ラテン文字

ラテン文字とは

ラテン文字

ラテン文字とは ABCの ことです。ローマ帝国で ラテン語を かくのに つかわれて いた 文字です。ローマ帝国は ほろびて しまい,ラテン語も 死語に なりましたが,ラテン文字は ほかの 言語に とりいれられて いきのこりました。それが 日本でも つかわれて います。


ラテン文字は 26文字の セット(集合)です。大文字(おおもじ)と 小文字(こもじ)が ありますこまかい ことを いうと,「文字」という ことばは,(1)「漢」「あ」「A」などの 単独の 文字,(2) 単独の 文字を いくつか ならべた もの,そして (3) おなじ 種類の 文字を すべて まとめた 集合という 3種類の 意味で つかわれて います。これらを 区別 したい ときは,(1)を「文字要素」 または 単に「文字」,(2)を「文字列」,(3)を「文字集合」に すると いいでしょう。

大文字:
ABCDEFGHIJKLMN​OPQRSTUVWXYZ
小文字:
abcdefghijklmn​opqrstuvwxyz


BørneLund

おもちゃで 有名な BørneLund(ボーネルンド)の 名前は デンマーク語の børne(こどもの)と lund(森)から できて います。øo では なく,デンマーク語が ラテン文字に つけくわえて いる 文字です。

世界の おおくの 言語は ラテン文字を つかって かきますが,かならず すべての 文字を つかう わけでは なく,言語に よっては つかわない 文字も あります。日本語を 訓令式ローマ字で かく ときは ふつう 19文字 しか つかいません。

反対に,おまけの 文字を つけくわえる 言語も あります。たとえば,ドイツ語は ß という 文字を つけくわえて います。


ラテン文字は そのままの 形で つかう だけで なく,文字の 上や 下に 印(発音区別符号)を つける ことも あります。

ローマ字は サーカムフレックス(^) または マクロン(¯)を つかいます。ローマ字で つかう サーカムフレックスには「山形(やまがた)」という 日本語の 名前が ついて います。


ドイツ語


ベトナム語

アルファベット・英字・ローマ字

ABCの ことを アルファベット・英字・ローマ字と よぶ ことも あります。すべて おなじ 意味だと おもって いる 人が いるかも しれませんから,すこし 説明 して おきます。

アルファベットの 本当の 意味は かんたんに いえば 表音文字です。もう すこし 正確に いえば 音素文字(単音文字)です。言語学者は もっと 範囲を しぼりこんだ 意味で いう ことも あります。この アルファベットには いろいろな 種類の 文字が あり,その 中の ひとつが ラテン アルファベット すなわち ラテン文字です。ギリシャ文字も キリル文字も アラビア文字も アルファベットの 一種です。したがって,ラテン文字と アルファベットは イコールでは ありません。ただし,アメリカ人や フランス人の ように,ふだん ABCを つかって くらして いる 人が アルファベットと いえば,それは ラテン文字の 意味でしょう。日本人も ABC 以外の アルファベットは ほとんど つかわないので,日本人が アルファベットと いえば,それは ラテン文字の 意味でしょうより ひろい 意味の アルファベットは 音節文字まで ふくみます。たとえば,かな文字を ジャパニーズ アルファベット,ハングルを コリアン アルファベットと よんだり します。

英字は 英語を かく 文字の 意味だと おもわれますが,ABCは 英語 だけを かく 文字では ありませんから,これは まずい 名前です。できれば つかわない ほうが いいでしょう。

ABCを ローマ字と よぶ ことも あります。じつは,ローマ字の もともとの 意味は これです。しかし,この ローマ字で 日本語を かく 方法や その 方法で かかれた 日本語を ローマ字と よぶ ことも あります。これでは ややこしいので,この サイトは ABCを ラテン文字と よび,ABCで 日本語を かく 方法や その 方法で かかれた 日本語を ローマ字と よんで います(いいかた 1)。ABCを ローマ字と よび,ABCで 日本語を かく 方法や その 方法で かかれた 日本語を「ローマ字表記」と よんでも いいでしょう(いいかた 2)。

いいかたABCYamada Hanako
1ラテン文字ローマ字
2ローマ字ローマ字表記

「日本語と ローマ字」?

「日本語と ローマ字で かいて ある。」「日本語 では なく ローマ字で……」の ように,「日本語」と「ローマ字」を ならべた いいかたを よく みかけますが,これは おかしいので やめましょう。この ばあいの「日本語」は 言語で「ローマ字」は 文字です。種類が ちがう ものを 同列に ならべては いけません。

言語日本語,中国語,韓国語,英語,フランス語,ロシア語,……
文字漢字,ひらがな,カタカナ,ハングル,ローマ字,キリル文字,……

こんな いいかたを する 人は ローマ字を 日本語だと おもって いないのでしょう。日本語を ABC表記に すると 英語の ような ものに かわると おもって いるのかも しれません。漢字と かな文字を まとめて いう「邦字」という ことばが しられて いない ことも ありそうです。

ただしい いいかたは「漢字・かな文字と ローマ字」「邦字と ローマ字」です。言語が 日本語で ある ことも いいたければ「日本語の 漢字・かな文字表記と ローマ字表記」に すると いいでしょう。ただし,邦字は あまり つかわれない ことばです。同音異義語が あって 耳で きいた だけでは わかりにくい ことばでも あります。ローマ字も 上で のべた ように 意味が はっきり しない ことばです。意味を はっきり させる ため,「日本文字と ラテン文字」に すると いいかも しれません。


日本語入力の はなしを して いる 中で「日本語と ローマ字」と いう 人も います。これは パソコンの「かな入力と ローマ字入力」か スマートフォンの「フリック入力と ローマ字入力」の 意味です。学校が ことばを おしえて いないのか,予測変換に ひきずられて ことばが おかしく なるのか わかりませんが,できるだけ 一般的な いいかたを する よう,おすすめ します。

ラテン文字と 言語

ラテン文字で かく 言語

ラテン文字は いろいろな 言語を かくのに つかわれて います。その 代表は 英語ですが,ほかにも たくさん あります。スペイン語,ポルトガル語,フランス語,イタリア語,ドイツ語,ネーデルラント(オランダ)語,デンマーク語,スウェーデン語,ノルウェー語,アイスランド語,ポーランド語,チェコ語,スロバキア語,スロベニア語,クロアチア語,ラトビア語,リトアニア語,アイルランド語,バスク語,マジャル(ハンガリー)語,スオミ(フィンランド)語,エストニア語,アルバニア語,ルーマニア語,インドネシア語,ベトナム語,トルコ語,タガログ語,マレー語,スワヒリ語 などが ラテン文字を つかって いますこのように,ラテン文字で かく 言語は たくさん ありますが,ラテン文字で かかれた 新聞や 本を みた 瞬間に 英語だと おもって しまう こどもが います。ローマ字を 英語と 日本語の 中間的な ものと かんちがい して いる おとなも います。これは 日本人の 国際感覚が まずしいからです。日本では 英語 以外の 外国語に ふれる 機会が すくない ことや,学校の 外国語教育が 英語に かたよりすぎて いる こと などが 原因です。つまり,おおくの 日本人が もって いる この 感覚は 日本の 政府や 経済界に よって すりこまれた ものです。


ラテン文字の 世界分布

図は ラテン文字を つかって かく 言語の ひろがりを しめして います。くらい 緑色の 地域は ラテン文字 だけを つかって います。あかるい 緑色の 地域は ラテン文字と ほかの 文字を つかって います。灰色の 地域では アラビア文字・キリル文字・漢字 などを つかって います。

ラテン文字は 世界共通の 文字

ラテン文字は 世界中で つかわれる ように なったので,いまでは 世界共通の 文字と みなされて います。数値を かきあらわす アラビア数字(算用数字)と おなじ ように,はじめは どこかの 地域に うまれて 発達 した システムで ありながら,だんだん ひろまって いき,やがて 世界中で つかわれる ように なりましたアラビア数字が うまれたのは インドですが,それが アラビアから ヨーロッパに つたわったので,ヨーロッパでは これを アラビアの 数字と よびました。アラビア数字は アラビア文字が つかわれて いる 地域では すこし ちがう 形を して いますが,これが もともとの 形です。日本で つかわれて いる 形は ラテン文字と まぜて つかいやすい ように 変形 された ものです。

ラテン文字の ほかに 便利な 文字が なかった わけでは ありません。また,世界の 言語を かきあらわす 役割を かんがえると,ラテン文字には 機能の 面で たりない ところが あります。それにも かかわらず,ラテン文字が 世界中で つかわれる ように なったのは 有力な 国が ラテン文字を つかって いたからです。ラテン文字を つかって いた スペイン・ポルトガル・オランダ・フランス・英国 などが,はじめは 貴金属や 香辛料を もとめて,あるいは 宗教を ひろめようと して,のちには 領土 そのものを 目的に して,外国に 進出 していった 時代が ありました。それで,ラテン文字が 世界に ひろまった わけです。

何かが あたらしい 土地に ひろまって いこうと する とき,それが「発祥の 地」の 文化を ひきずって いて,あたらしい 土地に もともと あった 文化と ぶつかって しまうと,なかなか ひろまりません。しかし,ラテン文字は ただの 文字なので,そういう ことが なく,どんどん 世界に ひろまって いきましたたとえば,インドうまれの アラビア数字は インドの 文化と 特別には むすびついて いません。メートル法は 人工的に つくられた もので,建前としては 特定の 文化と むすびついて いません。こういう ものは どこでも うけいれやすく,世界の 標準に なれます。反対に,特定の 文化と むすびついて いる ものは 反発 されて うけいれられない ことが あり,世界の 標準に なれません。たとえば,英語は 世界中で つかわれて いますが,英語圏の 文化 そのものですから,世界共通の 言語に なれません。西暦(グレゴリオ暦)は おおくの 国で つかわれて いますが,特定の 宗教と つよく むすびついて いるので,世界共通の 暦に なれません。

文字の 名前

ラテン文字の 音価

ラテン文字は 表音文字ですから,音声と 文字が 対応 して います。おなじ 音声は おなじ 文字で かき,おなじ 文字は おなじ 音声で よむという おおよその きまりが あります。このとき,ある 文字に 対応 して いる 音声を その 文字の 音価と いいます。

ただし,音声と 文字の 対応関係は 世界共通で なく 言語に よって ことなります。つまり,おなじ ABCでも 言語に よって 音価が ちがいます。たとえば,英語の J は〈ジャ〉の 子音ですが,ドイツ語の J は〈ヤ〉の 子音です。

ラテン文字の 名前

かな文字は 1文字 だけでも 発音 できます。たとえば,ひらがなの「さ」を しめしたい ときに〈サ〉と いう ことが できます。けれども,ラテン文字には 単独で 発音 できない 文字が あります。たとえば,J は 子音字なので 単独では 声に だして いう ことが できません。そこで,子音字には 母音を くっつけて 発音 できる ように して,ひとつひとつの 文字に 名前を つけて います。

文字の 名前は,音価を もとに して つけられるので,言語に よって ちがいます。たとえば,J の 名前は 英語では〈ジェイ〉ですが ドイツ語では〈ヨット〉です。A, B, C も 英語では〈エイ,ビー,スィー〉,ドイツ語では〈アー,ベー,ツェー〉,フランス語では〈ア,ベ,セ〉,イタリア語では〈ア,ビ,チ〉という 具合に ばらばらです。


日本語では ラテン文字に つぎの 名前を つけて います。3種類を しめします。

ABCDEFG
アーベーセーデーエーエフゲー
アーベーセーデーエーフーゲー
HIJKLMN
ハーイーヨーカーエルエムエン
ハーイーヨーカールーマーナー
OPQRSTU
オーペークーラーエステーウー
オーペークーラーサーターウー
VWXYZ
ブイワーエッキスヤーゼット
ボーワーキーヤーゼー

ひとつめは 昔の 文部省が かんがえて いた 案,ふたつめは ローマ字論者 田丸卓郎による もの,みっつめは この サイトの 提案です。ほかにも いろいろな かんがえが ありますが,いまの ところ,公式の ものは ありませんこの サイトの 名前の きめかたは つぎの とおり: (1) すべて 長音に する; (2) 母音は そのままの 音を つかう(A, I, U, E, O); (3) 清音は ア段の 音を とる(K, S, T, N, H, M, Y, R, W); (4) 濁音・半濁音は エ段の 音を とる(G, Z, D, B, P); (5) ふつう 訓令式で つかわない 文字は そのほかの 名前に する(C, F, J, L, Q, V, X); (6) できるだけ 英語の 名前と かさならない ように する(母音は かさなっても しかたが ない)。


文字の 名前(昔の 教科書)


じっさいには ローマ字教育でも 英語の〈エイ,ビー,スィー〉を つかって いるので,上に しめした 名前を おぼえる 必要は ありません。けれども,本当は〈エイ,ビー,スィー〉で ない ことを おぼえて おいて ください。ローマ字は 日本語で あって 英語では ないからです。フランス語や ドイツ語を 勉強 する ときに A, B, C を〈エイ,ビー,スィー〉とは いいません。ローマ字を 勉強 する ときに A, B, C を〈エイ,ビー,スィー〉と いうのは,本当は おかしい わけです。ローマ字教育を 英語の 入門だと かんちがい して いる 人が おおいのは 英語の 名前を つかって いる ことにも 原因が あると おもわれます。

日本語の 名前と 英語の 名前の ふたつを おぼえるのは むだに おもえるかも しれません。けれども,外国人は そう して います。いつもは〈ア,ベ,セ〉と いって いる フランス人も 英語を 勉強 する ときには〈エイ,ビー,スィー〉を おぼえます。それが あたりまえでは ありませんか。


文字の 名前を つかわないで ローマ字を おしえる ことも できない わけでは ありません。訓令式の ばあい,はじめに A, I, U, E, O を「ア,イ,ウ,エ,オ」と おしえ,つぎに K を「カキクケコの 印」,S を「サシスセソの 印」,T を「タチツテトの 印」と 説明 できるからです。

そうは いっても,やはり 文字の 名前が ないと 不便です。それで,英語の 名前を つかって います。本当は 日本語の 名前を つくらないと いけないのですが,そんな 明治時代からの 宿題が まだ できて いません英語を 特別あつかい する おしえかたは 国際理解教育の 観点から 教育的と いえません。英語の 名前が 日本語の 発音と 対応 しない 問題も あります。母音は 日本語の 発音と まったく ちがいますし,子音も G(ジー),H(エイチ),W(ダブリュー)などが 日本語の 発音から かけはなれて います。小学生が ローマ字の テストで「電車」「金魚」を dansya, kengyo と かいて しまう ことが あるのですが,これは A を〈エイ〉,E を〈イー〉と よませて いるからです。ローマ字を まなびやすく する ために,日本語の 名前を さだめて おしえないと いけません。なお,「カキクケコの 印」などの よびかたは,訓令式では D を「ダデドの 印」と よばなければ ならず,すこし 不規則に なる 問題が あります。日本式なら この 問題は おこりません。


「正しいローマ字読本」(彦根高商ローマ字会)

これは 昭和の はじめごろに かかれた 日本式ローマ字の 解説書です。ここでは 文字の S を「サシスセソのしるし」と よんで います。


D を〈デー〉,T を〈テー〉と いう ことも あります。昔の 日本語には〈ディ〉〈ティ〉の 発音が なかったので,上の 文部省の 案 などでも そうですが,〈デー〉〈テー〉と いって いました。それが いまでも のこって いるのでしょう。一部の 業界では ききまちがいを ふせぐために Dを〈ダー〉と いったり しますが,誤解が なければ,こういう よびかたを つかっても かまいません。

ラテン文字で ことばを かく

表音文字の 利点


ヒエログリフ

ヒエログリフ(聖刻文字,神聖文字)は もともと 表語文字ですが,表音文字としても つかわれました。文字の 種類は 6000くらい あります。つかわれなく なった あと,よめる 人も いなく なって しまいましたが,19世紀に 解読 されました。

ラテン文字は 音声を あらわす「表音文字」です。ラテン文字で ことばを かく ときは,ことばの 音声を ばらばらに 分解 して,それぞれの 音声に 対応 した 文字を ならべて かきます。かんがえて みれば,ずいぶん まわりくどい やりかたを して います。文字は ことばを 記録 する ために あるのですから,ことばを かく ときに ことばを あらわす「表語文字」を ひとつ かいても いい はずです。象形文字 などは この やりかたで,こっちの ほうが わかりやすいと おもう 人も いるでしょう。なぜ ひとつの ことばを かくのに 表音文字を いくつも ならべて かくのでしょうか。

それは 表語文字に おおきな 欠点が あるからです。まず,絵で 表現 しにくい ことばは 文字が つくりにくい ことです。それから,ことばの 数 だけ 文字を つくると,文字が おおすぎて おぼえるのも つかうのも むつかしい ことです。そのため,表語文字は だんだん すたれて いきました。いまでも いきのこって いる 表語文字は 漢字 だけで,その 漢字を つかって かく 言語も いまは 中国語と 日本語 しか ありません文字が むつかしいと,文字の 習得(学校教育)や 運用(社会生活)に コストが かかります。文字を やさしく すれば,みんなが 文字を まなびやすく つかいやすく なり,特権階級が 知識と 情報を ひとりじめ するのを ふせげます。やさしい 文字は 民主的な 社会の 必要条件です。残念ながら,いまの 日本は この 条件を みたして いません。表語文字の 欠点は ほかにも あります。たとえば,語尾変化が ある ことばを かくのが むつかしい ことです。中国で 漢字が いきのこった 理由の ひとつは 中国語に 語尾変化が ない ことです。

表音文字には そういう 欠点が ありません。表音文字は 文字の 数が すくないので おぼえるのも つかうのも かんたんです。こどもでも よみかき できます。表音文字を つかえば,あたらしい ことばが できても すぐに かけます。外国の 名前や さまざまな 音も かけます。ことばに 順番を つけて ならべる ことも できます。機械との 相性も よく,たとえば かな文字や ラテン文字は キーボードで そのまま 入力 できます。このように,表音文字は とても 便利なので,いまでは 世界の ほぼ すべての 言語が 表音文字 だけで かかれて います表音文字は 機械化 しやすいのも すぐれて いる ところです。現代社会では 文字と 機械との 相性が とても 重要です。機械で あつかいにくい 不合理な 文字を つかって いる 社会は 不便な ことが おおく,いろいろな 競争でも 不利に なります。たとえば,無数の 漢字と ふりがなを 処理 しなければ ならない 日本の コンピューター システムには 余計な コストが かかって おり,税金の むだづかいに なって います。中国の 漢字は 基本的に よみかたが ひとつ しか ないので,中国に ふりがなは ありません。日本の コンピューター システムには 元号の 負担も あります。いまでも 元号を つかって いる 国は 日本 だけです。これでは マラソンで 日本選手 だけが 鉄の ゲタを はいて はしって いる ような ものです。

つづりかた

ことばの 音声を かく ためには,あらかじめ 音声と 文字の 対応が きまって いないと いけません。これが ややこしいと,よみまちがい・かきまちがいが おこりやすく なります。

音声の 種類は 文字の 種類よりも はるかに おおいので,どうやって 文字を やりくり するかが 問題です。これは 複数の 文字を ならべた つづりで 別の 音声を あらわす しくみで すこし 解決 できます。たとえば,英語では 〈サ〉の 子音を s で,〈ハ〉の 子音を h で あらわしますが,〈シャ〉の 子音は sh で あらわします。

ひとつの 音声が 複数の つづりに 対応 して いる ことも ひとつの つづりが 複数の 音声に 対応 して いる ことも あります。たとえば,英語の to, too, two は よみかたが おなじで,good, fool, bloodoo の よみかたが ちがいます。

このように,音声と 文字の 対応は たいへん 複雑で 不規則です。そのため,発音から つづりを みちびきだせない ものや,つづりを みても 発音が わからない ものが あり,発音や つづりを 暗記 しないと いけない 単語も あります。

さらに ややこしいのは,音声と 文字の 対応が 言語に よって ちがう ことです。そのため,おなじ つづりでも 言語が ちがうと よみかたも ちがいます。たとえば,Charles は 英国人なら〈チャールズ〉,フランス人なら〈シャルル〉です。take は 英語なら〈テイク〉,日本語なら〈タケ〉です。ja は 英語なら〈ジャ〉,ドイツ語なら〈ヤ〉,スペイン語なら〈ハ〉です。chi は 英語なら〈チ〉,フランス語なら〈シ〉,ドイツ語なら〈ヒ〉,イタリア語なら〈キ〉です。

外国人は ローマ字を よめない

ラテン文字の よみかたは 言語に よって ちがうので,しらない 言語の つづりは よみかたが わかりません。ある 言語の つづりを ただしい 発音で よめるのは その 言語を しって いる 人 だけです。たとえば,フランス語の つづりを ただしい 発音で よめるのは フランス語を しって いる 人 だけです。それと おなじで,ローマ字を ただしい 発音で よめるのは 日本語を しって いる 人 だけです。ほとんどの 外国人は 日本語を しらないので,ローマ字を ただしい 発音では よめません。ローマ字の つづりかたには 方式が いくつか ありますが,日本語を しらない 外国人は どの 方式の ローマ字も ただしい 発音では よめません。

ローマ字を 発音記号の ような ものと かんちがい して,日本語の 発音を 外国人に しめす 目的で ABC表記に した ものが ローマ字だと おもって いる 人は おおいのですが,それは よく ある おもいちがいです。国際的な 場では 日本人の 名前を ローマ字で かきますが,外国人が それを ただしい 発音で よんで くれる わけでは ありません。


ただし,観光地 などで 地名や 駅名を ローマ字で 表示 する ことには 意味が あります。日本を おとずれる 外国人が 案内板や 駅名標に かいて ある ローマ字を みた とき,それらと ガイドブックや ウェブサイトに かいて ある ローマ字を みくらべて,おなじか ちがうかを 自分で 判断 できるからです。外国人が 目で みて わかる 文字で かく ことに 意味が ある わけです。ローマ字の 目的は ひとつでは なく いくつか ありますが,その ひとつは 日本語を 世界に ひらかれた 文字で かく ことです。地名や 駅名の ローマ字は その 目的で かかれて います。

外国人が 日本の 観光地に くる とき,たよりに するのは ラテン文字で かかれた 表示です。日本語を しらない 外国人でも 地名や 駅名は ローマ字で かかれて いれば それで 十分です。外国人は その ローマ字を ただしい 発音では よめませんが,それで こまる ことも ありません。

ローマ字は 国際的な 表示方法で,日本の 地名や 駅名を 外国人むけに 表示 する もっとも すぐれた 方法は ローマ字を ひとつ かく ことです。いくつもの 外国語に 翻訳 して それらを ずらずら ならべるのは まずい やりかたです。日本人と 外国人が おなじ ものを ちがう 名前で よぶ ことに なるからです。これでは はなしが つうじません。道案内も できなく なり,かえって 不便に なって しまいます。

書体

活字体

印刷 されて いる ラテン文字の 書体を 活字体と よびます。これには,「セリフ」と よばれる ひげかざりを もつ「セリフ書体」と,それを もたない「サンセリフ書体」が あります。「サン」は フランス語で「~のない」という 意味です。


活字体(セリフ書体)


活字体(サンセリフ書体)

こどもに 文字を おしえる とき,はじめの 目標は 教科書で つかわれて いる 活字体を よめる レベルですが,その つぎの 目標は いろいろな 書体を よめる レベルです。広告・看板 などが いい 教材に なります。書体の ちがいに まどわされない ことが 大切です。

ブロック体

ローマ字を 手がき する ときは ブロック体で かきます。ブロック体は 活字体と にて いますが,小文字の a, g などは すこし 形が ちがいますから,気を つけて ください一般に,あらたまった 文書は 手がきが よく,特に 目上の 人への 手紙 などは 手がきで ないと 失礼だという かんがえが あります。けれども,敬意を あらわしたい とき,形式に たよりすぎるのも かんがえものです。大切なのは 敬意 そのもので あって,敬意を あらわす 形式では ありません。形式に うるさい 人 ほど 中身の 敬意が ともなって いない 慇懃無礼に なって いる ことが おおい ものです。

昔は ブロック体を「マヌスクリプト体」とか「マヌ体」と よんで いました。「マヌスクリプト(manuscript)」とは「手がき」の 意味です。印刷 する 活字体,手がき する「マヌスクリプト体」,という 関係です。


ブロック体(マヌスクリプト体)

ときどき,字体の こまかい ところを 気に しすぎる 保護者が いるのですが,そんなに 気に しなくても かまいません。テストの ときは 教科書や 教師の かきかたに あわせて おけば いいでしょう。よく 問題に されるのは 大文字の I(アイ)で,上下の みじかい 横線を かくか かかないかで おおさわぎ する 人が います。Kや Rの 第3画を どこから かきはじめるかも よく 問題に なります。けれども,これらは 漢字の トメ・ハネ みたいな もので,はっきり いえば どうでも いい こと ですたしかに,大文字の I(アイ)に みじかい 横線が あると 小文字の l(エル)と みわけやすくて 便利 です。この サイトも どちらでも いいと いわれたら 横線の ある ほうを おすすめ します。しかし,単語や 文章を かく ばあいなら,横線が なくても 問題は おこりません。じっさい,大文字の I(アイ)と 小文字の l(エル)が おなじ 形を して いる フォントも あり,それが 世界で うけいれられて います。ただし,「数学」や「物理」で つかう 1文字の 記号を 手がき する ときは 例外です。これは,大文字の I(アイ)に かぎらず,大文字と 小文字が おなじ 形を して いる 文字 なども,はっきり 区別 できる ように かかないと いけません。たとえば,大文字の Cは 小文字の cと 区別 できる ように「角(つの)」を つけ,大文字の Pは 小文字の pと 区別 できる ように「足」を つけます。小文字を 筆記体の 形で かく やりかたも あります。これは「数学」や「物理」の 授業で まなぶ ことですから,小学生には やかましく いわなくて いいでしょう。


下の テキスト ボックスに ラテン文字で 何か かきこんで みて ください。ブロック体風の 書体で 表示 します。

筆記体

筆記体は つづけて かける 形を して いるので,すばやく かけます。ただし,かく 人の くせが でやすく,よみにくい 欠点が あり,あまり このまれません。漢字と かな文字の「つづけ字」が 敬遠 されるのと おなじです。手がきの 文字で 情報を つたえる ときに もっとも 大切な ことは よみやすさ です。かきやすさと うつくしさは あとまわしに します。この 理由から,他人に よんで もらう 文章は 筆記体で かかないのが 基本です最近は 外国人でも 筆記体を つかう ことが すくなく なって います。昔は はやく かきたい ときに 筆記体を つかったのですが,いまは 機械を つかえば はやく かけるからです。また,昔は ペンで 文字を かいて いた ことも 筆記体が つかわれた 理由だと いわれて います。ペン先を 紙から できるだけ はなさない ほうが インクが きれいに でて かきやすいからです。いまは ペンを つかう ことも ありませんから,この 意味でも 筆記体を つかう 理由が なく なって います。


筆記体

自分用の メモ・日記,友人あての 手紙 などは かきやすさを 優先 して 筆記体で かいても かまいません。本人確認の 署名 などで わざと 筆跡の くせを だしたい ときに 筆記体で かく 手も あります外国で 署名を する ときは 漢字や かな文字で かく ほうが まね されにくくて 安全だという かんがえも あります。


「正しいローマ字読本」(彦根高商ローマ字会)

筆記体で かいた 日記です。ふるい 本から ぬきだした ものですから,ローマ字の 方式が 日本式で 普通名詞の 先頭が 大文字に なって います。


下の テキスト ボックスに ラテン文字で 何か かきこんで みて ください。筆記体風の 書体で 表示 します。

装飾的な 書体

うつくしさや おもしろさが もとめられる ばあいも あります。グリーティング カードや 広告 などの 文字が そうです。これらには 装飾的な 書体を つかう ことが あります。


装飾的な 書体


下の テキスト ボックスに ラテン文字で 何か かきこんで みて ください。装飾的な 書体で 表示 します。

書体の 比較

下に 活字体,ブロック体(マヌスクリプト体),筆記体の 比較表を しめします。


ローマ字の字体表
(新しいローマ字 学習指導の研究)

ローマン体と イタリック体

ふつうの ラテン文字は 垂直に たった 形を して います。これを ローマン体(または 立体)と いいます。これとは ちがって,すこし 右に かたむいた 形を した 字体も あります。これは イタリック体(または 斜体)と いいます。

Rômazi Aiueo(ローマン体)
Rômazi Aiueo(イタリック体)

ローマ字文は ローマン体で かきますが,外国語の 語句を ふくむ ときは,そこ だけ イタリック体で かく ことが あります。外国語の 部分を みわけやすく する ためです。

Neko wa Supeingo de gato desu.
(猫は スペイン語で gato です。)

かきかた

かく 方向

漢字仮名交じり文は 縦にも 横にも かけますが,ローマ字文は 横に しか かけませんから,かならず 横がきです。左から 右に すすんで いく 左横がきに します。行は 上から 下へ,ページは 左から 右へ すすみます。本は 左とじに なります。

かき順(筆順)

ラテン文字の ブロック体に きまった かき順(筆順)は ありません。かきやすい ように かいて かまいません。学校で かき順を おしえる ことも ある ようですが,こういう やりかたも ありますよ,という 程度の ものと かんがえて ください。インターネットで 公開 されて いる 初級英語の 教材には すぐれた ものが たくさん ありますから,それも 参考に すると いいでしょう。

ただし,一般に 公開 されて いる かき順は 右ききの 人むけに かんがえられた もので,左ききの 人の 参考に なりません。左ききの 人むけの いい かき順を しって いる 人が いたら,この サイトに おしえて ください。

この サイトにも「ラテン文字の かき順」が あります。かき順を アニメーションで 表示 します。お手本の ひとつに して ください。


見本

かく 練習

ラテン文字が はじめての 人や かきなれて いない 人は 英語用の 罫線つきノートを つかって 練習 すると いいでしょう。罫線ページ(PDFファイル)を 提供 して いますので,印刷 して おつかい くださいPDFファイルの 表示と 印刷には Adobe Acrobat Readerを インストール する 必要が あります。ブラウザーに その 機能が くみこまれて いる ことも あります。

罫線ページ
罫線ページの 見本


文字を かく 練習では つぎの 点を 目標に すると いいでしょう。

  1. ブロック体を おぼえて 形を まちがえない ように かく。
  2. 文字の おおきさや 間隔に 気を つけて 単語を かく。
  3. 罫線を 1本 だけに して かく。
  4. 筆記体も かいて みる。

すばやく かくとか うつくしく かくとか,そういう ことを かんがえる 必要は ありません。なお,文字を 丁寧に かくのは よい こころがけですが,文字に 人柄が あらわれる などの オカルトじみた かんがえは しりぞけて ください日常の くらしで 文字を すばやく かかなければ ならない 場面 なんて ほとんど ないでしょう。丁寧に かくのも あくまで こころがけで あって 義務では ありません(集中力を 持続 させるのが 苦手な 人も います)。こころがけというのも よみ手が よみやすい ように こころがけるという 意味です。単純作業でも こころを こめて やるのが すばらしいという 精神論では ないので,気を つけて ください。また,文字の うつくしさに 基準は ありません。毛筆の 文字が もっとも うつくしい などと 書道家が いばって いる ことも ありますが,これは ききながして ください。筆跡で 性格 などが わかるという「筆跡診断」は ニセ科学です。「悪筆矯正」は 劣等感・羞恥心を うえつけて 商品を うりつける コンプレックス商法です。

こどもに 文字の 練習を させる とき,たかすぎる 目標を さだめると こどもに 劣等感を うえつけて しまうかも しれません。他人が まちがいなく よめる 文字が かける ように なったら,それで 十分です。左ききの 人は お手本の とおりに かくのが むつかしいかも しれません。文字を かくという 身体運動 そのものが あまり 得意で ない 人も います。教師や 保護者は この 点も 心に とめて おいて ください。

長音符号つき文字

印が ついた 特殊な 文字

ローマ字では のばす 音を かく ときに 印が ついた 特殊な 文字を つかいます。この サイトは この 印を「長音符号」,この 印が ついた 文字を「長音符号つき文字」と よんで います。

Â, Î, Û, Ê, Ô, â, î, û, ê, ô
Ā, Ī, Ū, Ē, Ō, ā, ī, ū, ē, ō

パソコン などで「長音符号つき文字」を 入力 する やりかたは「長音符号つき文字」で 説明 して います。

代用表記

長音符号つき文字は パソコン などで 入力 しにくいのが 欠点です。また,パスポートの 名前の ように 長音符号つき文字が つかえない ことも あります。そこで,長音符号つき文字を つかわずに 長音を かく まにあわせの かきかたが かんがえられて います。

Yûko(優子) → Yuuko, Yu^ko
Tarô(太郎) → Taroo, Taro^

くわしくは「代用表記」で 説明 して います。

【よみもの】 切手の 国名

日本が 発行 した 切手には NIPPON と かいて あります。切手には それを 発行 した 国・地域の 名前を かく きまりが あるからです。下の 図は ヨーロッパの 切手です。

ヨーロッパの 切手
ヨーロッパの 切手

文字は ラテン文字と きまって いますが,言語は きまって いません万国郵便条約に よると「ローマ文字で記載された発行郵政庁の属する加盟国又は地域の名称」と なって いるのですが,この「ローマ文字で(英: in roman letters)」の 解釈が 国に よって ちがう ようです。ヨーロッパの 国は それぞれの 言語で かいて います。日本も 日本語で かいて います。しかし,中国や 韓国は 英語で かいて います。中国・韓国は 国名の 正式な ローマ字表記が きまって いなかったのかも しれません。なお,昔は 英語が いま ほど 圧倒的な 力を もって おらず,フランス語の ほうが つよい 言語でしたから,国際郵便の あて先は フランス語で かいても いい ことに なって います。あて先の「日本」が JAPON と かいて あるのを みた ことが ある 人も いるでしょう。

「日本」の よみかたを〈ニッポン〉に きめたのは 昔の 郵政省です。NIHON は 外国人に ただしい 発音で よまれにくい つづりなので NIPPON に したと いわれて いますじっさいの 会話で〈ニッポン〉と〈ニホン〉の どちらが よく つかわれて いるかと いえば,圧倒的に〈ニホン〉です。〈ニッポン〉は 3% くらいしか つかわれて いない そうです。そのため,切手に〈ニッポン〉と かかれる ように なったのを しって,絶対に〈ニホン〉だと いいはって おおさわぎ する 人も いました。いまは「日本」が〈ニッポン〉か〈ニホン〉かを きっちり きめない ことに きまって いますが,これでは 外国人が こまるのでは ないでしょうか。日本人は 世の中の ルールを 合理的に 設計 して 民主的に 決定 するという ことが 苦手なのかも しれません。