特殊音
TOKUSYUON

特殊音とは
Tokusyuon towa

「ローマ字表」に かかれて いるのは 和語と 漢語に つかわれる 音声 だけです.外来語 などで つかわれる【シェ】【ティ】【ファ】などの 音声は かかれて いません.これらの 音声を ローマ字の 世界では 特殊音と よんで います.


内閣告示第2号「外来語の表記」(1991)は 外来語を かきあらわすのに もちいる カタカナ表記と して つぎの ものを あげて います.

イェ
ウィウェウォ
クァクィクェクォ
シェ
チェ
ツァツィツェツォ
ティ
テュ
トゥ
ファフィフェフォ
フュ
グァ
ジェ
ディ
デュ
ドゥ
ヴァヴィヴェヴォ
ヴュ

※ ならべかたは かえて あります.本当は 第1表・第2表の ふたつに わかれて いて,第1表は 一般的な もの,第2表は 原音・原つづりに なるべく ちかづけて かこうと する ときに つかう ものと なって います.


じっさいの 日本語では この 表に かかれて いない〈グォ〉〈ヒェ〉などの 表記も つかわれて います.そこで,ここでは「外来語の表記」に とらわれず,より ひろい 範囲の 特殊音を かんがえます.

訓令式・ヘボン式・日本式の 特殊音
Kunreisiki, Hebonsiki, Nipponsiki no tokusyuon

公式の きまりが ない
Kôsiki no kimari ga nai

特殊音は もともと 日本語に なかった 音声です.むかしは「フィルム」「シェパード」「ビルディング」〈フイルム〉〈セパード〉〈ビルヂング〉と かいて その とおりに よんで いました.むかしの 日本語には【フィ】【シェ】【ディ】などの 音声が なかった わけです.ローマ字は 日本語の 音声を かく ものですから,むかしの ローマ字は これらの かきかたを きめて いませんでした.

いまの 日本語には たくさんの 特殊音が つかわれて います.ローマ字入力も 特殊音が 入力 できる ように 設計 されて います.こんな 時代ですから,特殊音の ローマ字表記も きちんと きめて おく 必要が あります.しかし いまの ところ,訓令式ヘボン式日本式の ちがいに かかわらず,これが きまって いません.特殊音の かきかたには 公式の きまりが なく,自由に かいて いい ことに なって います.

ただし,おおよその かきかたは すでに さだまって います.(それが 公式ルールに とりこまれて いない だけです.)この サイトも むかしから おこなわれて いる かきかたを もとに した「この サイトの かきかた」を 提案 して います.


「二人の学者」(むかしの 教科書)

【ファ】hwa と かいて あります.

「フェニックスの鳥」
「フェニックスの鳥」(アンデルセン童話集)

【フェ】hwe と かいて あります.


「アンデルセンの幼き日の思い出」
(むかしの 教科書)

【ディ】di と かいて あります.


「幼き日のモツアルト」(むかしの 教科書)

【ウィ】【ウェ】【ツェ】wi, we, twe と かいて あります.

きまりを つくる
Kimari o tukuru

訓令式の「ローマ字表」から 一部を ぬきだして【シェ】【チェ】【ジェ】を くわえた ものを 下に しめします.? の 部分を どう かけば いいか,かんがえて みて ください.すぐに こたえが わかる はずです.

シャシュシェショ
syasyu?syo
チャチュチェチョ
tyatyu?tyo
ジャジュジェジョ
zyazyu?zyo


「手をつなぐ子ら」 (むかしの 教科書)

【チェ】tye と かいて あります.


このように して,訓令式の 特殊音は おおよそ つぎの ように きまって います.

イェウィウェウォ
yewiwewo
キェクァクィクェクォ
kyekwakwikwekwo
シェスァスィスェスォ
syeswaswisweswo
チェツァツィツェツォ
tyetwatwitwetwo
ニェヌァヌィヌェヌォ
nyenwanwinwenwo
ヒェファフィフェフォ
hyehwahwihwehwo
ミェムァムィムェムォ
myemwamwimwemwo
リェルァルィルェルォ
ryerwarwirwerwo
ギェグァグィグェグォ
gyegwagwigwegwo
ジェズァズィズェズォ
zyezwazwizwezwo
ヂェヅァヅィヅェヅォ
zyezwazwizwezwo
ビェブァブィブェブォ
byebwabwibwebwo
ピェプァプィプェプォ
pyepwapwipwepwo

カタカナ表記と 規則的に 対応 して いるのを みのがさないで ください.訓令式は 日本語の 性質に あわせて つづりかたを きめて います.しかし,特殊音は もともと 日本語に なかった 音声なので,その つづりかたを きめる ときの よりどころに なる ものが ありません.音声と つづりの 対応は 言語に よって まちまちなので,外国語の つづりは 参考に なりません.そこで,カタカナ表記から 機械的に ローマ字の つづりを つくりだして います.


日本語の 発音が 変化 して できた 特殊音には よりどころに なる ものが あります.こういう ばあいは 発音の 変化から つづりを みちびきだせます.たとえば,「ご馳走」【ゴッツォー】に なる ばあいは,gotisô が 変化 して いるから gottsô と かけば よさそうです.「こいつは こまった」【コイツァー コマッタ】に なる ばあいは,koitu wa が 変化 して いるから koitwâ と かけば よさそうです.

ただし,この やりかたは 外来語 などに 対応 できませんから,この サイトでは 採用 して いません.


ヘボン式を つかいたい ばあいは 標準式を 参考に すると いいでしょう.標準式は 英語から 日本語に なった 外来語を かく ときに 必要な 特殊音の つづりかたが ほぼ すべて きめて あります.

スィ・ティ・トゥ
s'i, t'i, t'u

ヘボン式訓令式で かけない【ティ】【トゥ】が かけるから すぐれて いると いわれる ことが おおいのですが,これは とんでもない まちがいです.ローマ字は 日本語の 文章を かく ものですから,外来語 などで 必要に なる 音声は どの 方式でも かけます.


ヘボン式日本式が 対立 して いた 時代には【スィ】【ティ】【トゥ】を どう かくかが 問題でした.ヘボン式【スィ】【ティ】【トゥ】を それぞれ si, ti, tu と かけます.英語の つづりを まね すれば いい だけですから はなしは かんたんです.じっさい,標準式は その とおりに 定義 して います.ややこしいのは 日本式です.日本式【シ】【チ】【ツ】【スィ】【ティ】【トゥ】を どちらも si, ti, tu と かいて いました.

これは どういう ことかと いうと,ことばの 区別に かかわらない 程度に ちがう 音声は おなじ 音声と みなすと いう かんがえです.つまり,【シ】【チ】【ツ】【スィ】【ティ】【トゥ】は おなじ 音声だから おなじ つづりで かくと いう 理屈です.たとえば,英語の sea, team, two は 日本語に なって いますが,これらを【シー】【チーム】【ツー】と 発音 しても【スィー】【ティーム】【トゥー】と 発音 しても おなじ ことばです.それなら,おなじ つづりで かけば いいだろうと いう わけです.ローマ字は ことばの 音声を かきますが,こまかい 発音の ちがいまで 正確に かきわける 発音記号では ありません.おなじ ことばに きこえる 音声は おなじ つづりで かきます.これが【シ】【チ】【ツ】【スィ】【ティ】【トゥ】を どちらも si, ti, tu と かく 理由です.

「箱庭のお寺」
「箱庭のお寺」(ローマ字世界, 1911)

【チ】【ティ】が どちらも ti と かいて あります.この 時代は【ティ】【チ】と 発音 して いたのかも しれません.


ところが,日本人でも【チ】【ティ】を 区別 して かんがえる 人が おおく なり,英語の party の つもりで【パーチー】と いっても つうじなく なって きました.これでは【チ】【ティ】が おなじ 音声と いえません.そんな わけで,日本式にも これらの 発音を 区別 できる かきかたが もとめられる ように なり,区別 したい ときは【スィ】【ティ】【トゥ】s'i, t'i, t'u と かく 方法が できました.

(シー) tîmu(チーム) (ツー)
s'î(スィー) t'îmu(ティーム) t'û(トゥー)

これと おなじ 理屈で,【ズィ】【ディ】【ドゥ】z'i, d'i, d'u と かきます.


これらの かきかたは ほぼ そのまま 訓令式にも うけつがれて います.ただし,【スィ】【ズィ】の 発音は ほとんど つかわれて おらず,上で 説明 した swi, zwi でも 解決 できます.【ディ】【ドゥ】d'i, d'u でも いいですが,訓令式di, du を つかって いないので,di, du に しても かまいません.【ティ】【トゥ】t'i, t'u でも いいですが,ti, tu に して しまっても 実用の レベルで おおきな 問題は おこりませんti, tu は 単語に なって いれば どちらの 発音か わかる ものが ほとんどだからです.たとえば,tinpanzî, tinpani【チンパンジー】【ティンパニ】だと わかります.tîmu【チーム】【ティーム】か わかりませんが,どちらでも いい わけです.固有名詞は どちらの 発音か わからないと 不便なので,ti, tut'i, t'u を かきわける ほうが いいでしょう.上に しめした「トリニティ教会」の ように,原つづりが ヒントに なる ばあいも あります.この サイトの かきかたは,【スィ】【ズィ】swi, zwi に,【ティ】【ディ】tji, dji に,【トゥ】【ドゥ】tvu, dvu に して います.

「道」
市川次郎「道」

おっちゃんが 38才だと わかって オーストラリア人が おどろいた シーンです.【ティ】t'i と かいて あります.オーストラリア人が はなす 英語の 発音の はなしを して いるので,【チ】【ティ】を かきわけて います.

ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ
Ba, bi, bu, be, bo

カタカナ表記の〈ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ〉【バ・ビ・ブ・ベ・ボ】と よみます.これらは もともと 日本語に ある 音声ですから,特殊音では ありません.よむ とおりに ba, bi, bu, be, bo と かきます.

カタカナ表記も あらためて,よむ とおりに〈バ・ビ・ブ・ベ・ボ〉と かく べきです.[よみもの]の「ヴァイオリン」も およみ ください.

99式の 特殊音
99-siki no tokusyuon

99式は いろいろな 特殊音の かきかたを さだめて います.下に しめしたのは その 一部です.

イェキェシェチェニェ
yekyesyetyenye
テャティテュテェテョ
tjatjitjutjetjo
ファフィフゥフェフォ
fafifufefo

※ カタカナは 表記(文字)を あらわして います.

fan(ファン)
tyesu(チェス)
paatjii(パーティー)

「パスポート式」の 特殊音
"Pasupôto-siki" no tokusyuon

「パスポート式」も 特殊音の かきかたを きめて います.外国人の 名前で つかわれやすい ものを えらんで いる はずですが,「外来語の表記」と ちがう ところが あります「パスポート式」に ない もの:シェ,テュ,トゥ,フュ,ヴュ.「外来語の表記」に ない もの:フョ,グィ,グェ,グォ

イェ
ie
ウィウェウォ
uiueuo
クァクィクェクォ
kuakuikuekuo
チェ
chie
ツァツィツェツォ
tsuatsuitsuetsuo
ティ
tei
ファフィフェフォ
fuafuifuefuo
フョ
fuyo
グァグィグェグォ
guaguigueguo
ジェ
jie
ディ
dei
デュ
deyu
ドゥ
dou
ヴァヴィヴェヴォ
buabuibubuebuo

この ルールは 変です.ie【イエ】【イェ】か わかりません.ほかの つづりも すべて そうで,ただしい よみかたが わかりません.「パスポート式」で かくと,長音を ふくむ 名前は まともに よめませんが,特殊音を ふくむ 名前も まともに よめませんヘボン式の 変種は たくさん ありますが,それらの 中で 「パスポート式」は 原音の 再現性が もっとも わるい 方式です.

〈ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ〉の かきかたを きめて いるのも めだつ ところです.


いまは「非ヘボン式」の 制度が あり,å, é, ø, ß の ように 記号が ついたり して いる 特殊な 文字は 別と して,Smith, Lynn などの つづりにも できます.したがって,これから パスポートを つくる 人が「パスポート式」の 特殊音を つかう 必要は ありません.

この サイトの かきかた
Kono saito no kakikata

この サイトは 特殊音を つぎの ように かく ことを 提案 します.訓令式の 拗音を 拡張 する 形に なって いるので,ふつうの 拗音(キャ・キュ・キョ など)も あわせて かいて あります.

-y-
イャ
(ヤ)
イュ
(ユ)
イェ
(*)
イョ
(ヨ)
yayuyeyo
キャキュキェキョ
kyakyukyekyo
シャシュシェショ
syasyusyesyo
チャチュチェチョ
tyatyutyetyo
ニャニュニェニョ
nyanyunyenyo
ヒャヒュヒェヒョ
hyahyuhyehyo
ミャミュミェミョ
myamyumyemyo
リャリュリェリョ
ryaryuryeryo
ギャギュギェギョ
gyagyugyegyo
ジャジュジェジョ
zyazyuzyezyo
ヂャヂュヂェヂョ
zyazyuzyezyo
ビャビュビェビョ
byabyubyebyo
ピャピュピェピョ
pyapyupyepyo
-w-
ウァ
(ワ)
ウィ
(ヰ)
ウェ
(ヱ)
ウォ
(ヲ)
wawiwewo
クァクィクェクォ
kwakwikwekwo
スァスィスェスォ
swaswisweswo
ツァツィツェツォ
twatwitwetwo
ヌァヌィヌェヌォ
nwanwinwenwo
ファフィフェフォ
hwahwihwehwo
ムァムィムェムォ
mwamwimwemwo
ルァルィルェルォ
rwarwirwerwo
グァグィグェグォ
gwagwigwegwo
ズァズィズェズォ
zwazwizwezwo
ヅァヅィヅェヅォ
zwazwizwezwo
ブァブィブェブォ
bwabwibwebwo
プァプィプェプォ
pwapwipwepwo
-j-
テャティテュ テョ
tjatjitju tjo
デャディデュ デョ
djadjidju djo
-v-
トァトィトゥトェ
tvatvitvutve
ドァドィドゥドェ
dvadvidvudve
-wy-
フャ フュ フョ
hwya hwyu hwyo
ブャ ブュ ブョ
bwya bwyu bwyo

※ 特殊音の つづりは,日本語の 性質と きりはなして かんがえれば いいので,カタカナ表記から 機械的に つくりだして います.

※ カタカナは 音声を あらわして います.ただし,どんな 音声かは かんがえません.ローマ字は 発音記号の ような ものでは ないからです.たとえば,【ファ】hwa に なって いるのは,カタカナでは〈ファ〉と かく 音声を ローマ字では hwa と かくと いう 意味です.その 音声が 英語の fa, pha に ちかい 音声 なのか,wha(ふるい つづりでは hwa)に ちかい 音声 なのか,それらとも ちがう 音声なのか,それは かんがえません.

【スィ】【ファ】などを 拗音の ように かく ところが 気に なるかも しれませんが,気に する 必要は ありません.かな文字表記でも〈スィ〉〈ファ〉と まるで 拗音の ような 字面で かいて いますが,これを 気に して いる 人は いないでしょう.

※ -y- の 系列は ヤ行の 音に ねじれる 音声で 開拗音と いいます.-w-の 系列は ワ行の 音に ねじれる 音声で 合拗音と いいます.合拗音は 小がきの カタカナを〈ワ〉〈ヰ〉〈ヱ〉〈ヲ〉で あらわす ほうが わかりやすいのですが,〈ヰ〉〈ヱ〉〈ヲ〉の ちいさい 文字が ないので〈ァ〉〈ィ〉〈ェ〉〈ォ〉に して います.したがって,【クァ】【クヮ】は おなじ 意味です.

※ ヤ行と ワ行は 1文字でも かける 特別な 拗音と かんがえて 再定義 しますヤ行の 音声は【イャ・◯・イュ・イェ・イョ】で,かな文字で かく ときは〈イャ・◯・イュ・イェ・イョ〉でも〈ヤ・◯・ユ・*・ヨ〉でも いい ことに します.ワ行の 音声は【ウァ・ウィ・◯・ウェ・ウォ】で,かな文字で かく ときは〈ウァ・ウィ・◯・ウェ・ウォ〉でも〈ワ・ヰ・◯・ヱ・ヲ〉でも いい ことに します.〈ヰ・ヱ・ヲ〉の 発音は【イ・エ・オ】から【ウィ・ウェ・ウォ】に かわります.助詞の〈を〉〈お〉と かく ように します.*印の ところには ヤ行エ段の かな文字を つけくわえます.これは じっさいに つくって いた ことが あります.参考:や行え

【ブュ】〈ヴュ〉と かかれる ことも あります.例:〈レヴュー〉〈インタヴュー〉〈ヴュ〉と かいても【ビュ】と よむので あれば byu です.

hwan(ファン)
tyesu(チェス)
pâtjî(パーティー)


いまの 日本語に ある 拗音は【キャ】【キュ】【キョ】など だけです.しかし,むかしの 日本語には ほかにも 拗音が ありました.たとえば,【クヮ】【グヮ】です.明治時代に つくられた 日本式kwa, gwa を 定義 して いるのは そのころの 日本語に【クヮ】【グヮ】と いう 発音が あったからです.むかしの 日本語には【イェ】と いう 発音も ありました.おかねの「円」が 英語で yen と かかれるのは むかしの 日本人が〈え〉【イェ】と 発音 して いたからです.


拗音の かな文字表記

これは 明治時代に かかれた 本から ぬきだした ものです.拗音が たいへん わかりやすく かかれて います.


ローマ字入力は 設計に まずい ところが たくさん あります.特殊音を 入力 する キー操作も そうで,規則性が まったく ありません.そのため,キー操作が おぼえにくく,〈ティ〉〈ツァ〉〈ウェ〉などを 入力 できない 人が います.

それに たいして,この サイトが すすめる 特殊音の かきかたは 規則的です.これを ローマ字入力で つかえる ように すれば,キー操作が おぼえやすく なります.「ローマ字テーブル」で しめして いる アイデアを 参考に して ください.

特殊音の つかいみち
Tokusyuon no tukaimiti

特殊音は おもに 外来語や 外国の 固有名詞で つかいます.

syepâdo(シェパード)
kontwerun(コンツェルン)
Tyeko(チェコ)
Hwinrando(フィンランド)

外来語は 原つづりで かく べきだと いう 意見が あります.しかし,それは まちがいです.外来語は 日本語なので 日本語の つづりで かきます.

日本語でも 特殊音を つかう ことが あります.たとえば,「お父っつぁん」「ごっつぁんです」などの【ツァ】が そうです.お国ことばや オノマトペで 微妙な 音を あらわしたい ときにも 特殊音が つかわれます.

otottwan(お父っつぁん)
Gorwa!(ゴルァ!)
Hyê!(ヒェー!)

特殊音が つかえない!
Tokusyuon ga tukaenai!


ジェット機

特殊音は 学校で おしえません.テストにも でません.

「チェンジ」「フェリー」「フォーク」など,外来語の 中には 特殊音を ふくむ ものが たくさん あります.ところが,学校は「国語」でも「英語」でも 特殊音の かきかたを おしえません.おそらく,教師も 特殊音の かきかたは しりません.こどもから 「ジェット機」の ローマ字表記を 質問 された とき,これに きちんと こたえられる 教師は おそらく ほとんど いないと おもわれますもし こんな 質問を されたら,外来語は 原つづりで かく ものだと おもいこんで いる 人が おおいので,教師でも jet-ki と こたえるかも しれません.教師が 自分の 知識不足に 気づけないのは ローマ字が 日本語の 文章を かく もので ある 事実を しらないからです.ローマ字を かんちがい して,日本語の 単語(和語・漢語)を ABC表記に 変換 する 規則だと おもって いると,外来語を ローマ字で かく ことが ないので,自分の 知識不足に 気づけません.

しかも,学校は ローマ字入力を おしえて います.ローマ字入力の キー操作を おぼえた こどもは ローマ字でも そう かく ものだと かんちがい するに きまって います.これでは まちがった ローマ字を おしえて いる ような ものです.

特殊音は,一般的な 外来語に つかわれる もの だけでも,正式の つづりかたを さだめて,学校で おしえないと いけません.そう しないと,【ティ】thi と かく ような まちがいが 世の中に ひろまって しまいます.

さしあたって 必要な 特殊音と して,つぎの ものを あげて おきます.

[よみもの]ヴァイオリン
[Yomimono] Baiorin

〈バイオリン〉は よく〈ヴァイオリン〉と かかれます.「音楽」の 教科書は 小学校では〈バイオリン〉,中学校では〈ヴァイオリン〉と かく そうです.しかし,〈ヴァイオリン〉は まずい かきかたです.こんな かきかたは やめて,〈バイオリン〉と かく べきです.

〈ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ〉は 特殊音の ように みえますが,そうでは ありません.じっさいの よみかたは【バ・ビ・ブ・ベ・ボ】で,もともと 日本語に ある 音声だからです.100年後の 日本人が どんな 発音を して いるかは わかりませんが,いまの ところ〈ヴァ〉を 英語の V音の ように 発音 する 人は いないでしょう.つまり,〈バ〉〈ヴァ〉の 発音は おなじです.表音文字で ことばを かく ときは おなじ 音声を おなじ つづりで かくのが 原則です.これが〈ヴァ〉〈バ〉と かく べき 理由です.


〈バ〉〈ヴァ〉を かきわけようと すると,原音や 原つづりの 知識が いるので,余計な 手間が かかります.そして,〈バ〉〈ヴァ〉を かきわけたと しても,よむ ときには まるで 役に たちません.まれに 英語の bestvest を みた目で 区別 できる ような ことも ありますが,ほとんどは かき手に よる 知識の ひけらかしに しか なって いません.きびしい いいかたを すれば,〈ヴァ〉は 知識人の おもいあがりです.

意味の ちがいは ことば(音声)の ちがいで あらわさないと いけません.意味の ちがいを つづりの ちがいで あらわして いたら,日本語は 文字に たすけて もらわないと 意味を つたえられない 半人前の 言語に なって しまいます.〈バ〉〈ヴァ〉の かきわけは,表記に ゆれを つくり,インターネットの 検索や 機械的な テキスト処理を 混乱 させ,名簿・辞書・索引 などを つかいにくく して いる だけで なく,日本語を 不完全な 言語に して います.


「ヴェートーベン」

だれかが「ヴェートーベン」を 検索 したのでしょうか.ここまで くると かっこわるいと いわなければ なりません.

英語由来の 外来語を カタカナで かく とき,英語の 複雑な 母音を こまかく かきわけたりは しません.L音と R音も 区別 しません.the【ザ】three【スリー】と いう ふうに TH音も 日本語流に かいて います.それなのに,どうして B音と V音を かきわけようと するのでしょうか.

もう すこし いじわるな 目で みれば,〈バ〉〈ヴァ〉の かきわけを して いる ことばの ほとんどが メジャー言語(英語 など)に 由来 する ことも 指摘 できます.マイナー言語に 由来 する 外来語では〈ヴァ〉が あまり つかわれません.これでは 無知を さらして いる ような ものです.

〈ラジオ〉を みた ときに〈レディオ〉と かきなおしたく なる 人が いるでしょう.それは もとの 外国語を しって いて,その 原音が 気に なるからです.けれども,完全に 日本語に なって いる ことばの 原音や 原つづりを 気に する 必要は ありません.もとの 外国語を しって いると,原音に ちかづけて かく べきだとか,その 反対に 原つづりの「ローマ字読み」に する べきだとか,いろいろ かんがえて しまうかも しれません.しかし,それは かんがえすぎです.〈ランドセル〉〈ペンキ〉なら 何も 気に ならないでしょう.

完全に 日本語に なって いる ことばは 日本語の 発音どおりに かく べきです.そう すれば,表記の ゆれが なく なって,日本語が より 能率的に なります.よみかきが やさしく なって,日本語が より 民主的に なります外国の 固有名詞は 完全に 日本語に なって いる ことばでは ないので,かんがえかたが すこし ちがいます.日本語を ローマ字で かく 習慣が ひろまれば,アメリカ人が「パリ」「北京」「東京」を Paris, Beijing, Tokyo と かいて【パリス】【ベイジン】【トキオ】と よんで いる ように,原つづりを かいて 自分の 言語流に よむ やりかたが ふえて いくかも しれません.その ほうが 便利だからです.しかし,人名は 原音を 尊重 する べきだと いう かんがえも あります.そこで,原音を 尊重 した よみかたを かっこつきで 原つづりに かきそえる やりかたを おすすめ します.例:Chopin (Syopan).ただし,いまの 日本人に ショパンを Chopin と かけと いったって むりですから,いまの ところは Syopan で かまいません.できれば 最初 だけ Syopan (Chopin) に すると いいでしょう.


もし ローマ字の テストに〈ヴァイオリン〉が でたら どう こたえたら いいでしょうか.それは baiorin です99式では,〈バイオリン〉と かいて あれば baiorin〈ヴァイオリン〉と かいて あれば vaiorin です.