ISO 3602
ISO 3602
あらまし
Aramasi
1989年,国際標準化機構(ISO)は 訓令式を 国際標準と して 採用 しました.ISO 3602:1989 "Documentation -- Romanization of Japanese (kana script)" です.これが 国際標準の ローマ字です.ISO 3602は,強制力こそ ありませんが,国際的な 標準です.学術・芸術・産業 など,さまざまな 分野で ひろく つかわれる ことが 期待 されて います.
ISO 3602は 表記体系の 変換規則と して 定義 されて います.つまり,かな文字で かかれた 日本語を ラテン文字に 変換 する ルールが さだめられて います.外国人が ローマ字を つかう 状況では,かな文字表記の 日本語を ラテン文字表記に 変換 する ばあいが おおいからかも しれません.たとえば,外国の 図書館が 日本語で かかれた 書籍を もって いて,それを 管理 する 目的で 日本語の タイトルを ABC表記に する ばあい などです.日本語を よく しらない 外国人が つかう ことを 想定 して いるのでしょう.
この 規格は 訓令式を もとに して いますが,厳密に 日本語の 文字を かきうつしたい ばあいには 日本式を つかう ことに して います.つまり,〈お〉と かいて あったのか〈を〉と かいて あったのかを 区別 したい ときは 日本式を つかう わけです.
おぎない
Oginai
ISO 3602 を つくった とき,訓令式の 採用に はげしく 反対 した 国が ありました.日本の 国内にも 訓令式に 反対 する 勢力が ありました.いうまでも なく,これらの 国や 勢力は ヘボン式を おして いました.それでも 訓令式の 意義を みとめる 人たちが 説得に 力を つくし,ヨーロッパ諸国の たすけも かりて,訓令式の 採用に こぎつけたのでした.ぎりぎりの ところで 日本と 日本語の 尊厳が まもられたと いえます.
ところが,日本の 政府は ISO 3602を 無視 して います.ヘボン式派の 影響力が おおきいからです.ちかごろは それが ますます はげしく なって います.その 結果,国際的な 場で「福島」が ISO 3602 に したがって Hukusima と かかれる ことは ありません.じっさいには ヘボン式で Fukushima と かかれて います.国内でも「ローマ字のつづり方」を 無視 して いますし,分野ごとに さだめられて いる 独自仕様の ローマ字を ISO 3602に あわせて 統一 する うごきも ありません.
こんな ありさまですから,ISO 3602は ちかい 将来 ヘボン式に 変更 されるか または 廃止 される 可能性が あります.ISOの 規格は 定期的に みなおされる ことに なって いて,おおきな 変更が あるかも しれません.
北京オリンピック
中国・韓国にも ローマ字が あり,その 国際標準が あります.中国・韓国は それらの ローマ字を つかって います.国際的な 場で「北京」が Beijing,「釜山」が Busan と かかれるのは そのためです.これらの ローマ字は 中国・韓国が 中国語・韓国語の 性質に あわせて 設計 した ものですから,外国人に とって よみやすい つづりでは ありません.それにも かかわらず,国際社会は これらの ローマ字を 尊重 して います.主権国家の 独立性を とうとび,すべての 言語を 平等と みなす 理念を 共有 して いるからです.
これが 世界の 常識です.日本は 国際社会の 理念から はずれて いる わけで,この 事実は 国際的に はずかしい ことです.