なく なって,すべて 発音どおりに「お」と かく ルールに なりましたが,助詞の「を」だけは ふるい かきかたの まま のこされました。これが「お/を」の 発音は ちがうという 第1の かんちがいを まねいて います。そこに,ローマ字入力の 影響による,「を」の ローマ字表記は wo だという 第2の かんちがいが くわわり,さらに,ローマ字と 英語の 混同による,wo の 発音は〈ウォ〉だという 第3の かんちがいが かさなって,「を」の 発音は〈ウォ〉だという おもいこみが できあがります。「を」の 発音を〈ウォ〉だと おもって いる 人も,テレビ などで アナウンサーの 発音を きいて いれば,共通語の「を」の 発音が〈オ〉で ある 事実に 気づく チャンスは ありますが,おもいこみを 自力で 修正 するのは むつかしい もので,じっさいには なかなか 気づけません。


日本式は 助詞の「は」「へ」「を」を wa, e, wo と かきます。これは 明治時代の 人の 意識に あわせて 設計 されて いるからです。ヘボン式wa, e, o ですが,明治時代 くらいの ふるい 作品には「を」を wo と かいて いる ものが あります。ただし,「を」を wo と かいて いた 時代でも じっさいの 発音は〈オ〉でした。ローマ字は 音声を かく ものですが,その 音声は 口から でる 音声では なく,頭の 中に ある 音声だからです。


土岐哀果「NAKIWARAI」(1910)

ヘボン式は「を」を o と かきますが,この ローマ字短歌は wo と かいて います。

歴史的仮名遣いの「ゐ」「ゑ」「を」

ふるい かなづかいで かかれて いる ものを ローマ字で かきなおす ばあい,「ゐ」「ゑ」「を」は i, e, o と かきます。

ai(あゐ:藍)
koe(こゑ:声)
oke(をけ:桶)

上代特殊仮名遣い

いまの 日本語の 母音は〈ア〉〈イ〉〈ウ〉〈エ〉〈オ〉の 5種類 ありますが,万葉集が つくられた 時代の ふるい 日本語には〈イ〉〈エ〉〈オ〉が 甲類と 乙類の 2種類ずつ あり,全部で 8種類の 母音が あったと する かんがえが あります。これらの 母音を ローマ字で かきわけたい ときは,乙類の〈イ〉〈エ〉〈オ〉を それぞれ ï, ë, ö で あらわします。

aki(秋;キ甲類) tukï(月;キ乙類)

記号の「ヶ」

「一ヶ月」などの「ヶ」は「個」の 異体字「箇」から できた 記号です。カタカナの「ケ」を 小がきに した 文字では ありません。だから 対応 する ひらがなが ありません。

「ヶ」を ふくむ ことばは 発音に あわせて かきます。

ikkagetu, 1-kagetu(一ヶ月)
Tigasaki(茅ヶ崎)

特殊音

外来語 などで つかわれる〈ティ〉〈ファ〉〈チェ〉などの 音を「特殊音」と よびます。特殊音は もともと 日本語に なかった 音声です。

訓令式や 一般的な ヘボン式特殊音の かきかたを きめて いません。ヘボン式の 一種で ある 標準式は 英語由来の 外来語を カタカナ表記に する とき つかいそうな 特殊音の かきかたを ほぼ すべて さだめて います。99式は もっと ひろい 範囲の 特殊音まで カバー して います。

特殊音は 自由に かいて いい ルールに なって いて,じっさいには いろいろな かきかたが おこなわれて います。この サイトも 昔から おこなわれて いる かきかたを 参考に して つくった「この サイトの かきかた」を 提案 して います。

hwôku(フォーク) tyên(チェーン)


「幼き日のモツアルト」(昔の 教科書)

ここでは Vienna, Wenzel(ウィーン,ウェンツェル)の よみかたを Wiin, Wentweru と かいて います。

いまの 学校は 特殊音の かきかたを おしえません。そのため,こどもが 外来語を ローマ字で かこうと しても かけない ことが あります。こどもから 質問 された 教師も 保護者も おそらく こたえを しりません。くわしくは「特殊音」を およみ ください学習指導要領は「日常使われている簡単な単語」を ローマ字で よみかき できる ことを 学習の 目標に して います。日常 目に する ローマ字は ただしい かきかたが されて おらず,外来語を 原つづり(ほとんどは 英語)で かいて います。そのため,特殊音の ローマ字表記は つかわれません。そこで,「簡単な」という 条件を つけて 特殊音を きりすてて いる ようです。ローマ字は ローマ字入力と 混同 されやすいので,特殊音の かきかたを きちんと さだめて 学校で おしえないと,〈ティ〉〈ツィ〉〈ウィ〉を thi, tsi, wyi に する ような,まちがった かきかたが ひろまって しまう おそれが あります。

鼻濁音

鼻濁音(びだくおん)とは 鼻に ぬける 濁音(特に ガ行)の ことです。「学校」の〈ガ〉と「小学校」の〈ガ〉を 区別 して 発音 する 人が いますが,このときの 後者の〈ガ〉が 鼻濁音です昔は 関東地方や 東北地方で つかわれて いましたが,いまは つかう 人が すくなく なって います。西日本では ほとんど つかわれません。アナウンサーには いまでも 鼻濁音を きっちり 発音 する 人が います。ただし,そのような 区別を する ことが ただしいとか うつくしいとか,そいいう 意味では ありませんから,気を つけて ください。

ローマ字は 鼻濁音と 通常の 濁音を 区別 しません。じっさいは 鼻濁音で 発音 されて いても,ふつうの 濁音と おなじ ように かきます。

gakkô(学校) syôgakkô(小学校)

ラ行音

日本語には L音と R音の 区別が ないので,ラ行の 子音を ローマ字で かく とき,Lと Rの どちらを つかっても いい 状況に あります。そのため,Lと Rの どちらが ただしいのかという 質問が よく あります。江戸時代に かかれた ふるい ローマ字の 中には Lを つかって いる ものも ありますが,いまは ローマ字の 方式(訓令式ヘボン式日本式)に かかわらず Rと きまって います。したがって,ただしい かきかたは Rです日本語には L音と R音の 区別が ないという いいかたは 一般的ですが,流音が ひとつしか ないと いった ほうが 正確です。流音とは 一般に Lや Rで かかれる 音声です。英語には 流音が 複数 あるので Lと Rで かきわけないと いけませんが,日本語には それが ひとつしか ないので Lか Rか どちらか ひとつが あれば 十分という わけです。流音は 言語に よる 発音の ちがいが おおきく,はばの ひろい 音声です。日本語の ラ行音は,単語の 先頭に あるか そうで ないか などの 条件にも よりますが,英語の L音とも R音とも ちがいます。なお,ローマ字の 公式ルールから はずれますが,標準式という 方式の ローマ字には Lを つかう かきかたも あります。

はじめて ローマ字を つくったのは 外国人ですが,そのとき 採用 されたのは Rでした。ラ行の 子音が たまたま 外国語の R音に にて いたからです。いまの ルールは この Rを うけついで います。これが Rに なって いる 理由です。

ただし,ラ行の 子音が 外国語の R音と にて いるから Rが ただしいという 理屈では ないので,気を つけて ください。ABCは 発音記号では なく,言語に よって よみかたが ちがいます。どんな 音声を どんな つづりで かくか,どんな つづりを どんな 音声で よむか,それは 言語に よって まちまちです。したがって,ある 外国語が Rで かいて いる 音声は 日本語の ラ行音と にて いないかも しれません。また,ある 外国語が ラ行音と よく にた 音声を Xと かいて いたと しても,それは 日本語の ラ行音を Xと かかなければ ならない 理由に なりません。

ときどき,ラ行の 子音は Lで かく べきだという 意見を みかけます。おそらく,これは 英語や 中国語を 中心に かんがえた ために おきた まちがいです。これらの 言語が Lや Rで かいて いる 音声を 日本人が きくと,ラ行の 子音は R音より L音に ちかいと かんじる ことが あります。それで,ラ行の 子音を Rで かくのは おかしいとか,Lで かく べきだとか,そんな 意見が でて くるのでしょう。ローマ字が 発音記号で ない ことや ABCの 発音が 言語に よって ちがう 事実を しらない 人が おおく,これが まちがいの もとに なって いる ようです。

アクセント

「雨」と「飴」,「箸」と「橋」などは 耳で きいた だけで 判別 できます。アクセントが ちがうからです英語 などは 強弱アクセントですが,日本語は 高低アクセントです。

ところが,ローマ字で かくと まったく おなじ つづりに なって しまい,みわける ことが できません。ローマ字は 日本語の 音声を かく ものですが,音声情報の すべてを 記号化 して いるのでは なく,おおくの 情報は ぬけおちて しまいます。そのため,耳で きくと 区別 できるのに,目で みると 区別 できない ことばが あります音声を かくとは いっても,じっさいの 音声を 録音 する ように 記録 して いる わけでは なく,しゃべる はやさ,声の おおきさ,アクセント(つよい/よわい/たかい/ひくい),イントネーション,鼻声か ガラガラ声か などは わからなく なります。これらの ほとんどは ことばの 意味に かかわらない 情報ですが,アクセントは ことばの 意味に かかわります。

いまの ローマ字は この 状況に 対処 して いません。「講演」と「公園」などは 耳で きいても 区別 できないので どうしようも ありませんが,「雨」と「飴」などは 耳で きけば 区別 できるのですから,目で みても 区別 できる ように かきわけたいという 要求が あります。

そこで,ひとつの かんがえとして,アクセントの 情報を 記号で しめす 方法が あります。一部の ことばに アクセントを あらわす 印を つけて,みた目で 区別 できる ように する アイデアです。ただし,アクセントは 地方に よって ことなりますから,共通語を 基準に する などの とりきめが 必要ですイタリア語には これに にた かんがえかたで 記号を つける つづりが あります。例:e(そして),è(ある[三人称単数]);li(彼ら,それら),(そこ)。

áme, ame(雨,飴)
hási, hasi(箸,橋)
sáke, sake(鮭,酒)
káu, kau(飼う,買う)

この アイデアの 目的は じっさいの アクセントを しめす ことでは ありません。おなじ つづりの ことばに 目印を つけて みた目で 区別 できる ように する ことです。その 目印の つけかたに アクセントを 利用 する だけですことばの アクセントは 複合語に なったり すると かわる ことが あります。例:「雨」「雨ふり」「にわか雨」。ここで いって いる やりかたは このような ばあいも 印を かえません(áme, ámehuri, niwakaáme)。

けれども,これには 問題が あります。アクセントが おなじ ことばも この やりかたで 区別 しようと する 人が でて くる おそれが あるからです。それでは 漢字で 区別 するのと おなじに なって しまいます。もっと いえば,文字に 色を つけて 区別 する 悪趣味と かわりません。また,どの 部分に どんな 印を つけるかも 問題です。長音符号が ついて いる 母音字の 上に もうひとつ 印を つけるのは むつかしく,たとえ つけても よみにくいでしょう。

かんがえなければ ならない ことは いろいろ ありそうです。アクセントの 表記は これからの 課題です。

きこえない 音

母音の 一部は きこえなく なる ことが あります。たとえば,「です」「ます」の 発音は〈デス〉〈マス〉よりも〈デs〉〈マs〉に ちかいでしょう。「たくさん」は〈タkサン〉,「ネクタイ」は〈ネkタイ〉と 発音 して いる はずです関東地方 などで「北」の〈キ〉や「光」の〈ヒ〉の 母音が 無声音(声帯が ふるえない 音)に なって きこえなく なる ことも あります。

このような ことばを ローマ字で かく とき,じっさいの 発音に ちかづけて des, mas, taksan, nektai の ように する べきかという 問題が あります。

これは,そのようには かきません。ローマ字は じっさいに 口から でる 音声を かく 発音記号の ような ものでは ありません。頭の 中に ある 音声を かく ものです。じっさいに 口から でる 音声が〈デs〉でも 頭の 中では〈デス〉と いって いる つもりだから desu と かく わけです。意識 して いない ものは かけないからです。「です」を des と かく アイデアは 昔から ありましたが,一般に ひろまらず,公式ルールにも 採用 されませんでしたもし じっさいの 音声を かく ルールに したら,じっさいの 音声を しって いる 言語学の 専門家の ほかは ローマ字が かけなく なって しまいます。ただし,この 問題は もう すこし ふかく かんがえて みる ことも できます。なぜ〈デス〉と いって いる つもりなのかと いえば,それは ちいさい ときから「です」と かかれた 文章を よんで そだったからです。つまり,かな文字表記に つられて そう おもいこんで いる だけです。言語学に あかるい 人は じっさいの 音声が〈デs〉だと しって いるので,もし 日本語を ローマ字で かく ことが 一般化 すれば,かならず des と かく 人が でて きます。すると,それを よんだ 人も じっさいは〈デs〉だと 気づくでしょう。そして,本当は〈デs〉だという 意識を もつ ように なれば,des と かくのが 自然に なる はずです。こうして,だんだん des が ひろまって いく 可能性も あります。大正時代に,きこえない u を かかない「有機式」ローマ字を 提唱 した 鳴海要吉という 人が いました。かれは 短歌雑誌「アカツキ文学」を つくって いましたが,その ローマ字表記は「有機式」の Akatki Bungak でした。

desu(です) masu(ます)
takusan(たくさん) nekutai(ネクタイ)

無音

ことばの 途中に ある すきまや 完全な 無音を 文字で あらわしたい ばあい,また 文末の 余韻を あらわしたい ばあいは ... を つかいます。漢字仮名交じり文は 三点リーダー(…)を 2個 つなげた 記号を つかう ことが おおい ようですが,ローマ字文は とめの印(.)を 3個 つなげた 記号を つかいます。文末で 文の おわりも しめす ばあいは とめの印(.)が 4個に なります。

ta...su...ke...te
(た……す……け……て)
ara, mâ...(あら,まあ……)
zawa... zawa...
(ざわ… ざわ…)
....(……。)

もっと 日本語らしい かきかた

はじめて よむ 人は ここを よみとばしても かまいません。

訓令式の 弱点

いまの ローマ字には 日本語を 日本語らしく かくという 目的が あります。訓令式は 日本語の 性質に あわせて 設計 された 日本語らしい かきかたですが,この 点から みれば すこし まずい ところが あります。ここでは その 中の ふたつを とりあげ,それらを あらためる かんがえを しめします。

漢語の「エ段+い」

漢語の「エ段+い」は ei と かく ことに なって います。しかし,これでは ふつう ちがう 発音で よむ「営利」と「絵入り」が おなじ つづりに なって しまい,不合理です。よむ ときも 不便です。

eiri(営利)
eiri(絵入り)

この 問題の 解決策は,漢語の「エ段+い」を 長音と みなして ê と かく ことです。漢語の「エ段+い」は〈エー〉と 発音 する ことが おおい はずです。「携帯電話」が「ケータイ」に なった くらいですから,ei より ê の ほうが 感覚的にも 自然でしょう。

êri(営利)【あらため案】
eiri(絵入り)


この かんがえかたは 昔から あり,大阪ローマ字会は 以前から この かきかたを 採用 して いました。外国人に 日本語を おしえる 日本語教育の 教科書には「とけい」を tokee と かいて いる ものが あります。これは ローマ字を 発音記号の 代用品として つかって いる だけですが,その 結果,表記が じっさいの 発音に ちかづいて,「エ段+い」が 一歩 すすんだ かきかたに なって いますeeê に くらべると 性能が おとります。teeen(庭園,テエーン?),tumeeri(詰襟,ツメーリ?)などで よみかたが わからなく なるからです。

この ê を つかって いる ローマ字がきの 小説も あります。Miti(道)」を よんで みて ください。

四つ仮名

「じ」「ず」「ぢ」「づ」を まとめて 四つ仮名と いいます。いまの ローマ字(訓令式)は これらの 音声を つねに zi, zu, zi, zu と かきます。しかし,これでは「ち」「つ」が にごって「ぢ」「づ」に なって いる ことばの つづりが 不自然です。

hanazi(鼻血) tizimu(縮む)
mikazuki(三日月) tuzuku(続く)

この 問題の 解決策は,「ち」「つ」が にごって「ぢ」「づ」に なって いる ことばでは Z で なく D を つかう ことです。

hanadi(鼻血) tidimu(縮む)【あらため案】
mikaduki(三日月) tuduku(続く)【あらため案】


ローマ字には 日本語を 民主化 する 目的が あります。だれでも よみかきが できる ように する ため,できるだけ 発音の とおりに かく 表音化の かんがえを 採用 して います(表音主義)。

これを ふりがなの かきかたで すこし くわしく 説明します。昔は「川」の ふりがなを「かは」と かいて いた だけで なく,「じ/ぢ」「ず/づ」を ことばに よって かきわけて いました。そのため,「川」が「か」か「か」か,「味」が「あ」か「あ」か,「水」が「み」か「み」か,いちいち おぼえなければ ならず,たいへん 不便でした。こんな かきかたは 教育に 時間と お金を かけられる 一部の 人に しか つかいこなせません。それでは 民主的と いえないでしょう。そこで,ふりがなを かく ルールが あらためられ,「川」は 発音の とおりに「かわ」と かき,「じ/ぢ」「ず/づ」の かきわけは やめて,基本的に「じ」「ず」で 統一 する ことに なりました。よみかきを やさしく する ため,発音どおりの かきかたに した わけです。これが 表音化の かんがえです。

ローマ字も 表音化の かんがえを 採用 して いるので,「川」は kawa と かき,「味」「水」は azi, mizu と かきます。ローマ字は これが もっと 徹底 して いて,「公理」と「氷」は おなじ つづりの kôri です。助詞の「は」「へ」「を」も 発音どおりに wa, e, o と かきます。したがって,ローマ字の かきかたは ふりがなの かきかたより やさしく,全体的に みれば よく できて います。

ところが,いまの ローマ字(訓令式)には この 表音化を やりすぎて いる ところが あり,その せいで 不自然な かきかたに なって いる ところが あります。それが「ぢ」「づ」です。いまの ルールは,カ行・サ行・ハ行の 連濁が K→G, S→Z, H→B という 法則で 説明 できるのに,タ行の 連濁が T→D という 法則で 説明 できません。連濁は 日本語が もって いる 性質ですが,それを うまく 説明 できないのでは 日本語らしい かきかたと いえないでしょう。ローマ字には 日本語を 日本語らしく かく 目的も あるのですから,これでは いけません。

K→G
 傘
雨傘
    kasa
 amagasa
 岸
川岸
    kisi
kawagisi
 雲
綿雲
    kumo
watagumo
 毛
鼻毛
    ke  
hanage  
 米
生米
    kome
namagome
S→Z
 猿
子猿
    saru
  kozaru
 汁
梨汁
    siru
nasiziru
 炭
消炭
    sumi
kesizumi
 背
猫背
    se  
nekoze  
 空
青空
    sora
  aozora
T→D, Z
  竹
 竿竹
    take
 saodake
  血
 鼻血
    ti  
hanazi  
  月
三日月
    tuki
mikazuki
  寺
 山寺
    tera
yamadera
  鳥
 水鳥
    tori
mizudori
H→B
 針
編針
    hari
 amibari
 人
恋人
    hito
 koibito
 舟
小舟
    hune
  kobune
 塀
石塀
    hei 
 isibei 
 堀
内堀
    hori
 utibori

この 問題の ひとつの 解決策は D と Z を つかいわける ことです。「鼻血」「三日月」を hanadi, mikaduki と かく ことに すれば,タ行の 連濁が T→D という 法則で 説明 できます。

T→D
  竹
 竿竹
    take
 saodake
  血
 鼻血
    ti  
hanadi  
  月
三日月
    tuki
mikaduki
  寺
 山寺
    tera
yamadera
  鳥
 水鳥
    tori
mizudori

もう すこし くわしく 説明 すると,かき手の 意識に もとづいて,みっつの ばあいに わけて D と Z を つかいわけます。

(1) 〈シ〉〈ス〉〈シャ〉〈シュ〉〈ショ〉が にごった 音声だと 意識 して いる ことばは Z で かく。

mezirusi(目印)
hitoziti(人質)
misezimai(店じまい)
morizio(盛り塩)
simazima(島々)
sizimi(シジミ)
usuzumi(薄墨)
nigirizusi(握りずし)
zumi(用済み)
karizumai(仮住まい)
sumizumi(隅々)
suzume(スズメ)
dazyare(駄洒落)
syuzyu(種々)
kenkyûzyo(研究所)

(2) 〈チ〉〈ツ〉〈チャ〉〈チュ〉〈チョ〉が にごった 音声だと 意識 して いる ことばは D で かく。

hanadi(鼻血)
sokodikara(底力)
warudie(悪知恵)
moraiditi(貰い乳)
tikadika(近々)
tidimu(縮む)
mikaduki(三日月)
kodutumi(小包)
kandume(缶詰)
oriduru(折り鶴)
tunedune(常々)
tuduku(続く)
waredyawan(割れ茶碗)
sekaid(世界中)
turidyôtin(つり提灯)

(3) どちらとも 意識 して いない(意識 できなく なった)ことば,漢字の 音よみで もともと 濁音の ものは Z で かく。

azi(味)
mazime(真面目)
omikuzi(おみくじ)
hizi(肘)
huzi(フジ:藤)
momizi(モミジ)
mizu(水)
kazu(数)
nezumi(ネズミ)
kizu(傷)
kazura(カズラ:葛)
azuki(アズキ)
kizuna(絆)
sakazuki(盃)
tumazuku(躓く)
zi(字)
zu(図)
z(十)

ふりがなの かきかたは この かんがえを 採用 して います。「鼻血」「三日月」の ふりがなが「はな」「みかき」に なって いるのは,「ち」「つ」が にごって「ぢ」「づ」に なって いる 意識が あるからです。「気付く」と「築く」の 発音は おなじですが,ふりがなは「きく」と「きく」で ちがいます。「気付く」には「つ」が にごって いる 意識が あるけれども「築く」には その 意識が ない(意識 できなく なった)からです。

ふりがなと ローマ字(訓令式)を くらべると,全体的には ローマ字の かきかたの ほうが すぐれて います。けれども,四つ仮名に かぎれば ふりがなの かきかたの ほうが うまく 設計 されて います。そこで,この 部分は ふりがなの かきかたと おなじに しようという わけですすこし むつかしい はなしに なりますが,言語学に「共時態」「通時態」という ことばが あります。前者は 言語を 時間軸上の 一点で とらえた ばあいの 状態で,後者は 言語を 時間の ながれに そって ながめた ばあいの 状態です。そして,現代仮名遣いも ローマ字も 共時態を 重視 する たちばで 設計 されて います。日本語の よみかきを やさしく する ためには,いま 日本語で くらして いる 人の 意識に あった かきかたに しなければ ならないからです。「築く」は 語源から いえば「つ」が にごって いる ことばですが,語源が わすれられて しまったので,ふりがなを「きづく」に すると いま 日本語で くらして いる 人の 意識に あいません。それで 語源との つながりは きりすてて,発音に あわせて「きずく」に して います。ローマ字も「築く」は 発音に あわせて kizuku に して いますが,これを やりすぎて「気付く」まで kizuku に して います。これでは「気付く」の ほうが 意識に あいません。そこで,この やりすぎて いる 部分を あらためようというのが この サイトの 提案です。


この かきかたは,「望月」と「餅好き」を 区別 できて 便利な ところも ありますが,すこし 不便な ところも あります。たとえば,「稲妻」は inaduma と かかれるかも しれません。「稲妻」の 語源(この 例は 漢字で わかります)を しって いる 人は「つ」が にごって いる 意識を もって いるかも しれないからです。〈ユズル〉という 名前を,結弦さんは「つ」が にごって いる 意識が あるので Yuduru と かき,譲さんは その 意識が ないので Yuzuru と かくでしょう。こうして 表記の ゆれが おこります。

けれども,これは ルールの 設計が まずいから おこるのでは ありません。特に,「稲妻」の ような 例は 日本語の はなし手が もって いる 意識の 多様性を うつしだして おこります。そうで あれば,それを 大切に する べきです。


語源 などを 解説 する ときは ふだん 意識 して いない ことばも D と Z を つかいわけます。

ine(稲)+ tuma(妻)→ inaduma(稲妻)
sake(酒)+ tuki(坏)→ sakaduki(杯)
tume(爪)+ tuku(付く)→ tumaduku(躓く)
Tôkyô de wa(東京では)→ Tôkyô dya(東京じゃ)
sinde simae(死んでしまえ)→ sindimae(死んじまえ)


四つ仮名の 問題を 解決 する もう ひとつの かんがえは,ローマ字の 方式を 新日本式に する ことです。新日本式は,タ行を ta, ci, cu, te, to,ダ行を da, zi, zu, de, do と かく 方式です。こう すると,タ行の 連濁を T→D,C→Z という 法則で 説明 できます。ただし,これには タ行の 子音字が T と C に わかれて しまう 弱点が あります。

T→D,C→Z
  竹
 竿竹
    take
 saodake
  血
 鼻血
    ci  
hanazi  
  月
三日月
    cuki
mikazuki
  寺
 山寺
    tera
yamadera
  鳥
 水鳥
    tori
mizudori

ヘボン式は「じ/ぢ」「ず/づ」「じゃ/ぢゃ」「じゅ/ぢゅ」「じょ/ぢょ」を つねに ji, zu, ja, ju, jo と かきますが,この ルールに 問題は ないので,このままで かまいません。ヘボン式は ふるい タイプの ローマ字で,日本語を 日本語らしく かくという 目的を もって いないからです。

Takarazuka(宝塚) 【ヘボン式
Sangenjaya(三軒茶屋) 【ヘボン式

単語の かきかた

分かち書き

ローマ字文は ことばを 空白で くぎって かき,ふつうは 空白の ところで 改行 します。こういう かきかたを「分かち書き」と いいます。ローマ字文は おおよそ 単語ごとに 空白を いれます。くわしい 解説は「分かち書き」に あります。

この 章は そのように くぎられた 単位の つづりに ついて 説明 します。かんたんに いえば,単語の かきかたです。


「大クラウスと小クラウス」

普通名詞と 固有名詞

普通名詞

「ローマ字のつづり方」は 普通名詞の 先頭を 大文字で かいても いい ことに して います(そえがきの 第6項)。こう すると,ドイツ語の ような 字面に なります。昔は この かきかたが よく おこなわれて いました。


「私はなんでしょう?」(昔の 教科書)

ここでは「耳」「目」「山」の 先頭を 大文字で かいて います。

この 利点は,助詞と みじかい 名詞を みわけやすい ことです。たとえば,「へ」と「絵」,「の」と「野」,「を」と「尾」,「から」と「殻」「空」などを みた目で 区別 でるので,よみやすく なります。

Haru no No no Hana(春の野の花)


しかし,大文字が おおいと かくのが すこし 面倒です。キーボードから 入力 する ときは 特に そうです。固有名詞を みわけにくく なる デメリットも あります。

それで,普通名詞の 先頭は 小文字で かく ように かわって きました。いまでは 普通名詞の 先頭を 大文字に する かきかたは ほぼ おこなわれて いません。この サイトも 普通名詞の 先頭は 小文字で かいて います。

固有名詞

固有名詞は つねに 先頭を 大文字で かきます。

Nippon(日本)
Huzisan(富士山)
Yamada Hanako(山田花子)
Midoriyama Syôgakkô(緑山小学校)

より くわしい 解説は「固有名詞」に あります。

数値を ふくむ 表現

数値を ふくむ 表現には 下の 3種類が あります。

数値 そのもの

数値 そのものは 数字を つかって かきます。

2 tai 1 de Nippon ga katta.
(2対1で日本が勝った。)
3 tasu 5 wa 8 desu.
(3たす5は8です。)

おおきい 数値は 万・億・兆 などを man, oku, tyô と かいても かまいません。3桁ごとに 空白を いれても いいでしょう。この くぎりに カンマ(,)を もちいるのは おすすめ しません「12,345」は 3とおりに 解釈 できます:(1) 整数の 12345,(2) 小数の 12.345,(3) 整数の 12 と 345。おおきな 数字を どのように くぎるかは 文化に よって ちがいます。インドでは すこし かわった くぎりかたを するので,日本の メーカーが それに あわせた 電卓を うりだして ヒット商品に なった ことが ある そうです。

国内むけで 自然科学 以外の 分野の 文章なら,4桁くぎりに しても いいでしょう。その ほうが よみやすく なります。このときは できれば カンマ(,) 以外の 記号を つかって ください。下の 例は きる印(')を つかって いますが,バッククォート(`)なども かんがえられます。

8 oku 5000 man(8億5000万)
9 192 631 770(9192631770)
1'2345'6789(1億2345万6789)


「蚊と蝿」 (昔の 参考書)

算数の 文章問題から 一部を ぬきだした ものです(本当は この あとに 設問が あります)。ローマ字の 方式が 日本式で すこし よみにくいかも しれませんが,ここでは 数値の かきかたを みて ください。数値を 4桁くぎりに して いる ところも あります。

「数値+助数詞」または「数値+単位」

「数値+助数詞」または「数値+単位」は,数字を つかう 方法と 数字を つかわない 方法が あります。単位が つく ものは かならず 数字を つかって かきます。助数詞が つく ものは 数値が ちいさい とき(目安として 10以下)だけ 数字を つかわない かきかたに しても かまいません助数詞と 単位の 区別は わかりにくいかも しれませんが,つぎの ように かんがえて ください。助数詞は 物の 数を かぞえる ときに つける ことばで,豆腐を かぞえる「丁」,人を かぞえる「人(にん)」,馬を かぞえる「頭(とう)」,家を かぞえる「軒(けん)」など。数値に よって よみかたが かわる ことが あります。通常は 自然数(1,2,3,...)に つきます。例:5台,20枚。マイナスの 数値や 小数に つけると すこし 変な かんじが する はずです。一方,単位は 量の 種類を あらわす ことばで,長さを あらわす「メートル」,重さを あらわす「グラム」,電圧を あらわす「ボルト」,温度・角度 などを あらわす「度」など。数値に よって よみかたが かわる ことは ありません。マイナスの 数値や 小数に ついても 違和感が ありません。例:マイナス10度,2.5メートル。

ただし,道路標識の ローマ字駅名標の ローマ字は,すこしでも よみかたが わかる ほうが いいので,数字を つかわない かきかたに します。

Santyôme(3丁目)


数字を つかって かく ばあい,数値の うしろに つなぎ(-)を かきます。

1-mai(1枚) 2-hiki(2匹)
3-ko(3個) 4-nin(4人)
5-syaku 6-sun(5尺6寸)
7-kai(7回) sessi 8-do(摂氏8度)
9-mêtoru(9メートル)
10-guramu(10グラム)


名刺 (いまの 教科書)

ここでは「3年」「2組」に つなぎ(-)を かいて います。


「トンネルの話」 (昔の 教科書)

ここでは「100パーセント」に つなぎ(-)を かいて います。

ただし,この あとで 説明 して いる ように,単位記号や お金の「円」などは つなぎ(-)を かきません。つなぎ(-)を いれる ものと いれない ものが あって ややこしいので,この サイトは 意味が わかりにくく ならない 範囲で つなぎ(-)を はぶいても いい ことに します。

1 mai(1枚) 2 hiki(2匹)
3 ko(3個) 4 nin(4人)


数字を つかわないで かく ばあい,数値の 部分と 助数詞は くっつけて かきます。数値の 部分が 和語で 助数詞と 一体化 して いる ことばも あります。例:「ひとつ」「ふたつ」「ひとり」「ふたり」。

Itimai..., nimai..., sanmai...
(一枚……,二枚……,三枚……)
Kanozyo wa hitori de sunde imasu.
(彼女は独りで住んでいます。)
Kita no wa hutari dake desita.
(来たのは二人だけでした。)
Tanuki ga sanbiki orimasita.
(タヌキが三匹おりました。)

数値が ちいさい ときは 数字を つかわない かきかたで いいのですが,「1杯」は 数字を つかって かきます。もし 数字を つかわずに かくと,「たくさん」の 意味だと おもわれる おそれが あります。そこで,「1杯」は かならず 1-pai と かきます。

1-pai(1杯) ippai(いっぱい)

このような ことばとして,ほかに「一番」「一部」「一面」などが あります。


「大クラウスと小クラウス」


よむ とおりに かくので,数値に よって つづりが かわる ことも あります。

1-pon, 2-hon, 3-bon
(1本,2本,3本)
1-patu, 2-hatu, 3-patu
(1発,2発,3発)


「トンボ」 (昔の 教科書)

よむ とおりに かくので,「7匹」と「3匹」で つづりが ちがいます。

このとき,「1本」を 1-ppon の ようには かきません。

6-piki(6匹;6-ppikiに しない)
10-ko(10個;10-kkoに しない)


自然科学の 分野で もちいる 単位には 世界共通の 記号(単位記号)が あります。あまり 専門的な もので なければ,それを つかっても いいでしょう。専門家むけの 文章なら 遠慮は いりません。この ばあい,つなぎ(-)は かきません。

単位記号の おおくは ラテン文字 1文字か 2文字で できて います。大文字と 小文字の 区別が ありますから まちがえない ように して ください。「リットル」は 大文字の L で かく ことを おすすめ します以前は 小文字の エルの 筆記体が よく つかわれて いましたが,これは まちがいです。ただしい かきかたは 小文字 または 大文字の エルの 活字体です。ただし,小文字は 数字の 1と みわけにくいので,最近は 大文字で かく ことが おおく なって います。

100-mêtoru, 100 m(100メートル)
65-guramu, 65 g(65グラム)
1.5-rittoru, 1.5 L(1.5リットル)


「よい選手は言い訳を言わない」(昔の 教科書)

「1500メートル」は 単位記号を つかって かいて います。

「キロ」「ミリ」などの SI接頭語は くっつけて かくのが 基本ですが,つづりが ながく なると よみにくいので,つなぎ(-)を いれても いいでしょう。

3.5-miri-mêtoru(3.5ミリメートル)
980-hekuto-pasukaru
(980ヘクトパスカル)
500-giga-baito(500ギガバイト)


「○○倍」「○○割」「○○番」「第○○」なども,助数詞・単位と おなじ ように かんがえます。分数を「○○分の○○」と いう ときの「分」なども おなじです。

100-bai(100倍)
3-wari 5-bu(3割5分)
dai 40-kai(第40回)
dai 2 kaigisitu(第2会議室)
20-bun no 3(20分の3)
5 no 2-zyô(5の2乗)


「偉大な母,偉大な娘」 (昔の 教科書)

分数を 250,000,000-bun no 1 と かいて います。

「ごと」「おき」「ずつ」「ぶり」「め」などは きりはなして かきます。ただし,住所の「丁目」は ひとつの ことばと かんがえて ひとつづきに かきます。

4-nen goto(4年ごと)
50-mêtoru oki(50メートルおき)
10-ko zutu(10個ずつ)
1-nen han buri(1年半ぶり)
mae kara 5-ban me(前から5番目)
4-tyôme(4丁目)


「アルプスの山の娘」(昔の 教科書)

ここでは「1匹ずつ」を 1-piki zutuと かいて います。



値:600円

数字で 金額を かく とき,数字と 通貨単位は きりはなします。つなぎ(-)は かきません。通貨単位の 先頭は 大文字に します。「円」は En です。Yen では ありません。

100 En(100円)
200 Doru(200ドル)
300 Won(300ウォン)


ふるい ヘボン式の「円」

これは ヘボンが つくった「和英語林集成」という 和英辞典です。「圓」は「円」の ふるい 字体です。

お店の 値札 などで よく みる yen は 英語です。つづりが en で なく yen に なって いるのは 昔の「エ」の 発音が〈イェ〉だったからです。ふるい 地図には「江戸」を Yedo と かいた ものが あります。有名な「ガリバー旅行記」にも Yedo が でて きます。ふるい ヘボン式も「円」を yen と かく ことが ありました。これが 英語の つづりに なったのでしょう。

通貨単位には 世界共通の 記号(通貨記号)が あります。あまり 専門的な もので なければ,それを つかっても かまいません。専門家むけの 文章なら 遠慮は いりません。通貨記号は 数字に くっつけて かきます通貨記号は 数値の うしろや 途中に かく ものも あります。なお,手がきの ときは「500円」を ¥500- の ように かきたい 人も いるでしょう。それは 自由に して ください。

¥100(100円)
$200(200ドル)
₩300(300ウォン)

デザインの 都合 などで お金の「円」を ABC表記に したい ときは,En と かく ことを おすすめ します。英語の はなし手 だけを 相手に して いる お店で ない かぎり,もっとも 重要な 情報を 英語で かく 理由は ない はずです。外国人が おおい 観光地の お店 などは 通貨コード(ISO 4217)の JPY に すると まちがいの 心配が なくて いいかも しれません。


この サイトは「何個」「数人」「幾度」などの「何」「数」「幾」を 独立 した ことばと みなして 助数詞や 単位から きりはなしても いい ことに します。ひとつづきに かいても かまいません。

nan nin, nannin(何人)
nan guramu, nanguramu(何グラム)
sû nin, sûnin(数人)
sû guramu(数グラム)
nanzyû nin, nanzyûnin(何十人)
nanzyû guramu, nanzyûguramu(何十グラム)

発音が かわって 一体化 して いる ものは ひとつづきに かく ほうが いいでしょう。

nanzyukko(何十個)
sûhyappiki(数百匹)
sûhyakkiro-guramu
(数百キログラム)

「二百何十」や「五千数百」の「二百」「五千」の 部分 だけを 数字で かいても かまいません。ただし,つなぎ(-)を いれます。

200-sûzyû mai(二百数十枚)
5000-sûhyaku kônen
(五千数百光年)


「二,三回」「五,六時間」などは くぎり(,) または つなぎ(-)を つかって かきます。範囲の 意味なら つなぎ(-)が いいでしょう。「千二,三百人」などは 意味が わかりやすい ように 数字を かきかえても かまいません範囲を しめす ばあい,ダッシュが つかえる ときは ENダッシュを つかっても かまいません。

2,3-kai(二,三回)
5-6-zikan(五,六時間)
24-5-sai(二十四,五才)
1200-1300-nin(千二,三百人)
7-8 man biki(七,八万匹)
2 man 5000-6000-nen
(二万五,六千年)


「一房の葡萄」 (昔の 教科書)

ここでは「三、四人」を 3,4-nin と かいて います。


「塩を乗せた船」 (昔の 教科書)

ここでは「二、三日」を 2-3-niti,「十三、四の」を 13-4 no と かいて います。


「イナゴの大旅行」 (昔の 教科書)

ここでは「四十五、六の」を 数字を つかわずに かいて います。

ことばに なって いる もの

「ことばに なって いる もの」は 音声の とおりに かきます。数字を ふくむ 人名は この パターンです。

daiiti ni(第一に)
hutarizure(二人連れ)
sanmaime(三枚目)
sisya-gonyû(四捨五入)
Hyakunin Issyu(百人一首)
senmaidôsi(千枚通し)
Itirô(一郎)
Zirô(二郎)
Saburô(三郎)

「数値+助数詞」または「数値+単位」が 別の ことばと むすびついて 複合語を つくって いる ものは 数字を つかった かきかたに しても かまいません。

3-wari dasya(3割打者)
4-bu onpu(四分音符)
1.5 L botoru(1.5Lボトル)
10-nen teiki(10年定期)
24-zikan sei(24時間制)
1985-nen siki(1985年式)

日付と 時刻

日付

ふつうの 日付は 数字を つかって かきます。「2月」を nigatu に しないという 意味です。「日」は よみかたに したがって つづりが かわります。

「年」「月」「日」には 略語の n.(年),gt.(月),nt.(日)が あります。nt. は 記号の ような もので,「1日(ツイタチ)」「2日(フツカ)」などでも nt. です。

1964-nen, 1964 n.(1964年)
10-gatu, 10 gt.(10月)
4-ka, 4 nt.(4日:ヨッカ)
1969 n. 10 gt. 13 nt.
(1969年10月13日)

昔の 元号には 略語が あります。例:Mz.(明治),Tsy.(大正),Syw.(昭和)。ただし,いまは イニシャルの ほうが わかりやすいでしょう。

Mz. 18-nen, M18 n.(明治18年)
Tsy. 5-nen, T5 n. (大正5年)
Syw. 41-nen, S41 n.(昭和41年)
2011(H23) n.(2011(平成23)年)

文章の 中に かく 日付は よみかたが わかる 形に して,独立 して いる 日付は 略語を つかって みじかい 形に すると いいでしょう。


「偉大な母,偉大な娘」(昔の 教科書)

文中に かく 日付は この かきかたが いいでしょう。


「巨人のあしあと 田中館愛橘博士逸話集」

独立 して いる 日付は この かきかたが いいでしょう。

曜日にも 略語が あります。

Get.(月曜日) Kay.(火曜日)
Sui.(水曜日) Mok.(木曜日)
Kin.(金曜日) Doy.(土曜日)
Nit.(日曜日)
4 gt. 15 nt. (Kin.)
(4月15日(金曜日))

下に カレンダーの 例を しめします。こういう ときは デザインを 重視 して とめの印(.)を はぶいても かまいません。

日づけの あとに かく ときは もっと みじかく しても 意味が わかります。日記の 日付に かく 曜日 などは つぎの ように かいても いいでしょう。

(G) (Ka) (S) (M)
(Ki) (D) (N)
4 gt. 15 nt. (Ki)
(4月15日(金曜日))

カレンダーの 曜日なら すべて 1文字に して しまっても かまいません。


年数・月数を いう ときの「○ヶ年」「○ヶ月」は よむ とおりに kanen, kagetu です。

日付の「日」と 日数の「日」は 発音に あわせて niti, ka の どちらも つかえますが,日付の「年」「月」を 略語で かいたら「日」も 略語に して ください。日付の「日」が nt. で かいて ある ばあいは よみかたに 気を つけて ください。

5-kanen(5ヶ年)
Heisei 5-nen(平成5年)
3-kagetu kakarimasu.
(3ヶ月かかります。)
3 gt. made kakarimasu.
(3月までかかります。)
Tanzyôbi made ato 2-ka desu.
(誕生日まであと2日です。)
Tanzyôbi wa 11-gatu 2-ka desu.
(誕生日は11月2日です。)
Tanzyôbi wa 11 gt. 2 nt. desu.
(誕生日は11月2日です。)

時刻

ふつうの 時刻は 数字を つかって かきます。「3時」を sanzi に しないという 意味です。「分」は よみかたに したがって つづりが かわります。

2-zi 35-hun 40-byô(2時35分40秒)
6-zi 3-pun mae(6時3分前)
13-zi tyôdo(13時ちょうど)
gozen 8-zi han(午前8時半)


「6時になった?」(昔の 教科書)

簡潔な かきかた

文中に かかれない 日付・時刻は 記号を つかって 簡潔に かいても かまいません。ただし,「12/3」の ような かきかたは「12月3日」か「3月12日」か はっきり せず,まちがいの もとです。そこで,国際標準(ISO 8601)の 書式に あわせて かく ことを おすすめ します。これなら かんちがいの 心配が なく,世界中に 通用 します。

2013-05-06(2013年5月6日)
2013-05(2013年5月)
13:25:40(13時25分40秒)
13:25(13時25分)

共通部分を まとめた ことば

「小・中学校」は「小学校」と「中学校」の 共通部分を まとめた かきかたです。ローマ字でも このように かきたければ,つぎの ように します。

syô-, tyû-gakkô(小・中学校)
syô-, tyû-, kôtô-gakkô
(小・中・高等学校)
mai-asa, -yû(毎朝・夕)
yu-syutu, -nyû(輸出・入)

中点は かかない ことも あります。ローマ字でも そのように かきたければ,全体を ひとつづきに かきます。

syôtyûgakkô(小中学校)
yusyutunyû(輸出入)
reidanbô(冷暖房)
tôkaihyô(投開票)

どちらの かきかたに するかは かき手の 感覚に よりますが,どちらに しても よみやすくは ありません。もっと いいのは 省略 しない ことです。

syôgakkô to tyûgakkô
(小学校と中学校)
yusyutu to yunyû
(輸出と輸入)
zyôsuidô to gesuidô
(上水道と下水道)

記号的な 文字を ふくむ ことば

「サ行」「ウ段」など,記号の ような 文字を ふくむ ことばが あります。これは 発音の とおりに かく だけでは わかりにくいので,つなぎ(-)を いれます。「へ長調」「ト音記号」などは,それほど わかりにくくは ありませんが,この かきかたに そろえます。

sa-gyô(サ行) i-onbin(イ音便)
to-on kigô(ト音記号)
hen-ho-tyôtyô(変ホ長調)

省略した 固有名詞

漢字表記の 省略した 固有名詞が あります。「沙翁」「比島」などです。これは,できるだけ もとの 名前に もどして かきます。

ただし,「セ氏」「超ド級」の ように,ひとつの ことばに なって いる ものは 発音の とおりに かきます。

sessi(セ氏<セルシウス)
tyôdokyû(超ド級<ドレッドノート)

外国の 文字を ふくむ ことば

外国の 文字(ラテン文字や ギリシャ文字 など)を ふくむ ことばが あります。たとえば,「A案」「B級」「Tシャツ」「Uターン」「β線」などです。これらは,その 文字を そのまま つかって かきます。ただし,つなぎ(-)を いれます。

それが ラテン文字の ばあい,できれば イタリック体(斜体)に します。そう しないと,A-siki が「A式」か「ア式」か わかりません。

大文字と 小文字の 区別も します。小文字で はじまる 表記が 文の 先頭に くると,その 文は 小文字で はじまる ことに なります。

A-an(A案) T-syatu(Tシャツ)
X-sen(X線) γ-senγ線)
LC kairo(LC回路) SN-hi(SN比)
P-V-kyokusen(P-V曲線)
U-tân wa dekinai yo.
(Uターンは できないよ。)
n-zi no keisû o motomeru.
(n次の係数を求める。)


「偉大な母,偉大な娘」(昔の 教科書)

「X線」を X-senと かいて います。

文字の 形を もとに した ことば

文字の 形を もとに して いる ことばが あります。たとえば,「大の字」「くの字に」「コの字型」などです。これを ローマ字で かく ときは つぎの ように すると いいでしょう。

dainozi(大の字)
kunozi ni(くの字に)
konozigata(コの字型)
zyûziro(十字路)
teiziro(丁字路)
kinzitô(金字塔)
kuti o henozi ni site
(口をへの字にして)
L-zigata(L字型)
gyaku-S-zi(逆S字)
8-nozi undô, hatinozi undô
(8の字運動)
4-nozi-gatame, yonnozi-gatame
(4の字固め)

本当は,「大の字」は dai-no-zi と かく ほうが いいのでしょうが,面倒なので この サイトは つなぎ(-)を はぶいて います。


漢字や かな文字の 形を もとに した ことばを ローマ字で かくと,視覚的な おもしろさが うしなわれて しまいます。「大の字」や「川の字」を ローマ字で かいて いたら,だんだん ことばの 由来が わからなく なって いくかも しれません。これは おおきな 損失の ように おもえます。

しかし,それほど 深刻に ならなくても いいでしょう。ことばの 由来が わからなく なっても,ことば そのものが うしなわれる わけでは ありません。「金字塔」の 語源を 理解 して つかって いる 人は あまり いないでしょう。そう かんがえると,語源の 文字(漢字や かな文字)を かく 必要は ありません。英語でも delta(三角州)は ギリシャ文字の Δ を かかないで よみかたを かいて います。

頭字語

頭字語とは,いくつかの 単語から 構成 される 語の 頭文字を つなげて つくられた ことばです。頭字語は イニシャリズムと アクロニムに わけられます。イニシャリズムは 文字を 1文字ずつ よむ もので,USA, NHK などです。アクロニムは 文字の ならびを ふつうの ことばの ように よむ もので,UNESCO, rader などです。頭字語は そのまま かきます。

専門家で ないと よみかたが わからない ような アクロニムは カタカナ語の ように かいても かまいません。専門家むけの 文章なら 遠慮は いりません。

USA(アメリカ合衆国)
NHK(日本放送協会)
UNESCO, Yunesuko(ユネスコ)
rader, rêdâ(レーダー)

外来語

漢字仮名交じり文では 外来語を 日本語の つづり(カタカナ表記)で かきますが,ローマ字文でも 外来語は 日本語の つづり(ローマ字表記)で かきます。外来語は 日本語ですから 日本語の つづりで かくのが あたりまえです。

beddo(ベッド) miruku(ミルク) razio(ラジオ)
gâze(ガーゼ) meruhen(メルヘン) wakutin(ワクチン)
ankôru(アンコール) kurowassan(クロワッサン) zubon(ズボン)
birôdo(ビロード) pan(パン) tenpura(てんぷら)
orugôru(オルゴール) penki(ペンキ) randoseru(ランドセル)
interi(インテリ) kanpa(カンパ) noruma(ノルマ)
kyûkâbu(急カーブ)
kappumen(カップ麺)
simin sentâ(市民センター)
garasu sen'i(ガラス繊維)
hotto yoga(ホットヨガ)
têma pâku(テーマパーク)

語源が おなじ ことばでも 言語が ちがえば 発音も つづりも ちがいます。

「コーヒー」
coffee【英語】
café【フランス語】
Kaffee【ドイツ語】
kahvila【フィンランド語】
kôhî【日本語】

「タバコ」
tobacco【英語】
tabac【フランス語】
Tabak【ドイツ語】
tabaco【ポルトガル語】
tabako【日本語】

「テレビ」
television【英語】
telewizja【ポーランド語】
televizyon【トルコ語】
telebista【バスク語】
terebi【日本語】


「野球大会」(昔の 教科書)

ここでは 野球の「ショート」「プレイ ボール」を syôto, purei bôru と かいて います。


外来語は 原つづりで かけば いいと いう 人が いるのですが,すこし かんがえたら それが おかしい ことに 気づく はずです。

「マシン/ミシン」「アイアン/アイロン」「トラック/トロッコ」などは 原つづりで かくと よめません。「ビル」「ハンカチ」「コンビニ」なども もとの(省略 しない)つづりで かくと どう よんだら いいか わかりません。日本語の つづりなら ひとつづきに かける 複合語も 原つづりだと つなぎ(-)を いれないと おかしいので 不便です。もとの 外国語と かけはなれた 意味で つかわれて いる「アルバイト」「カルテ」「マンション」を 原つづりで かいて いいでしょうか。和製外来語の「シュークリーム」「テーマソング」「サラリーマン」を 原つづり(?)で かく 意味が あるでしょうか。「イギリス」の 原つづりは 何でしょうか。

そして,なにより 大事な ことですが,日本語の つづりで かかないと 日本語が おとろえて しまいます。

masin(マシン) misin(ミシン)
aian(アイアン) airon(アイロン)
biru(ビル) hankati(ハンカチ)
haburasi,  × ha-brush(歯ブラシ)
gêmuki,  × game-ki(ゲーム機)
meronpan,  × melon-pão(メロンパン)

外国人むけの 表示では 原つづりの ほうが いいという 意見も ありますが,これも まちがいです。英語には フランス語から はいって きた 外来語が たくさん あります。おそらく,フランス語の はなし手は 英文を よむ とき,dance より danse の ほうが よみやすいでしょう。けれども,「フランス語の つづりを かけ!」とは いいません。それなら,日本語の つづりが dansu でも いい はずです。


原つづりで 分かち書き されて いた ことばを その とおりに きりはなす 必要は ありません。「カフェオレ」「アラカルト」などを ローマ字で かく とき,原つづりを しって いると かきかたに まようかも しれませんが,それは かき手の 気もちで きめて かまいません。つなぎ(-)を つかっても いいでしょう。

kahweore(カフェオレ):
café au lait
arakaruto(アラカルト):à la carte
guranpuri(グランプリ):
grand prix
kûdetâ(クーデター):coup d'État
akapera(アカペラ):a cappella
bosanoba(ボサノバ):bossa nova
omu-raisu(オムライス):omelette + rice
têma-songu(テーマソング):Thema + song

カタカナ表記に あわせる 手も あります。たとえば,New York, Santa Claus は「ニュー・ヨーク」「サンタ・クロース」で なく「ニューヨーク」「サンタクロース」が ふつうですから,これに あわせて Nyûyôku, Santakurôsu に します。


「手を振る機関車」(昔の 教科書)

ここでは San FranciscoSanhuransisuko と かいて います。

きりはした ほうが いい ものも あります。たとえば,化合物の 名前です。これは ひとつづきに かくと ながく なりすぎる ことが ありますから,適当な ところで きりはなすと いいでしょう。ただし,「~酸」「~化」の san, ka は くっつけます。

sakusan (酢酸): acetic acid
enka natoriumu(塩化ナトリウム):
sodium chloride
2-sanka tanso(二酸化炭素):
carbon dioxide
pori(biniru arukôru)
(ポリビニルアルコール):
poly(vinyl alcohol)

外国語

ローマ字文の 中に 外国語の 語句を 原つづりの ままで かく ばあい,できれば イタリック体(斜体)に します。外国の 固有名詞(人名・地名 など)を 原つづりで かく ときも おなじです。専門家むけの 文章 などで,日本語訳の さだまって いない 専門用語を 英語の つづりで かく ばあいも ありますが,これも おなじです。

文を まるごと 引用 する ときは ふつうの ローマン体(立体)で かまいません。

Neko wa Katze desu.
(ネコは Katze です。)
McDonald's no kanban ga mieta.
(マクドナルドの看板が見えた。)

人に よって 発音が ことなる ことば

「言う」は〈イウ〉と 発音 するでしょうか? それとも〈ユウ〉〈ユー〉に ちかい 発音を するでしょうか? じっさいの 発音は 人に よって ちがいます。このような ばあいに どう かくかという 問題が あります。

ふつう,「言う」は iu と かきます。しかし,じっさいの 発音が〈ユー〉に ちかかったら その とおりに かく べきだと 主張 する 専門家も います。この サイトは どちらでも かまわない ことに します。かき手の 気もちで きめて ください。

いまの ところ,「言う」を〈ユワナイ〉〈ユイマス〉〈ユウ〉の ように 活用 させる 人は すくない ようです。そこで,「そういう~」「~という~」など,「言う」の 意味が うすれて いる もの だけ よむ とおりに かいても いいでしょう漢字仮名交じり文で「そう言う~」「~と言う~」と かかないのは「言う」の 意味が うすれて いるからです。

iu, yuu(言う)
Sô yû koto ka.(そういうことか。)
Ningen to yû mono wa...
(人間というものは……)


「十戒」は〈ジュッカイ〉と よむ 人が おおいでしょう。「消耗」「早急」「重複」の ように,まちがいが 一般に ひろまって よみかたが かわって いく ことばも あります。複合語の 中には 連濁の ありなしが 人に よって ちがう ものが あります。たとえば,「研究所」の 発音には〈ケンキューショ〉と〈ケンキュージョ〉が あります。これらも かき手の 判断に まかせますかき手が まちがいに 気づいて いない ばあいは どちらでも いいと 説明 する 意味も ありませんが。

zikkai, zyukkai(十戒)
kenkyûsyo, kenkyûzyo(研究所)
sakkyû, sôkyû(早急)
tyôhuku, zyûhuku(重複)

ならべかた(ソートの 順序)

索引 など,語句や 項目を ならべる ばあい,その 順序は ABC順です。五十音順では ありません。

順序を きめる ときは 長音を 母音字の 連続に おきかえ,きる印(') などを とりのぞき,大文字・小文字を 区別 しないで ABC順に ならべます。

1 aaa
2 aab
3 âcaac と かんがえる)
4 Aadaad と かんがえる)

人名の リスト(名簿 など)は,まず 姓の ABC順で ならべ,つぎに 同姓の 人を 名の ABC順で ならべます。外国人の 人名も 姓に 相当 する 部分を 前に します。

1 Tanaka, Itirô
2 Tanaka, Saburô
3 Tanaka, Zirô
4 Tanakadate, Aikitu

語句や 人名の ならべかえには「ローマ字の ならべかえ」ツールを おつかい ください。

文章の かきかた

文・改行・段落

文の かきだしは 大文字に します。平叙文の 末尾には とめの印(.)を,疑問文の 末尾には といの印(?)を,感嘆文(ときには 命令文も)の 末尾には つよめの印(!)を かきます。漢字仮名交じり文では 疑問文・感嘆文の 末尾に 特別な 記号を かかないのが ふつうですから,記号を わすれない ように して ください。

これらの 記号の すぐ あとで 改行 しない ばあいは,記号と つぎの 文の あいだに 1文字分の 空白を いれます。

Sakura ga saita.(サクラが咲いた。)
Sakura wa saita?(サクラは咲いた?)
Sakura mo saita!(サクラも咲いた!)
Are ga zô da yo. Ôkii nê!
(あれがゾウだよ。大きいねえ!)


文の 途中の くぎりには くぎり(,),おおくぎり(;),ふたつ点(:)を つかいます。くぎり(,)は ちいさい くぎり,おおくぎり(;)は おおきい くぎりに つかいます。ふたつ点(:)は「すなわち」「つぎの とおり」と いいかえられる ような くぎりや 対比を しめす ときに つかいます。

これらの 記号の すぐ あとで 改行 しない ばあいは,記号の うしろに 1文字分の 空白を いれます。

Yamada kun, zabuton 2 mai.
Ame ga huttara, toriyame ni simasu.
Aoki, Inoue; Ueda, Endô no 2 kumi.
Tarinai mono ga aru: zyagaimo, miruku sore kara batâ mo.

改行

改行 する とき,ひとつづきの つづりを 途中で きっては いけませんが,ながい つづりは 途中に つなぎ(-)を いれて その すぐ あとで 改行 できます。たとえば,「花屋」を hana-ya の ように きりはなし,hana- までを 行末に かき,ya を つぎの 行頭に おくれます。これを 分綴と いい,その 規則を 分綴法と いいます。ハイフネーションと いった ほうが わかりやすいかも しれません。

直音・拗音・長音は それより こまかく きりません。撥音・促音は 前に くっつけます。きる 位置に きる印(')が ある ときは それを とりのぞきますハイフネーションの ルールは 言語に よって ことなります。英語の ばあい,流儀が いろいろ あって,出版・印刷業界の 人 しか 正確な ルールを しらない ほど ややこしい そうです。一般人は 辞書を みなければ わかりません。高機能な ワープロは それを 自動的に やって くれます。

きれる 位置を /で しめすと,つぎの ように なります。

yu/ki(雪) ha/na/bi(花火) ka/za/gu/ru/ma(風車)
kyo/ka(許可) syu/hu(主婦) gyo/gu(漁具)
kô/zi(工事) tô/hu(豆腐) sô/ko(倉庫)
hen/ka(変化) sin/sa(審査) gen/go(言語)
hap/pa(葉っぱ) gak/ki(楽器) zas/si(雑誌)
hon/ya(本屋;hon'/yahon/'ya に しない)

行末に 1文字 だけ のこしたり,行頭に 1文字 だけ おくったりは しません。分綴 された 行末が できるだけ 連続 しない ように します。ページの さかいめでも きりません。つまり,ひとつの ことばが ページを またがない ように します。

人名は つづりの 途中で 改行 しません。姓と 名の あいだでも,名前と 敬称の あいだでも,できるだけ 改行 しない ように します。一部を イニシャルに して ある 人名は 改行 しても かまいません。

ie(家) aoi(青い) asa/gao(アサガオ)
Yamada Hanako(山田 花子) Itô San(伊藤さん)

数字の うしろに 記号が ついて いる ものは 空白の 部分でも 改行 できません。たとえば,50 guramu50 の うしろで 改行 できますが,50 g50 の うしろで 改行 できません。

50/guramu(50グラム) 50 g(50グラム)

なるべく ことばの くみたてに したがって きる ように します。

yama/nobori (山登り; ya/manobori, yamano/bori などを さける)


ワープロ機能が ある ツールで かく とき,改行と 分綴は 自動的に おこなわれます。このとき,つぎに しめす 特殊な 文字が つかえます。

改行 しない 空白
その 位置で 改行 しない 空白です。人名の「姓」と「名」の あいだの 空白 などに つかいます。Microsoft Word は Ctrl+Shift+Space で 入力 できます。
ソフトハイフン
その 位置で きる 必要が ない(と 機械が 判断 した)ときには 何も 表示 せず,きった ほうが いい(と 機械が 判断 した)ときには つなぎ(-)を 表示 する 指定です。つづりの ながい ことばは きりの いい ところに ソフトハイフンを 挿入 して おくと いいでしょう。Microsoft Word は Ctrl+- で 入力 できます。ただし,きる印(')を とりのぞく 処理は できない ようです。

特殊な 記号の はたらきを たしかめる デモを つくりました。[デモ]ボタンで テキスト ボックスの はばが ゆっくり ちぢんで いき,それに つれて 改行位置が 自動的に かわります。特殊な 記号の ふるまいを みて ください。

xxx xxx xxx Yamada Tarô xxx

 YamadaTarô の あいだの 空白は「改行 しない 空白」です。

xxx xxx xxx yama­nobori xxx

 yamanobori の あいだに「ソフトハイフン」が いれて あります。

段落

段落の 先頭では 数文字の 字さげ(インデント)を おこないます。ワープロ機能が ついた ツールで かく とき,字さげは 自動的に おこなわれます。

  Ningyo wa, minami no hô no umi ni bakari sunde iru no de wa arimasen. Kita no umi ni mo sunde ita no de arimasu.
  Hoppô no umi no iro wa, aô gozaimasita. Aru toki, iwa no ue ni, onna no ningyo ga agatte, atari no kesiki o nagame nagara yasunde imasita.

段落に「両端ぞろえ」の 書式設定を すると,行末が そろって,みばえが よく なります。書式設定が できない ときは 行末が 不ぞろいに なりますが,それでも かまいません。

記号

ローマ字文で つかう 記号

ローマ字文で つかう 記号は すべて 半角の 記号です。これらの 記号には 日本語の 名前が ついて います。ただし,昔の 教科書を しらべると,名前が 統一 されて いた わけでは ない ようです。いまの 学校は これらの 名前を おしえて いません。

下に 一般的な 名前と この サイトが すすめる 名前を しめします。

記号名前(一般的)名前(この サイト)
.とめ,とめの印とめる印
?といの印,うたがいの印とう印
!つよめる印,つよめの印つよめる印
,くぎり(ちいさく)くぎる印
;おおくぎりおおきく くぎる印
:ふたつ点くらべる印
-つなぎつなぐ印
'きる印,つまる印,ぬけ字の印きる印,つまる印,はぶく印
" "引用の印(ふたえの)ぬきだす印
' '一重の引用の印ひとえの ぬきだす印
( )括弧(まるい)まとめる印
[ ]角括弧しかくい まとめる印
^やまがたやまがた
¯ぼうよこぼう

漢字仮名交じり文で つかう 記号

漢字仮名交じり文で つかう 記号は すべて 全角の 記号です。ローマ字文では あまり つかわない 記号も よく つかいます。これらを ローマ字文に かきなおす ばあい,記号を どのように かきなおしたら いいかを 例で しめします。


句点(。),疑問符(?),感嘆符(!)は つぎの ように します。

天気が いい。  → Tenki ga ii.
これですか?  → Kore desu ka?
わかった!  → Wakatta!


読点(、)は つぎの ように します。

はい、そうです。 → Hai, sô desu.
東京、大阪、名古屋
 → Tôkyô, Ôsaka, Nagoya
二、三人  → 2,3-nin
四、五時間  → 4-5-zikan


コンマ(,),セミコロン(;),コロン(:)は つぎの ように します。

東京,大阪,名古屋
 → Tôkyô, Ôsaka, Nagoya
二日で神戸,大阪;京都,奈良を回ります。
 → Hutuka de Kôbe, Ôsaka; Kyôto, Nara o mawarimasu.
明日は 雨だ:運動会は 延期だろう。
 → Asita wa ame da: Undôkai wa enki darô.


中点(・)は つぎの ように します。

東京・大阪・名古屋
 → Tôkyô, Ôsaka, Nagoya
ジョージ・ワシントン
 → Zyôzi Wasinton
三・一四  → 3.14国際標準化機構(ISO)の とりきめに よると,小数点の 記号には くぎり(,)を つかうのが 国際標準です。しかし,日本は とめの印(.)を つかって います。日本が この 習慣を あらためる までは,ローマ字文でも とめの印(.)に します。論文を かく ときは 規定に したがって ください。
二・二六事件  → 2.26 ziken
小・中学校  → syô-, tyû-gakkô または syôtyûgakkô または syôgakkô to tyûgakkô
元・総理大臣  → moto sôri daizin


等号(=)は つぎの ように します。

レヴィ=ストロース
 → Rebi-Sutorôsu
チェコ=スロバキア
 → Tyeko-Surobakia


ダッシュ(–,—)は つぎの ように します。

東京―大阪 → Tôkyô-Ôsaka
三十二―三十三ページ
 → 32-33 pêzi
その朝は――もう4月だったが――雪が降った。
 → Sono asa wa—mô 4 gatu datta ga—yuki ga hutta.

※ ダッシュには,すこし みじかい EN ダッシュ(–)と すこし ながい EM ダッシュ(—)が あります。範囲を しめす ときは EN ダッシュ(–),語句の 挿入や 引用を しめす ときは EM ダッシュ(—)という つかいわけが あります。ダッシュが つかえない ばあいは,1個 または 2個の つなぎ(-)で 代用 します。


波ダッシュ(~)は つぎの ように します。

100~200人 → 100-200-nin


リーダー(…)は つぎの ように します。

そう……ですか。 → Sô... desu ka.
おや,まあ…… → Oya, mâ...
……。 → ....
夏の大三角形……ベガ,アルタイル,デネブ
冬の大三角形……シリウス,プロキオン,ベテルギウス
↓ 
Natu no daisankakkei—Bega, Arutairu, Denebu
Huyu no daisankakkei—Siriusu, Purokion, Beterugiusu

※ 文中の 空白や 文末の 余韻を しめしたい とき,漢字仮名交じり文は 三点リーダー(…)を 2個 つなげた 記号を よく つかいますが,ローマ字文は とめの印(.)を 3個 つなげて つかいます。文末で 文の おわりを しめす ときは さらに とめの印(.)が くわわります。点線の イメージで もちいられて いる リーダーは ダッシュに おきかえます。


丸かっこ( ( ) )は つぎの ように します。

六月十日(土) → 6 gt. 10 nt. (D)


カギかっこ( 「 」,『 』 ),ノノカギ(〝 〟)は つぎの ように します。

「おはよう。」 → "Ohayô."
「おはよう」と言った。
 → "Ohayô," to itta.
「火事だ!」と叫んだ。
 → "Kazi da!" to sakenda.
それは「危険」を意味する。
 → Sore wa "kiken" o imi suru.
判定は「B」です。
 → Hantei wa 'B' desu.
『漱石全集』の「明暗」
 → "Sôseki Zensyû" no "Meian"
月刊『養豚ジャーナル』
 → gekkan Yôton Zyânaru
スイッチを〝A〟に あわせた。
 → Suitti o 'A' ni awaseta.

※ 漢字仮名交じり文では とじる カギかっこの 前には 句点(。)を かかない ことが おおいのですが,ローマ字文は かならず とめの印(.)を かきます。その あとに 文が つづく ときは くぎり(,)を かきます。この 記号は といの印(?)や つよめる印(!)に なる ことも あります。

※ 書籍・雑誌の 名前と 作品・記事の 題名を かっこの 種類で 区別 する きまりは ありません。新聞・雑誌の 名前に かっこは いりません。


「夏の小半日」 (昔の 教科書)

ここでは「仕事」が 物理学の 専門用語で ある ことを しめして います。


引用符(“ ”, ‘ ’)は つぎの ように します。

“NO SMOKING”
 → "NO SMOKING"
判定は‘B’です。
 → Hantei wa 'B' desu.


方向の ある 引用符

※ 方向の ある 引用符(左側と 右側で ペアに なって いる もの)を もちいるかは 自由です。こまかい ことを いうと,引用符には いろいろな 形が あり,ヨーロッパの 言語でも 統一 されて いません。この サイトは 英語風の 引用符を つかって います。


かっこや 引用符が いれ子に なった ときに どう するかという 問題も ありますが,この サイトは そこまで こまかい 規則を きめて いません。

せりふ

戯曲 などの せりふ は つぎの ように かきます。引用符は はぶいても かまいません。

A: "Kyô wa nan niti datta?"
B: "Sâ."
A: "Soko ni sinbun ga aru. Hizuke o mite goran."
B: "Dame desu yo. Kore wa kinô no sinbun desu kara."

わかりやすい ローマ字文の ために

みじかすぎる ことばを さける

みじかすぎる ことばは,助詞 などと みわけにくく よみにくいので,できるだけ さけます。漢字 1文字を 音よみに する ことばも,同音異義語が おおいので,できるだけ つかわない ように します。これらは 別の ことばで いいかえます。

ことばいいかえ例
案(あん)かんがえ,目論み
意(い)意味,心持ち
絵(え)挿絵,口絵,墨絵,油絵,絵画
柄(え)取っ手
江(え)入り江
尾(お)尻尾
木(き)立ち木,木立,樹木,木材
毛(け)髪の毛,頭髪
刑(けい)刑罰
計(けい)合計,はかりごと
系(けい)系統
子(こ)こども
差(さ)違い,隔たり,差し引き
死(し)死去,逝去
情(じょう)真心,なさけ
背(せ)背中,背丈
台(だい)置き台,乗せ台
血(ち)血潮,血の気,血糊
手(て)手のひら
戸(と)扉,開き戸,引き戸,折り戸
名(な)名前
荷(に)荷物
根(ね)根っこ,根元
野(の)野原,野辺
葉(は)葉っぱ
刃(は)やいば
火(ひ)ほのお
美(び)美しさ
法(ほう)法律
間(ま)あいだ,いとま,すきま,ころあい
身(み)からだ
実(み)木の実,さね,種
論(ろん)論説
輪(わ)輪形,わっか,リング,サークル

漢字 1文字を 音よみに する ことばでも,きいた だけで 意味が わかる ものは そのままで かまいません。たとえば,「一」「二」「三」「点」「線」「面」「金」「銀」「銅」「愛」「本」「毒」などです「金」「銀」「銅」は「こがね」「しろがね」「あかがね」でも いい わけですが,いまは かえって わかりにくいかも しれません。

省略 した 漢字の ことばを さける

「就職活動」を「就活」と いう ような,ながい 漢字の ことばを ちぢめた いいかたが あります。便利ですが,漢字の ことばを もとに して いるので,できるだけ つかわない ように 心がけます。

「電卓」「高校」の ように 定着 して いる ものや,「特急」「魚雷」「消防」の ように もとの ことばが わすれられて いる ものは つかって かまいません。

すこしでも わかりやすく する ため,つなぎ(-)を いれる アイデアも あります。

syûsyoku katudô, syû-katu(就活)
gakusei waribiki, gaku-wari(学割)
Nippon Ginkô, Niti-Gin(日銀)
Tôkyô Daigaku, Tô-Dai(東大)
dentaku(電卓) tokkyû(特急)

「パソコン」「ワープロ」などの ように,もとから 省略 されて いる 外来語は そのまま つかって かまいません。「テレビ」「ハンカチ」「コンビニ」などは ことばの うしろを はぶいた 形ですが,これらも つねに この 形で つかわれる かぎり 問題は ありません。大切なのは 同音異義語を ふやさない こと,ことばを みた目で 区別 する 目的で 漢字を つかわない ことですもし やまとことばで いいかえられるので あれば,それを つかえば いいでしょう。それが できない ばあいは,同音異義語が ふえやすい 漢字の ことばより カタカナ語の ほうが ましです。「パソコン」「リモコン」「エアコン」「マザコン」の 「コン」は 意味が ちがうので,これらの「コン」は 同音異義語の ような ものです。その 意味で「コン」は よく ない ことばですが,「コン」だけで つかう ことが ないので 問題が おこりません。

国名や 地名を 漢字で あらわした ことばを さける

国名や 地名を 1文字の 漢字で あらわして いる ことばは できるだけ もとの 名前に もどします。ただし,「英語」の ように 定着 して いる ものは そのままで かまいません。また,「信越」の ように もとに もどしても わかりやすく ならない ものも そのままで かまいません。

Aomori-Hakodate Renrakusen
(青函連絡船)
Nippongo-Huransugo Ziten
(日仏辞典)
Nippon-Doitu-Itaria Sangoku Dômei
(日独伊三国同盟)

文の 構造を わかりやすく する

ローマ字文に かぎらず,複文・重文や 修飾節の おおい 文は ながく なります。そして,ながい 文は 構造が わかりにくく なりがちです。文の 構造を わかりやすく するには,文を みじかく するのが 一番です。40文字とか 50文字とか,具体的な 目標を つくって みじかい 文を こころがけて いる 人も います。くぎり(,)や おおくぎり(;) などで くぎる ことも 文の 構造を わかりやすく する 効果が あります。声に だして いうと したら,くぎりの ところで 一瞬の すきまを あけて 発音 する はずです。その すきまを 記号で しめして いると かんがえても いいでしょう。

Boku no uti ni aru huruido kara dete kita koban ga aru.
(僕の うちに ある 古井戸から でて きた 小判が ある。)
Boku no uti ni, aru huruido kara dete kita koban ga aru.
(僕の うちに,ある 古井戸から でて きた 小判が ある。)