「ローマ字のつづり方」:1954
RÔMAZI NO TUZURIKATA:1954

「ローマ字のつづり方」:1954 の 中身
Rômazi no tuzurikata:1954 no nakami

昭和29年内閣訓令第1号
Syw. 29 n. naikaku kunrei dai 1-gô

各官庁

ローマ字のつづり方の実施について

国語を書き表わす場合に用いるローマ字のつづり方については、昭和十二年九月二十一日内閣訓令第三号をもつてその統一を図り、漸次これが実行を期したのであるが、その後、再びいくつかの方式が並び行われるようになり、官庁等の事務処理、一般社会生活、また教育・学術のうえにおいて、多くの不便があつた。これを統一し、単一化することは、事務能率を高め、教育の効果をあげ、学術の進歩を図るうえに資するところが少なくないと信ずる。

よつて政府は、今回国語審議会の建議の趣旨を採択して、よりどころとすべきローマ字のつづり方を、本日、内閣告示第一号をもつて告示した。今後、各官庁において、ローマ字で国語を書き表わす場合には、このつづり方によるとともに、広く各方面に、この使用を勧めて、その制定の趣旨が徹底するように努めることを希望する。

なお、昭和十二年九月二十一日内閣訓令第三号は、廃止する。

昭和二十九年十二月九日

内閣総理大臣 吉田 茂

昭和29年内閣告示第1号
Syw. 29 n. naikaku kokuzi dai 1-gô

国語を書き表わす場合に用いるローマ字のつづり方を次のように定める。

昭和二十九年十二月九日

内閣総理大臣 吉田 茂

ローマ字のつづり方

まえがき

1 一般に国語を書き表わす場合は、第1表に掲げたつづり方によるものとする。

2 国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り、第2表に掲げたつづり方によつてもさしつかえない。

3 前二項のいずれの場合においても、おおむねそえがきを適用する。

「ローマ字のつづり方」:1954の第1表と第2表

そえがき

前表に定めたもののほか、おおむね次の各項による。

1 はねる音「ン」はすべてnと書く。

2 はねる音を表わすnと次にくる母音字またはyとを切り離す必要がある場合には、nの次に'を入れる。

3 つまる音は、最初の子音字を重ねて表わす。

4 長音は母音字の上に^をつけて表わす。なお、大文字の場合は母音字を並べてもよい。

5 特殊音の書き表わし方は自由とする。

6 文の書きはじめ、および固有名詞は語頭を大文字で書く。なお、固有名詞以外の名詞の語頭を大文字で書いてもよい。

「ローマ字のつづり方」:1954 の 解説
Rômazi no tuzurikata:1954 no kaisetu

あらまし
Aramasi

むかしから ローマ字には いろいろな 方式が あり,それらの 中で ヘボン式(標準式)と 日本式が 対立 して 混乱 して いました.そこで,ローマ字の かきかたを 統一 する ことに なり,1937(昭和12)年に 内閣訓令第3号「国語ノローマ字綴方統一ノ件」で ローマ字の 公式ルールが つくられました.ここで さだめられたのが 訓令式です1930(昭和5)年から はじまった はなしあいは 6年ちかくに わたりましたが,最終的には つぎの 結論に まとまりました:(1) ハ行の「ふ」はhuとすること。(2) 拗音は子音+y+母音の連結である。(3) サ行、タ行、ナ行に就いて、日本式の通りの表はし方がいけないと、理論的にいふことが出来ない。(4) 標準式はサ行、タ行、ナ行、カ行等の表はし方に於いて、態度一貫せず。(5) 撥ねる音はすべてnを以て表はす。(6) 日本式綴方は、理論的に一貫せるものと認む。

しかし,訓令式は 基本的に 日本式の かんがえかたを うけついだ 方式だったので,これに 反発 して ヘボン式を つかいつづける 人も いました.戦後は GHQが だした 命令の せいで 道路や 駅の 表示が ヘボン式で かかれる ように なりました.外務省は 訓令に したがわず パスポートの 名前を ヘボン式に して いました.学校では 本格的な ローマ字教育が はじまりましたが,内容は おなじで ローマ字の 方式 だけが ちがう 教科書が つかわれて いました.

それで,ふたたび ローマ字の かきかたに ついて はなしあう ことに なり,1954年(昭和29)年に あたらしい 公式ルールが できました.それが 内閣告示第1号「ローマ字のつづり方」で,これを 内閣総理大臣が 各官庁に 命令 した ものが 内閣訓令第1号「ローマ字のつづり方の実施について」です.ここでは この 1954年版「ローマ字のつづり方」を 旧ルールと よぶ ことに します.


旧ルールは 行政機関に たいする 命令ですから,一般の 会社や 個人が これに したがう 義務は なく,会社名や 個人名で むかしから つかって いる ふるい ローマ字を かきかえる 必要は ありません.SHIMADZU(島津製作所)や MEIDI-YA(明治屋)が この 例です.外国語風の つづりで イメージづくりを する 商品名や,外国人の 名前に ちなんで つけられた 人名 など,日本語の ローマ字表記と いえない ものも この 公式ルールに あわせる 必要は ありません.


旧ルールは 訓令式を 本則と しつつ ヘボン式を 許容 する ルールなので,折衷だと いわれる ことが あります.1937(昭和12)年に 訓令式を つくった あとも ヘボン式が つかわれて いたので,ルールを 現実に あわせて ヘボン式を みとめる ことに したのだと 一般には かんがえられて いるからです.

ヘボン式日本式の 折衷が 訓令式だと いわれる ことも ありますが,これは まちがいです.訓令式には ヘボン式の かんがえかたも すこし だけ はいって いますが,基本的に 訓令式日本式の かんがえかたを うけついだ 方式で,かんたんに いえば 日本式を あたらしく したのが 訓令式です.

構成
Kôsei

旧ルールは「まえがき」「第1表」「第2表」「そえがき」と いう 構成です.「まえがき」は 目的 などの 説明です.「第1表」と「第2表」は いわゆる「ローマ字表」の 部分です.「第1表」が 本則の 訓令式で,「第2表」が 許容の ヘボン式日本式です.「そえがき」は「ローマ字表」以外の きまりの 説明です.

まえがき
Maegaki

第1項と 第2項で,通常は「第1表」を つかい,特殊な 事情が ある ばあいには「第2表」を つかっても いいと いって います.つまり,通常は 訓令式を つかい,特別な ばあいに ヘボン式日本式を つかう 例外を みとめると いうのが 旧ルールの 骨ぐみです.

第2項の「国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情」と いうのは 特殊な 時代背景を いって います.占領期に GHQが だした 命令の せいで,当時は ヘボン式で かかれた 掲示物 などが たくさん ありました.これらを 変更 するには 時間が かかります.人名・会社名 などは ヘボン式日本式で きめた つづりが あり,変更 しにくい ばあいも あるでしょう.それで,これらは 許容 して 違反に ならない ように して います.

「第1表」「第2表」
Dai 1-pyô, dai 2-hyô

ふたつの 表は いわゆる「ローマ字表」に あたる 部分ですが,「統一」「単一化」と うたいながら 3種類の 方式を ふくんで います:「第1表」の 訓令式,「第2表」前半の ヘボン式,「第2表」後半の 日本式wi, we を のぞく)です「第2表」の はじめの 5行が ヘボン式で その あとが 日本式です.こまかい ことを いえば,「第2表」も 訓令・告示の 一部ですから,これを「訓令式」と よぶ かんがえが なりたちます.ローマ字の 専門家は 旧ルールに かかれて いる ふたつの 表を まとめて「訓令式」または「訓令式新表」と いい,「第1表」と「第2表」を「訓令式(新表)第1表」「訓令式(新表)第2表」と よんで 区別 する ことが ありました.また,訓令に さからって ヘボン式を 採用 して いる 地方自治体が「訓令に したがって」などの いいまわしで 一般人を だます ような 説明を して いる ことも よく ありました.

表の かきかたは いいかげんです.「第1表」は 五十音図の 形に あわせて あるので 意味が わかります.しかし,「第2表」は ヘボン式日本式を しって いる 人が みないと 意味が わかりません.

そえがき
Soegaki

第1項と 第2項は 撥音(ん),第3項は 促音(っ),第4項は 長音(ー)の かきかたを 説明 して います.第4項 後段は Ôsaka大阪)の Ô が つかえない ときは Oosaka と かいても いい ことを いって います.ただし,この やりかたが できるのは 母音字が 大文字の ばあい だけです.Tôkyô東京)を Tookyoo と かく ことは いまも おこなわれて いますし 当時も おこなわれて いましたが,旧ルールは これを みとめて いません.

第5項の 特殊音と いうのは 外来語 などで つかわれる【ティ】【ファ】【チェ】などの 音声です.当時,おおよその かきかたは きまって いましたが,旧ルールは かきかたを さだめず,自由に かいて いい ことに して います.

第6項 前段は 文と 固有名詞の 先頭を 大文字に する ことを 説明 して います.第6項 後段では 普通名詞の 先頭を 大文字に しても いいと いって います.むかしは 普通名詞の 先頭を 大文字で かく ことが ありました.とくに 日本式を つかう ばあいは それが ふつうでした.戦後は 日本式を つかう ことも すくなく なって,普通名詞の 先頭は 小文字で かく ことが おおく なって いました.ここでは ふるい かきかたも みとめる ことに して います.

「ローマ字のつづり方」:1954 の 問題
Rômazi no tuzurikata:1954 no mondai

ヘボン式の 合法化
Hebonsiki no gôhôka

旧ルールは 不自然な ルールです.ヘボン式日本式の 対立を 解消 する ために 訓令式を つくったのに,ヘボン式日本式が いきかえって います.とくに きわだって いるのは,学術的に 否定 されて 採用 しないと きめた ヘボン式が 公式ルールに かきくわえられた ことで,これは きわめて 不自然です.そんな ことを したら,事実上 公式ルールが なかった 時代に 逆もどりで,公式ルールを 骨ぬきに して いる ような ものです.

「第1表」「第2表」の かきかたも いいかげんで,ヘボン式は「ローマ字表」以外の きまりが まったく 説明 されて いません.複数の 方式を ごちゃまぜに する「ちゃんぽん式」を 禁止 する きまり すら かかれて いません.

何より おかしいのは ルールの 運用です.旧ルールが 訓令式を 本則と さだめて いるにも かかわらず,ほとんどの 分野が ヘボン式を 採用 して いました.

もし 訓令式を 徹底 する つもりなら,1937(昭和12)年の 公式ルールを あらためる 必要は ありませんでした.特定の 分野(たとえば パスポートの 人名)で ヘボン式を つかえる ように したいと いうので あれば,そういう きまりを つけたす 変更で じゅうぶんだった はずです.ところが,旧ルールは あらゆる 分野で ヘボン式が つかえる ように なって おり,官僚が ヘボン式を 全面的に 合法化 しようと した うたがいが あります.


旧ルールの 中身を つくったのは 当時の 国語審議会ですが,その 原案(建議)は 基本的に 訓令式で 統一 する ルールでした.具体的には,「国語教育」「公文書」「地名」は 訓令式で 統一 して,それ 以外の 分野に かぎって 例外を みとめると いう ものでした.

「第2表」を つけくわえたのは,当時 おこなわれて いた ヘボン式日本式が よめないと こまるから,学校で その よみかたを おしえる よう もとめて いたからです.下の 引用は 原案(建議)の まえがきです.

 国語のローマ字つづり方として広く行われている方式には,それぞれに根拠,特色および歴史があり,いずれのつづり方もにわかにその使用を無視することはできない。

 しかしながら,国語教育のうえや公式の文書,地名などに用いられる場合には,おのずから一定のよりどころがなければならない。この「ローマ字つづり方」の第1表は,すなわちそのよりどころの役をなすものである。

 ただし,第2表によるつづり方も現実には通用しているのであるから,その読み方もまた教育の適当な時期において習得されなければならない。

 なお,そえがきは,書き表わし方のうちのおもなきまりをあげたものである。

国語審議会「ローマ字つづり方の単一化について(建議)」

ところが,旧ルールが できあがった とき,この まえがきは まったく ちがう 内容に おきかわって いました.「国語審議会の建議の趣旨を採択して」と いいながら,もっとも だいじな 部分を かきかえて いたのです原案(建議)の 段階で,「第2表」は ヘボン式日本式の 定義 する ものでは ありませんでした.ヘボン式日本式は それらの かきかたを すでに しって いる 人が それぞれの 流儀で かいて いて,旧ルールは 条件つきで それらを 許容 するのですから,これらの かきかたを 定義 する 必要は ありませんでした.「第2表」が ヘボン式日本式を しって いる 人に しか 意味が わからない 不親切な 形で かかれて いるのも,「ローマ字表」以外の きまりが まったく 説明 されて いないのも,「ちゃんぽん式」を 禁止 して いないのも,これが 理由です.

こうして,あらゆる 分野で ヘボン式が つかえる ように なりました.ヘボン式で かかれて いる ものを 訓令式に かきかえず,そのままに して おく ことも ゆるされます.移行(猶予)期間が さだめられて いないので,「にわかに改めがたい」と いいはれば,いつまでも そのままに して おけるからです.


この 事実から,旧ルールを つくった 官僚に 訓令式を 徹底 する つもりが なかったのは あきらかで,あらゆる 分野で ヘボン式が つかえる ように,むりやり ルールを かえた ことが わかります.しかも,ヘボン式の かきかたを きちんと 定義 して いないので,いろいろな 流儀が ある ヘボン式を すべて みとめると いう,「統一」「単一化」が きいて あきれる ような ルールに なって います.

原案(建議)は 専門家が 5年 以上もの 時間を かけて はなしあいを かさねて かんがえぬいて だした 結論でした.それが ほぼ すべて ひっくりかえされた わけです.これは 政府が 意図的に やった ことです.占領の 時代が おわったら 公の 分野で つかわれる ローマ字は 訓令式に しなければ なりません.何かの 理由で それを きらった 政府が ヘボン式を 合法化 する ために「第2表」を ぬけ道に つかって ルールを ねじまげたのでは ないかと うたがわれて いますアメリカが 日本に 圧力を かけて ヘボン式を おしつけたのでは ないかと うたがう 人が いるかも しれませんが,それは ちがいます.GHQは 訓令式を 尊重 して いて,占領軍が つかう ところには ヘボン式,そのほかの 日本人が つかう ところには 訓令式と いう 方針を とって いました.原案(建議)を まとめる ために 専門家が 議論 して いた 期間の ほとんどは 占領下でしたが, 旧ルールが 告示 されたのは 日本が 主権を とりもどした あとでした.どちらかと いえば 原案(建議)の ほうが GHQの かんがえに 影響 されて いる うたがいが あり,旧ルールは 日本政府の かんがえを 反映 して いると かんがえられます.

旧ルールが できた あと,学校の「国語」で おしえられる ローマ字は 訓令式に 統一 されましたが,そのほかの 分野で つかわれる ローマ字は ほぼ すべて ヘボン式に なりました.このあと,ローマ字の かきかたに とどまらず,日本の 言語政策は 政治的な 力で ゆがめられて いくのですが,それに ついては「ローマ字の おとろえ」で 説明 して います.

ヘボン式の ごまかし
Hebonsiki no gomakasi

ヘボン式は 当時から いろいろな 流儀で かかれて いましたが,もっとも 一般的な ヘボン式は,b, m, p の 前に ある 撥音m に,ch の 前に ある 促音t に,撥音の うしろの くぎり記号を つなぎ(-)に,長音符号を 横棒(¯)に します.

ところが,この きまりは どこにも かかれて いません.これは いろいろな 流儀の ヘボン式を すべて 許容 しようと して,わざと 具体的な かきかたを かかず,ごまかして いるからです.ヘボン式を よみがえらせる ことが 第一の 目的で,ローマ字の つづりかたを 統一 する ことは どうでも よかったのでしょう.この ごまかしの せいで,ヘボン式の かきかたは どうにでも 解釈 できる ように なって います.

まえがきの 第3項で,「第1表」「第2表」の どちらを もちいる ばあいも そえがきを 適用 すると いって います.つまり,訓令式でも ヘボン式でも「ローマ字表」以外の きまりは おなじだと いう わけです.そうだと すれば,「第2表」の ヘボン式は,b, m, p の 前に ある 撥音n に,ch の 前に ある 促音c に,撥音の うしろの くぎり記号を きる印(')に,長音符号を 山形(^)に しないと いけません.

一般的な ヘボン式第2表の ヘボン式
電波dempadenpa
一致itchiicchi
原因gen-ingen'in
空港kūkōkûkô

一般的な ヘボン式の かきかたを しらない 人が 旧ルールを 文面どおりに 解釈 すれば そう なりますが,当時「電波」denpa と かく ことは ほぼ なかった はずで,「一致」icchi と かく ことも ありませんでした.つまり,こんな ヘボン式は 実在 しませんでした.もちろん,パスポートや 道路標識 などの ヘボン式は この 解釈と ちがう かきかたです.こう かんがえると,パスポートや 道路標識 などの ローマ字は 旧ルールに 違反 して いる ことに なります.

しかし,官僚は ちがう 解釈を して います.パスポートや 道路標識 などの ローマ字は かきかたが ばらばらですが,「ローマ字表」は「第2表」の ヘボン式に したがって おり,「ローマ字表」以外の きまりは 訓令式おおむね おなじです.したがって,パスポートや 道路標識 などの ローマ字は 旧ルールに のっとって います「おおむね」は「第2表」の ヘボン式に そえがきを 適用 する 意図で 原案(建議)にも かきこまれて いた ことばですが,じつは 1937(昭和12)年の 訓令の 段階から ありました.官僚の 作文では こういう ことが よく あります.このような テクニックを 俗に「霞が関文学」と いいます.


こうして,ローマ字を 統一 する 目的で つくられた 1937(昭和12)年の 公式ルールは,口先 だけの「統一」「単一化」を となえる 旧ルールで うわがき され,「ヘボン式」を 自称 する「えせヘボン式」「ヘボン式もどき」が いりみだれる 混乱と,訓令式や それを つかう 人を さげすむ 倒錯が あたりまえに なって しまいました.

「ローマ字のつづり方」:2025
RÔMAZI NO TUZURIKATA:2025

「ローマ字のつづり方」:2025 の 中身
Rômazi no tuzurikata:2025 no nakami

令和7年内閣訓訓令第1号
R7 n. naikaku kunrei dai 1-gô

内閣訓令第1号

各行政機関

「ローマ字のつづり方」の実施について

政府は、本日、内閣告示第四号をもって、「ローマ字のつづり方」を告示した。

今後、各行政機関においては、これを現代の国語を書き表すためのローマ字のつづり方のよりどころとするものとする。

なお、昭和29年内閣訓令第1号は廃止する。

令和7年12月22日

内閣総理大臣 高市 早苗

令和7年内閣訓告示第4号
R7 n. naikaku kokuzi dai 4-gô

内閣告示第四号

一般の社会生活において現代の国語を書き表すためのローマ字のつづり方のよりどころを、次のように定める。

なお、昭和二十九年内閣告示第一号は、廃止する。

令和七年十二月二十二日

内閣総理大臣 高市 早苗

ローマ字のつづり方

前 書 き

1  この「ローマ字のつづり方」は、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語をローマ字で書き表す場合のよりどころを示すものである。

2  このつづり方は、科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。

3  このつづり方は、過去の著作や文書におけるつづり方を否定するものではない。

4  このつづり方は、外来語にのみ用いられる音や国内の各地域に特有の音等については対象としていない。

5  このつづり方は、「本表」と「添え書き」から成る。「本表」には国語をローマ字で書き表す際に用いるつづり方を掲げた。また、「添え書き」には「本表」を使用する上で必要となる個別の事項を示した。

6  ローマ字のつづり方は、幾つかの方法で行われてきたものであり、「本表」に示すもの以外のつづり方にも意義や用途がある。参考のため、「(付)対照表」において、「本表」のつづり方とそれ以外のつづり方との対照を示した。

本 表

ローマ字のつづり方 本表

※ 〔 〕を付したつづりは、現代において、別の仮名に対応する音と同じ発音をするものとして扱われるため、このつづり方においては使い分けをしない。

添 え 書 き(本表を使用する上での個別の事項)

本表に定めたもののほか、おおむね次の各項による。

1  はつ音(はねる音)「ン」は、例に示すようにnと書く。

〔例〕  あんまん anman  乾杯 kanpai  銀座 Ginza  新聞 Shinbun

2  促音(つまる音)「ッ」は、例に示すように子音字を重ねて表す。子音字が2文字の場合は最初の字(shのs、chのc等)を重ねる。

〔例〕  雑誌 zasshi  鉄板 teppan  日直 nicchoku  薬局 yakkyoku

3  長音で発音される語は、例の(1)に示すように、母音字の上に符号(「¯」)を付けて表す(必要な場合には「^」を用いても差し支えない。)ほか、(2)に示すように、母音字を並べてもよい。母音字を並べて書くときには、現代仮名遣いと同様のつづり方を用いる。

   なお、(1)において〈 〉に入れて示したようなもの(イ列長音で発音される語、エ列長音で発音される語のうちエ列の仮名に「い」を添えて書くもの)については、(2)に掲げたつづりを用いるのが一般的である。

〔例〕

長音で発音される
語の例
(1)符号を付けて
表す場合
(2)母音字を並べて
書く場合
ア列母(かあ)さんkāsankaasan
まあmaa
イ列かわいい<kawaī>kawaii
しいたけ<shītake>shiitake
兄(にい)さん<nīsan>niisan
ウ列十五夜(じゅうごや)jūgoyajuugoya
風流(ふうりゅう)fūryūfuuryuu
エ列ええēee
姉(ねえ)さんnēsanneesan
やじろべえyajirobēyajirobee
庭園(ていえん)<tēen>teien
時計台(とけいだい)<tokēdai>tokeidai
平成(へいせい)<Hēsē>Heisei
オ列おおかみōkamiookami
ほおずきhōzukihoozuki
東北(とうほく)TōhokuTouhoku
房総(ぼうそう)BōsōBousou
大道具(おおどうぐ)ōdōguoodougu
凍り豆腐(こおりどうふ)kōridōfukooridoufu

4  撥音を表すnと次の母音字又はyとを切り離したり、母音字が連続するときに長音でないことを示したりする必要がある場合など、音の切れ目を示すためには、例に示すように「'」を用いる。

〔例〕  単位 tan'i  船員 sen'in
 園遊会 en'yūkai/en'yuukai  問屋 ton'ya
 大叔父 oo'oji (ōoji)  小唄 ko'uta

5  複数の語等によって構成される語を分けて書く場合には、例に示すように「-」を用いることができる。

〔例〕  九谷焼 Kutani-yaki  田中さん Tanaka-san
 七五三 shichi-go-san

6  固有名詞は、語頭を大文字で書く。

7  ローマ字によって文を書くときには、次に示すような点に留意する。

  • 書き始めの語頭は大文字で書く。
  • 区切り符号には、「,」(コンマ)と「.」(ピリオド)を用いる。
  • 助詞の「は」「へ」「を」は、それぞれ「wa」「e」「o」と書く。

8  この「ローマ字のつづり方」は、現状に混乱を来すことのないよう、各分野で用いることのある表記について直ちに変更を求めるものではない。各分野で用いることのある表記とは、外国語の表記に準じ国際社会で広く用いられるものなど、例に示すようなつづりを指す。ただし、それぞれにおいて改めて表記の在り方を検討するような場合には、従来の慣行を踏まえつつ、「ローマ字のつづり方」を参考として適切に対応することが望ましい。

〔例〕

各分野で用いること
のある表記
「ローマ字のつづり方」
による表記
judo(柔道)jūdō/juudou
Tokyo(東京)Tōkyō/Toukyou
Ohtawara(大田原)Ōtawara/Ootawara
Shimbashi(新橋)Shinbashi
ramma(欄間)ranma
tempura(天ぷら)tenpura
matcha(抹茶)maccha

9  個人の姓名や団体名等を書き表す際には、「ローマ字のつづり方」を参考としつつ、当事者の意思を尊重するよう配慮するものとする。

(付) 対 照 表

凡 例

1  この対照表は、「本表」が示すつづり方と、それ以外のつづり方との関係を示すために参考として掲げるものである。

2  この表では、「本表」が示すつづりと、昭和29年内閣告示第1号の第1表の一部と第2表に示されていたつづりを並べ、対照している。「本表」にないつづりには下線を付した。

3  下線を付したつづりは、国語の五十音を規則的に示すものである。このうち、右欄(昭和29年内閣告示第2表に示されていたつづり方)のものは、仮名「ぢ」「づ」「を」等に対応しており、個人名や団体名などの固有名詞に用いられる場合がある。

4  〔 〕を付したつづりは、「本表」で「現代において、別の仮名に対応する音と同じ発音をするものとして扱われるため、このつづり方においては使い分けをしない」とされているものである。

5  表の最後に、「ka」と「kwa」、「ga」と「gwa」を対照しているが、「kwa」「gwa」は、歴史的仮名遣い「くわ」「ぐわ」と対応する場合にのみ用いられたものである。現代仮名遣いにおいて、「くわ」「ぐわ」は、「か」「が」と書き、使い分けをしない。

対 照 表

ローマ字のつづり方 対照表

「ローマ字のつづり方」:2025 の 解説
Rômazi no tuzurikata:2025 no kaisetu

あらまし
Aramasi

旧ルール(1954年版「ローマ字のつづり方」)が できた あと,その 本則が 訓令式で あるにも かかわらず,公的な 分野で つかわれる ローマ字の ほとんどは ヘボン式に なりました.政府が ヘボン式を ごりおしで つかって きたからです.こうして,本則で ない ヘボン式が ほとんどの 分野で つかわれる 状況が 何十年も つづいて いました.

2024年,文部科学大臣の 諮問「これからの時代におけるローマ字使用の在り方について」を うけて,「ローマ字のつづり方」の 改定を 念頭に おいて 検討を すすめて いた 文化審議会国語分科会は「ローマ字小委員会」を たちあげて 集中的な 検討を はじめました.そして,2025年に 答申「改定ローマ字のつづり方」が まとまり,「ローマ字のつづり方」は 改定 されました.これに より,ヘボン式が 正式に 格あげ され,訓令式日本式は 廃止 されました.ここでは この 2025年版「ローマ字のつづり方」を 新ルールと よぶ ことに します新ルールの 位置づけは 旧ルールから かわり,規範の 色あいを うすめた「よりどころ」に なりました.旧ルールでも「よりどころ」と いう ことばが つかわれて いますが,新ルールは 強制・制限 しない ことを ふしぎな ほど 強調 して います.この 意味で,「ルール」と よぶのは すこし おかしいかも しれません.


こうして ヘボン式は 正式に なりました.しかし,ヘボン式は 日本語を かくのに ふさわしく ないと いう 致命的な 欠点を もって おり,学術的には とっくの むかしに 否定 されて いる 非科学的な 方式です.もともと 英語の はなし手の ために つくられた ローマ字なので,これを 日本の 公的な 分野が つかう ことには 国際的な 問題も あります.ヘボン式を 正式と する ことは 完全に まちがった 国語施策です.

改定の 手つづきも ひどい もので,専門家の 意見を 無視 して 強引に すすめられました.議論は 形 だけで,おおよその 結論は はじめから きまって いた ようです.そもそも 諮問の 文章に それが すけて みえます.学術的な 検討が まったく おこなわれなかったので,あたらしく つくられた ヘボン式には まずい ところが たくさん あります.

今回の 改定は 公式ルールを 実態に あわせて 変更 すると いう,まるで 万引きを 合法化 する ような 方向性で おこなわれました.しかも,ルールの 位置づけを かえて,強制力を みずから よわめて しまいました.「ローマ字のつづり方」は 参考資料 みたいな ものに なり,骨ぬきに されたと いえます.

構成
Kôsei

新ルールは「前書き」「本表」「添え書き」「対照表」で 構成 されて います.「前書き」は 目的,適用分野,位置づけ などの 説明です.「本表」は いわゆる「ローマ字表」の 部分です.「添え書き」は「ローマ字表」以外の きまりの 説明です.対照表は 旧ルールと 新ルールの 対照を まとめた 表です.

前書き
Maegaki

第1項から 第4項は 新ルールが 公の 分野で 現代の 日本語を ローマ字で かく ときの よりどころを しめす もので ある ことを いって います.したがって,この ルールは 古文の 表記や 学術・芸術の 分野 そして 私的な 分野で つかわれる ローマ字には 適用 されません.公の 分野に たいしても 強制力は もって いません.また,外来語や 方言に ふくまれる 特殊な 音声の かきかたは さだめて いません.

第5項は 全体の 構成の 説明です.第6項は「本表」の かきかたと これまで おこなわれて きた かきかたとの 対照表を つけくわえた ことを いって います.

本表
Honpyô

いわゆる「ローマ字表」の 部分です.旧ルールには 表が ふたつ ありましたが,新ルールでは それが ひとつに なりました.中身は ヘボン式 そのものです.旧ルールは 訓令式が 本則で,特別な 事情が あれば ヘボン式日本式も 許容 すると いう ルールでしたが,新ルールは これを あらため,ヘボン式を 本則に 格あげ して,訓令式日本式を 削除 しました.これは 訓令式日本式が きえて なく なったと いう 意味では なく,公的な 分野では これらを つかわない ことに したと いう 意味です.

音声を しめす カタカナ表記が つけたされて わかりやすく なりました.撥音(ん)を 表の 中に くみこんで いるのも めだつ ところです.

添え書き
Soegaki

第1項は 撥音(ん)の かきかたを 説明 して います.新ルールは b, m, p の 前の 撥音を n と かきます.これは 一般人が よく やる まちがいを 採用 した ものです.

旧ルール実態新ルール
進歩sinposhimpo
*shinpo
shinpo

※ 旧ルールは 訓令式*印 は 一般人が よく やる まちがいです.


第2項は 促音(っ)の かきかたを 説明 して います.新ルールは ch の 前の 促音を c と かきます.これは 一般人が よく やる まちがいを 採用 した ものです.

旧ルール実態新ルール
一致ittiitchi
*icchi
icchi

※ 旧ルールは 訓令式*印 は 一般人が よく やる まちがいです.


第3項は 長音(ー)の かきかたを 説明 して います.新ルールは 長音ā/aa, ī/ii, ū/uu, ē/ee/ei, ō/oo/ou と かきます.変更点は つぎの みっつです:(1) 仮名式の かきかた(aa, ii, uu, ee/ei, oo/ou)を つくった ところ,(2) 長音符号を 山形(^)から 横棒(¯)に かえた ところ,(3) エ段の 長音(えい型)を ē と かける ように した ところ.(1)は 一般人が よく やる まちがいを 採用 した ものです.(2)は JRが つかって いる 長音符号を 採用 した ものです.(3)は 規則的に する 目的で つけくわえられた ものです.

旧ルール実態新ルール
お母さんokâsanokasan
okāsan
*okaasan
okāsan
okaasan
お兄さんonîsan
oniisan
oniisan<onīsan>
oniisan
空気kûkikuki
kūki
*kuuki
kūki
kuuki
お姉さんonêsanonesan
onēsan
*oneesan
onēsan
oneesan
平和heiwaheiwa<hêwa>
heiwa
大雨ôameoame
ōame
*ooame
ōame
ooame
お父さんotôsanotosan
otōsan
*otousan
otōsan
otousan

※ 旧ルールは 訓令式*印 は 一般人が よく やる まちがいです.

イ段は ii が,エ段(えい型)は ei が 一般的で あると いって います.また,長音符号は 山形(^)でも さしつかえないと して います.


第4項は 発音の きれめを しめす 必要が ある とき などの かきかたを 説明 して います.新ルールは この ような ばあいに きる印(')を 挿入 します.(1) 「撥音を表すnと次の母音字又はyとを切り離」すと いうのは tan'i(単位)などの かきかた,(2) 「母音字が連続するときに長音でないことを示」すと いうのは ba'ai(場合)fuu'u(風雨)などの かきかたを いって います.(1)は 旧ルールを そのまま ひきつぎました.(2)は 仮名式の かきかたを する とき 必要に なるので つけくわえられました.

旧ルール実態新ルール
単位tan'itani
tan-i
*tanni
tan'i
場合baaibaaiba'ai
黄色kiirokiiroki'iro
武運buunbuunbu'un
影絵kageekageekage'e
音色neironeirone'iro
黒帯kuroobikuroobikuro'obi
小唄koutakoutako'uta

※ 旧ルールは 訓令式*印 は 一般人が よく やる まちがいです.


第5項は つなぎ(-)で つなぐ 複合語 などの かきかたを 説明 して います.むかしから おこなわれて いる かきかたを ルール化 した ものです.


第6項は 固有名詞の 先頭を 大文字で かく ことを 説明 して います.ここは 旧ルールを そのまま ひきつぎました.旧ルールは 普通名詞の 先頭を 大文字で かく ことを みとめて いましたが,新ルールでは それを 許容 するとも 禁止 するとも いって いません.


第7項は 文を かく ときの 留意点と して,(1) 文頭は 大文字で かく こと,(2) 記号の くぎり(,)と とめの印(.)が つかえる こと,(3) 助詞の「は」「へ」「を」は 発音に したがって wa, e, o と かく ことを 説明 して います.(1)は 旧ルールを そのまま ひきつぎました.(2)と (3)は むかしから おこなわれて いる かきかたを ルール化 した ものです.


第8項は 新ルールが 各分野で もちいられて いる judo(柔道)matcha(抹茶)Tokyo(東京)Shimbashi(新橋)などに 変更を せまる もので ない ことを いって います.


第9項は 個人や 団体の 名前は 当事者の 意思を 尊重 する ことが たいせつなので,新ルールは 参考の ために つかって ほしいと いって います.

対照表
Taisyôhyô

対照表に かんして 解説 する ことは とくに ありません.

「ローマ字のつづり方」:2025 の 問題
Rômazi no tuzurikata:2025 no mondai

あたらしい ヘボン式
Atarasii Hebonsiki

新ルールと そこで さだめられた あたらしい ヘボン式には まずい ところが たくさん あります.ここで それを 指摘 して おきます.文中の「Q&A」は「「ローマ字のつづり方」(令和7年内閣告示第4号)に関するQ&A」の ことです.

(+) は 問題点では なく,できれば 今回の 改定で 新ルールに もりこんで ほしかった 発展的な 項目です.


まず,「前書き」.(1) ここの 問題は 新ルールの 位置づけを 規範の 色あいを うすめた「よりどころ」に した ことです.これは「有力な考え方として参照される性格のもの」と いう 意味です.「目安」よりは つよい 意味が ある らしいのですが,それでも 新ルールは 旧ルールが もって いた 強制力を ほとんど うしなっって,参考資料 みたいな ものに なりさがって しまいました.

ローマ字の おとろえ」の ところで,戦後の 国語改革が その後の 半世紀で 骨ぬきに されて きた 歴史を 説明 しましたが,「ローマ字のつづり方」の 改定は その 総しあげで あったとも かんがえられます.


つぎに「本表」.(1) もっとも おおきな 問題は ローマ字の 方式が ヘボン式で ある ことです.くわしくは「ヘボン式か 訓令式か」で 解説 して いますが,ヘボン式を 正式に しては いけません.「ローマ字小委員会」の 中には ヘボン式を 採用 したのでは ないと いいはって いる 人も います.新方式を うちたてたと いいたいのかも しれません.しかし,じっさいは ヘボン式の 亜流を 2種類 つくった だけです.

(2) 訓令式の つづりを 削除 して ヘボン式の つづり だけに した「ローマ字表」を 五十音図の 形に あわせて かく 意味は ありません.これでは ヘボン式の おかしな 部分を きわだたせる だけです.小学校の「国語」も これで いくのだと したら,こどもは 丸暗記 する しか ありません.英語の 知識が ない 小学生に つづりの 不規則な 部分を 説明 するのは むつかしく,この「ローマ字表」は 教師の 負担を ふやし,こどもの 理解度を さげるでしょう.これまでどおり 訓令式ヘボン式を あわせた「ローマ字表」に して,先に 訓令式を おしえる やりかたが いいと おもわれます訓令式の かわりに 日本式kwa, gwa, wi, we, wo を のぞく)に する 手も あります.四つ仮名の 部分が 規則的に なって,おぼえやすいと おもわれます.

(3) 撥音(ん)は 表に いれない ほうが いいでしょう.撥音(ん)促音(っ)長音(ー)は 五十音図に かかれる 音声(音素)とは 別に あつかうのが ふつうです.「Q&A」は わかりやすさの ためと いって いますが,小学生が この 表を みたら「ン」が あって「ッ」「ー」が ない ところが 変に みえて しまって,あまり わかりやすく ないと おもわれます.表は 線で くぎって あって,直音・拗音・撥音の きりわけが しめして あるのですが,この 意図が 理解 されるかも 疑問です.デザイン優先で ワ行を「ワ・◯・ヲ・◯・ン」の 形に した「ローマ字表」を はびこらせる おそれも あります.


「添え書き」の 第1項.(1) 撥音n で 統一 する かきかたは,日本語の 表記法と しては ただしいですが,ヘボン式で それを やると ヘボン式と しての 性能が 劣化 します.くわしくは「劣化ヘボン式」で 解説 して います.

撥音m は もともとの ヘボン式を はじめ「英語」の 教科書や パスポート・地図・駅名標 などで むかしから つかわれて おり,世の中に 定着 して います.もちろん,学校でも ヘボン式の きまりの ひとつと して おしえて います.これが 実態です.ところが,「ローマ字小委員会」は 一般人が よく やる まちがいを むりやり 実態と いいはって,これに あわせました「現行内閣告示と同じ」と いうのも かんちがいを まねく 説明で,新ルールは 旧ルールの ただしさを 再認識 して それを ひきついだのでは ありません.

(+) 記号が つかえない ばあいの 対処法と「んー」の かきかたを ルール化 して つけたしても よかったと おもわれます.


第2項.(1) 促音を つぎの 子音字で 統一 する かきかたは,日本語の 表記法と しては ただしいですが,ヘボン式で それを やると ヘボン式と しての 性能が 劣化 します.くわしくは「劣化ヘボン式」で 解説 して います.

促音tch は もともとの ヘボン式を はじめ「英語」の 教科書や パスポート・道路標識・地図・駅名標 などで むかしから つかわれて おり,世の中に 定着 して います.もちろん,学校でも ヘボン式の きまりの ひとつと して おしえて います.これが 実態です.ところが,「ローマ字小委員会」は 一般人が よく やる まちがいを むりやり 実態と いいはって,これに あわせました「現行内閣告示と同じ」と いうのも かんちがいを まねく 説明で,新ルールは 旧ルールの ただしさを 再認識 して それを ひきついだのでは ありません.

(+) 「あっ」「いっぬ」「うっう」「えっん」などの かきかたを ルール化 して つけたしても よかったと おもわれます.


第3項.長音(ー)の かきかたには 問題が たくさん あります.(1) まず,仮名式の かきかたを つくった ことです.ローマ字は 音声(音素)を ABC表記に する もので,ふりがなとは 無関係です.ましてや ふりがなに 依存 する ものでは ありません.99式が 提案 された とき 専門家から はげしい 反対意見が でたのは このためです.99式や 一般人が よく やる まちがいの「ワープロ式」を のぞけば,これまで ローマ字が 翻字と して かかれた ことは ありません.「かな翻字式」の ところで 説明 して いる ように,仮名式の かきかたには 無視 できない 欠点が いくつも あります.

長音符号を つかわずに 長音(ー)を かく やりかたには むかしから おこなわれて きた 代用表記「母音字かさね式」「^後置式」)が あります.これを ルール化 する べきでした.こちらの ほうが 性能も すぐれて います.「Q&A」は 仮名式の かきかたを つくった 理由を「長音を確実に示すための手当てを行うことがどうしても必要であると考えたから」と いって いますが,これは まったく 理由に なって いません長音符号つき文字が つかえない ばあいの 対処法で ある 代用表記には いくつか 方式が ありますが,もっとも つかいやすいのは 長音aa, ii, uu, ee, oo で かく 「母音字かさね式」です.これは 機械的に 文字を おきかえる 代書法で あり,ローマ字が 音声(音素)の 転写で ある ことに かわりは ありません.ところが,「ローマ字小委員会」では 母音字を ならべる 表記を ふりがなの 翻字だと 委員に かんちがい させる 誘導が おこなわれて いました.たとえば,長音の かきかたを まとめた 資料の 中で,イ段と エ段の 長音ii, ei と かく 方法に「現代仮名遣いに通ずるつづり方」と いう 説明を つけて いました.なぜ そこまで して 仮名式の かきかたを 正式に する 必要が あったのかは よく わかりません.マイナンバーカードに 名前の ローマ字表記を つけたす ことに なって,仮名式の かきかたが 途中から 既定路線に くみこまれたのでは ないかと いう 憶測も できます.パスポートを もって いる 人は そこから ローマ字の つづりを ひっぱって これますが,パスポートを もって いない 人は 住民票や 銀行口座 などの ふりがなから デフォルトの ローマ字表記を 生成 しないと いけないからです.(ふりがなの「たろう」から ローマ字の Tarō は 生成 できませんが,Tarou に 変換 する だけなら かんたんです.これに ついては,「なぜ ふりがなでは ダメなのか」を およみ ください.)

(2) しかも,長音を かく 2種類の 方式を まぜる ことを 禁止 して おらず,どちらを 優先 するとも きめて いません.長音符号つき文字が つかえない ばあいの 対処法が 仮名式の かきかただと かんがえる 人が おおいと おもわれますが,「Q&A」の 説明は ちがいます.「必要に応じて、あえて母音字を並べる書き方を選択することもできます。 」と いって います.しかも,イ段と エ段(えい型)の 長音では「一般的である」と いう 説明で 仮名式の かきかたを すすめて いますから,それ 以外の 長音でも 統一的に 仮名式の かきかたを えらぶ 人が でて くるでしょう.このままでは まちがいなく その 必要が ない ところでも 仮名式の かきかたを する 人が ふえて,表記の ゆれも ふえます.ローマ字は 性能が 劣化 して,つかいにくく なるでしょう.

(3) 長音符号を 山形(^)から 横棒(¯)に かえた ところも 問題です.横棒(¯)の 利点は 手がきの ときに かきやすい こと くらい しか なく,欠点は(それほど 重大では ない ものの)いくつも あります.くわしくは「山形か 横棒か」の ところで 解説 して います長音符号を つける ことに したのは ただしい 判断でしたが,符号の 形は そのままで よかった はずです.それなのに,「ローマ字小委員会」は JRの 駅名を 根拠に して 横棒(¯)を 採用 した うえで,山形(^)でも さしつかえないと いって います.逆に すれば よかったのでは ないでしょうか.

(4) カタカナ語で「ー」を つかって かかれる 長音を 仮名式の かきかたに する 方法が ぬけおちて います.そのため,kōra(甲羅)は koura とも かけますが,kōra(コーラ)は それが できません.これは 外来語を かんがえて いないからですが,外来語は 日本語の 一部です.交差点の 標識や バス停の 名前には「ガード下」「アパート前」なども ありそうです.

(5) 整列(ソート)の 問題も あります.ローマ字表記の 名前や 項目を ABC順に ならべる とき,長音の かきかたに ゆれが あっても 順番が かわらない ように,長音aa, ii, uu, ee, oo に おきかえて 順番を きめる ことに なって います.こう すると,otōsan, otoosan(お父さん)が どちらの かきかたでも おなじ 場所に なります.仮名式の かきかたでは otōsan, otousan(お父さん)の 場所が おなじに ならず,名簿や 索引が つかいにくく なります.

(6) 例に あげられて いる kawaī(かわいい)は 不適切です.「シイタケ」shītake, shiitake の どちらでも いいのですが,「かわいい」は かならず kawaii と かきます.これは 形容詞の 語幹「かわい」と 語尾「い」の あいだに きれめが あるからです.こう すると「かわい-かった」「かわい-く」「かわい-ければ」でも「かわい」の つづりが 一定に なります.ローマ字の かきかたは なるべく おなじ ことばが おなじ つづりに なる ように かんがえられて いますこれは おそらく うっかりミスですが,ローマ字文を かきなれて いない 人たちが 新ルールを 設計 して いた ことが よく わかります.

(+) 「アーーーーー」などの かきかたを ルール化 して つけたしても よかったと おもわれます.


第4項.(1) おなじ 母音字が つづく ばあい,旧ルールでは それが 長音で ない ことは あきらかなので,くぎりの 記号を いれる 必要は ありません.「Q&A」は くぎりの 記号を いれる かきかたに ついて「誤読を防ぐ必要があるときには、使用するのが望ましい」と いって いるのですが,新ルールには そう かかれて いません.そのため,仮名式で 長音を かく ときは すべて そう しないと いけないのか,かき手の 判断で よみにくそうな ところ だけ そう すれば いいのか,よく わかりません.長音符号つき文字を つかって かく ときに くぎりの 記号を いれる 必要は ないのですが,まちがって いれる 人も でて くるでしょう.

(2) 長音符号つき文字が つかえないから 仮名式の かきかたに して いる ときは,記号も つかえない(つかいにくい)ことが おおい はずで,記号を いれたくても いれられないかも しれません.たとえば,Ōoka大岡)と いう 名前で クレジットカードや メールアドレスを つくる とき,OO'OKAoo'oka に したくても できないかも しれません.この 問題には 「x後置式」代用表記で 対応 できます.


第5項.(1) 複合語を つなぎ(-)で つなぐ 場合,どういう 基準で つなぎ(-)を いれるかが わかりません.「Q&A」も むやみに いれない ようにと いって いますが,げんに 駅名標の ローマ字には つなぎ(-)だらけの 奇妙な つづりが ひろまって いますふたつの ことばが くっついて あたらしい ことばが できた とき,その つづりかたは 3とおり あります:(a) New York(ニューヨーク)の ように きりはなす 形,(b) Nouvelle-France(ヌーベルフランス)の ように つなぎ(-)を いれる 形,(c) Neuschwanstein(ノイシュヴァンシュタイン)の ように くっつける 形.ことばの つけはなしは 専門家の あいだでも 意見が わかれやすい ところで,じっさいの ローマ字文は こまかい ところで かき手に よる ちがいが あります.この サイトも「ひとつづきに かく ことば」「きりはなして かく ことば」の ところで ひとつの かんがえを 提案 して います.

(2) 例に あげられて いる Tanaka-san田中さん)は 不適切です.ふつうは Tanaka San です.くわしくは「敬称 など」の ところで 解説 して いますこれは おそらく うっかりミスですが,ローマ字文を かきなれて いない 人たちが 新ルールを 設計 して いた ことが よく わかります.


第6項.(1) 大文字・小文字の つかいわけは もう すこし こまかい ところまで きめて ルール化 する べきです.具体的には,人名で 途中に「の」が はいる ものや 先頭に「お」が つく もの(平清盛お菊さん),書籍・論文・小説・音楽・映画 などの 題名を ローマ字表記に する ときの タイトルケース などです.

地名駅名の ローマ字は 各分野が つづりかたを きめて いますが,人名題名は 一般人が つづりを かんがえる ことも あり,ローマ字の かきかたを よく しらない 一般人が まよって しまうのは まさに こういう ところです.


第7項.(1) ローマ字文を かくには,分かち書き特殊音記号(句読点)・ハイフネーション など,最低限の きまりが 必要です.しかし,新ルールには それらが ほとんど かかれて いません.新ルールの 説明で かける 文は「みなさん、こんにちは。」くらいです.これは ローマ字で 文章を かく ことを かんがえて いないからです.

「ローマ字小委員会」は ローマ字を 国語(日本語)を かく ものと 位置づけて おきながら,文を かく ことは まっ先に 除外 して,ローマ字は 名詞(固有名詞を ふくみ 外来語を のぞく)を かく ものと きめつけて います.そもそも 諮問が それを ほのめかして いるので,これは 既定路線だったと おもわれます.

しかし,これから 日本で くらす 外国人が ふえて いくのは 確実で,ローマ字文の 必要性は むしろ 旧ルールが つくられた 時代より たかいと いえます.そして,ローマ字文を かく ルールは ほぼ できあがって います.旧ルールが つくられた 時代にも ローマ字の 教科書が ありましたし,いまでは 現代的な ことばづかいを ふくむ 小説も 不自由なく かける ように なって います.その 中から 1ページか 2ページに おさまる くらいの 基本的な 部分を ぬきだして ルール化 する べきです.


第8項.(1) 各分野で つかわれる judo(柔道)matcha(抹茶)などの 普通名詞は 日本語から 外国語(ほとんどは 英語)に なった 借用語で あり,日本語の 単語では ありません.したがって ローマ字でも なく,新ルールが あつかう 範囲から はずれますフランス語の café(カフェ)は 英語に なって いますが,その つづりを café の ままに するのか,cafe に するのか,あるいは ほかの つづりに するのか,それは 英語の はなし手が きめる ことで あって,フランスが きめる ことでは ありません.

(2) しかし,Tokyo東京Shimbashi新橋)などの 固有名詞(とくに 公共性の たかい 地名駅名)は はなしが ちがいます.旧ルールの 原案(建議)の まえがきに かかれて いた ように,これらは つづりを 統一 する べきです.1937(昭和12)年に はじめて ローマ字の 公式ルールが つくられた きっかけも 万国地理学会議から 日本の 地名表記を 統一 して ほしいと いわれた ことでした.

本当は 各分野に たいして つづりの 統一を はたらきかけないと いけません.もちろん 外国に たいしても そう する べきです.Kievキエフ)が Kyivキーウ)に かわった ように,外国は それを やって います.

ところが,新ルールは 各分野に たいして「直ちに変更を求めるものではない」と いって います.そのうち 変更を もとめる 気も ない ことは 移行(猶予)期間を さだめて いない ことから あきらかです.じっさい「Q&A」は「将来のある時点で表記の統一を求めるといったものではありません。」と いって います.ルール改定の もくろみが,ローマ字の 統一・安定では なく,公式ルールの 本則を ヘボン式に かえる ことだった 事実が はしなくも あらわに なって います.


第9項.(1) 会社の 名前 などの ABC表記は,ローマ字表記を そのまま つかって いる ものも あれば そうで ない ものも あります.造語と おもわれる ものも おおく,日本語で あるとも かぎりません.したがって,これは ローマ字と かんがえなくて いいでしょう.組織・団体 などの 名前が 英語で かかれる ことも よく ありますが,これも 日本語の ローマ字表記では ありません.したがって,これらは 新ルールが あつかう 範囲から はずれます.

(2) 問題は 人名です.当事者が きめた つづりを 尊重 する べきと いう 理念は いいのですが,すきかってな つづりを ゆるすと,つづりの「キラキラ化」に 歯どめが なく なります.「Q&A」も「円滑なコミュニケーションを妨げるおそれがあります。」と いって います.しかし,具体的な 制限は もうけられませんでした.これでは,耳で きいた 名前が かけないとか,かかれた 名前を 声に だして よめないとか,実用レベルの 問題が おこります.人名に 野放図な 漢字使用を ゆるして 世の中を 不便に して しまったのと おなじ あやまちを くりかえしては いけません.

外国人の 名前に ちなんで つけられた 名前の つづりは 日本語の ローマ字表記では ないので 新ルールが あつかう 範囲から はずれます.私的な 場で しか つかわれない ニックネーム・表札・メールアドレス なども 自由で かまいません.しかし,パスポートや 名簿 などに かかれる 名前は 公共性が ありますから その つづりかたに なんらかの 制限を つける べきです.やりかたは いろいろ あるでしょうが,ヘボン式(各種)・訓令式日本式・新日本式の ように,参照 できる ルールが ある つづりに かぎる などの 方法が かんがえられます.


全体的に いえる ことは,基本に なる 理念や 一貫 した 理論に もとづいて いないので,なぜ そうなったのかを 説明 できない ローマ字で あると いう ことです.実態を 調査 した データに もとづいて いると いいたい 人も いるでしょうが,その 調査は いいかげんで,データの つかいかたも 恣意的でした.

一般人が よく やる まちがいに あわせて 変更 された ところが おおく,きびしい ことばを つかって いえば,新ルールは 衆愚の ローマ字です.

旧ルール実態新ルール
富士HuziFujiFuji
進歩sinposhimpo
*shinpo
shinpo
単位tan'itani
tan-i
*tanni
tan'i
一致ittiitchi
*icchi
icchi
王様ôsamaosama
ōsama
*ousama
ōsama
ousama

※ 旧ルールは 訓令式*印 は 一般人が よく やる まちがいです.

改定の 手つづき
Kaitei no tetuzuki

1937(昭和12)年に はじめて ローマ字の 公式ルールが つくられた ときも,1954(昭和29)年に 旧ルールが つくられた ときも,専門知識を もった 人が あつめられ,じゅうぶんな 時間を かけて 学術的で 民主的な 議論が おこなわれました.

 戦前の「臨時ローマ字調査会」では文部大臣を会長に各省庁から次官級までの委員、日本式と標準式(へポン式)側からと中立の立場からの委員で構成されて、対立構図のもと約6年にわたり真剣な議論が尽くされ、共通点も相違点も明確となった。戦後はローマ字教育が導入される前の1946年から文部省の「ローマ字教育協議会」でつづり字に関する議論が始まった。このときは訓令式・標準式・日本式代表を揃えた。その後、ローマ字調査会、ローマ字調査審議会を経て国語審議会ローマ字調査分科審議会で約6年にわたり討論した。いずれも、ローマ字つづりの議論、審議は民主的であった。前者は日本式支持とへポン式支持の委員は同数、投票で決議し、日本式にほぼ等しい訓令式が決定された。後者は訓令式支持、日本式支持、ヘポン式支持の同数の委員が加わり、議決した。

「国語分科会「ローマ字使用の在り方」に関して」(NRSローマ字研究会)

しかし,2025年に 新ルールが つくられた ときの 議論は ちがいました.ほとんどの 委員が 専門外の 人で,学術的な 討論は いっさい おこなわれず,委員は はじめから おわりまで 主査の 誘導に ひきずられて いました.たとえば,第1回は ローマ字の 各方式の 利点・欠点を 検討 する ための 参考資料 すら 配布 されない ままに はじまりました.出席 した 14人の 中で「訓令式」「ヘボン式」と いう ことばを つかった 委員は 8人でした.はっきりと ヘボン式を おした 委員が 1人,訓令式を かばった 委員が 1人,どちらとも つかない 意見を のべた 委員が 6人でした.ところが,主査に よる つぎの 発言で まとめられて しまいました.

 訓令式を土台とするかどうか、あるいはヘポン式を土台とするかどうか、まずこの点に関しましては、委員の皆様の御意見は大体統一してへポン式を土台として進めていこうと考えていただいているということで、そういう印象を受けたのですがよろしいでしようか。

 ありがとうございます。[…]

(第1回)

「ありがとうございます。」の 前に 挙手 などに よる 議決は おこなわれて いません.戦前の「臨時ローマ字調査会」が 最後の 第14回で 案の 承認方法を 起立に するか 投票に するかまで 議論 して きめたのに くらべると,あまりにも いいかげんです.


委員の 名誉の ために まっとうな 意見を ふたつ 紹介 して おきます.いずれも おなじ 委員に よる ものです.この 委員は 訓令式を おす たちばでは なかった ようですが,それでも 現状を ただしく 分析 して います.

ひとつは ローマ字使用の 実態調査の 結果に たいする ものです.

 学術論文での日本人の名前ですけれども、これはヘボン式が多いのは、恐らくパスポートにおいてへポン式であるということで、長音符号を使うのか使わないのかというのも、御自身のパスポートの表記に準じている可能性があるのではないかと思います。国際学会などの招聘状でパスポートと表記が違うと不都合を来すという話を聞いたことがありますので、そういう影響がある程度あって、御自身で選んでヘポン式にしているのではなく、選ばざるを得なくてへポン式になっている可能性もあるのかなと思いました。

(第2回)

もう ひとつは 外国人の 意識調査の 結果に たいする ものです.

 留学生の方に聞くと、アジアからの留学生の方は、訓令式を見たことがないと答える方がとても多いのです。実際、実用面で、日本で生活していく上ですぐ役に立つ表記を教えてもらったという話なので、ヘポン式しか知らない、というかへポン式という名前で呼ぶことも知らすに、日本ではこれを使っていますと習って来日するそうです。[…]外国でどのように教えられているかという部分は、今の日本でのローマ字の使用実態を反映させているだけという可能性もあります。見慣れている、だからこちらが分かりやすいという意識であって、使われているから分かりやすい、だからこうするのだという結果になっていくと、結局はマッチボンプのようなところがあるので、注意した方がよいのかもしれないと思いました。

(第5回)


もっと くわしく しりたい 人は ぜひ「「まちがい」だらけの「改定ローマ字のつづり方」─日本の言語施策史上における一大汚点─ 」を およみ ください.(リンク先から PDFファイルが ダウンロード できます.)

これからの 課題
Kore kara no kadai

「ローマ字のつづり方」は「常用漢字表」「現代仮名遣い」などと おなじ ように 日本語の かきかたを さだめて いる たいせつな ルールです.「常用漢字表」は マスメディアでも 尊重 されて いますし,「現代仮名遣い」から はずれた かきかたを すれば 小学生に わらわれます.これらは,法律の ような 強制力こそ ない ものの,世の中の きまりと して みとめられて います.

ところが,「ローマ字のつづり方」は まったく ちがい,存在 しないも 同然の あつかいを うけて きました.それを よしと する ように,2025年の ルール改定は「ローマ字のつづり方」を ほとんど 強制力を もたない 参考資料 みたいな ものに かえて しまいました.


言語は 文化だと いわれます.そして,ローマ字は 日本語の 一部です.ローマ字を ないがしろに する ことは 日本の 文化を おとしめる ことだと いっても いいすぎでは ないでしょう.それなのに ほとんどの 人は これを おかしいと おもって いません.この 意味で,日本 ほど 自分の 言語を たいせつに して いない 国は ないと いえます.日本語を 世界に 発信 する ときは ローマ字を つかうのですから,いまの ままでは 日本が 世界に 恥を さらして いる ような ものです.日本と 日本語の ために,このような 状況は かえて いかなければ なりません.

しかし,ルールを ねじまげて いる 張本人が 官僚なので,上からの 改革は ありえませんし,それを のぞむ べきでも ありません.マスメディアは 行政の でたらめを チェック して いない どころか,共犯者に ちかいと いった ほうが いい くらいです.学校は こどもに ローマ字を きちんと おしえて おらず,教師の 知識不足・能力不足が 混乱を まねいて います.とくに 一部の 英語教師の 不勉強には 目に あまる ものが あります.外国人に 日本語を おしえる 日本語教育の 分野でも 独自方式の 不合理な ローマ字が つかわれて いますが,それに 疑問を もつ 日本語教師は すくない ようです.ほとんどの 学者は 特定の たちばからの 発言が しにくい せいか,有識者と しての つとめを はたして いません.いまは こんな ありさまですから,一般人が 個人の たちばで できる ことを やる しか ないでしょう外国で 活動 して いる 学者は 自由に 発言 しやすい ようです.日本では 政府を 批判 する 発言が しにくい 状況に あるのでは ないかと おもわれます.一般人に この あたりの 事情は よく わかりませんが,近年の 国立大学に たいする しめつけや,日本学術会議に たいする 弾圧 などから かんがえて,学者が 自由に 発言 しにくく なって いるのかも しれません.


2025年の ルール改定は まちがいでした.しかし,まちがいは あらためる ことが できます.ルールは ただの お約束です.これは 失敗だったと 気づいたら,何度でも あらためれば いいでしょう.そのために 個人で できる ことは かぎられて いますが,それを やって いく ことが これからの 課題です.めざす 方向は ローマ字の 目的が しめして います.それを みうしなわなければ 道を まちがえる 心配は ありません.