「ローマ字のつづり方」:2025
RÔMAZI NO TUZURIKATA:2025

中身
Nakami

令和7年内閣訓訓令第1号
R7 n. naikaku kunrei dai 1-gô

内閣訓令第1号

各行政機関

「ローマ字のつづり方」の実施について

政府は、本日、内閣告示第四号をもって、「ローマ字のつづり方」を告示した。

今後、各行政機関においては、これを現代の国語を書き表すためのローマ字のつづり方のよりどころとするものとする。

なお、昭和29年内閣訓令第1号は廃止する。

令和7年12月22日

内閣総理大臣 高市 早苗

令和7年内閣訓告示第4号
R7 n. naikaku kokuzi dai 4-gô

内閣告示第四号

一般の社会生活において現代の国語を書き表すためのローマ字のつづり方のよりどころを、次のように定める。

なお、昭和二十九年内閣告示第一号は、廃止する。

令和七年十二月二十二日

内閣総理大臣 高市 早苗

ローマ字のつづり方

前 書 き

1 この「ローマ字のつづり方」は、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語をローマ字で書き表す場合のよりどころを示すものである。

2 このつづり方は、科学、技術、芸術その他の各種専門分野や個々人の表記にまで及ぼそうとするものではない。

3 このつづり方は、過去の著作や文書におけるつづり方を否定するものではない。

4 このつづり方は、外来語にのみ用いられる音や国内の各地域に特有の音等については対象としていない。

5 このつづり方は、「本表」と「添え書き」から成る。「本表」には国語をローマ字で書き表す際に用いるつづり方を掲げた。また、「添え書き」には「本表」を使用する上で必要となる個別の事項を示した。

6 ローマ字のつづり方は、幾つかの方法で行われてきたものであり、「本表」に示すもの以外のつづり方にも意義や用途がある。参考のため、「(付)対照表」において、「本表」のつづり方とそれ以外のつづり方との対照を示した。

本 表

ローマ字のつづり方 本表

  • 〔 〕を付したつづりは、現代において、別の仮名に対応する音と同じ発音をするものとして扱われるため、このつづり方においては使い分けをしない。

添 え 書 き(本表を使用する上での個別の事項)

本表に定めたもののほか、おおむね次の各項による。

1 撥(はつ)音(はねる音)「ン」は、例に示すようにnと書く。

〔例〕
 あんまん anman
 乾杯 kanpai
 銀座 Ginza
 新聞 Shinbun

2 促音(つまる音)「ッ」は、例に示すように子音字を重ねて表す。子音字が2文字の場合は最初の字(shのs、chのc等)を重ねる。

〔例〕
 雑誌 zasshi
 鉄板 teppan
 日直 nicchoku
 薬局 yakkyoku

3 長音で発音される語は、例の(1)に示すように、母音字の上に符号(「¯」)を付けて表す(必要な場合には「^」を用いても差し支えない。)ほか、(2)に示すように、母音字を並べてもよい。母音字を並べて書くときには、現代仮名遣いと同様のつづり方を用いる。

   なお、(1)において〈 〉に入れて示したようなもの(イ列長音で発音される語、エ列長音で発音される語のうちエ列の仮名に「い」を添えて書くもの)については、(2)に掲げたつづりを用いるのが一般的である。

〔例〕

長音で発音される
語の例
(1)符号を付けて
表す場合
(2)母音字を並べて
書く場合
ア列母(かあ)さんkāsankaasan
まあmāmaa
イ列かわいい<kawaī>kawaii
しいたけ<shītake>shiitake
兄(にい)さん<nīsan>niisan
ウ列十五夜(じゅうごや)jūgoyajuugoya
風流(ふうりゅう)fūryūfuuryuu
エ列ええēee
姉(ねえ)さんnēsanneesan
やじろべえyajirobēyajirobee
庭園(ていえん)<tēen>teien
時計台(とけいだい)<tokēdai>tokeidai
平成(へいせい)<Hēsē>Heisei
オ列おおかみōkamiookami
ほおずきhōzukihoozuki
東北(とうほく)TōhokuTouhoku
房総(ぼうそう)BōsōBousou
大道具(おおどうぐ)ōdōguoodougu
凍り豆腐(こおりどうふ)kōridōfukooridoufu

4 撥音を表すnと次の母音字又はyとを切り離したり、母音字が連続するときに長音でないことを示したりする必要がある場合など、音の切れ目を示すためには、例に示すように「'」を用いる。

〔例〕
 単位 tan'i
 船員 sen'in
 園遊会 en'yūkai / en'yuukai
 問屋 ton'ya
 大叔父 oo'oji (ōoji)
 小唄 ko'uta

5 複数の語等によって構成される語を分けて書く場合には、例に示すように「-」を用いることができる。

〔例〕
 九谷焼 Kutani-yaki
 田中さん Tanaka-san
 七五三 shichi-go-san

6 固有名詞は、語頭を大文字で書く。

7 ローマ字によって文を書くときには、次に示すような点に留意する。

  • 書き始めの語頭は大文字で書く。
  • 区切り符号には、「,」(コンマ)と「.」(ピリオド)を用いる。
  • 助詞の「は」「へ」「を」は、それぞれ「wa」「e」「o」と書く。

8 この「ローマ字のつづり方」は、現状に混乱を来すことのないよう、各分野で用いることのある表記について直ちに変更を求めるものではない。各分野で用いることのある表記とは、外国語の表記に準じ国際社会で広く用いられるものなど、例に示すようなつづりを指す。ただし、それぞれにおいて改めて表記の在り方を検討するような場合には、従来の慣行を踏まえつつ、「ローマ字のつづり方」を参考として適切に対応することが望ましい。

〔例〕

各分野で用いること
のある表記
「ローマ字のつづり方」
による表記
judo(柔道)jūdō/juudou
Tokyo(東京)Tōkyō/Toukyou
Ohtawara(大田原)Ōtawara/Ootawara
Shimbashi(新橋)Shinbashi
ramma(欄間)ranma
tempura(天ぷら)tenpura
matcha(抹茶)maccha

9 個人の姓名や団体名等を書き表す際には、「ローマ字のつづり方」を参考としつつ、当事者の意思を尊重するよう配慮するものとする。

(付) 対 照 表

凡 例

1 この対照表は、「本表」が示すつづり方と、それ以外のつづり方との関係を示すために参考として掲げるものである。

2 この表では、「本表」が示すつづりと、昭和29年内閣告示第1号の第1表の一部と第2表に示されていたつづりを並べ、対照している。「本表」にないつづりには下線を付した。

3 下線を付したつづりは、国語の五十音を規則的に示すものである。このうち、右欄(昭和29年内閣告示第2表に示されていたつづり方)のものは、仮名「ぢ」「づ」「を」等に対応しており、個人名や団体名などの固有名詞に用いられる場合がある。

4 〔 〕を付したつづりは、「本表」で「現代において、別の仮名に対応する音と同じ発音をするものとして扱われるため、このつづり方においては使い分けをしない」とされているものである。

5 表の最後に、「ka」と「kwa」、「ga」と「gwa」を対照しているが、「kwa」「gwa」は、歴史的仮名遣い「くわ」「ぐわ」と対応する場合にのみ用いられたものである。現代仮名遣いにおいて、「くわ」「ぐわ」は、「か」「が」と書き、使い分けをしない。

対 照 表

ローマ字のつづり方 対照表

解説
Kaisetu

あらまし
Aramasi

1954年版「ローマ字のつづり方」(以下,「旧ルール」)が できた あと,その 本則が 訓令式で あるにも かかわらず,政府は ヘボン式を ごりおし して きました.そのため,ほとんどの 分野で ヘボン式が つかわれる ように なり,それが 何十年も つづいて いました.

2024年,文部科学大臣の 諮問「これからの時代におけるローマ字使用の在り方について」を うけて,「ローマ字のつづり方」の 改定を 念頭に おいて 検討を すすめて いた 文化審議会国語分科会は「ローマ字小委員会」を たちあげて 集中的な 検討を はじめました.そして,2025年に 答申「改定ローマ字のつづり方」が まとまり,「ローマ字のつづり方」は 改定 されました.これに より,ヘボン式が 正式に 格あげ され,訓令式・日本式は 廃止 されました.

ここでは この 2025年版「ローマ字のつづり方」を「新ルール」と よびます新ルールは 強制力を みずから よわめて しまい,強制・制限 しない ことを ふしぎな ほど 強調 して います.この 意味で,「ルール」と よぶのは すこし おかしいかも しれません..


こうして,ヘボン式は 正式に なりましたが,ヘボン式は 日本語を かくのに ふさわしく ないと いう 致命的な 欠点を もって おり,学術的には とっくの むかしに 否定 されて います.もともと 外国人の ために つくられた 方式なので,日本が これを 公的な 分野で つかう ことには 国際的な 問題も あります.ヘボン式を 正式と した ことは 完全な あやまりでした.

改定の 手つづきも ひどい もので,専門家の 意見を ないがしろに して 強引に すすめられました.議論は 形 だけで,おおよその 結論が はじめから きまって いた ことは 諮問の 文章に すけて みえます.学術的な 検討が まったく おこなわれなかったので,あたらしく つくられた ヘボン式の 仕様には まずい ところが たくさん あります.

今回の 改定は 公式ルールを 実態に あわせて 変更 すると いう,まるで 万引きを 合法化 する ような 方向性で おこなわれました.しかも,ルールの 位置づけを かえて,強制力を みずから よわめて しまいました.「ローマ字のつづり方」は 参考資料 みたいな ものに なり,骨ぬきに されたと いえます.


新ルールは「前書き」「本表」「添え書き」「対照表」で 構成 されて います.「前書き」は 目的,適用分野,位置づけ などの 説明です.「本表」は いわゆる「ローマ字表」の 部分です.「添え書き」は「ローマ字表」以外の きまりの 説明です.対照表は 旧ルールと 新ルールの 対照を まとめた 表です.

前書き
Maegaki

第1項から 第4項は 新ルールが 公の 分野で 現代の 日本語を ローマ字で かく ときの よりどころを しめす もので ある ことを いって います.したがって,この ルールは 古文の 表記,過去の 作品,学術・芸術の 分野,そして 私的な 分野で つかわれる ローマ字には 適用 されません.公の 分野に たいしても つよい 強制力は もって いません.また,外来語や 方言に ふくまれる 特殊な 音声の かきかたは さだめて いません.

第5項は 全体の 構成の 説明です.第6項は「本表」の かきかたと これまで おこなわれて きた かきかたとの 対照表を つけくわえた ことを いって います.

本表
Honpyô

いわゆる「ローマ字表」の 部分です.旧ルールには 表が ふたつ ありましたが,新ルールでは それが ひとつに なりました.表の 中身は ヘボン式 そのものです.旧ルールは 訓令式が 本則で,特別な 事情が あれば ヘボン式・日本式も 許容 すると いう ルールでした.新ルールは これを あらため,ヘボン式を 本則に 格あげ して,訓令式・日本式を 削除 しました.これは 訓令式・日本式が きえて なく なったと いう 意味では なく,公的な 分野では これらを つかわない ことに したと いう 意味です.

音声を しめす カタカナ表記が つけたされて わかりやすく なりました.2025年の 改定には 翻字の ローマ字(おそらく「ワープロ式」に ちかい もの)を 公式ルールに とりこもうと した ふしが あり,それを 意図 した 結果とも かんがえられます.撥音(ん)を 表の 中に くみこんで いるのも めだつ ところで,これも おなじ もくろみかも しれません.

添え書き
Soegaki

第1項は 撥音(ん)の かきかたを 説明 して います.新ルールは b, m, p の 前の 撥音を n と かきます.これは 一般人が よく やる まちがいを 採用 した ものです.

旧ルール実態新ルール
進歩sinposhimpo
*shinpo
shinpo

第2項は 促音(っ)の かきかたを 説明 して います.新ルールは ch の 前の 促音を c と かきます.これは 一般人が よく やる まちがいを 採用 した ものです.

旧ルール実態新ルール
一致ittiitchi
*icchi
icchi

第3項は 長音(ー)の かきかたを 説明 して います.新ルールは 長音を ā/aa, ī/ii, ū/uu, ē/ee/ei, ō/oo/ou と かきます.変更点は つぎの みっつです:(1) 仮名式の かきかた(aa, ii, uu, ee/ei, oo/ou)を つくった ところ,(2) 長音符号を 山形(^)から 横棒(¯)に かえた ところ,(3) エ段の 長音(えい型)を ē と かける ように した ところ.(1)は 一般人が よく やる まちがいを 採用 した ものです.(2)は JRが つかって いる 長音符号を 採用 した ものです.(3)は 規則的に する 目的で つけくわえられた ものです.

旧ルール実態新ルール
お母さんokâsanokasan
okāsan
*okaasan
okāsan
okaasan
お兄さんonîsan
oniisan
oniisan<onīsan>
oniisan
空気kûkikuki
kūki
*kuuki
kūki
kuuki
お姉さんonêsanonesan
onēsan
*oneesan
onēsan
oneesan
平和heiwaheiwa<hēwa>
heiwa
大雨ôameoame
ōame
*ooame
ōame
ooame
お父さんotôsanotosan
otōsan
*otousan
otōsan
otousan

イ段は ii が,エ段(えい型)は ei が 一般的で あると いって います.また,長音符号は 山形(^)でも さしつかえないと して います.


第4項は 発音の きれめを しめす 必要が ある とき などの かきかたを 説明 して います.新ルールは この ような ばあいに きる印(')を 挿入 します.(1) 「撥音を表すnと次の母音字又はyとを切り離」すと いうのは tan'i(単位)などの かきかた,(2) 「母音字が連続するときに長音でないことを示」すと いうのは ba'ai(場合)fuu'u(風雨)などの かきかたを いって います.(1)は 旧ルールを そのまま ひきつぎました.(2)は 仮名式を つかう とき 必要に なるので つけくわえられました.

旧ルール実態新ルール
単位tan'itani
tan-i
*tanni
tan'i
場合baaibaaiba'ai
黄色kiirokiiroki'iro
武運buunbuunbu'un
影絵kageekageekage'e
音色neironeirone'iro
黒帯kuroobikuroobikuro'obi
小唄koutakoutako'uta

第5項は つなぎ(-)で つなぐ 複合語 などの かきかたを 説明 して います.むかしから おこなわれて いる かきかたを ルール化 した ものです.


第6項は 固有名詞の 先頭を 大文字で かく ことを 説明 して います.ここは 旧ルールを そのまま ひきつぎました.旧ルールは 普通名詞の 先頭を 大文字で かく ことを みとめて いましたが,新ルールでは それを 許容 するとも 禁止 するとも いって いません.


第7項は 文を かく ときの 留意点と して,(1) 文頭は 大文字で かく こと,(2) 記号の くぎり(,)と とめの印(.)が つかえる こと,(3) 助詞の「は」「へ」「を」は 発音に したがって wa, e, o と かく ことを 説明 して います.(1)は 旧ルールを そのまま ひきつぎました.(2)と (3)は むかしから おこなわれて いる かきかたを ルール化 した ものです.


第8項は 新ルールが 各分野で もちいられて いる judo(柔道)matcha(抹茶)Tokyo(東京)Shimbashi(新橋)などに 変更を せまる もので ない ことを いって います.


第9項は 個人や 団体の 名前は 当事者の 意思を 尊重 する ことが たいせつなので,新ルールは 参考の ために つかって ほしいと いって います.

対照表
Taisyôhyô

新ルールと 旧ルールを てらしあわせる 表は たいせつです.公式には 訓令式・日本式の「ローマ字表」は もう ないので,一般人が これらに たどりつく 公式の 方法は この 対照表 しか ありません.

問題
Mondai

あたらしい ヘボン式
Atarasii Hebonsiki

新ルールと そこで さだめられた あたらしい ヘボン式の 仕様には まずい ところが たくさん あります.ここで それを 指摘 して おきます.以下,文中の「答申」は「改定ローマ字のつづり方」,「Q&A」は「「ローマ字のつづり方」(令和7年内閣告示第4号)に関するQ&A」の ことです.

(+) は 問題点では なく,新ルールに つけたせば よかったと おもわれる 発展的な 項目です.


まず,「前書き」.(1) ここの 問題は 新ルールの 位置づけを かえて 規範の 色あいを うすめた「よりどころ」に した ことです.これは「有力な考え方として参照される性格のもの」と いう 意味で,「目安」よりは つよい 意味が ある らしいのですが,それでも 新ルールは 旧ルールが もって いた 強制力を うしなっって,参考資料 みたいな ものに なりました「ローマ字の おとろえ」の ところで 説明 して いる ように,戦後に おこなわれた 国語改革は 1960年代に すべて みなおされる ことが きまり,じっさいに「当用漢字表」「現代かなづかい」などが つぎつぎと 骨ぬきに されて きましたが,「ローマ字のつづり方」の 改定は その 総しあげで あったとも かんがえられます..


つぎに「本表」.(1) もっとも おおきな 問題は ローマ字の 方式が ヘボン式で ある ことです.くわしくは「ヘボン式か 訓令式か」で 解説 して いますが,ヘボン式を 正式に しては いけません.「ローマ字小委員会」の 中には ヘボン式を 採用 したのでは ないと いいはって いる 人も います.新方式を うちたてたと いいたいのかも しれません.しかし,じっさいは ヘボン式の 変種を 2種類 ふやした だけです.

(2) 訓令式の つづりを 削除 して ヘボン式の つづり だけに した「ローマ字表」を 五十音図の 形に あわせて かく 意味は ありません.これでは ヘボン式の 欠点を きわだたせる だけです.小学校の「国語」も この 形の「ローマ字表」で いくのだと したら,こどもは 不規則な 表を 丸暗記 する しか ありません.英語の 知識が ない 小学生に つづりの 不規則な 部分を 説明 するのは むつかしく,この「ローマ字表」は 教師の 負担を ふやし,こどもの 理解度を さげます.これまでどおり 訓令式と ヘボン式を あわせた「ローマ字表」に する べきです訓令式の かわりに 日本式を すこし かんたんに した 方式に する 手も あります.これは 四つ仮名の 部分が 規則的で おぼえやすく,ローマ字入力の ローマ字と 整合性が あります.小学生が 一番 はじめに おぼえる「ローマ字表」は この 形が いいかも しれません..

(3) 撥音(ん)は 表に いれない ほうが いいでしょう.撥音(ん)・促音(っ)・長音(ー)は 五十音図に かかれる 音声とは 別に あつかうのが ふつうです.「Q&A」は わかりやすさの ためと いって いますが,小学生が この 表を みたら「ン」が あって「ッ」「ー」が ない ところが 変に みえて,あまり わかりやすく ないと おもわれます.表は 直音・拗音・撥音が 線で くぎって あるのですが,この 意図が 理解 されるかも 疑問です.デザイン優先で ワ行を「ワ・◯・ヲ・◯・ン」の 形に した 教育的で ない「ローマ字表」を はびこらせる おそれも あります.

(4) 音声を しめす カタカナ表記を つけくわえて わかりやすく した ところは いいのですが,これには ローマ字が かな文字の 翻字に みえて しまう 問題が あります.そうで ない ことを 説明 する ひとことが 必要です.ところが,「Q&A」は「文字としての片仮名とローマ字のつづりとの対応を示そうとするものではありません。とはいえ、文字同士の対応として参考にしても問題が生じるわけではありません。」と ふしぎな 説明を して います.「王(おう)」を ō と かく ばあいに 後段の 説明は なりたちません.


「添え書き」の 第1項.(1) 撥音を n で 統一 する かきかたは,日本語の 表記法と しては ただしいのですが,ヘボン式で それを やると 性能が 劣化 します.くわしくは「劣化ヘボン式」で 解説 して います.

(2) 撥音の m は むかしから つかわれて おり,世の中に 定着 して います.ところが,「ローマ字小委員会」は 一般人が よく やる まちがいを 実態と いいはって,これに あわせました.

答申は その 理由を「日本語を主に用いる人が語を判別するときの意識からすれば、聞き分けたり書き分けたりすることが難しいものである。したがって、できるだけ複雑にならない考え方を採用した。」と 説明 して います.これは 奇妙な 理屈です.それなら,どうして【フ】を hu で なく fu に したのでしょうか.しかも,外国人の 都合に あわせて つづりかたを きめて いた はずなのに,なぜか ここでは「日本語を主に用いる人」の 都合で かんがえて おり,設計方針に 一貫性が ありませんローマ字を 設計 する ときに 外国人の 都合で かんがえるのが そもそも おかしいのですが,それを わきに おくと しても,「日本語を主に用いる人」に m/n の 区別が むつかしい 事実は まさに 日本語の 音韻体系から くる もので,ヘボン式採用の 根幹に かかわります.答申は かなり きわどい ことを いって いた わけです.その 自覚が なかったのか,どうせ 一般人には わからないと たかを くくって いたのか わかりませんが,いずれに しても あきれた はなしです..

新ルールの 撥音は 旧ルールと おなじ かきかたですが,これは 新ルールが 旧ルールの 設計(理論)を ひきついだからでは なく,結論が おなじに なった だけです.答申が いう「現行内閣告示と同じである。」は まやかしです.

(+) 記号が つかえない ばあいの 対処法と「んー」の かきかたを ルール化 して つけたせば よかったと おもわれます.


第2項.(1) 促音を つぎの 子音字で 統一 する かきかたは,日本語の 表記法と しては ただしいのですが,ヘボン式で それを やると 性能が 劣化 します.くわしくは「劣化ヘボン式」で 解説 して います.

(2) 促音の tch は むかしから つかわれて おり,世の中に 定着 して います.ところが,「ローマ字小委員会」は 一般人が よく やる まちがいを 実態と いいはって,これに あわせました.

答申は「ヘボン式の一部では」ch の 前の 促音を t と かくと いって いますが,これは 事実で なく,これまで おこなわれて きた ヘボン式は すべて ch の 前の 促音を t と かきます.

新ルールの 促音は 旧ルールと おなじ かきかたですが,これは 新ルールが 旧ルールの 設計(理論)を ひきついだからでは なく,結論が おなじに なった だけです.答申が いう「現行内閣告示と同じである。」は まやかしです.

(+) 「あっ」「いっぬ」「うっう」「えっん」などの かきかたを ルール化 して つけたせば よかったと おもわれます.


第3項.長音(ー)の かきかたには 問題が たくさん あります.(1) まず,仮名式の かきかたを つくった ことです.ローマ字は 日本語の 音声を ABC表記に する もので,ふりがなとは 無関係です.ましてや ふりがなに 依存 する ものでは ありません.「翻字式」の ところで 説明 して いる ように,仮名式には おおくの 欠点が あります.

学術の 分野で つかわれる 日本式の 応用,「日本ローマ字会」が すすめて いた 99式,一般人が まちがって かく「ワープロ式」を のぞけば,これまで ローマ字が 翻字と して かかれた ことは ありません.長音符号を つかわずに 長音を かく 代書法は 必要ですが,それは 代用表記と して すでに 確立 して います.これを ルール化 する べきでした.こちらの ほうが よみかきが かんたんで 性能も すぐれて います.「Q&A」は 仮名式を つくった 理由を「長音を確実に示すための手当てを行うことがどうしても必要であると考えたから」と いって いますが,これは まったく 理由に なって いません代用表記には いくつか 方式が ありますが,その 中で もっとも つかいやすいのは 長音を aa, ii, uu, ee, oo で かく 「母音字かさね式」です.これは 機械的に 文字を おきかえる 代書法で あり,転写の ローマ字で ある ことに かわりは ありません.ところが,「ローマ字小委員会」では 母音字を ならべる かきかたを 翻字の ローマ字だと 委員に かんちがい させる 誘導が おこなわれて いました.たとえば,さまざまな 長音の かきかたを まとめた 資料の 中で,イ段と エ段の 長音を ii, ei と かく 方法に「現代仮名遣いに通ずるつづり方」と いう 説明を つけて いました.そこまで して 翻字の ローマ字を 公式ルールに とりこもうと した 理由は よく わかりません.外務省が パスポートの 名前の かきかたに これを とりいれて いるのを はじめと して,すでに 一部の 業界には この かきかたが ひろまって いますから,それを 合法化 しようと したのかも しれません.マイナンバーカード(個人情報カード)に 名前の ローマ字表記を つけたせる ことに なって,翻字の ローマ字が 途中から 既定路線に くみこまれたのでは ないかと いう 憶測も できます.パスポートを もって いる 人は そこから ローマ字の つづりを ひっぱって これますが,パスポートを もって いない 人は 住民票や 銀行口座 などの ふりがなから デフォルトの ローマ字表記を 生成 しないと いけないからです.(ふりがなの「いのうえ たろう」から ローマ字の Inoue Tarō は 生成 できませんが,Inoue Tarou に 変換 する だけの 処理なら 完全に 自動化 できます.これに ついては,「なぜ ふりがなでは ダメなのか」を およみ ください.).

(2) しかも,2種類の 長音表記を まぜる ことを 禁止 して おらず,どちらを 優先 するとも きめて いません.長音符号つき文字が つかえない ばあいの 対処法が 仮名式だと かんがえる 人が おおいと おもわれますが,「Q&A」の 説明は ちがいます.「必要に応じて、あえて母音字を並べる書き方を選択することもできます。 」と いって います.イ段と エ段(えい型)の 長音では「一般的である」と いう 説明で 仮名式を すすめて いますから,それ 以外の 長音でも 統一的に 仮名式を えらぶ 人が でて きます.とくに,ふだん ローマ字入力を つかって いる 人には 仮名式が 自然に かんじられるので,その 必要が ない ところでも 仮名式で かく 人が ふえると おもわれます.これまでも うっかり「学校」を ✕ gakkou と かいて しまう 人は いましたが,まちがいだと 指摘 されて 修正 して いました.これからは それが なく なります.ローマ字は 性能が 劣化 する だけで なく,あやふやな 理解の まま かく 人が おおく なり,表記ゆれが ふえて 不便に なるでしょう.

(3) 仮名式は 長音の 部分 だけ 翻字に する かきかたですが,一般人は 全体が 翻字の ローマ字だと かんちがい するかも しれません.これは 助詞の「は」「へ」「を」や 「ぢ」「づ」などの かきかたで 混乱を まねきます2025年の ルール改定には 翻字の ローマ字を 合法化 する もくろみが あったと この サイトは かんがえて います.撥音の m や 促音の tch を やめた あたらしい ヘボン式は,従来の ヘボン式を ローマ字入力の ローマ字(「ワープロ式」)に ひきよせた ものに みえます.「ローマ字小委員会」が 四つ仮名(じ・ぢ・ず・づ)の かきかたを 変更 するかに ついて 何度か むしかえして いたのも「ぢ」「づ」の つづりを di, du に かえたかったからでは ないかと うたがって います.けれども,四つ仮名の かきかたは 変更 されませんでした.助詞の「は」「へ」「を」の かきかたも 従来どおりに なりました.したがって,仮名式は 長音の 部分 だけ 翻字に する かきかたで あって,全体が 翻字の ローマ字なのでは ありません.2025年の ルール改定に 翻字の ローマ字を 合法化 する もくろみが 本当に あったのかは わかりませんが,あったと しても それは はたされなかったと いえます..

(4) 「ー」を つかって 長音を かく カタカナ語を 仮名式に する 方法が ぬけおちて います.そのため,kōra(甲羅)は koura とも かけますが,kōra(コーラ)は それが できません.これは ローマ字で 外来語を かく ことを 想定 して いないからです.しかし,外来語は 日本語の 一部です.交差点や バス停には「ガード下」「アパート前」などの 名前も ありそうです飲食店で よく つかわれそうな rāmen(ラーメン)chāhan(チャーハン)gyōza(ギョーザ)も 仮名式では かけません.漢字表記の「拉麺」「炒飯」「餃子」から むりやり ふりがなを ひっぱって これそうに おもえますが,「拉」「炒」「餃」に〈ラア〉〈チャア〉〈ギョウ〉と いう 音よみは ない ようです..

(5) 整列(ソート)の 問題も あります.ローマ字表記の 名前や 項目を ABC順に ならべる とき,長音の かきかたに ゆれが あっても 順番が かわらない ように,長音を aa, ii, uu, ee, oo に おきかえて 順番を きめる ことに なって います.こう すると,otōsan, otoosan(お父さん)が どちらの かきかたでも おなじ 場所に なります.仮名式では otōsan, otousan(お父さん)の 場所が おなじに ならず,名簿や 索引が つかいにくく なります.

(6) 長音符号を 山形(^)から 横棒(¯)に かえた ところも 問題です.横棒(¯)の 利点は 手がきの ときに かきやすい こと くらい しか なく,欠点は(それほど 重大では ない ものの)いくつも あります.くわしくは「山形か 横棒か」の ところで 解説 して います長音符号を 必須と したのは ただしい 判断ですが,記号の 形を かえる 必要は ありませんでした.それなのに,「ローマ字小委員会」は JRの 駅名を 根拠に して 横棒(¯)を 採用 した うえで,山形(^)でも さしつかえないと いって います.逆で よかったのでは ないでしょうか..

(7) 例に あげられて いる kawaī(かわいい)は 不適切です.「シイタケ」は shītake, shiitake の どちらでも いいのですが,「かわいい」は かならず kawaii と かきます.これは 形容詞の 語幹と 語尾の あいだに きれめが あるからです.こう すると「かわい-かろう」「かわい-かった」「かわい-く」「かわい-い」「かわい-ければ」で「かわい」の つづりが 一定に たもたれます.ローマ字の かきかたは なるべく おなじ ことばが おなじ つづりに なる ように かんがえられて いますおそらく これは うっかりミスですが,まとまった ローマ字文を 一度でも かいた ことの ある 人なら こんな ミスは しません.ローマ字に うとい 人たちが 新ルールを 設計 して いた ことが よく わかります..

(+) 「アーーーーー」などの かきかたを ルール化 して つけたせば よかったと おもわれます.


第4項.(1) 「Q&A」は くぎりの 記号に ついて「誤読を防ぐ必要があるときには、使用するのが望ましい」と いって いるのですが,新ルールには そう かかれて いません.そのため,仮名式で 長音を かく ときは すべて そう しないと いけないのか,かき手の 判断で よみにくそうな ところ だけ そう すれば いいのか,よく わかりません.いずれに しても これを きちんと かくのは かなり 面倒な 作業です.ki'i(奇異)oo'otoko(大男)に いちいち 記号を いれて,nagaame(長雨)suteishi(捨て石) に 記号を いれるか まよって いたら,ローマ字を すらすら かく ことは できません.記号が 必要な ところで いれわすれる うっかりミスも さけられないでしょう.仮名式は ローマ字入力の ローマ字に にて いるので,やさしい かきかただと おもわれがちですが,それは おおまちがいで,表記ゆれと うっかりミスを ふやします.

(2) 長音符号つき文字を つかう ばあいは,おなじ 母音字の 連続が 長音で ない ことは あきらかなので,くぎりの 記号は いりませんが,まちがって 記号を いれる 人が でて くるかも しれません.あたらしい 長音表記を つくった ことで,従来の かきかたに あたらしい まちがいが ひろまる おそれが あります.

(3) 長音符号つき文字が つかえない 状況の 対処法と して 仮名式を つかう ときは,記号も つかえない(つかいにくい)ことが おおい はずで,記号を いれられないかも しれません.たとえば,Ōoka(大岡)と いう 名前で クレジットカードや メールアドレスを つくる とき,OO'OKA や oo'oka に したいと おもっても,できないかも しれません.


第5項.(1) 複合語を つなぎ(-)で つなぐ 場合,どういう 基準で つなぎ(-)を いれるかが わかりません.「Q&A」も むやみに いれない ようにと いって いますが,げんに 駅名標の ローマ字には つなぎ(-)だらけの 奇妙な つづりが ひろまって いますふたつの ことばが くっついて あたらしい ことばが できる とき,その つづりかたは 3とおり あります:(a) New York(ニューヨーク)の ように きりはなす 形,(b) Nouvelle-France(ヌーベルフランス)の ように つなぎ(-)を いれる 形,(c) Neuschwanstein(ノイシュヴァンシュタイン)の ように くっつける 形.ことばの つけはなしは 専門家の あいだでも 意見が わかれやすい ところで,じっさいの ローマ字文は かき手に よる こまかい ちがいが あります.この サイトも「ひとつづきに かく ことば」「きりはなして かく ことば」の ところで ひとつの かんがえを 提案 して います..

(2) 例に あげられて いる Tanaka-san(田中さん)は 不適切です.これは 英語の かきかたです.日本語では,「敬称 など」で 解説 して いる ように,むかしから Tanaka San と かいて きました.


第6項.(1) 大文字・小文字の つかいわけは もう すこし こまかい ところも ルール化 する べきです.具体的には,人名で 途中に「の」が はいる ものや 先頭に「お」が つく もの(平清盛・お菊さん),書籍・論文・小説・音楽・映画 などの 題名を ローマ字表記に する ときの タイトルケース などです.

地名や 駅名の ローマ字は 各分野が つづりかたを きめて いますが,人名や 題名は 一般人が つづりを かんがえる ことも あります.漫画や イラストを かく 人が キャラクターの 名前を ローマ字で かく ことは おおい はずですし,学者が 書籍や 論文の タイトルを ローマ字で かく ことも あるでしょう.ローマ字の かきかたを よく しらない 一般人が まよって しまうのは まさに こういう ところです.一般人の 参考にも なる ことを めざして あたらしい「ローマ字のつづり方」を つくったので あれば,一般人が もとめて いる ものを もう すこし かんがえる べきでした.


第7項.(1) ローマ字文を かくには,分かち書き・特殊音・記号(句読点)・ハイフネーション など,最低限の きまりが 必要です.しかし,新ルールには それらが ほとんど かかれて いません.新ルールの 説明で かける 文は「みなさん、こんにちは。」くらいです.これは ローマ字で 文を かく ことを 想定 して いないからです.

「ローマ字小委員会」は ローマ字は 国語を かく ものだと いいつつも,文を かく ことは まっ先に 除外 して,ローマ字は 名詞(固有名詞を ふくみ 外来語を のぞく)を かく ものと きめつけて います.そもそも 諮問が それを ほのめかして いるので,これは 既定路線だったと おもわれます.ローマ字が 日本語の 文章を かく もので ある 事実を 政府が 否定 して いる いまの 日本で,これは しかたが ないのかも しれません文を かかないので あれば,助詞の かきかたを きめる 必要は ありません.「こんにちは」の「は」を wa と かかせたかったのでしょうか..

しかし,これから 日本で くらす 外国人が ふえて いくに つれて,漢字仮名交じり文を よめない 人も ふえて いきます.その 対策と して,とくに 公共の 表示では ローマ字がきを ふやして いかなければ なりません.ローマ字文を かく ルールは ほぼ できあがって います.旧ルールが つくられた 時代にも ローマ字の 教科書が ありましたし,いまでは 現代的な 小説も ローマ字で 不自由なく かけます.その 中から 基本的な 部分を ぬきだして ルール化 する べきでしたローマ字を つかわないで 英語を 公用語に する 手も あります.しかし,これを やると 日本語は おとろえて いきます.おそらく,数世代で 日本語は 会社・学校 など 公共の 場では つかえなく なり,家庭内言語に なって しまうでしょう.これは 日本語を ほろぼす 道です.そして,いまの 日本は この 道を すすんで います..

(2) 助詞の「は」「へ」「を」を wa, e, o と かく ルールは 仮名式と 一貫性が なく,まちがいの もとに なりそうです.


第8項.(1) 各分野で つかわれる judo(柔道)matcha(抹茶)などの 普通名詞は 日本語から 外国語に なった 借用語で あり,日本語の 単語では ありません.したがって ローマ字でも なく,新ルールが これらの かきかたを きめる 必要は ありませんし,そもそも 日本に そんな 権限は ないでしょうフランス語の café(カフェ)は 英語に なって いますが,その つづりを café の ままに するのか,cafe に するのか,あるいは ほかの つづりに するのか,それを きめるのは 英語の はなし手で あって,アカデミー フランセーズでは ありません.「ローマ字小委員会」の 委員は ほとんどが 専門外の 人で,もともと ローマ字とは 何かが わかって おらず,そのうえに ローマ字は 外国人に 情報を つたえる ものと いう 解釈を すりこまれた ために,ローマ字と そうで ない ものを きりわける 基準を みうしなって しまったのでは ないかと おもわれます.新ルールが とりあつかって いる「ローマ字」には,名詞 以外の 単語や 外来語 など,本物の ローマ字の 大部分が ふくまれて おらず,日本語から 外国語に なった 借用語や 会社名の ABC表記 など,本物の ローマ字で ない ものが ふくまれて います..

(2) しかし,Tokyo(東京)Shimbashi(新橋)などの 固有名詞(とくに 公共性の たかい 地名・駅名)は はなしが ちがいます.旧ルールを つくった ときの 原案(建議)の まえがきに かかれて いた ように,これらは つづりを 統一 しないと いけません.1937(昭和12)年に はじめて ローマ字の 公式ルールが つくられた ときも,万国地理学会議から 日本の 地名表記を 統一 して ほしいと いわれて いました.世界から もとめられて いるのは,地名を 英語化 する ルールでは なく,地名を 日本語の まま ABC表記に する ルールです.この 点も はっきり させて おく 必要が ありました.

(3) 地名は 各分野に つづりの 統一を はたらきかけないと いけません.もちろん 外国に たいしても そう する べきです.Kiev(キエフ)が Kyiv(キーウ)に かわった ように,外国は それを やって います.ところが,新ルールは 各分野に たいして「直ちに変更を求めるものではない」と いって います.そのうち 変更を もとめる 気も ない ことは 移行(猶予)期間を さだめて いない ことから あきらかです.じっさい「Q&A」は「将来のある時点で表記の統一を求めるといったものではありません。」と はっきり いって います.公式ルールを 改定 した 本当の 目的が,ローマ字の 統一・安定で なく,その 本則を ヘボン式に かえる ことだった 事実が はしなくも あらわに なって います.


第9項.(1) 会社の 名前 などの ABC表記は,ローマ字表記を そのまま つかって いる ものも あれば そうで ない ものも あります.造語と おもわれる ものも おおく,日本語で あるとも かぎりません.したがって,これは ローマ字と かんがえなくて いいでしょう.組織・団体 などの 名前が 英語で かかれる ことも よく ありますが,これも 日本語の ローマ字表記では ありません.したがって,新ルールが これらの かきかたを きめる 必要は ありません.

(2) 問題は 人名です.当事者が きめた つづりを 尊重 する べきと いう 理念は いいのですが,すきかってな つづりを ゆるすと,つづりの「キラキラ化」を くいとめる 歯どめが なく なります.「Q&A」も「円滑なコミュニケーションを妨げるおそれがあります。」と 警告 しては いますが,具体的な 制限は もうけられませんでした.これでは,実用レベルで よみかき できない 問題が おこります.人名に 野放図な 漢字使用を ゆるして 世の中を 非効率で 不便に して しまったのと おなじ あやまちを くりかえす ことに なりそうです.

外国人の 名前に ちなんで つけられた 名前は 外国語の つづりで かけば いいので,これは 日本語の ローマ字表記では ありません.私的な 場で しか つかわれない ニックネーム・表札・メールアドレス などの ローマ字表記は 公共性が ないので,これは 個人が 自由に つづりを きめて かまいません.しかし,パスポートや 名簿 などに かかれる 名前の ローマ字表記は 公共性が あるので,これには なんらかの 制限を つける べきです.やりかたは いろいろ あるでしょうが,ヘボン式(標準式)・訓令式・日本式・新日本式の ように,専門家集団の あいだで みとめられて いる つづりかたに かぎる などの 方法が かんがえられますパスポートの 名前は「パスポート式」の ルールを あらためるのが 先です.特別な 申請 なしで 長音符号と くぎりの 記号を つかえる ように しないと いけません..


対照表.かな文字と ローマ字が「対応」すると いう いいかたには 気を つけないと いけません.本表の「ローマ字表」も そうですが,かな文字と ローマ字の つづりを ならべた 表を つくると,翻字の 変換表に みえて しまう 問題が あります.そうで ない ことを かいて おかないと,かんちがいを まねきます.


あたらしい ヘボン式の 仕様に かんして 全体的に いえる ことは,基本に なる 理念や 一貫 した 理論に もとづいて 設計 されて いないので,なぜ そうなったのかを 説明 できない ローマ字だと いう ことです.実態に もとづいて いると いいたい 人も いるでしょうが,その 調査は いいかげんで,データの つかいかたも 恣意的でした.

一般人が よく やる まちがいに あわせた ところが おおく,きびしい いいかたを すれば,あたらしい ヘボン式は 衆愚の ローマ字です.

旧ルール実態新ルール
進歩sinposhimpo
*shinpo
shinpo
一致ittiitchi
*icchi
icchi
王様ôsamaosama
ōsama
*ousama
ōsama
ousama

改定の 手つづき
Kaitei no tetuzuki

1937(昭和12)年に はじめて ローマ字の 公式ルールが つくられた ときも,1954(昭和29)年に 旧ルールが つくられた ときも,専門知識を もった 人が あつめられ,じゅうぶんな 時間を かけて 学術的で 民主的な 議論が おこなわれました.

 戦前の「臨時ローマ字調査会」では文部大臣を会長に各省庁から次官級までの委員、日本式と標準式(へポン式)側からと中立の立場からの委員で構成されて、対立構図のもと約6年にわたり真剣な議論が尽くされ、共通点も相違点も明確となった。戦後はローマ字教育が導入される前の1946年から文部省の「ローマ字教育協議会」でつづり字に関する議論が始まった。このときは訓令式・標準式・日本式代表を揃えた。その後、ローマ字調査会、ローマ字調査審議会を経て国語審議会ローマ字調査分科審議会で約6年にわたり討論した。いずれも、ローマ字つづりの議論、審議は民主的であった。前者は日本式支持とへポン式支持の委員は同数、投票で決議し、日本式にほぼ等しい訓令式が決定された。後者は訓令式支持、日本式支持、ヘポン式支持の同数の委員が加わり、議決した。

「国語分科会「ローマ字使用の在り方」に関して」(NRSローマ字研究会)

しかし,2025年に 新ルールが つくられた ときの 議論は ちがいました.ほとんどの 委員が 専門外の 人で,学術的な 討論は いっさい おこなわれず,委員は はじめから おわりまで 主査の 誘導に ひきずられて いました.たとえば,第1回は ローマ字の 各方式の 利点・欠点を 検討 する ための 参考資料 すら 配布 されない ままに はじまりました.出席 した 14人の 中で「訓令式」「ヘボン式」と いう ことばを つかった 委員は 8人で,はっきりと ヘボン式を おした 委員が 1人,訓令式を かばった 委員が 1人,どちらとも つかない 意見を のべた 委員が 6人でした.ところが,主査に よる つぎの 発言で まとめられて しまいました.

 訓令式を土台とするかどうか、あるいはヘポン式を土台とするかどうか、まずこの点に関しましては、委員の皆様の御意見は大体統一してへポン式を土台として進めていこうと考えていただいているということで、そういう印象を受けたのですがよろしいでしようか。

 ありがとうございます。[…]

(第1回)

「ありがとうございます。」の まえに 挙手 などに よる 議決は おこなわれて いません.戦前の「臨時ローマ字調査会」が 最後の 第14回で 案の 承認方法を 起立に するか 投票に するかまで 議論 して きめたのに くらべると,あまりにも いいかげんです.


委員の 名誉の ために まっとうな 意見を ふたつ 紹介 して おきます.いずれも おなじ 委員に よる ものです.この 委員は 訓令式を 積極的に すすめて いた わけでは なかった ようですが,それでも 実態を ただしく 分析 して います.

ひとつは ローマ字使用の 実態調査の 結果に たいする ものです.

 学術論文での日本人の名前ですけれども、これはヘボン式が多いのは、恐らくパスポートにおいてへポン式であるということで、長音符号を使うのか使わないのかというのも、御自身のパスポートの表記に準じている可能性があるのではないかと思います。国際学会などの招聘状でパスポートと表記が違うと不都合を来すという話を聞いたことがありますので、そういう影響がある程度あって、御自身で選んでヘポン式にしているのではなく、選ばざるを得なくてへポン式になっている可能性もあるのかなと思いました。

(第2回)

もう ひとつは 外国人の 意識調査の 結果に たいする ものです.

 留学生の方に聞くと、アジアからの留学生の方は、訓令式を見たことがないと答える方がとても多いのです。実際、実用面で、日本で生活していく上ですぐ役に立つ表記を教えてもらったという話なので、ヘポン式しか知らない、というかへポン式という名前で呼ぶことも知らすに、日本ではこれを使っていますと習って来日するそうです。[…]外国でどのように教えられているかという部分は、今の日本でのローマ字の使用実態を反映させているだけという可能性もあります。見慣れている、だからこちらが分かりやすいという意識であって、使われているから分かりやすい、だからこうするのだという結果になっていくと、結局はマッチボンプのようなところがあるので、注意した方がよいのかもしれないと思いました。

(第5回)


もっと くわしく しりたい 人は 法政大学 内山政春教授に よる 論文「「まちがい」だらけの「改定ローマ字のつづり方」-日本の言語施策史上における一大汚点- 」を およみ ください.リンク先から PDFファイルが ダウンロード できます.

これからの 課題
Kore kara no kadai

「ローマ字のつづり方」は「常用漢字表」「現代仮名遣い」などと おなじ ように 日本語の かきかたを さだめて いる たいせつな ルールです.「常用漢字表」は マスメディアでも 尊重 されて いますし,「現代仮名遣い」から はずれた かきかたを すれば 小学生に わらわれます.これらは,法律の ような 強制力こそ ない ものの,世の中の きまりと して みとめられて います.

ところが,「ローマ字のつづり方」は まったく ちがい,存在 しないも 同然の あつかいを うけて きました.それを よしと する ように,2025年の ルール改定は「ローマ字のつづり方」を ほとんど 強制力を もたない 参考資料 みたいな ものに かえて しまいました.


言語は 文化だと いわれます.そして,ローマ字は 日本語の 一部です.ローマ字を ないがしろに する ことは 日本の 文化を おとしめる ことだと いっても いいすぎでは ないでしょう.それなのに ほとんどの 人は これを おかしいと おもって いません.この 意味で,日本 ほど 自分の 言語を たいせつに して いない 国は ないと いえます.日本語を 世界に 発信 する ときは ローマ字を つかうのですから,いまの ままでは 日本が 世界に 恥を さらして いる ような ものです.日本と 日本語の ために,このような 状況は かえて いかなければ なりません.

しかし,ルールを ねじまげて いる 張本人が 官僚なので,上からの 改革は ありえませんし,それを のぞむ べきでも ありません.マスメディアは 行政の でたらめを チェック して いない どころか,共犯者に ちかいと いった ほうが いい くらいです.学校は こどもに ローマ字を きちんと おしえて おらず,教師の 知識不足・能力不足が 混乱を まねいて います.とくに 一部の 英語教師の 不勉強には 目に あまる ものが あります.外国人に 日本語を おしえる 日本語教育の 分野でも 独自方式の 不合理な ローマ字が つかわれて いますが,それに 疑問を もつ 日本語教師は すくない ようです.ほとんどの 学者は 特定の たちばからの 発言が しにくい せいか,有識者と しての つとめを はたして いません.いまは こんな ありさまですから,一般人が 個人の たちばで できる ことを やる しか ないでしょう外国で 活動 して いる 学者は 自由に 発言 しやすいのに たいして,日本では 政府を 批判 する 発言が しにくい ようです.一般人に この あたりの 事情は よく わかりませんが,近年の 国立大学に たいする しめつけや,日本学術会議に たいする 弾圧 などから かんがえて,学者が 自由に 発言 しにくく なって いるのでは ないかと おもわれます..


2025年の ルール改定は まちがいでした.しかし,まちがいは あらためる ことが できます.ルールは ただの お約束です.これは 失敗だったと 気づいたら,何度でも あらためれば いいでしょう.

個人で できる ことは かぎられて いますが,それを やって いく ことが これからの 課題です.めざす 方向は ローマ字の 目的が しめして います.それを みうしなわなければ 道を まちがえる 心配は ありません.