字訳

字訳とは


音訳と 字訳

音声を 文字に 変換 する ことを「音訳」または「転写」(transcription)と いいます。それに たいして,ある 文字(つづり)を 別の 文字(つづり)に 変換 する ことを「字訳」または「翻字(ほんじ)」(transliteration)と いいます。

表音文字で 記述 される 言語は,文字の 対応関係さえ きめておけば,別の 表音文字で 書きなおす ことが できます。たとえば,ギリシャ語は ふつう ギリシャ文字で 書かれますが,ギリシャ文字と ラテン文字の 対応関係を,α (アルファ)は a に,β(ベータ)は b にと あらかじめ きめておけば,ラテン文字で 書きなおす ことが できます。このように して,ある 表音文字の つづりを 別の 表音文字の つづりに うつしかえるのが 字訳です。

α → a
β → b
γ → g
δ → d

このときの 対応は 1文字と 1文字の むつびつきで なくても かまいませんし,一対一の 対応に なっていなくても かまいません。θ(シータ)を th に,σ(シグマ)と ς (ファイナルシグマ)を s に,という 対応でも いい わけです。

θ → th
σ, ς → s

字訳の ローマ字

ふつうの ローマ字は 日本語の 音声を ラテン文字で 書いた ものですから 音訳ですが,字訳の ローマ字という ものを かんがえる ことも できます。かな文字を ラテン文字に 変換 するのが 字訳の ローマ字です。

具体的には「あ」「か」「さ」は a, ka, sa に,「きゃ」「きゅ」「きょ」は kya, kyu, kyo に,長音の「おう」「こう」「そう」は ô, kô, sô に,という 具合ですここでは 現代仮名遣いで かんがえていますが,歴史的仮名遣いで かんがえる ことも できます。

あ → a
か → ka
さ → sa
きゃ → kya
きゅ → kyu
きょ → kyo
おう → ô
こう →
そう →
ん → n

結果は 音訳の ローマ字と おなじですが,音声を かんがえていない 点が ちがいます。この ちがいは 重要で,字訳なら かな文字の 読みかたを しらない 外国人でも ローマ字を 書く ことが できます実際には かなり むつかしいと おもわれます。

また,ルールさえ さだめておけば,「アッン」「アッー」の ような 発音 できない つづりや,「あ゛」の ような むりやり つくった つづりでも ローマ字に 変換 する ことが できます。

可逆的な 字訳とは

字訳の 対応関係が 一対一の 対応に なっている 場合,これを「可逆的な 字訳」と いいます。可逆的な 字訳では,かな文字表記を 変換 して つくった ローマ字を 反対の 方向に 変換 して もとの かな文字表記に もどす ことが できます。

可逆的な 字訳の ローマ字

可逆的な 字訳の ローマ字を かんがえる ことも できます。ただし,この 場合は ローマ字の つづりかたを すこし かえる 必要が あります。

まず,長音の つづりかたが かわります。たとえば,「おお」「おう」「おー」は それぞれ oo, ou, ō に 対応 させます。もし「おお」「おう」「おー」が すべて ô に 対応 していたら,ô を もとに もどそうと しても,もともと「おお」「おう」「おー」の どれだったのか わからないので,もどせません。したがって,「おお」「おう」「おー」を それぞれ 別の つづりに 対応 させますこれは 対応の させかたの 一例です。ほかの やりかたも かんがえられます。

おお ⇔ oo
おう ⇔ ou
おー ⇔ ō

それから,「ぢ」「づ」などの つづりかたを 日本式と おなじ ように します。たとえば,「じ」「ぢ」は それぞれ zi, di に 対応 させます。もし「じ」「ぢ」が どちらも zi に 対応 していたら,zi を もとに もどそうと しても,もともと「じ」「ぢ」の どちらだったのか わからないので,もどせません。したがって,「じ」「ぢ」は それぞれ 別の つづりに 対応 させます。

じ ⇔ zi
ぢ ⇔ di
ず ⇔ zu
づ ⇔ du
い ⇔ i
ゐ ⇔ wi
え ⇔ e
ゑ ⇔ we
お ⇔ o
を ⇔ wo

この 理屈で,助詞の「は」「へ」「を」は ha, he, wo に,「ヴァ」は va に します。

gakkou(学校)
koori(氷)
gōru(ゴール)
mikaduki(三日月)
watasi ha(私は)
vaiorin(ヴァイオリン)

可逆的な 字訳の ローマ字は「ワープロ式」と ほぼ おなじ ものです。

字訳の ローマ字の 拡張と 応用

特殊な かな文字表記

「あっー」や「あ゛」の ように,むりやり つくった 特殊な かな文字表記は 発音 できません。それどころか,どういう 発音の つもりで 書かれているのか わかりません。しかし,このような 表記は 実際に おこなわれており,これらを ローマ字に 変換 しなければ ならない ことが あるかも しれません。

字訳の ローマ字を 拡張 すれば,特殊な かな文字表記も ローマ字で 書ける ように なります。


撥音の「ん」,促音の「っ」,長音の「ー」は それぞれ l, q, c で あらわします。

lll(んんん)
qqq(っっっ)
ccc(ーーー)

小書きの「ぁ」「ぃ」「ぅ」「ぇ」「ぉ」は それぞれ xa, xi, xu, xe, xo で,「ゃ」「ゅ」「ょ」「ゎ」は それぞれ xja, xju, xjo, xva で あらわします。

haxa(はぁ)
daxo(だぉ)

doxja(どゃ)
nxva(んゎ)

記号の「ヵ」「ヶ」 は それぞれ xka, xke で あらわします。

xkaxkaxka(ヵヵヵ)
xkexkexke(ヶヶヶ)

濁点(゛)と 半濁点(゜)は それぞれ xb, xp で あらわします。

axb(あ゛)
saxp(さ゜)

ローマ字入力

いまの ローマ字入力は すこし 特殊な つづりを 入力 しにくい ことが あります。たとえば,「あっ」「いっぬ」「うっう」「えっん」などです。

字訳の ローマ字を 応用 すれば,これらの つづりも ローマ字入力が かんたんに なります。くわしくは「ローマ字テーブル」を お読み ください。