「国語」の ローマ字

「国語」の ローマ字は 日本語

「国語」で おしえている ローマ字は 日本語を ラテン文字(ABC)で 書く ものです。つまり, 「国語」の ローマ字は 日本語です。日本語の 基礎知識なので 小学校の「国語」で おしえています。ローマ字は 日本語の 一部で あり,ローマ字の 勉強は 日本語の 勉強です。

take(竹) Mike(ミケ)【日本語】
take(取る) Mike(マイク)【英語】

「国語」の ローマ字には 訓令式ヘボン式の 2種類 ありますが,ふつうは 訓令式を つかいます。テストの ときも 特に 指定 されなければ 訓令式で こたえないと いけません。くわしい 書きかたは「ローマ字のつづり方」という ルールで きめられています。


ローマ字教育の 本当の 目的は 国語教育です。しかし,文部科学省が そう いっていない せいで,これが 一般に しられていません。教師でも これを しらない 人が います。なんの ために ローマ字を 勉強 するのか よく わからず,英語や ローマ字入力の ためだろうと かんがえている 人も いますが,それは よく ある おもいちがいです。

たしかに,ローマ字と 英語は つかう 文字が おなじで,ヘボン式には 英語と にている ところも あります。ローマ字教育で まなぶ 知識の 一部は 言語学の 基礎 みたいな もので,「英語」の 勉強にも 役だちます。けれども,ローマ字は 日本語です。おなじ 文字を つかっていても フランス語と 英語が ちがう ように,ローマ字と 英語も ちがいます。ローマ字と ローマ字入力も まったく ちがう 別の もので,ローマ字の 書きかたと ローマ字入力の キーの おしかたは ちがいます。ローマ字は パソコンも ワープロも なかった 時代から あり,学校で おしえられてきました。

英語や ローマ字入力の スキルは,しごとや あそびで 必要に なる 人は いますが,みんなに 必要な ものでは ありません。小学生に おしえなければ ならない ほど 重要でも ありません。それに たいして,ローマ字の 知識は 日本語で くらしている すべての 人に 必要で 重要な ものです。中国人も 小学校に はいると すぐに ピンイン(中国の ローマ字)を ならいます小学生に 英語を おしえているのは 英語教育の 専門家が すすめているからでは ありません。日本は 植民地でも なく,大学の 勉強や 会社の しごとで 英語を つかう 人は 別として,英語が できなくて こまる ことは ありません。小学生に 英語を おしえても おおきな 成果が のぞめない ことは 100年前から わかっています。こどもには 語学の 上達に かかせない 熱意や 目的意識が ないからです。こどもを いろいろな 外国語に ふれさせるのは たいへん よい ことで,発音は こどもの 時期に まなぶと 効果が おおきいとも いわれています。しかし,特定の 外国語を 集中的に 勉強 するのは 本人が 将来の 進路を みすえて 熱意と 目的意識を もって 勉強 できる ように なってからで いいでしょう。そうで なければ 身に つきません。こどもに ローマ字入力を おしえているのも 社会生活で 必要だからでは ありません。しごとや あそびで パソコン などを つかう 人は 別として,一般人が 日常の くらし(役所・銀行・病院 など)で キーボードから 日本語入力を する ことは まず ありませんし,パソコンは ローマ字入力より かんたんな かな入力でも つかえます。スマートフォンには フリック入力も ありますし,音声入力も 発達 してきています。こういう わけですから,英語も ローマ字入力も,それらに 興味を しめした こどもに だけ 家庭で おしえれば よく,すべての こどもに 学校で おしえなければ ならない ものでは ありません。学習指導要領は「ローマ字表記が添えられた案内板やパンフレットを見たり,コンピュータを使ったりする機会が増えるなど,ローマ字は児童の生活に身近なものになっていることなど」を ローマ字教育の 理由に しています。しかし,これは こじつけです。文部科学省には ローマ字教育の 本当の 目的を いえない 事情が あるからでしょう。案内板や パンフレットに 書かれている ローマ字の ような ものは ほとんど 英語なので,もし 本当に それらを よむ ことが 目的なら,ローマ字は「国語」で なく「英語」で おしえている はずです(ローマ字は おしえないで 英語を おしえる だけでも いい はずです)。もし 本当に ローマ字入力が 目的なら,「ローマ字表」の「を」は WO に なっている はずです。けれども,じっさいは ちがうでしょう。それは ローマ字教育の 本当の 目的が 英語や ローマ字入力では ないからです。

「国語」の ローマ字の「ローマ字表」

「国語」の ローマ字の「ローマ字表」を 下に しめします。ローマ字の つづりが ふたつ 書いて ある ところは 上が 訓令式で 下が ヘボン式です。ローマ字の つづりが ひとつ だけの ところは どちらの 方式でも おなじです。

直音拗音
aiueo
キャキュキョ
kakikukekokyakyukyo
シャシュショ
sa
 
si
shi
su
 
se
 
so
 
sya
sha
syu
shu
syo
sho
チャチュチョ
ta
 
ti
chi
tu
tsu
te
 
to
 
tya
cha
tyu
chu
tyo
cho
ニャニュニョ
naninunenonyanyunyo
ヒャヒュヒョ
ha
 
hi
 
hu
fu
he
 
ho
 
hya
 
hyu
 
hyo
 
ミャミュミョ
mamimumemomyamyumyo
yayuyo
リャリュリョ
rarirureroryaryuryo
wao
ギャギュギョ
gagigugegogyagyugyo
ジャジュジョ
za
 
zi
ji
zu
 
ze
 
zo
 
zya
ja
zyu
ju
zyo
jo
ヂャヂュヂョ
da
 
zi
ji
zu
 
de
 
do
 
zya
ja
zyu
ju
zyo
jo
ビャビュビョ
babibubebobyabyubyo
ピャピュピョ
papipupepopyapyupyo

※ カタカナは 音声を しめしています。

※ 表の 形が きまっている わけでは ありません。「アイウエオ」を 縦方向に ならべて 全体を 横長に した 形も あります。撥音「ン」が 表の 中に はいっている ことも あります。

印刷用の「ローマ字表」(A4サイズ,2ページ)も あります。

「国語」の ローマ字の きまり

訓令式の きまり

  1. 撥音(ん)は n で あらわします。撥音の つぎに 母音字 または y が つづく ときは きる印(')で くぎります。
  2. 促音(っ)は つぎの 子音字を かさねます。
  3. 長音(ー)は のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせます。

onsen(温泉)
sinbun(新聞)
hon'ya(本屋)
kitte(切手)
zassi(雑誌)
itti(一致)
utyû(宇宙)
kibô(希望)
takusî(タクシー)
Tôkyô(東京)
Yamada Tarô(山田太郎)

ヘボン式の きまり

  1. 撥音(ん)は n で あらわします。ただし,b, m, p の 前の 撥音は m に します。撥音の つぎに 母音字 または y が つづく ときは きる印(')で くぎります。この 記号を つなぎ(-)に する ことも あります。
  2. 促音(っ)は つぎの 子音字を かさねます。ただし,ch の 前の 促音は t に します。
  3. 長音(ー)は のばす 音の 母音字に 山形(^)を のせます。この 記号を マクロン(¯)に する ことも あります。

onsen(温泉)
shimbun(新聞)
hon-ya(本屋)
kitte(切手)
zasshi(雑誌)
itchi(一致)
uchū(宇宙)
kibō(希望)
takushī(タクシー)
Tōkyō(東京)
Yamada Tarō(山田太郎)

撥音と 長音で つかう 記号は どちらで おしえているか わかりません。テストの ときは 教科書や 教師の 書きかたに あわせて ください。記号の 名前は おしえないと おもわれます。こどもが 興味を もったら おしえて あげて ください。

イ段の 長音

訓令式でも ヘボン式でも,イ段の 長音を ii に する 書きかたが あります。î に する ときも,i の 点を 書くか 書かないかが わかれます。テストの ときは 教科書や 教師の 書きかたに あわせて ください。

くわしくは「小文字の i に ^ を のせた 文字?」「îii と 書く?」を およみ ください。

学習の 目標

学習指導要領

2017年に 告示 された 学習指導要領は 学習の 目標を つぎの ように さだめています。

また,第3学年においては,日常使われている簡単な単語について,ローマ字で表記されたものを読み,ローマ字で書くこと。

目標は 単語の よみかきで,文章の よみかきは もとめていません。単語と いっても じっさいは 名詞 だけです小学校で あつかうのは 特殊音を ふくまない 名詞 だけです。ローマ字学習の 目標は まちで みかける 案内板 などの ローマ字が わかる レベルです。しかし,それらの ローマ字は ただしい 書きかたに なっていません。たとえば,駅名標の ローマ字は 外来語を 原つづり(ほとんどは 英語)で 書いていますし,道路標識の ローマ字は,よく みると ローマ字では なく,国土交通省が つくった 不思議な 英訳です(「荒川」「二重橋」を Arakawa River, Nijubashi Bridge と 書く 方式)。そのため,特殊音を ふくむ ローマ字を まちで 目に する ことは ありません。また,動詞・形容詞 などは 名詞より 書くのが むつかしく,いまの 授業時間の 中では おしえられません。案内板 などに 動詞・形容詞 などが 書かれる ことも あまり ないでしょう。それで「簡単な」という 条件を つけて 特殊音を ふくまない 名詞 だけに しているのだと おもわれます。


ローマ字の 名刺 (いまの 教科書)

いまの ローマ字教育は ローマ字文の よみかきを おしえません。最終的に 名刺を つくれる 程度です。

「ローマ字のつづり方」は 日本語を ローマ字で 書く ときに 訓令式を もちいる よう さだめています。しかし,学校は 訓令式ヘボン式を おしえています。

授業時間の きまりは ありません。昔の 学習指導要領は 1年間に 40時間(小学校の 3年間で 最大 120時間)勉強 する よう もとめていましたが,いまは きまりが なく,じっさいは 4時間 ほどです。文字の ABCを おぼえる ところから スタート するので,ローマ字の 学習に あてられる 時間は ごく わずかです。

これでは こどもが ローマ字を ただしく 理解 できません。おとなに なっても ローマ字を あらためて まなびなおす 機会は ありません。そのため,日本人は 平気で まちがいだらけの ローマ字を 書いています。国際的な 場で 日本語を 書く ときは ローマ字表記に しますが,このときも ただしい つづりで 書けず,国際社会で 恥を かいています。

この サイトの 提案

ローマ字教育で まなぶ べき ことは たくさん あります。


さらに はなしを ひろげると,ローマ字と 世の中の かかわりも 大切です。現在 つかわれている 日本語の 表記システムは 漢字を つかっている せいで たいへん むつかしく,おぼえるのも つかうのも たいへんです。これが 社会の 能率化や 民主化を さまたげています。また,体の 不自由な 人や 外国人の 住民に とって バリア(障壁)に なっています。日本語の 表記システムは もっと やさしい 形に かえていかなければ なりません。そう しなかったら,そのうち 公の 場で 日本語は つかえなく なるでしょう。日本語を あきらめて 英語に のりかえるのも ひとつの 道ですが,これからも 日本語を つかっていきたいと おもうので あれば,日本語の 書きかたを 意識的に かえていく 必要が あります。すこしずつ 漢字を へらして かな文字書きや ローマ字書きを ふやしていかないと いけません明治時代から 日本の 言語政策は 日本語の 表記システムを やさしく して 日本語を まなびやすく つかいやすく する ことを 基本方針に していました。ところが,日本政府は その 方針を かえて しまいました。事実上,いまの 日本は 日本語を すてて 英語に のりかえる 道を すすんでいます。もちろん,すてる つもりは ないのでしょうが,まもる 努力を 何も していないので,結果として すてる ことに なるという 意味です。2000年に 発表 された「21世紀日本の構想」は「長期的には英語を第二公用語にすることも視野に入ってくる」と いっていました。そして,それを 先どり する ように,さまざまな ところで すこしずつ 日本語を やめて 英語に きりかえる うごきが はじまっています。「日本語が この先 いきのこるには」も およみ ください。


いまの ローマ字教育は このような 目的に 対応 していません。そのため,日本で 教育を うけた ほとんどの 人は 日本語を ABCで 書く 方法を しらず,いいかげんに 書いています。自分の 名前すら ただしく 書けない 人も いて,国際社会で 恥を かいています。しかも,それを たいした 問題では ないと おもっています。これは とんでもない ことです。外国では 自分の 言語を ただしい つづりで 書けなかったら 基礎学力を あやしまれます。いいかげんに 書いている ことを しられたら 社会的信用を うしないます。母語を 大切に していないと おもわれて,きびしく せめられるかも しれません。日本 ほど 自分の 言語を なおざりに している 国は なく,いまの 国語教育には おおきな 問題が あると いえます。

ローマ字教育は 授業時間を もっと ふやして より たかい 目標を めざす べきです。小学校の 1年から はじめて 毎年 つづけ,6年で 日記が 書ける くらいを 目標に すると いいでしょう。ローマ字を 英語や ローマ字入力より 先に おしえる ことも 重要です。英語の 勉強や ローマ字入力の 練習と 同時に やると,こどもが 混乱 して しまうからです。ローマ字は かな文字より かんたんで,きちんと 時間を かけて おしえれば,低学年の こどもでも わかります。中国人は 小学校に はいると すぐに ローマ字を ならうのですから,日本人も そう すれば いいでしょう最近は 低学年の こどもに パソコンを つかわせる ことも ありますが,ちいさい こどもは ABCが わからない ため,パスワードの 入力で 問題が おこっています。「ICT教育」は 現場を しらない 人たちに よって むりやり ねじこまれた もので,カリキュラムの 整合性が とれていないのかも しれません。ローマ字教育を 小学校の 1年から はじめれば,このような 不整合は なく なります。中国人は こどもでも ローマ字を よみかき できます。くらしの 中で ローマ字を つかう ことも よく あります。たとえば,中国の 国語辞典は みだし語が ABC順に ならんでいます。名簿も ABC順です。パソコンには ピンインを 入力 して 漢字表記に 変換 する ピンイン入力も あります(日本の ローマ字入力とは しくみが ちがい,こどもでも つかえる わかりやすい 方式です)。漢字を どわすれ して 書けない とき,日本人は かな文字を 書きますが,中国人は おなじ 発音の 漢字や ピンインを 書きます。

昔の 学校は きちんと した ローマ字教育を おこなっていました。下に しめしたのは そのころ つかわれていた 教科書です。高学年で この レベルまで いける ローマ字教育が のぞまれます。


「僕の帽子のお話」 (昔の 教科書)

小学生用。有島武郎「僕の帽子のお話」より。


「アポロンとヒヤキントス」 (昔の 教科書)

中学生用。ブルフィンチ「THE AGE OF FABLE」の 野上弥生子による 抄訳「ギリシア・ローマ神話」より。


パソコン などの 機械に ローマ字を 入力 できる ように する 必要も あります。いまは キーボードや タッチ スクリーンで ローマ字を 入力 する 標準的な 方法が なく,学校でも おしえていません。そのため,ローマ字教育で IT機器が つかいにくく,ローマ字の テストでは こたえを 解答用紙に 書かないと いけません。この 問題に ついては「キーボードの 操作性」も およみ くださいはじめは 解答用紙を つかう テストで かまいません。はじめの 段階では 文字の 形・おおきさ・間隔 などが 採点の 基準ですから,教師は 手書きの 文字を みる 必要が あります。「お絵かきソフト」的な ものを つかう 方法も かんがえられますが,そう すると その 操作方法を おしえる 手間が かかりますし,採点の 省力化にも なりません。この 段階の テストを 機械化 する メリットは ないでしょう。

ヘボン式

いいかげんな おしえかた

「国語」は 日本語の 勉強ですが,ヘボン式は 日本語を 書くのに 適していない 方式で,日本語の 勉強で 役に たつ ことも ありません。くわしくは「ヘボン式か 訓令式か」を およみ ください。したがって,本当は「国語」で ヘボン式を まなぶ 必要は ありません。しかし,学習指導要領は ヘボン式を まなぶ 理由として 外国人との コミュニケーションを あげています。日ごろ よく 目に する 案内板 などで つかわれている ヘボン式を よめないと いけないから,という 理屈です日本語を ローマ字で 書く ときは 訓令式を もちいる ことに きまっています。案内板 などで ヘボン式が つかわれているのは 占領期の なごりです。日本が 本当に 一人前の 国ならば,これを 訓令式に かえる(もどす)のが 筋でしょう。

ところが,じっさいに つかわれている ヘボン式の 書きかたは 統一 されていません。おなじ 地名でも 道路標識と 駅名標で ローマ字の つづりが ちがっている ことも あります。これでは こどもに わかりやすく 説明 できません。しかも,じっさいに つかわれている ヘボン式は どれ ひとつ とっても「ローマ字のつづり方」に のっとっていません。

ルール違反の 書きかたを くわしく 説明 できないからか,教科書は 案内板 などの ローマ字を 写真や イラストで しめして,「こういう 書きかたも ありますよ。」という ふうな 説明で ごまかしている ことが あります。市販 されている 参考書でも ヘボン式の 書きかたは ばらばらで,なんだか いいかげんです。

「国語」では 訓令式が 基本なので,授業でも ヘボン式は おまけ 程度の あつかいに なっています。授業時間が すくないので そこまで やっていられないという 事情も あるでしょう。そのため,英語を ならっていない こどもは ヘボン式を ほとんど 理解 していないのが ふつうです。ヘボン式は「英語」でも 勉強 しますが,このときの 記憶 だけが のこっていて,「国語」で ヘボン式を ならった ことを おぼえていない 人も おおい ようです。

テストに でない 問題

ヘボン式には 訓令式に ない ややこしい 規則が ありますが,教科書に くわしい 説明は 書かれていません。そのため,この 部分を きちんと おしえていない 教師が います。その ばあい,おしえていない ことは テストに でませんから,「サンマ」「キッチン」などの ヘボン式は テストに でないでしょう。

samma (サンマ) kitchin (キッチン) 【ヘボン式

この サイトの 提案

ヘボン式は おしえない ほうが いいでしょう。外国人との コミュニケーションに 必要なのは ローマ字で あって ヘボン式では ありません。日本人に 不便で 外国人に 不親切な ヘボン式は 実用的でも 国際的でも ありません。こどもが ヘボン式を おぼえても,道路標識の ローマ字は よめませんよく みれば わかりますが,道路標識に 書かれているのは 英語です。したがって,英語が わからないと よめません。しかも,この 英語は 外国人(英語が わかる 外国人)の ために 書かれています。駅名標に 書かれている 英語・中国語・韓国語と おなじで,日本人が これらを よむ 必要は ありません。

国際理解教育の 点からも,こどもに ヘボン式を おしえるのは このましく ないと かんがえられます。英語を 特別な(すぐれた)言語だという かんちがいを まねく おそれが あるからです。世界の 人々が 対等に 交流 しようと している 時代に,日本語の つづりを 英語に ひきよせて 変形 する ヘボン式を おしえる ことは 教育的と いえません。


センパイ……

ヘボン式の つもりで「先輩」を senpai と 書く 人が います。

ヘボン式は 書きかたに 不規則で やこしい 部分が あります。しかも,なぜ そう なっているのかを かんたんに 説明 できないので,こどもに 丸暗記を おしつける ことに なります。これでは おしえる 教師も おぼえる 児童も たいへんです。ヘボン式には きちんと した 定義も なく,何が 正解なのか はっきり しません。保護者から 質問 されても「これが 正解です。」と いいきれない ばあいが あり,こんな ものを おしつけられている 教師が 気の毒です。

ヘボン式を ただしく 書ける 人は おとなでも あまり いません。日本の アニメ などで よく つかわれる「先輩」を senpai と 書いて しまう 人が おおい らしく,外国の アニメファンの あいだに senpai が ひろまっています。このように,おとなに とっても むつかしい ヘボン式を こどもに おしえている 現状には むりが あります。


小学校の「英語」でも ヘボン式は つかわない ほうが いいでしょう。ローマ字には 日本語を 世界に ひらかれた 文字で 書く 目的が あります。かんたんに いえば,日本語表記の 国際化です。英文の 中に 日本語の ことばを いれる とき,漢字や かな文字で なく ローマ字を 書くのは この ためです。つまり,この ローマ字の 目的は 日本語を ABC表記に する ことです。英語風に する ことでは ありません。したがって,訓令式で 書けば いい わけです。特に,日本の 固有名詞は 訓令式で 書く べきです。それが ローマ字の ただしい つかいかたです。

ninja(忍者)や judo(柔道)の ように,日本語から 英語に なった ことばは 英単語として おしえないと いけません。これらは ローマ字表記の 日本語では なく,英語だからです。つづりも 英語風なので ほかの 英単語と ほぼ おなじ ように おぼえられます。したがって,わざわざ ヘボン式を おしえる 必要は ありません。

「国語」で 訓令式を おしえるのは やめて「英語」で ヘボン式 だけを おしえる べきだと かんがえている 英語教師も いますが,これは とんでもない まちがいです。そもそも ローマ字の 勉強は 日本語の 勉強で あって 英語の 入門では ありません。ヘボン式は 英語の 発音を おしえる ときも あまり 役に たって おらず,かえって わかりにくく している 面さえ あります。くわしくは「ヘボン式と「英語式」」の ところで 説明 しています。

ローマ字入力

よく ある おもいちがい

小学校では ローマ字入力を おしえています。そのため,ローマ字入力の ために ローマ字を 勉強 するのだと かんがえている 人が います。教師にも そういう 人が います。これは よく ある おもいちがいです。

さらに おおいのは ローマ字と ローマ字入力の 区別が ついていない 人です。ローマ字入力は 昔から ある ローマ字を あたらしい 技術に 応用 した ものです。ただし,その 設計に まずい ところが あり,ただしい ローマ字を 入力 して それを そのまま 漢字かな表記に 変換 する しくみでは ありません。そのため,ローマ字と ローマ字入力は まったく ちがう 別の ものに なっています。ところが,ローマ字と ローマ字入力は しばしば 混同 され,「ワープロ式」と よばれる まちがった ローマ字を 書いて しまう 人が ふえています。

× otousan(お父さん)
× okaasan(お母さん)
× kuusou(空想)
× mikaduki(三日月)

この サイトの 提案

「国語」で おしえる ローマ字と ローマ字入力で つかう ローマ字が くいちがっている せいで,こどもが ローマ字入力を おぼえると ローマ字を ただしく 書けなく なって しまう ことが あります。このような 現状では こどもに ローマ字入力を おしえない ほうが いいでしょう。パソコン などの あつかいに なれる ことも 大切ですが,ローマ字入力が こどもを 混乱 させて しまう 問題は 無視 できませんローマ字教育の 本当の 目的は「ローマ字の 目的」で 説明 した とおりです。しかし,いまの 文部科学省は そう いっていません。ローマ字が 書かれた パンフレットや 案内板を よんだり コンピューターを つかったり する ためだと いっています。学習指導要領でも ローマ字を「コンピュータで文字を入力するなどの学習」と むすびつける よう もとめています。しかし,ローマ字は パソコンが なかった 時代にも 学校で おしえられていたのですから,この 目的が こじつけで あるのは あきらかです。ローマ字は 日本語の 文章を 書く ために あり,日本語の 基礎知識だから 小学校で おしえているのですが,文部科学省には この 事実を いいだせない 事情が あります。それで 別の 理由づけを しているのでは ないかと おもわれます。ローマ字を しっていれば ローマ字入力の しくみは 理解 できますが,ローマ字入力の スキルが すぐ 身に つく わけでは ありません。じっさい,ローマ字の 知識と ローマ字入力の スキルは あまり 関係ない ことが わかっています。参考に 小学生の スキルが どの 程度かを あげておくと,漢字かな交じり文を 入力 する 作業で 1分間に 入力 できる 文字数は 5.9文字です(文部科学省「情報活用能力調査」,2014年)。おそらく,「ローマ字表」を みながら やっているから おそいのでしょう。かな入力か 五十音図型の スクリーン キーボードを つかった 入力に すれば,操作が かんたんに なって もっと はやく 入力 できるでしょう。


スクリーン キーボード
(堺市立図書館 蔵書検索・予約システム)

パソコンは ローマ字入力より かんたんな かな入力で つかえます。タブレットなら 五十音図の 形を した スクリーン キーボードが つかえるので もっと かんたんです。スマートフォンは フリック入力に している 人が おおいでしょう。公の 施設に ある 情報機器は ローマ字入力が できない 人でも つかえる ように できているのが ふつうで,五十音図の 形を した スクリーン キーボードが つかえたら,日常の くらしで こまる ことは ありません。

五十音図の 形を した「五十音図キーボード」や かな文字の キー配列を 五十音順に した「五十音配列キーボード」を 普及 させれば,キー配列を おぼえる 必要が なく なって,パソコンは いまより ずっと つかいやすく なります。小学生には このような キーボードが 適しています。タブレットを つかう ばあいは 五十音図型の スクリーン キーボードが いいでしょう日本の 失敗は,機械を 人に あわせなければ いけないのに,人を 機械に あわせようと している ことです。すすんだ 国では「デジタル ディバイド」を うみださない ように,IT化の いきすぎや かたよりを ふせぐ とりくみが おこなわれています。平等で 民主的な 世の中を めざすので あれば,それが あたりまえです。ところが 日本では まったく 反対の ことが おこなわれています。「五十音図キーボード」や「五十音配列キーボード」を 普及 させれば,パソコンで 日本語入力を する しごとは だれでも できる ように なります。もちろん,かな漢字変換の しくみを 理解 しないと 日本語入力は できませんから,まったく トレーニング なしという わけには いきませんが,それでも キーボードの 操作 だけを 練習 しないと しごとが できない いまより はるかに ましです。ここで しめしている「五十音配列キーボード」は イメージです。具体的な キー配列の 提案では ありません。上の 図は 通常,下の 図は Shift を おした とき。1面と 2面を どうやって きりかえるかは かんがえていません。「五十音配列キーボード」は 商品化 されている ものも あります。

ローマ字入力は ローマ字を 応用 した ものですから,ローマ字を しっている 人が ローマ字入力の しくみを 理解 するのは かんたんです。けれども,ローマ字を よく しらない 人が ローマ字入力を おぼえた ばあい,あとから ローマ字を ただしく 理解 するのが とても むつかしく なります。

こどもでも おとなでも,ローマ字入力の 練習を はじめる 前に ローマ字を きちんと 理解 しておく ことが 大切です。この 理由から,「ローマ字表」が 頭に はいっていない 人が ローマ字入力の 練習を はじめるのは おすすめ しません。

小学生に ローマ字入力を おしえると しても,混乱 させない ように,ローマ字と ローマ字入力を きりわけて おしえる くふうが 必要です。ローマ字教育を 低学年から はじめて,まず ローマ字の 書きかたを 十分に 定着 させておき,それから 高学年で ローマ字入力を おしえると いいかも しれません。


現在 つかわれている ローマ字入力は きわめて いびつな 設計です。教育の 観点からも,根本的に しくみを あらためる べきです。いまの ローマ字入力は ローマ字を 入力 して それを そのまま 漢字かな表記に 変換 する しくみに なっていません。ローマ字を つかって ふりがなを 入力 して それを 漢字かな表記に 変換 する しくみです。しかも,その ふりがなは ややこしい 現代仮名遣いの ルールに あわせなければ なりません。ローマ字テーブルにも 設計ミスと いって いい 欠点が たくさん あります。たとえば,特殊音を 入力 する キー操作に 規則性が まったく ありません。

このような わけで,いまの ローマ字入力は たいへん おぼえにくく つかいにくい 方式です。「ワープロ式」と よばれる まちがった ローマ字が はびこる 原因にも なっています。ローマ字入力の 設計を みなおして,ただしい ローマ字を 入力 して それを そのまま 漢字かな表記に 変換 する 自然な しくみに かえる ことは そんなに むつかしい はなしでは ありません。

もし これが できれば,「国語」の ローマ字と ローマ字入力の ローマ字が くいちがっている 問題は なく なります。ローマ字入力で ただしい ローマ字を 入力 できる ように なれば,「ワープロ式」の まちがいは おこりません。こどもに ローマ字入力を おしえる ことが デメリットで なく なって,むしろ メリットに なります。ローマ字を ただしく 書ける 人が ふえる ことは 日本語を 発展 させる 力に なると かんがえられ,こんなに いい ことは ありません。くわしくは「ふたつの ローマ字を 統一 する」を およみ ください。

特殊音

書きかたが きまっていない

特殊音とは 外来語や オノマトペ などで つかわれる〈ティ〉〈ファ〉〈チェ〉などの 音声です。「ローマ字のつづり方」は これらの 書きかたを さだめていません。そのため,小学生でも しっている やさしい 外来語の 中にも ローマ字で 書けない(書きかたが きまっていない)ものが たくさん あります。

いまの 教科書は 特殊音に ふれません。教師でも 特殊音の 書きかたを しっている 人は ほとんど いないでしょう。

テストに でない 問題

学校は 特殊音を まったく おしえていないと おもわれます。おしえていない ことは テストに でません。おそらく,「ジェット機」「フェリー」などは ローマ字の テストに でません。

zyettoki(ジェット機)
hwerî(フェリー)

この サイトの 提案

こどもの 日常会話が ローマ字で 書けない ようでは こまります。一般的な 外来語に つかわれる 特殊音の 書きかたを 公式の ルールとして さだめ,「国語」で おしえなければ なりません。

さしあたって 必要な 特殊音として,つぎの ものを あげておきます。

こどもの 学力

じっさいに 小学生が どれくらい ローマ字を 理解 しているかは 全国学力テストで あきらかに されています。2016年度の「国語A」に だされた ローマ字の 問題と 結果を 下に しめします。


ローマ字の 問題(全国学力テスト,2016年)

正答正答率[%]
1ringo53.4
2asatte42.0
3ひゃく50.9

撥音・促音・拗音の 問題ですが,いずれも 正答率が ひくく,いまの ローマ字教育には 課題が あると いえます。


この テストを おとなが うけても 結果は あまり かわらないでしょう。日本人は 高等教育を うけた おとなでも 自分の 言語を ABCで ただしく 書けません。教育が ゆきとどいた 国の 中で こんな 国は 日本の ほかに なく,これは 国際的にも はずかしい ことです。

インターネットで 日本人と 外国人が かんたんに 交流 できる 時代に なって,この 事実は 外国人にも しられる ように なってきました。日本人が 書く ローマ字は 人に よって つづりが ちがう ことも しばしばで,まちがって 書いている 人が おおいのは あきらかです。外国人が 不思議に おもって,いったい どれが 本当なのか,といった はなしを している ことも よく あります。たまたま その 議論の 場に 日本人が いても,その 人は 疑問に こたえられません。残念ながら,これが いまの ローマ字教育の 実績です。

「英語」の ローマ字

「英語」の ローマ字は 英語

「英語」で おしえている ローマ字は 日本語から 英語に なった 単語を 書く ものです。つまり,「英語」の ローマ字は 英語です。だから「英語」で おしえています。

jūdō(柔道) Tōkyō(東京) 【日本語】
judo(柔道) Tokyo(東京) 【英語】

「英語」の ローマ字の「ローマ字表」

「英語」の ローマ字の「ローマ字表」を 下に しめします。ヘボン式と おなじ ものです。

直音拗音
aiueo
キャキュキョ
kakikukekokyakyukyo
シャシュショ
sashisusesoshashusho
チャチュチョ
tachitsutetochachucho
ニャニュニョ
naninunenonyanyunyo
ヒャヒュヒョ
hahifuhehohyahyuhyo
ミャミュミョ
mamimumemomyamyumyo
yayuyo
リャリュリョ
rarirureroryaryuryo
wao
ギャギュギョ
gagigugegogyagyugyo
ジャジュジョ
zajizuzezojajujo
ヂャヂュヂョ
dajizudedojajujo
ビャビュビョ
babibubebobyabyubyo
ピャピュピョ
papipupepopyapyupyo

※ カタカナは 音声を しめしています。

※ 表の 形は きまっていません。「アイウエオ」を 縦方向に ならべて 全体を 横長に した 形も あります。撥音(ん)が 表の 中に はいっている ことも あります。

印刷用の「ローマ字表」(A4サイズ,2ページ)も あります。

「英語」の ローマ字の きまり

  1. 撥音(ん)は n で あらわします。ただし,b, m, p の 前の 撥音は m に します。撥音の つぎに 母音字 または y が つづく ときも くぎりの 記号を 書きません。
  2. 促音(っ)は つぎの 子音字を かさねます。ただし,ch の 前の 促音は t に します。
  3. 長音(ー)は 長音符号を 書きません。ただし,イ段の 長音は ii で あらわします。

onsen(温泉) shimbun(新聞)
honya(本屋)
kitte(切手) zasshi(雑誌)
itchi(一致)
uchu(宇宙) kibo(希望)
takushii(タクシー)
Tokyo(東京) Yamada Taro(山田太郎)

ただし,教科書に くわしい 説明は 書いてありません。下の 図は ある 教科書から ぬきだした ものですが,たった これ だけです。


ヘボン式の 解説 (いまの 教科書)

よく みると p, b, m という 文字の ならびが 不自然です。言語学に あかるい 人が みれば この 順番には 意味が あるのですが,英語の 初心者には 関係ない はなしです。教科書でさえ ローマ字を いいかげんに 解説 しているのが わかります。

ヘボン式と「英語式」

「英語」の ローマ字は「英語式」

一般に「英語」の ローマ字は ヘボン式と よばれています。教科書に そう 書いてあるかも しれません。たしかに,「英語」の ローマ字は ひろい 意味の ヘボン式の 一種と かんがえられます。しかし,もともとの ヘボン式とは ちがいます。もともとの ヘボン式は「国語」で おしえている ヘボン式です。

この サイトは「国語」の ヘボン式を(もともとの)ヘボン式,「英語」の ヘボン式「英語式」と よんで,これらを 区別 していますこの サイトは 日本語を ABC表記に した ものが 本物の ローマ字で,その 中に 訓令式ヘボン式 などの 方式が あると かんがえています。「英語」の ローマ字は 英語なので,ただしい ローマ字とも ヘボン式とも みなしていません。もともとの ヘボン式から 派生した 書きかたまで ふくめた ひろい 意味の ヘボン式の 一種と かんがえています。


もともとの ヘボン式

これは ヘボンが つくった 和英辞典です。ここで つかわれた ローマ字が もともとの ヘボン式です。のばす音に 長音符号が ついています。「国語」で おしえている ヘボン式は この ヘボン式です。

ヘボン式「英語式」を くらべると つぎの ように なります。

ヘボン式「英語式」
豆腐tōfutofu
柔道jūdōjudo
大野ŌnoOno
優香YūkaYuka
健一Ken-ichiKenichi

これらは 記号が あるか ないかの ちがい しか なく,みた目は よく にていますが,本質的に ちがう ものです。ヘボン式は 日本語で「英語式」は 英語です。

「英語式」の つくりかた

「英語式」の つくりかたは「長音の o, u は 書かない。」と 説明 される ことが あるのですが,これは まちがいです。ただしい つくりかたは「ヘボン式の 記号を はぶく。」です。

たとえば,「太田裕次郎」は「英語式」Ota Yujiro と 書きますが,これは ヘボン式Ōta Yūjirō から 記号を とりのぞいた ものです。Oota Yuujirouo, u を とりのぞいた ものでは ありません官庁は ローマ字の 書きかたを 説明を する ときでも「ローマ字のつづり方」を 参照 しません。たとえば,外務省は パスポートの 名前の 書きかたを 説明 する ときに「ローマ字のつづり方」を 参照 していません。そのため,世の中に あやしげな 説明が ひろまっています。o, u を とりのぞくという 説明では「林家ペー・パー子」を どう 書くのか わかりません。

Ōta Yūjirō(太田裕次郎)【ヘボン式
Ota Yujiro(太田裕次郎)【「英語式」

「英語式」は よめない

「英語式」は 昔から ある 書きかたで,大正時代には 一般に ひろまっていた ようです。けれども,「小野」と「大野」が おなじ つづりの Ono に なる ように,日本人が みても まともに よめない ことが あります。

しかも,「英語式」で 書かれた ことばは 英語ですから,正確な 発音は 単語ごとに おぼえる 必要が あります。たとえば,Tokyo の 発音は〈トーキョー〉では なく〈トキオ〉です。karaoke の 発音は〈カラオケ〉では なく〈キャリオキ〉です。「英語式」で 書かれた ことばを もとの 日本語の 発音で よむのは かんたんですが,英語の ただしい 発音で よむのは むつかしい わけです。この 意味でも「英語式」は よめません。

この サイトの 提案

「英語式」は 英語の 書きかたです。日本語の ローマ字表記(訓令式ヘボン式 など)と きりはなして かんがえる 必要が あります。できれば「英語式」ヘボン式と よばない ほうが いいでしょう。この サイトは「英語式」と よんでいますが,もっと いい 名前が あれば それでも かまいません。


日本の こどもは ABCを みれば 英語だと おもいがちで,ローマ字と 英語を 混同 している ことも あります。そこで,「国語」で ローマ字を おしえる とき または「外国語活動」で 英語を おしえる ときの 一番 はじめの 段階で,フランス語・ドイツ語・ベトナム語・トルコ語 など,ABCで 書く 外国語を できるだけ たくさん こどもに みせると いいでしょう。英語の ほかにも ABCで 書く 言語が たくさん ある 事実を しめして,英語を 相対化 する 視点を あたえる ことが 大切です。


「英語」の 授業で「英語式」の 書きかたを くわしく おしえる 必要は ないでしょう。日本語から 英語に なった ことばは ふつう「英語式」の つづりに なりますが,その つづりかたは 訓令式と ほぼ おなじで,一部が 英語風に 変形 してある だけです。したがって,「英語式」は すこし 英語を 勉強 すれば,よめる ように なります。すでに 訓令式を しっている こどもに「英語式」を おしえるのは 授業時間の むだづかいです日本語から 英語に なった ことばの 中には わずかながら「英語式」の つづりに ならない ものも あり,それらは「英語式」の 書きかたを しっていても つづりを 暗記 するのに 役だちません。例:moxa(もぐさ),noh(能),yen(お金の「円」)。


英語の 発音を おしえる とき,「英語式」は あまり 役に たっていません。それどころか,かえって わかりにくく している 面さえ あります。英語の 母音は 日本語の それに くらべて 種類が おおい うえに,その 発音が つづりと かけはなれています。そのため,初心者には たいへん むつかしく,教師が しっかり おしえないと いけない ところです。けれども,「英語式」は 母音の つづりかたが 英語風に なっていないので,発音を おしえる 道具として つかえません。子音の つづりかたは 英語風ですが,にている だけで おなじでは ありません。たとえば,英語の F音と 日本語の〈フ〉の 子音は ちがいます。英語の R音と 日本語の〈ラ〉の 子音も ちがいます。

ch, sh の ように わかりやすい 子音 だけ 英語と にている「英語式」は 英語の 母音も F音も R音も 日本語と おなじ 発音だという かんちがいを まねきます。ABCで 書く 言語は たくさん ありますが,おなじ 文字を おなじ 発音で よむとは かぎりません。おなじ 文字でも 発音は 言語に よって ちがうのが あたりまえで,この 事実は 語学の はじめに 理解 しなければ ならない 基礎知識です。ところが,「英語式」を つかっている せいで そこが ぼやけて わかりにくく なっています。

ラ行の 子音が Lか Rかは よく 話題に なりますが,これは ABCの 発音が 言語に よって ちがう 事実を しらない 人が いるからです。もし それを しっていたら,Rの 発音が 英語と 日本語で ちがう ことに 気づいても,それを おかしいとは かんがえません。これに ついては「ラ行音」も およみ ください。

おなじ ABCでも 日本語には 日本語の 発音が あり 英語には 英語の 発音が あります。まず,そこから はじめなければ なりません。ABCで 書く 言語を つかっている 国は たくさん あり,その ABCの 発音は 英語と すこし ちがいますが,どこの 国の 英語教師も それを あたりまえと かんがえて 英語を おしえています。おかしな おしえかたを しているのは 日本の 英語教師 だけです。もし「英語」の 教科書が「英語式」を やめて 訓令式を つかう ように なれば,英語と 日本語の 発音の ちがいが はっきり して,いまより わかりやすく なるでしょう。


ローマ字は 音素文字(単音文字)の ABCを つかう 表記法ですから,音素の 概念を おしえるのに 役だちます。この 理由で 英語教師が ローマ字を 利用 したいと おもうのは 自然な ことで,これは まちがっていません。けれども,ローマ字の つづりかたを 英語風に すれば 便利だと かんがえるのは 完全な あやまりです。ローマ字は あくまでも 日本語の 表記法だからです。フランスの 英語教師が フランス語の つづりかたを 英語風に 変形 すれば 便利だと かんがえるでしょうか。それは ありえないでしょう。


MT. HUZI」 (昔の 教科書)

これは「英語」の 教科書ですが,「富士山」を Mt. Huzi と 書いています。


英語に なっていない 日本語を「英語式」で 書くのは やめる べきです。英文の 中に 日本語の ことばを いれる ときは ローマ字表記に しなければ なりません。しかし,その つづりを 英語風に する 必要は なく,訓令式で 書いて いい はずです。それが ローマ字の ただしい つかいかたです。いまの ところ,「英語」の テストでは「太郎」「次郎」を Taro, Jiro と 書かなければ なりませんが,じっさいの 生活では そう 書かない ほうが いいでしょう。

英語に なっていない 日本語を「英語式」で 書くのを やめれば,「英語式」を おしえる 必要も なく なります。昔の「英語」の 教科書は 日本人の 名前を「名-姓」の 順で 書いていましたが,いまは「姓-名」の 順で 書いています。つぎは「英語式」を やめる 番です英語圏の 外国人が 書く 英文の 中で「英語式」を つかうのは いいでしょう。たとえば,日本人の 佐藤さんが Satô と 自己紹介 したのに アメリカ人が それを Sato と 書いたという ような はなしです。なぜ かれらが そう 書くのかを こどもに かんがえさせる ように すれば,国際理解や 言語学の よい 教材に なります。名前の「姓」「名」の 順序に ついては「人名」で くわしく 説明 しています。

くわしくは「むやみに「英語式」を つかわない」を およみ ください。

「ローマ字読み」に ついて

「ローマ字読み」の 原因

「ローマ字読み」は 外国語を ならいはじめると だれでも やって しまう 平凡な まちがいです。英語 以外の 外国語を まなぶ ときも「ローマ字読み」が おこります。外国人が 日本語を まなぶ ときも,外国人が 外国語を まなぶ ときも,「ローマ字読み」に あたる 現象が おこります。

その 理由は かんたんで,文字(つづり)の よみかたが 言語に よって ちがうからです。表音文字と 発音記号は ちがいます。ABCの よみかたも 言語に よって ちがいます。たとえば,jo は 英語なら〈ジョ〉ですが,ドイツ語なら〈ヨ〉,スペイン語なら〈ホ〉です。cho は 英語なら〈チョ〉ですが,フランス語なら〈ショ〉です。ra は 英語でも 日本語でも〈ラ〉ですが,これは カタカナで 書いたから おなじに なった だけで,正確な 発音を しめせる 発音記号で 書けば ちがいます。外国語に なれない 初心者が「ローマ字読み」を しがちなのは 外国語の つづりに 母語の ルールを あてはめて よんで しまうからです英語の sun を〈スン〉と よんで しまうのが「ローマ字読み」だと すれば,san と 書いて しまうのは「ローマ字書き」で,この まちがいも よく あります。先に 学習 した ことの 知識が あとから 学習 する ことに 影響 する 現象を「転移」と いいます。特に,これが わるい 方向に はたらいて しまう ばあいを「負の転移」または「干渉」と いいます。「ローマ字読み」「ローマ字書き」は この 現象の 一種です。英語の 初心者が よく やる まちがいには,strong に 余計な 母音を いれて〈ストロング〉と よんで しまう「カタカナ読み」も あります(これを ふくめて「ローマ字読み」と よんでいる ことも あります)。この まちがいが おこるのは 音素の 概念を きちんと おしえていないからです。日本語で くらしている 人は 音声を 音節の 単位で 認識 している ため,音素の 概念は おしえて もらわないと わかりません。音素の 概念は ローマ字教育で おしえる べき ものですが,授業時間が すくないので なかなか そこまで できないのでしょう。なお,「英語」の 教科書が 訓令式で なく「英語式」を つかっている ことは 発音が 上達 しない 原因の ひとつかも しれません。ABCの よみかたが 言語に よって ちがう ことは 英語教育の はじめに おしえなければ ならない 語学の 基礎ですが,「英語式」の せいで そこが ぼやけて わかりにくく なっています。

「ローマ字読み」の 責任

ほんらい,ことばは 耳から おぼえる ものです。自然に 身に ついた 母語は そうです。けれども,学習 して 身に つける 外国語は,目から おぼえる ことばが おおく,ただしい 発音を おぼえていない ことばも あります。そんな ことばを つかう とき,つづりから むりやり 発音を みちびきだそうと して うっかり 母語の ルールを あてはめて しまうと,「ローマ字読み」が おこります。こどもが「ローマ字読み」を するのは ただしい 発音を おぼえていないからです。つまり,「ローマ字読み」の 責任は ただしい 発音を きちんと おしえていない「英語」の 授業に あります。もし こどもに ローマ字を おしえなかったら どう なるでしょうか。こどもは「ローマ字読み」を しませんが,ただしい 発音も できません。もしかしたら,声を だす ことも できません。

こどもが「ローマ字読み」を するのは ローマ字を おしえるからだという 意見を よく 目に します。しかし,上で のべた ように,語学の 初心者に「ローマ字読み」に あたる 現象が おこるのは 外国でも ふつうの ことです。言語教育に たずさわる 者なら かならず それを しっています。日本の 英語教師も「ローマ字読み」に 気を くばらなければ ならない ことを よく こころえている はずです。それにも かかわらず,「ローマ字読み」が なかなか なおらない こどもや,「ローマ字読み」が 世界的に ありふれた 現象で ある ことを しらない おとなが いるのは どういう わけでしょうか。英語教師は こんな かんたんな 理屈も おしえていないのでしょうか。外国の 語学教師が あたりまえに やっている ことを 日本の 英語教師は やっていないのでしょうか英語教師が「ローマ字読み」の 原因を しらない はずは ないので,ローマ字教育に 責任を なすりつけて,保護者の 前で 体面を とりつくろっているというのが 実態なのかも しれません。英語教育の 入門期では つぎの 理屈を おしえる 必要が あります:(1) 英語には 日本語に ない 発音が ある こと;(2) おなじ つづりでも 言語に よって よみかたが ちがう こと;(3) 英語は 発音と つづりの 対応が 単純で ない こと。ところが,じっさいは (2)と (3)を きちんと おしえていない ようです。こういう 理屈が わかっておらず,英語の 発音も できない こどもが「ローマ字読み」を するのは あたりまえです。そんな こどもに フォニックスを おしえても 発音は 上達 しません。そもそも,フォニックスは 発音の 勉強法では ありません。英語の 発音が できる(「話す」「聞く」が できる)英語圏の こどもの ために かんがえだされた よみかきの 勉強法です。フォニックスを とりいれている 日本の 英語塾・英語教室で こどもの 発音が 上達 するのは,フォニックスを やっているからでは なく,発音に 力を いれて おしえているからです。フォニックスには よく ない 面も あります。発音は 耳から おぼえる ものですが,単語の つづりから みちびきだせると こどもに かんちがい させる おそれが あります。じっさい,フォニックスの 法則は なりたたない ときも あり,それに たよりすぎるのは まちがいの もとです。たとえば,have, give, come に 法則を あてはめると 失敗 します。しかも,法則が あてはまらない 単語は 2割 以上も あるので,法則が あてはまるか あてはまらないかを いちいち おぼえなければ なりません。それなら,単語の 発音を ひとつひとつ おぼえたら いいでは ありませんか。おぼえた 単語が ふえてくれば,すこし ヒントを あたえる だけで,こどもは 法則に 気づくでしょう。こどもは 法則を みつけだすのが 得意です。ゲームを 攻略 していく こどもの 姿を みている 保護者なら,それを よく しっている はずです。

言語教育の 知識が ない せいで,ローマ字教育が 英語教育の さまたげに なっていると おもいこんでいる 人は おおい ようです。SNS などに ひろまっている あやまった 情報を まに うけて,ローマ字教育なんか やめた ほうが いいと かんがえている 人も います。しかし,ローマ字教育を せめるのは おかどちがいです。「ローマ字読み」の 責任は 英語教育に あります。つまらない うそに だまされない よう,気を つけて くださいローマ字を おぼえた だけで 英語が まなびにくく なるのだと したら,イタリア語や スペイン語で くらしている 人は もっと 英語を まなびにくい はずですが,そんな 事実は ありません。中国人も 小学校で ローマ字を まなびますが,その せいで 英語が 苦手だという はなしは ききません。ちょっと かんがえたら わかる 理屈でしょう。日本人が 英語を 苦手と している 原因は はっきり わかっています。原因は いくつも ありますが,ローマ字教育の せいでは ありません。ローマ字教育が わるいと おもいこんでいる 人が おおいのは,英語教育に かかわる 業者が 意図的に ひろめている うそや 英語 だけ 得意な 人が 善意で ひろめている 俗説の せいです。本当に わるいのは ローマ字教育では なく,英語教育です。特に,1980年代の おわりごろから はじまった 英語教育の 迷走は ひどい もので,おおくの 英語教師や 英語教育の 専門家が これを 批判 しています。小学校の「英語」,大学入試の「英語」,ALT,英語で おこなう 授業,「4技能」などが 問題の おおきな ところです。たとえば,ALTは アメリカと 日本の 経済摩擦が 問題に なっていた 1987年から はじまった 制度で,その 目的は アメリカ人が 日本で はたらける ように する ことでした。すぐれた 音声教材を かんたんに 利用 できる いま,もはや ALTの 制度に メリットは ありません。このような 問題点を 専門家が 一般人むけに 解説 している 本は たくさん ありますから,いくつか よんでみると いいでしょう。参考:「危うし! 小学校英語」

【よみもの】 ローマ字文に なれる 方法


Paul Hume 著,村野辰雄 訳
VERDI Hito to sono Ongaku
(1979)村野辰雄は 昔の 三和銀行の 頭取を つとめた 人で「日本のローマ字社」の 理事長でも ありました。

外国人が 漢字かな交じり文と ローマ字文を みれば,ローマ字文の ほうが よみやすいと かんじるでしょう。しかし,日本人は 漢字かな交じり文の ほうが よみやすいと かんじます。それは 漢字かな交じり文を よむのに なれているからです。ロシア語・ アラビア語・韓国語 などの 文章を おもいうかべてみれば わかる ように,どんな 文字でも どんな つづりかたでも,それに なれて しまえば それが よみやすく なりますローマ字文は 分かち書きを するので ことばの くぎりが はっきり して よみやすい 利点が ある 一方,同音異義語の みわけが つかなく なる 欠点も あります。ローマ字文は この 欠点の せいで よみにくく なる ことが あります。しかし,これは ローマ字文の 欠点と いうよりも 日本語の 欠点です。むつかしい 熟語を さけて,耳で きいた だけで 意味が わかる 文章に すれば,ローマ字文は よみやすく なります。

ローマ字文に なれるには,ローマ字で 書かれた 本を よんで 練習 するのが 一番です。けれども,いきなり ローマ字の 長文を みせられたら よみすすめる だけでも たいへんです。そこで,こういう ばあいに 役だつ 書きかたが あります。それは 漢字かな交じり文に すこし ローマ字を まぜた 書きかたから はじめて,だんだん ローマ字の 割合を ふやしていき,最後には すべて ローマ字に するという ものです。

下に しめしたのは イタリアの 作曲家 Verdi(ベルディ)と その 作品に ついて 書いた 本から ところどころ ぬきだした ものです。ローマ字が だんだん ふえていく ようすを みて ください。




ローマ字が だんだん ふえていく 書きかた