「国語」の ローマ字

「国語」の ローマ字は 日本語

「国語」で ならう ローマ字は 日本語を ラテン文字(ABC)で 書く ものです。つまり,「国語」の ローマ字は 日本語です。日本語の 基礎知識なので 小学校の「国語」で おしえています。

take(竹) Mike(ミケ)【日本語】
take(取る) Mike(マイク)【英語】

「国語」の ローマ字には 訓令式ヘボン式の 2種類 ありますが,ふつうは 訓令式を つかいます。テストの ときも 特に 指定 されなければ 訓令式で こたえないと いけません。くわしい 書きかたは「ローマ字のつづり方」という 公式の ルールで きめられています。


ローマ字教育の 本当の 目的は 国語教育です。しかし,文部科学省が そう いっていない せいで,これが 一般に しられていません。ほとんどの 教師も わかっていません。なんの ために ローマ字を 勉強 するのか よく わからず,英語や ローマ字入力の ためだろうと かんがえている 人も いますが,それは よく ある おもいちがいです。たしかに,ローマ字と 英語は つかう 文字が おなじで,ヘボン式には 英語と にている ところも あります。けれども,ローマ字は 日本語です。フランス語と 英語に 関係が ない ように,ローマ字と 英語にも 関係は ありません。そして,ローマ字は ローマ字入力の 予備知識でも ありません。ローマ字と ローマ字入力は まったく ちがう 別の もので,ローマ字の 書きかたと ローマ字入力の キーの おしかたは ちがいます。

ローマ字は 日本語で くらしている すべての 人に 必要で 重要な ものです。それに たいして,英語や ローマ字入力は みんなに 必要という わけでは なく,こどもに おしえなければ ならない ほど 重要でも ありません。ローマ字教育で まなんだ 知識の 一部は 言語学の 基礎 みたいな ものですから,「英語」の 勉強でも 役だちます。ローマ字入力を やろうと おもったら ローマ字の 知識が いります。けれども,こどもは それが 目的で ローマ字を 勉強 するのでは ありません小学生に 英語を おしえているのは 英語教育の 専門家が そのように すすめているからでは ありません。日本は 植民地では なく,しごとで 英語を つかう 人は 別として,英語が できなくて こまる ことは ありません。小学生に 英語を おしえても おおきな 成果が のぞめない ことは 100年前から わかっています。こどもには 語学の 上達に かかせない 熱意や 目的意識が ないからです。こどもを いろいろな 外国語に ふれさせるのは たいへん よい ことで,発音は こどもの 時期に まなぶと 効果が おおきいとも いわれています。しかし,特定の 外国語を 集中的に 勉強 するのは 本人が 将来の 進路を みすえて 熱意と 目的意識を もって 勉強 できる ように なってからで いいでしょう。そうで なければ 身に つきません。こどもに ローマ字入力を おしえているのも 社会生活で 必要だからでは ありません。しごとで パソコン などを つかう 人は 別として,一般人が 日常生活(役所・銀行・病院 など)で キーボードから 日本語入力を する ことは まず ありませんし,パソコンは ローマ字入力より かんたんな かな入力でも つかえます。スマートフォンには フリック入力も あります。音声入力も 発達 してきています。プログラミング教育でも こどもが プログラムを キー入力 する わけでは ありません。こういう わけですから,英語も ローマ字入力も,それらに 興味を しめした こどもに だけ 家庭で おしえれば よく,すべての こどもに 学校で おしえなければ ならない ものでは ありません。学習指導要領は「ローマ字表記が添えられた案内板やパンフレットを見たり,コンピュータを使ったりする機会が増えるなど,ローマ字は児童の生活に身近なものになっていることなど」を ローマ字教育の 理由に しています。しかし,これは こじつけです。文部科学省には ローマ字教育の 本当の 目的を いえない 事情が あるからです。案内板や パンフレットに 書かれている ローマ字の ような ものは ほとんど 英語なので,もし 本当に それを 読む ことが 目的なら,ローマ字は「国語」で なく「英語」で おしえている はずです。もし 本当に ローマ字入力が 目的なら,「ローマ字表」の「を」は WO に なっている はずです。けれども,実際は ちがうでしょう。それは ローマ字教育の 本当の 目的が 英語や ローマ字入力では ないからです。

「国語」の ローマ字の「ローマ字表」

「国語」の ローマ字の「ローマ字表」を 下に しめします。ローマ字の つづりが ふたつ 書いて ある ところは 上が 訓令式で 下が ヘボン式です。ローマ字の つづりが ひとつ だけの ところは どちらの 方式でも おなじです。

直音拗音
aiueo
キャキュキョ
kakikukekokyakyukyo
シャシュショ
sa
 
si
shi
su
 
se
 
so
 
sya
sha
syu
shu
syo
sho
チャチュチョ
ta
 
ti
chi
tu
tsu
te
 
to
 
tya
cha
tyu
chu
tyo
cho
ニャニュニョ
naninunenonyanyunyo
ヒャヒュヒョ
ha
 
hi
 
hu
fu
he
 
ho
 
hya
 
hyu
 
hyo
 
ミャミュミョ
mamimumemomyamyumyo
yayuyo
リャリュリョ
rarirureroryaryuryo
wao
ギャギュギョ
gagigugegogyagyugyo
ジャジュジョ
za
 
zi
ji
zu
 
ze
 
zo
 
zya
ja
zyu
ju
zyo
jo
ヂャヂュヂョ
da
 
zi
ji
zu
 
de
 
do
 
zya
ja
zyu
ju
zyo
jo
ビャビュビョ
babibubebobyabyubyo
ピャピュピョ
papipupepopyapyupyo

※ カタカナは 音声を しめしています。

※ 表の 形が きまっている わけでは ありません。「アイウエオ」を 縦方向に ならべて 全体を 横長に した 形も あります。撥音「ン」が 表の 中に はいっている ことも あります。

印刷用の「ローマ字表」(A4サイズ,2ページ)も あります。

「国語」の ローマ字の きまり

訓令式の きまり

  1. 撥音(ン)は n で あらわします。撥音の つぎに 母音字 または y が つづく ときは きる印(')で くぎります。
  2. 促音(ッ)は つぎの 子音字を かさねます。
  3. 長音(ー)は のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせます。

onsen(温泉)
sinbun(新聞)
hon'ya(本屋)
kitte(切手)
zassi(雑誌)
itti(一致)
utyû(宇宙)
kibô(希望)
takusî(タクシー)
Tôkyô(東京)
Yamada Tarô(山田太郎)

ヘボン式の きまり

  1. 撥音(ン)は n で あらわします。ただし,b, m, p の 前の 撥音は m に します。撥音の つぎに 母音字 または y が つづく ときは きる印(')で くぎります。この 記号を つなぎ(-)に する ことも あります。
  2. 促音(ッ)は つぎの 子音字を かさねます。ただし,ch の 前の 促音は t に します。
  3. 長音(ー)は のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせます。この 記号を マクロン(¯)に する ことも あります。

onsen(温泉)
shimbun(新聞)
hon-ya(本屋)
kitte(切手)
zasshi(雑誌)
itchi(一致)
uchū(宇宙)
kibō(希望)
takushī(タクシー)
Tōkyō(東京)
Yamada Tarō(山田太郎)

イ段の 長音

訓令式でも ヘボン式でも,イ段の 長音を ii に する 書きかたが あります。くわしくは「îii と 書く?」を お読み ください。

takusî, takusii(タクシー) 【訓令式
takushī, takushii(タクシー) 【ヘボン式


「国語」の 授業では おもに 訓令式を おしえます。ヘボン式と イ段の 長音の 書きかたは どのように おしえているか わかりません。教科書や 教師に よって テストの 正解が かわるかも しれません。

学習の 目標

学習指導要領

2017年に 告示 された 学習指導要領は 学習の 目標を つぎの ように さだめています。

また,第3学年においては,日常使われている簡単な単語について,ローマ字で表記されたものを読み,ローマ字で書くこと。

目標は 単語の 読み書きで,文章の 読み書きまでは もとめていません。単語と いっても 実際は 名詞 だけです小学校で あつかうのは 特殊音を ふくまない 名詞 だけです。ローマ字学習の 目標は まちで みかける 看板や 案内板の ローマ字が わかる レベルです。しかし,それらの ローマ字は 正しい 書きかたに なっていません。たとえば,駅名標の ローマ字は 外来語を 原つづり(ほとんどは 英語)で 書いていますし,道路標識(案内標識)の ローマ字は,じつは ローマ字では なく,国土交通省が でっちあげた 英語です(Nijubashi Bridge など)。そのため,日常生活で 特殊音を ふくんだ ローマ字を 目に する ことは まず ありません。また,動詞・形容詞 などは 名詞より 書くのが むつかしく,いまの 授業時間の 中で おしえるのは 不可能です。看板や 案内板に 書かれる ことも あまり ないでしょう。それで「簡単な」という 条件を つけて 特殊音を ふくまない 名詞 だけに しているのでは ないかと おもわれます。


ローマ字の 名刺 (いまの 教科書)

いまは ローマ字文を 読む ことも 書く ことも しません。最終的に 名刺を つくれる 程度です。

「ローマ字のつづり方」に よると,日本語を ローマ字書きに する ときは 訓令式を もちいる ことに きまっています。しかし,「国語」では 訓令式ヘボン式を おしえています。

授業時間の きまりは ありません。昔の 学習指導要領は 1年間に 40時間(最大で 3年間に 120時間)勉強 する よう もとめていましたが,いまは きまりが なく,実際は 4時間ほどです。文字の ABCを おぼえる ところから スタート するので,ローマ字の 学習に あてられる 時間は ごく わずかだと おもわれます。

この サイトの 提案

ローマ字の 勉強は 単語の 読み書きを おぼえたら いいという ものでは ありません。まなぶ べき ことは たくさん あります。


さらに 話を ひろげると,ローマ字と 世の中の かかわりも 重要です。現在 つかわれている 日本語の 表記システムには 問題が あり,これが 社会の 能率化や 民主化を さまたげています。また,体の 不自由な 人や 外国人の 住民に とって バリア(障壁)に なっています。日本語の 表記システムを もっと やさしい ものに かえていかなければ,そのうち 公の 場で 日本語は つかえなく なるでしょう。日本語を あきらめて 英語に のりかえるのも ひとつの 道ですが,これからも 日本語を つかっていきたいと おもうので あれば,日本語の 書きかたを 意識的に かえていく 必要が あります。すこしずつ 漢字を へらして かな文字書きや ローマ字書きを ふやしていかないと いけません明治時代から 日本の 言語政策は 日本語の 表記システムを やさしく して 日本語を まなびやすく つかいやすく する ことを 基本方針に していました。ところが,日本政府は その 方針を かえて しまいました。事実上,いまの 日本は 日本語を すてて 英語に のりかえる 道を すすんでいます。もちろん,すてる つもりは ないのでしょうが,まもる 努力を 何も していないので,結果として すてる ことに なるという 意味です。2000年に 発表 された「21世紀日本の構想」は「長期的には英語を第二公用語にすることも視野に入ってくる」と いっていました。そして,それを 先どり する ように,さまざまな ところで すこしずつ 日本語を やめて 英語に きりかえる うごきが はじまっています。「日本語が この先 いきのこるには」も お読み ください。


いまの ローマ字教育は このような 目的に 対応 できていません。そのため,日本で 教育を うけた ほとんどの 人は 日本語を ABCで 書く 方法を しらず,いいかげんに 書いています。自分の 名前すら 書けない 人も いて,国際社会で 恥を かいています。しかも,それを たいした 問題では ないと おもっています。これは とんでもない ことです。外国では 自分の 言語を 正しい つづりで 書けなかったら 基礎学力を あやしまれます。いいかげんに 書いている ことを しられたら 社会的信用を うしないます。母語を 大切に していないと おもわれて,きびしく せめられるかも しれません。日本ほど 自分の 言語を なおざりに している 国は なく,いまの 国語教育には おおきな 問題が あると いえます。

ローマ字教育は 授業時間を もっと ふやして より たかい 目標を めざす べきです。小学校の 1年から はじめて,最終的に ローマ字で 日記が 書ける レベルを 目標に,毎年 つづけると いいでしょう。また,ローマ字は 英語や ローマ字入力より 先に おしえないと いけません。英語の 勉強や ローマ字入力の 練習と 同時に やると,こどもが 混乱 して しまうからです。ローマ字は かな文字より かんたんで,きちんと 時間を かけて おしえれば,低学年の こどもでも わかります。中国人は 小学校に はいると すぐに ローマ字を ならいます。下に しめしたのは きちんと した ローマ字教育が おこなわれていた ころの 教科書です。高学年では これくらいの 内容が のぞまれます中国人は こどもでも ローマ字の 読み書きが できます。日常生活で ローマ字を つかう ことも あります。たとえば,中国の 国語辞典は みだし語が ABC順に ならんでいます。パソコンで 中国語の 文を 書く ときに ローマ字を 入力 して 漢字に 変換 する 入力方法を つかう ことも あります(日本の ローマ字入力とは しくみが ちがいます)。漢字を どわすれ して 書けない とき,日本人は かな文字を 書きますが,中国人は おなじ 発音の 漢字や ローマ字を 書きます。


「僕の帽子のお話」 (昔の 教科書)

小学生用。有島武郎「僕の帽子のお話」より。


「アポロンとヒヤキントス」 (昔の 教科書)

中学生用。ブルフィンチ「THE AGE OF FABLE」の 野上弥生子による 抄訳「ギリシア・ローマ神話」より。


パソコン などの 機械に ローマ字を 入力 する やりかたを きちんと さだめる 必要も あります。いまは キーボードや タッチ スクリーンで ローマ字を 入力 する 標準的な 方法が なく,学校でも おしえていません。そのため,ローマ字教育では IT機器が つかいにくく,ローマ字の テストでは こたえを 解答用紙に 書かないと いけません。この 問題に ついては「キーボードの 操作性」も お読み くださいはじめは 解答用紙に 書かせる テストで かまいません。はじめの 段階では 文字の 形・おおきさ・間隔 などが 採点の 基準ですから,教師は 手書きの 文字を みる 必要が あります。「お絵かきソフト」的な ものを つかう 方法も かんがえられますが,そう すると その 操作方法を おしえる 手間が かかりますし,採点の 省力化にも なりません。この レベルの テストを 機械化 する メリットは ないでしょう。

ヘボン式

いいかげんな おしえかた

「国語」は 日本語の 勉強ですが,ヘボン式は 日本語を 書くのに 適していない 方式で,日本語の 勉強で 役に たつ ことも ありません。くわしくは「ヘボン式か 訓令式か」を お読み ください。したがって,本当は「国語」で ヘボン式を まなぶ 必要は ありません。しかし,学習指導要領は ヘボン式を まなぶ 理由として 外国人との コミュニケーションを あげています。日ごろ よく 目に する 案内板 などで つかわれている ヘボン式を 読めないと いけないから,という 理屈です日本語を ローマ字で 書く ときは 訓令式を もちいる ことに きまっています。案内板 などで ヘボン式が つかわれているのは 占領期の なごりです。日本が 本当に 一人前の 国ならば,これを 訓令式に かえる(もどす)のが 筋でしょう。

ところが,ヘボン式の 書きかたは 統一 されていません。おなじ 地名でも 道路標識(案内標識)の ローマ字駅名標の ローマ字が ちがっている ことも あります。これでは こどもに わかりやすく 説明 する ことが できません。しかも,実際に つかわれている ヘボン式は どれ ひとつ とっても「ローマ字のつづり方」に のっとっていません。

ルール違反の 書きかたを くわしく 説明 する わけにも いかないからか,教科書は 案内板 などの ローマ字を 写真や イラストで しめして,「こういう 書きかたも ありますよ。」という ふうな 説明で ごまかしている ことが あります。市販 されている 参考書でも ヘボン式の 書きかたは ばらばらです。教科書や 参考書の 会社が わるい わけでは ありませんが,なんだか いいかげんです。

「国語」では 訓令式が 基本なので,授業でも ヘボン式は きちんと おしえられておらず,おまけ 程度の あつかいに なっています。授業時間が すくないので そこまで やっていられないという 事情も あるでしょう。小学校では「ヘボン式」という 名前も おしえない ことが おおいので,「国語」で ヘボン式を ならった 記憶が ない 人も おおい ようです。

テストに でない 問題

ヘボン式には 訓令式に ない ややこしい 規則が あります。しかし,教科書に くわしい 説明は 書かれていません。ほとんどの 教師は この 部分を きちんと おしえていないと おもわれます。その ばあい,おしえていない ことは テストに でませんから,「サンマ」「キッチン」などの ヘボン式は テストに でないでしょう。

samma (サンマ)
kitchin (キッチン)

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「国語」では ヘボン式を おしえない ほうが いいでしょう。外国人との コミュニケーションに 必要なのは ローマ字で あって ヘボン式では ありません。日本人に 不便で 外国人に 不親切な ヘボン式は 実用的でも 国際的でも ありません。こどもが ヘボン式を おぼえても,道路標識(案内標識)の ローマ字を 読む ことは できませんよく みれば わかりますが,道路標識(案内標識)の ローマ字は,日本語の ローマ字表記では なく,英語です。したがって,英語が わからないと 読めません。それに,これは 英語の はなし手の ために 書かれている ものです。日本人が これを 読む 必要は ありませんし,読める 必要も ありません。駅名標に 書かれている 英語・中国語・韓国語も おなじで,日本人が これらを 読む 必要は ありません。

国際理解教育の 点からも,こどもに ヘボン式を おしえるのは このましく ないと かんがえられます。英語を 特別な(すぐれた)言語だという 勘ちがいを まねく おそれが あるからです。世界の 人々が 対等に 交流 しようと している 時代に,日本語の つづりを 英語に ひきよせて 変形 する ヘボン式を おしえる ことは 教育的と いえません。


センパイ……

ヘボン式の つもりで「先輩」を senpai と 書く 人が います。

ヘボン式は「ローマ字表」や 書きかたに 不規則で やこしい 部分が あります。しかも,なぜ そう なっているのかを こどもでも わかる かんたんな 理屈で 説明 できないので,丸暗記を おしつける ことに なります。これでは おしえる 教師も おぼえる 児童も たいへんです。じつは,ヘボン式には きちんと した 定義も なく,何が 正解なのか はっきり しません。保護者から 質問 されても「これが 正解です。」と いいきれない ばあいが あり,こんな ものを おしつけられている 教師が 気の毒です。

じっさい,ヘボン式を 正しく 書ける 人は おとなでも あまり いません。日本の アニメ などで よく つかわれる「先輩」を senpai と 書いて しまう 人が おおい らしく,外国の アニメファンの あいだに senpai が ひろまっています。このように,おとなに とっても むつかしい ヘボン式を こどもに おしえている 現状には 無理が あります。


小学校の「英語」でも ヘボン式を つかわない ほうが いいでしょう。ローマ字には 日本語を 世界に ひらかれた 文字で 書く 目的が あります。かんたんに いえば,日本語表記の 国際化です。英文の 中に 日本語の ことばを いれる とき,漢字や かな文字で なく ローマ字を 書くのは この ためです。つまり,この ローマ字の 目的は 日本語を ABC表記に する ことです。英語風に する ことでは ありません。したがって,訓令式で 書いておけば いい わけです。それが ローマ字の 正しい つかいかたです。

ninja(忍者)や judo(柔道)の ように,日本語から 英語に なった ことばは 英単語として おしえないと いけません。これらは ローマ字表記に した 日本語では なく 英語だからです。

ローマ字入力

よく ある おもいちがい

小学校では ローマ字入力を おしえています。そのため,ローマ字は ローマ字入力の ために 勉強 するのだと かんがえている 人が います。教師にも そういう 人が います。しかし,これは よく ある おもいちがいです。

さらに おおいのは ローマ字と ローマ字入力の 区別が ついていない 人です。ローマ字入力は 昔から ある ローマ字を あたらしい 技術に 応用 した ものです。つまり,ローマ字と ローマ字入力は まったく ちがう 別の ものです。ところが,ローマ字の 書きかたと ローマ字入力の キーの おしかたは しばしば 混同 され,「ワープロ式」と よばれる まちがった ローマ字が はびこる もとに なっています。

× otousan(お父さん)
× okaasan(お母さん)
× kuusou(空想)
× mikaduki(三日月)

この サイトの 提案

小学校では ローマ字入力を おしえない ほうが いいでしょう。こどもに おしえなければ ならないのは 情報機器の あつかいかたでは なく 情報の あつかいかたです。情報機器の あつかいに なれる ことも 大切ですが,ローマ字入力を おしつける 理由は ありません。日本語を 入力 する やりかたには かな入力が あるからです。しかも,かな入力の ほうが かんたんです。スマートフォンの 発達で ローマ字入力が つかわれる ことも へってきています。小学生に ローマ字入力を おしえる ことは 理屈にも 世の中の 実情にも あっていませんローマ字を まなぶ 本当の 理由は「ローマ字の 目的」で 説明 した とおりです。しかし,いまの 文部科学省は それを はっきり いえません。そこで,ローマ字で 書かれた 案内板を 読んだり 情報機器を つかったり する ことを 理由に しています。学習指導要領でも「国語」の ローマ字を「コンピュータで文字を入力するなどの学習」と むすびつける よう もとめています。けれども,ローマ字の 書きかたと ローマ字入力の キーの おしかたは ちがいますから,ローマ字の 知識が あれば ローマ字入力が すぐ 身に つく わけでは ありません。じっさい,ローマ字の 知識と ローマ字入力の スキルは あまり 関係 ない ことが わかっています。参考に 小学生の スキルが どの 程度かを あげておくと,漢字かな交じり文を 入力 する 作業で 1分間に 入力 できる 文字数は 5.9文字です(文部科学省「情報活用能力調査」,2014年)。この レベルだと おそらく かな入力の ほうが はやいでしょう。


スクリーン キーボード
(堺市立図書館 蔵書検索・予約システム)

学校の 話から はずれますが,ほとんどの おとなも ローマ字入力を おぼえる 必要は ありません。タッチタイピングの スキルや スピードが もとめられていないからです。公の 施設に ある 情報機器は ローマ字入力や かな入力が できない 人でも つかえる ように できています。五十音図の 形を した スクリーン キーボードで ふりがなを 入力 できれば 日常の 生活で こまる ことは ありません。

五十音図の 形を した「五十音図型キーボード」や 五十音順に キーを ならべた「五十音配列キーボード」を 普及 させれば,パソコン などの 情報機器も ふりがなを 入力 する 段階までは スクリーン キーボードと おなじ ように つかいやすく なります。キー配列を おぼえる 必要が なく,ローマ字入力や かな入力が できない 人でも かんたんに つかえます。大部分の 一般人は あそびでも しごとでも キーボードで 日本語入力を する ことなんか ほとんど ないのですから,それで 十分です。特に 低学年の 小学生は その ほうが いいでしょう日本の 失敗は,機械を 人に あわせなければ いけないのに,人を 機械に あわせようと している ことかも しれません。「五十音図型キーボード」や「五十音配列キーボード」を 普及 させれば,パソコンで 日本語入力を する しごとは だれでも できる ように なります。もちろん,かな漢字変換の しくみを 理解 しないと 日本語入力は できませんから,まったく トレーニングなしという わけには いきません。それでも ローマ字入力や かな入力を 練習 しないと いけない いまより ましです。「五十音配列キーボード」は イメージです。記号 などは いいかげんに 配置 しています。上は 通常,下は Shift を おした とき。1面と 2面の きりかえを どう するかは かんがえていません。

ローマ字入力を おしえると しても,こどもが 混乱 しない ように ローマ字と きりわけて おしえる 工夫が 必要です。たとえば,ローマ字の 学習を 小学校の 1年から はじめて,まず ローマ字の 書きかたを 十分に 定着 させておき,それから 高学年で ローマ字入力を おしえる ように すると いいかも しれません。


ローマ字入力は ローマ字を 応用 した ものですから,ローマ字を しっている 人が ローマ字入力を おぼえるのは かんたんです。けれども,先に ローマ字入力を おぼえた 人が あとから ローマ字を 勉強 するのは たいへんです。「ワープロ式」の ローマ字を 書く 人が おおいのは,この おとし穴に はまって しまうと ぬけだすのが むつかしいからです。

こどもでも おとなでも,ローマ字入力の 練習を はじめる 前に ローマ字を きちんと 理解 しておく ことが 大切です。この 理由から,「ローマ字表」が 完全に 頭に はいっていない レベルの 人が ローマ字入力の 練習を はじめるのは おすすめ しません。

特殊音

書きかたが きまっていない

特殊音とは 外来語や オノマトペ などで つかわれる〈ティ〉〈ファ〉〈チェ〉などの 音声です。「ローマ字のつづり方」は これらの 書きかたを さだめていません。そのため,小学生でも しっている ような やさしい 外来語の 中にも ローマ字で 書けない(書きかたが きまっていない)ものが たくさん あります。

いまの 教科書は 特殊音に ふれません。教師でも 特殊音の 書きかたを しっている 人は ほとんど いないと おもわれます。

テストに でない 問題

学校では 特殊音を まったく おしえていないと おもわれます。おしえていない ことは テストに でません。おそらく,「ジェット機」「フェリー」などの ローマ字は テストに でないでしょう。

zyettoki(ジェット機)
hwerî(フェリー)

この サイトの 提案

こどもの 日常会話が ローマ字で 書けない ようでは こまります。一般的な 外来語に つかわれる 特殊音の 書きかたを 公式の ルールとして さだめ,「国語」で おしえなければ なりません。

さしあたって 必要な 特殊音として,つぎの ものを あげておきます。

実際の 学力

実際に 小学生が どれくらい ローマ字を 理解 しているかは 全国学力テストで あきらかに されています。2016年度の「国語A」に だされた ローマ字の 問題と 結果を 下に しめします。


ローマ字の 問題(全国学力テスト,2016年)

正答正答率[%]
1ringo53.4
2asatte42.0
3ひゃく50.9

撥音・促音・拗音の 問題ですが,いずれも 正答率が ひくく,いまの ローマ字教育には 課題が あると いえます。


この テストを おとなが うけたと しても 結果は あまり かわらないと おもわれます。いまの 日本人は 高等教育を うけた おとなでさえ 自分の 言語を ABCで 正しく つづる ことが できません。教育が ゆきとどいた 国の 中で,こんな 国は 日本 だけで,これは 国際的にも はずかしい ことです。

インターネットで 日本人と 外国人が かんたんに 交流 できる 時代に なって,この 事実は 外国人にも しられる ように なってきました。日本人が 書く ローマ字は 人に よって つづりが ちがうので,外国人が 不思議に おもって,いったい どれが 本当なのかといった 話を している ことも よく あります。たまたま その 議論の 場に 日本人が いても,その 人は 疑問に こたえる ことが できません。残念ながら,これが いまの ローマ字教育の 実績です。

「英語」の ローマ字

「英語」の ローマ字は 英語

「英語」で ならう ローマ字は 日本語から 英語に なった 単語を 書く ものです。つまり,「英語」の ローマ字は 英語です。だから「英語」で おしえています。

jūdō(柔道) Tōkyō(東京) 【日本語】
judo(柔道) Tokyo(東京) 【英語】

「英語」の ローマ字の「ローマ字表」

「英語」の ローマ字の「ローマ字表」を 下に しめします。ヘボン式と おなじ ものです。

直音拗音
aiueo
キャキュキョ
kakikukekokyakyukyo
シャシュショ
sashisusesoshashusho
チャチュチョ
tachitsutetochachucho
ニャニュニョ
naninunenonyanyunyo
ヒャヒュヒョ
hahifuhehohyahyuhyo
ミャミュミョ
mamimumemomyamyumyo
yayuyo
リャリュリョ
rarirureroryaryuryo
wao
ギャギュギョ
gagigugegogyagyugyo
ジャジュジョ
zajizuzezojajujo
ヂャヂュヂョ
dajizudedojajujo
ビャビュビョ
babibubebobyabyubyo
ピャピュピョ
papipupepopyapyupyo

※ カタカナは 音声を しめしています。

※ 表の 形が きまっている わけでは ありません。「アイウエオ」を 縦方向に ならべて 全体を 横長に した 形も あります。撥音「ン」が 表の 中に はいっている ことも あります。

印刷用の「ローマ字表」(A4サイズ,2ページ)も あります。

「英語」の ローマ字の きまり

  1. 撥音(ン)は n で あらわします。ただし,b, m, p の 前の 撥音は m に します。撥音の つぎに 母音字 または y が つづく ときも くぎりの 記号を 書きません。
  2. 促音(ッ)は つぎの 子音字を かさねます。ただし,ch の 前の 促音は t に します。
  3. 長音(ー)は 長音符号を 書きません。ただし,イ段の 長音は ii で あらわします。

onsen(温泉) shimbun(新聞)
honya(本屋)
kitte(切手) zasshi(雑誌)
itchi(一致)
uchu(宇宙) kibo(希望)
takushii(タクシー)
Tokyo(東京) Yamada Taro(山田太郎)

ただし,教科書に くわしい 説明は 書いてありません。下の 図は ある 教科書から ぬきだした ものですが,たった これ だけです。


ヘボン式の 解説 (いまの 教科書)

よく みると p, b, m という 文字の ならびが 不自然です。言語学に あかるい 人が みれば この 順番には 意味が あるのですが,英語の 初心者には 関係が ない 話です。これは 教科書でさえ ローマ字の 解説を いいかげんに あつかっている 証拠です。

「英語式」

ヘボン式と「英語式」

一般に「英語」の ローマ字は ヘボン式と よばれています。「英語」の 教科書に そう 書いてあるかも しれません。たしかに,「英語」の ローマ字は ひろい 意味の ヘボン式の 一種と かんがえる ことが できます。しかし,もともとの ヘボン式では ありません。もともとの ヘボン式は「国語」で ならう ヘボン式です。

この サイトは「国語」の ヘボン式を(もともとの)ヘボン式,「英語」の ヘボン式「英語式」と よんで,これらを 区別 していますこの サイトは 日本語を ABC表記に した ものが 正しい ローマ字で,その 中に 訓令式ヘボン式 など いろいろな 方式が あると かんがえています。「英語」の ローマ字は 日本語では ないので,この サイトは これを 正しい ローマ字とも ヘボン式とも みなしていません。もともとの ヘボン式から 派生した 書きかたまで ふくめた,ひろい 意味の ヘボン式の 一種と かんがえています。


もともとの ヘボン式

これは ヘボンが つくった 和英辞典です。ここで つかわれた ローマ字が もともとの ヘボン式です。のばす音に 長音符号が ついています。小学校の「国語」で おしえている ヘボン式は この ヘボン式です。

ヘボン式「英語式」を くらべると つぎの ように なります。

ヘボン式「英語式」
豆腐tōfutofu
柔道jūdōjudo
大野ŌnoOno
優香YūkaYuka
健一Ken-ichiKenichi

これらは 記号が あるか ないかの ちがいしか なく,みた目は よく にています。けれども,本質的に ちがう ものです。ヘボン式は 日本語で,「英語式」は 英語です。

「英語式」の つくりかた

「英語式」の つくりかたは「長音の o, u は 書かない。」と 説明 される ことが おおいのですが,これは まちがいです。正しい つくりかたは「ヘボン式の 記号を はぶく。」です。

たとえば,「太田裕次郎」は「英語式」Ota Yujiro と 書きますが,これは ヘボン式Ōta Yūjirō から 記号を とりのぞいた ものです。Oota Yuujirouo, u を とりのぞいた ものでは ありません官庁は ローマ字の 書きかたを 説明を する ときでも「ローマ字のつづり方」を 参照 しません。たとえば,外務省は パスポートの 名前の 書きかたを 説明 する ときに「ローマ字のつづり方」を 参照 していません。そのため,世の中に あやしげな 説明が ひろまっています。こんな 説明では「林家ペー・パー子」を どう 書けば いいか わかりません。

Ōta Yūjirō(太田裕次郎)【ヘボン式
Ota Yujiro(太田裕次郎)【「英語式」

「英語式」は 読めない

「英語式」は 昔から ある 書きかたで,大正時代には 一般に ひろまっていた ようです。けれども,こんな 書きかたでは「小野」と「大野」が おなじ つづりの Ono に なって しまい,日本人が みても まともに 読めません。

しかも,「英語式」で 書かれた ことばは 英語ですから,正確な 発音は 単語ごとに おぼえる 必要が あります。たとえば,Tokyo の 発音は〈トーキョー〉では なく〈トキオ〉です。karaoke の 発音は〈カラオケ〉では なく〈キャリオキ〉です。この 意味でも「英語式」は 読めません。

「英語式」で 書かれているのは 英単語で あり,英単語は その つづりを みた だけでは 正確な 発音が わからない ことも あるので,日本人が「英語式」を 読めないのは あたりまえとも いえます。

この サイトの 提案

英語に なっていない 日本語を「英語式」で 書くのは やめる べきです。英文の 中に 日本語の ことばを いれる ときは ローマ字表記に しなければ なりませんが,その つづりを 英語風に する 必要は ないので,訓令式で 書いて かまいません。いまの ところ,「英語」の テストでは「太郎」「次郎」を Taro, Jiro と 書かなければ 点が もらえません。けれども,実際の 生活では そう 書かない ほうが いいでしょう。昔の「英語」の 教科書は 日本人の 名前を「名-姓」の 順で 書いていましたが,いまは「姓-名」の 順で 書いています。つぎは「英語式」を やめる 番です英語圏の 外国人が 書く 英文の 中で「英語式」を つかうのは いいでしょう。たとえば,日本人の 佐藤さんが Satô と 自己紹介 したのに アメリカ人が それを Sato と 書いたという ような 話です。なぜ かれらが そう 書くのかを こどもに かんがえさせる ように すれば,国際理解や 言語学の よい 教材に なります。名前の「姓」「名」の ならべかたが かわった ことに ついては「人名」で くわしく 説明 しています。

くわしくは「むやみに「英語式」を つかわない」を お読み ください。


MT. HUZI」 (昔の 教科書)

これは「英語」の 教科書ですが,「富士山」を Mt. Huzi と 書いています。

「英語」では「英語式」を おしえない ほうが いいでしょう。日本語から 英語に なった ことばは ふつう「英語式」の つづりに なりますが,それらは つづりが 規則的なので「英語式」を しらなくても かんたんに おぼえられます日本語から 英語に なった ことばの 中には わずかながら「英語式」の つづりに ならない ものも あり,それらは「英語式」を しっていても 暗記の 役に たちません。例:moxa(もぐさ),noh(能),yen(お金の「円」)。


英語の 発音を おしえる とき,「英語式」は あまり 役に たちません。英語の 母音は 日本語の それに くらべて 種類が おおく,しかも その 発音が つづりと かけはなれています。そのため,初心者には たいへん むつかしく,教師が しっかり おしえないと いけない ところです。けれども,「英語式」は 母音の つづりかたが 英語風に なっていないので,発音の 勉強で 役に たちません。子音の つづりかたは 英語風ですが,にている だけで おなじでは ありません。たとえば,英語の Fと 日本語の〈フ〉の 子音は まったく ちがいます。英語の Lも Rも 日本語の ラ行の 子音とは ちがう 発音です。英語に tsu という つづりは 基本的に ありませんし,日本語に THの 発音は ありません。英語の C, H, G などは 単語によって 発音が かわるので,「英語式」では 刃が たたないでしょう。

中途半端に 英語と にている つづりかたは むしろ 欠点で あるとも いえます。ABCは 言語に よって 発音が ちがいます。たとえば,ja の 発音は 英語・ドイツ語・スペイン語で すべて ちがいます。この 理屈は 語学の はじめに おしえなければ ならない 基礎知識です。ところが,「英語式」の せいで そこが ぼやけて しまって,わかりにくく なっています。訓令式を つかえば,si, ti などの 発音が 英語と 日本語で ちがう ことが はっきり して,わかりやすく なります。もしかしたら,こどもの 発音が なかなか 上達 しないのは「英語式」を つかっている ことにも 原因が あるかも しれません。

日本語の ラ行の 子音が Lか Rかは よく 話題に なりますが,これは ABCの 読みかたが 言語に よって ちがう 事実を しらない 人が おおいからです。 それを しっていたら,Rの 発音が 英語と 日本語で ちがっていても,まったく 気に ならない はずです。これに ついては「ラ行音」も お読み ください。


ローマ字は 音素文字の ABCを つかう 表記法ですから,音素の 概念を おしえるのに 役だちます。この 点で,英語教師が ローマ字を 利用 したいと おもうのは あたりまえです。けれども,ローマ字の つづりかたを 英語風に 変形 すれば 便利だと かんがえるのは 完全な あやまりです。ローマ字は あくまでも 日本語の 表記法だからです。フランスの 英語教師が フランス語の つづりかたを 英語風に 変形 すれば 便利だと かんがえるでしょうか。それは ありえないでしょう。

ローマ字読みに ついて

ローマ字読みの 原因

ローマ字読みは 外国語を ならいはじめると だれでも やって しまう 平凡な まちがいです。英語 以外の 外国語を まなぶ ときも ローマ字読みが おこります。外国人が 日本語を まなぶ ときも,外国人が 外国語を まなぶ ときも,ローマ字読みに あたる 現象が おこります。

その 理由は かんたんで,文字(つづり)の 読みかたが 言語に よって ちがうからです。表音文字は 発音記号では なく,ABCの 読みかたも 言語に よって ちがいます。たとえば,jo は 英語なら〈ジョ〉ですが,ドイツ語なら〈ヨ〉,スペイン語なら〈ホ〉です。cho は 英語なら〈チョ〉ですが,フランス語なら〈ショ〉です。ra は 英語でも 日本語でも〈ラ〉ですが,これは カタカナで 書いたから おなじに なった だけで,発音記号で 書けば ちがいます。外国語に なれない 初心者が ローマ字読みを しがちなのは 外国語の つづりに 母語の ルールを あてはめて 読んで しまうからです英語の sun を〈スン〉と 読んで しまうのが「ローマ字読み」だと すれば,san と 書いて しまうのは「ローマ字書き」で,この まちがいも よく あります。先に 学習 した ことの 知識が あとから 学習 する ことに 影響 する 現象を「転移」と いいます。特に,これが わるい 方向に はたらいて しまう ばあいを「負の転移」または「干渉」と いいます。「ローマ字読み」「ローマ字書き」は この 現象の 一種です。英語の 初心者が よく やる まちがいには,strong に 余計な 母音を いれて〈ストロング〉と 読んで しまう「カタカナ読み」も あります(これを ふくめて「ローマ字読み」と いっている ことも あります)。これは 音素の 概念を きちんと おしえていない せいで おこります。日本語 だけで くらしている 人は 音声を 音節の 単位で 認識 している ため,音素の 概念は おしえて もらわないと わかりません。音素の 概念は ローマ字教育で おしえる べき ものですが,すくない 授業時間の 中では なかなか そこまで できないのでしょう。

ローマ字読みの 責任

ほんらい,ことばは 耳から おぼえる ものです。自然に 身に ついた 母語は そうです。けれども,学習 して 身に つける 外国語では,目から おぼえる ことばが おおく,正しい 発音を おぼえていない ことばも あります。そんな ことばを つかう とき,つづりから むりやり 発音を みちびきだそうと して うっかり 母語の ルールを あてはめて しまうと,ローマ字読みが おこります。こどもは 正しい 発音を おぼえていないから ローマ字読みを する わけです。つまり,ローマ字読みの 責任は 正しい 発音を きちんと おしえていない「英語」の 授業に あります。もし こどもに ローマ字を おしえなかったら どう なるでしょうか。こどもは ローマ字読みを しませんが,正しい 発音も できません。もしかしたら,声を だす ことも できません。

こどもが 英語を ローマ字読み するのは ローマ字を おしえるからだという 意見を よく 目に しますが,これは まちがいです。上で のべた ように,語学の 初心者に ローマ字読みに あたる 現象が おこるのは 外国でも ふつうの ことです。言語教育に たずさわる 者なら かならず それを しっています。日本の 英語教師も ローマ字読みに 気を くばらなければ ならない ことを よく こころえている はずです。それにも かかわらず,ローマ字読みが なかなか なおらない こどもや,ローマ字読みが 世界的に ありふれた 現象で ある ことを しらない おとなが いるのは どういう わけでしょうか。英語教師は こんな かんたんな 理屈も おしえていないのでしょうか。外国の 語学教師が あたりまえに やっている ことを 日本の 英語教師は やっていないのでしょうか英語教師が ローマ字読みの 原因を しらないとは かんがえられませんから,ローマ字教育に 責任を なすりつけて,保護者の 前で 体面を とりつくろっているというのが 実態なのかも しれません。英語教育の 入門期では つぎの 理屈を おしえる 必要が あります:(1) 英語には 日本語に ない 発音が ある こと;(2) おなじ つづりでも 言語に よって 読みかたが ちがう こと;(3) 英語は 発音と つづりの 対応が ローマ字の ように 単純では ない こと。ところが,実際には (2)と (3)を きちんと おしえていない ようです。こういう 理屈が わかっておらず,英語を 正しく 発音 できない こどもが ローマ字読みを するのは あたりまえです。そんな こどもに フォニックスを おしえても 発音は 上達 しません。そもそも,フォニックスは 発音の 勉強法では なく,正しい 発音が できる 英語圏の こどもの ために かんがえだされた 読み書きの 勉強法です。フォニックスを とりいれている 日本の 英語塾・英語教室で こどもの 発音が 上達 するのは,フォニックスの おかげでは なく,発音に 力を いれて おしえているからです。フォニックスには わるい 面も あります。発音は 耳で きいて おぼえる ものですが,単語の つづりから みちびきだす ものだと こどもに 勘ちがい させる おそれが あります。また,フォニックスの 法則は つねに なりたつ わけでは なく,それに たよりすぎると まちがう ことも あります。たとえば have, give, come に 法則を あてはめると 失敗 します。しかも,法則が あてはまらない 単語は おおく,その 割合は 2割 以上も あります。そのため,法則が あてはまるか あてはまらないかを いちいち おぼえなければ なりません。それなら,単語の 発音を ひとつひとつ おぼえたら いいでは ありませんか。おぼえた 単語が ふえてくれば,すこし ヒントを あたえる だけで,こどもは 法則が ある ことに 気づくでしょう。こどもは 法則を みつけだすのが 得意です。ゲームを 攻略 していく こどもの 姿を みている 保護者なら,それを よく しっている はずです。

言語教育の 知識が ない せいで,ローマ字教育が 英語教育の さまたげに なっていると おもいこんでいる 人が います。SNS などに ひろまっている あやまった 情報を まに うけて,ローマ字教育なんか やめた ほうが いいと かんがえている 人も います。しかし,ローマ字教育を せめるのは おかどちがいです。ローマ字読みの 責任は ローマ字教育では なく 英語教育に あります。つまらない うそに だまされない よう,気を つけて くださいローマ字を おぼえた だけで 英語が まなびにくく なるのだと したら,イタリア語や スペイン語で くらしている 人は もっと 英語を まなびにくい はずですが,そんな 事実は ありません。中国人も 小学校で ローマ字を まなびますが,その せいで 英語が 苦手だという 話は ききません。ちょっと かんがえた だけで わかる 話でしょう。日本人が 英語を 苦手と している 原因は はっきり わかっています。それは ひとつでは なく いくつも ありますが,ローマ字教育の せいでは ありません。ローマ字教育が わるいと おもいこんでいる 人が おおい 理由は,英語教育に かかわる 業者が 意図的に ひろめている うそや 英語 だけ 得意な 人が 善意で ひろめている 俗説です。本当に わるいのは 英語教育の ほうです。1980年代の おわりごろから はじまった 英語教育の 迷走ぶりは 特に ひどい もので,これは 現場の 教師や 英語教育の 専門家からも 批判 されています。小学校の「英語」,大学入試の「英語」,ALT,英語で おこなう 授業,「4技能」などが 問題の おおきな ところです。たとえば,ALTは アメリカと 日本の 経済摩擦が 問題に なっていた 1987年から はじまった 制度で,その 本当の 目的は アメリカ人が 日本で はたらける ように する ことでした。すぐれた 音声教材を いくらでも 利用 できる いま,ALTは もはや いらない 制度です。このような 問題点を 専門家が 一般人むけに 解説 している 本は たくさん ありますから,いくつか 読んでみると いいでしょう。参考:「危うし! 小学校英語」

【読みもの】 ローマ字文に なれる 方法


Paul Hume 著,村野辰雄 訳
VERDI Hito to sono Ongaku
(1979)村野辰雄は 昔の 三和銀行の 頭取を つとめた 人で「日本のローマ字社」の 理事長でも ありました。

外国人が 漢字かな交じり文と ローマ字文を みれば,ローマ字文の ほうが 読みやすいと かんじるでしょう。しかし,日本人は 漢字かな交じり文の ほうが 読みやすいと かんじます。それは 漢字かな交じり文を 読むのに なれているからです。ロシア語・ アラビア語・韓国語 などの 文章を おもいうかべてみれば わかる ように,どんな 文字でも どんな つづりかたでも,それに なれて しまえば それが 読みやすく なりますローマ字文は 分かち書きを するので ことばの くぎりが はっきり して 読みやすい 利点が ある 一方,同音異義語の みわけが つかなく なる 欠点も あります。ローマ字文は この 欠点の せいで 読みにくく なる ことが あります。しかし,これは ローマ字文の 欠点では なく,日本語の 欠点です。むつかしい 熟語を さけて,耳で きいた だけで 意味が わかる 文章に すれば,ローマ字文は 読みやすく なります。

ローマ字文に なれるには,ローマ字で 書かれた 本を 読んで 練習 するのが 一番です。けれども,いきなり ローマ字の 長文を みせられたら 読みすすめる だけでも たいへんです。そこで,こういう ばあいに 役だつ 書きかたが あります。それは 漢字かな交じり文に すこし ローマ字を まぜた 書きかたから はじめて,だんだん ローマ字の 割合を ふやしていき,最後には すべて ローマ字に するという ものです。

下に しめしたのは イタリアの 作曲家 Verdi(ベルディ)と その 作品に ついて 書いた 本から ところどころ ぬきだした ものです。ローマ字が だんだん ふえていく 様子を みて ください。




ローマ字が だんだん ふえていく 書きかた